地獄行きすれすれ男の異世界善行記録   作:ただのジョンソン

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第28話:収まるところに収まった。

俺は昼食を取るミラーの妻を見つけた。2階のテラス席の一番端っこで真っ白なパンとビーフシチューを食べていた。

 

ミラーの妻が座っている席に座る。名前はセラーナ、気に食わないと夫を殴り倒すほど激しい女の名前には見えなかった。

 

「どなたですか?」

 

「名乗るほどの者じゃありません、それに一度会ってますよ」

 

俺はウェイターに炭酸水を頼んだ。彼女は怪訝そうな顔をした。怒りで我を忘れてて俺の事など忘れているのだろう。

 

セラーナについて少し聞いて回った。街の中じゃ有力な薬師一家の2女らしく、実家の金回りは良さそうで、ミラーとは薬師学校からの馴染みである様だった。

 

ミラーの家は貧乏薬師で、だいぶ苦学したようだった。

 

逆玉の輿だろうか?いや、違うだろう。

 

俺は「旦那をモノにするためにどんな手口を使ったんだ?」と軽口を叩いてやろうかと思ったが、飲み込んだ。

 

「ヴィドーさんの頼みでね。詳細は全部聞いています。まぁ、前科者一人の為に大げさな事をするモンだなぁとは思いますが。話はつきましたよ」

 

セラーナはそうですか、と言うと安心した顔をした。

 

「私はある女性の前科者の面倒を見ていて…彼女を遠くの街に住まわせることも出来ます」

 

彼女の目端が光った様な気がした。明らかに不快そうな顔になっていった。余程旦那を取られることを恐れているらしかった。

 

俺は気にせず、出てきた炭酸水を飲みながら言った。

 

「仕事が無いと無理な話ですがね…なにぶんほぼ無報酬でやっているものですから、遠くの街に行って他人の仕事を探す為に転げ回るのは割に合わない」

 

彼女は口をすぼめ、低い声で言った。

 

「幾ら欲しいんですか?」

 

俺は笑って首を振った。強請を解決して、強請わけがないだろう。

 

「昔はあなたみたいな人から仕事を貰っていましたよ。正攻法で物事を解決できない人をね」

 

セラーナが拳を握りしめた。

 

「無礼な方ですね…」

 

「もっと無礼にもなれますよ?まぁ、本題に入りましょう。何処に行っても前科者は仕事を探すのに苦労する…彼女の仕事をあなたに見つけてもらうと助かります」

 

セラーナは私が知った事か、と言った顔をしたので矢継ぎ早に言った。

 

「何処かの誰かは知りませんが、彼女を牢屋にブチ込んで不幸にしてしまった。人助けだと思う事は出来ませんか?」

 

一瞬だけセラーナの目が揺らいだ。

 

「私にはそんな事…」

 

いや、実家が金持ちの女はそんな事出来るはずだ。確証は無いが、カミラを牢屋にブチ込むように手配したのもセラーナだろう。

 

「ま、無理強いはしませんよ。私は人のアテを辿るのが得意ですから、『この辺』に彼女の仕事を見つけれるでしょう」

 

俺は炭酸水を飲み干して、わざとらしく「ま、それはそれとして」と言って前置きをした。

 

「私はあなた方夫婦のおかげで転げまわりました。貴方にも同じだけ転げ回って頂きたいだけですよ」

 

俺はメモ帳にサマンサ宿の住所を書いてセラーナに渡した。

 

「カミラ・ミストリアの仕事のアテが決まったらサマンサ宿まで来て頂けますか?」

 

俺はにっこり笑って、炭酸水の伝票をセラーナに押し付け、立ち上がった。

 

ここまで一方的にまくし立てたのは久しぶりだ。いつも良いようにされてるから気分が良い。

 

---

俺はセラーナと一緒に馬車で4時間ほど走った小さな街まで来た。なるほど、ここまで来たら夫を取られることも無いだろう。

 

街の中心にある小さな教会の中で俺は気弱そうで細い司祭を見ていた。死にかけの老婆に天国行きのチケットを約束してそうな男だ。

 

俺はセラーナが司祭と世間話をしているのを聞いていた。どうやら教会で育てている薬草類をセラーナに売っている様だ。

 

司祭は恐る恐る俺に向けて口を開いた。

 

「あなたが人を紹介してくれると…?」

 

「逆ですね、私はある人の保護観察をしていいます。彼女に仕事を紹介してくれる人を探しています」

 

不安そうな司祭に向けて俺は声調を高くして言った。

 

「そんな安月給で元A級冒険者は雇えませんよ」

 

「前科は気にしませんが…なぜこんな遠くまで?」

 

俺はセラーナを見てわざとらしく言った。

 

「元婚約者に旦那を取られることを気にする方がいましてね…犯罪や悪い人間とツルんだから遠くに住んみたいワケではありません」

 

司祭は何かを察したように頷いた。俺はゆっくりと彼に向けて言った。

 

「誰にでも、穏やかな場所で暮らす事が必要なんですよ」

 

----

 

俺は遠巻きに教会で働くカミラを見ていた。葉巻に火をつけようとするとアリアにそれを取られた。

 

「まさかあなたが彼女の仕事を見つけるとは思わなかったわ」

「歯車が噛み合ったからついでにな」

 

俺はそう言って頷いた。

 

「上手くやってるみたいよ…宿を出て6ヶ月しか経ってもね」

 

馬車が教会の前に着くと教会の前で、カミラが教会の農場で薬草を摘んでいた。街にいたときよりかは穏やかそうだった。

 

カミラは立ち直り、全てが片付いた様な気がした。最もカタなど付いておらず、彼女の人生はこれから始まるのだろうが。

 

カミラは宿を出る時に「ありがとう」と言って恥ずかしそうにはにかんだ。以外にかわいい表情をするものだ。

 

案外純粋でこういうトコで暮らす方が向いてるのかも知れない。

 

不良少年と前科者の女。

嫉妬深い人妻にナヨナヨした夫。

風俗狂いの鍛冶屋に借金のある冒険者。

安請け合いで厄介事に首を突っ込む元探偵。

 

思い返せば、登場人物はこれしか居ないのに、こんな苦労を巻き起こせた物だ。

 

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