地獄行きすれすれ男の異世界善行記録   作:ただのジョンソン

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第37話:複雑な仲間たち

俺はアリア・スティルウェル直筆の紹介状を持ってテオドラ公領魔術学院に訪れていた。リゼット・ファルケーの母校である。

 

別に紹介状は万能ではなく3時間くらい待たされたり、たらい回しにされたりした。

 

そして、目の前に頑迷そうな老女が座っていた。歓迎されては無い様で、茶の一杯も出て来なかった。

 

カリーナと俺で、恭しく頭を下げた。

 

「お時間頂きありがとうございます」

 

老女は咳払いをして言った。

 

「それで?リゼット・ファルケーの事を知りたいと?」

 

俺はゆっくりと冒険者書類を取り出して、机の上に置いてメモを取り始めた。

 

「えぇ、彼女の事を騎士団にスカウトしようと思いまして…公的な機関は背景を知るべきでしょう?」

 

老女は頑迷そうな顔のまましみじみと言った。

 

「リゼットがねぇ…」

 

「冒険者ギルドでは優秀でしたが…」

 

カリーナがそう付け加えたが、老女は何の反応も示さなかった。

 

老女は淡々と告げた。

 

「えぇ、とても優秀です。魔術師同士で生活する事には向いてません」

 

「何故?」

 

「平たく言ってしまえば、熱があり過ぎるんです…魔術学院で教員を志望していましたが、面接官と魔術理論について激しい口論になりました」

 

俺が「なかなか豪気ですね」と相槌をいれると老女は続けた。

 

「魔術師で彼女と一緒に働くことを望んだ人はいませんでしたよ」

 

俺が書類に要点を書いていると、老女が言った。教師の顔になっていた。

 

「その…彼女はどうですか?上手くやれてるんですか?」

 

俺は首を傾げ、カリーナを見た。何せ俺はリゼットとか言う魔術師の女の事は知らない。

 

「あ、その。A級冒険者としてギルド長からと信頼されていました。騎士団に入っても上位の実力だと思います」

 

老女は一瞬だけ「そう言う事じゃないんだけどな」と言いたげな顔をした後、カリーナの目を見つめた。

 

「彼女をお願いしますね」

 

カリーナは焦った様に返事をした。

 

俺はメモを獲るフリをしながら言った。

 

「公式な記録では彼女には借金も前科も業務上の過失も無く、他に後ろ指を刺される様な事もありません。在学中でもその様な問題は無さそうですね…」

 

老女は「そうですか、それは良かったです」と安心した様な声を浮かべた。

 

「冒険者になった時は、どうなるかと思いましたが…問題も起こしてなくて、騎士団に誘ってくれる友達も出来た様で嬉しいです」

 

老女の口ぶりから察するに学生時代はあんまり友達のいなかった研究者タイプの人間なのだろう。

 

---

俺はオイスタ市教会にいた。

ミリアム・ロウレが下宿として部屋を借りている教会の司教の話を聞くためだった。

 

ここの司教は気前が良く、味の濃い紅茶を出してもてなしてくれた。

 

「騎士団への紹介状を?ミリアムはここで働いていませんよ?」

 

呼び捨てにすると言う事はそれなりに親しい仲なのだろうか?

 

「冒険者ギルドの人間が書くというのも…祈祷師は教会か療養所で働いているものですし…」

 

俺が複雑そうな顔をして愛想笑いを浮かべると司教もまた複雑そうな顔をした。因みに、何が複雑なのかは分からない。勘だ。

 

「ミリアムの栄転の為に必要という事ですね…」

 

俺は続けた。

 

「複雑そうな顔ですね…何かあったんですか?」

 

司教は「 いやぁ」と白髪まみれの頭をポリポリ書いた。言う気は無さそうだった。

 

「彼の仲間に他冒険者をブン殴った人間がいますが…そう言うタイプでは無いですよね?類は友を呼ぶじゃありませんが…」

 

そう言うとカリーナは非難するような目を俺に向けた。司教は慌てるように首を振った。

 

「いえ、頑固なだけです」

 

「頑固?教会で働く人間は頑固だと思いますが…」

 

司教は笑った。そして続けた。

 

「教会は組織です。権力者にへつらったり、教会内部での権力闘争や政治、汚い事もあります。慈善だけで全てが回れば良いのですがね。ミリアムはそういう事を嫌いました」

 

それを聞いて、カリーナが言った。

 

「聞いたことはありませんでした…それで、教会で働いてないんですね」

 

「神学校の教授が…生活費は自分で稼がせるから、ここで慈善活動をさせて欲しいと彼を紹介してくれました」

 

カリーナは何も言わなかった。何か自分と照らし合わせたのかも知れない。

 

「この件はミリアムさんには言っていません。こういう他人のアラを探す様な真似は嫌いそうだ」

 

司教は頷いた。

 

「直接聞くべきだと思います」

 

「人は嘘をつきます。自分の事は客観的には話せない。勿論私もですが…」

 

司教は何かを察したのか、溜息をついた。

 

「何時までもこんな事をしてる訳にはいかないと、彼に言う時が来たのかも知れませんね」

 

「私よりは立派な生き方だと思いますが…」

 

「人は猟犬となって、羊を守らなければならない。彼にはそれが出来る力と頭があります」

 

俺とカリーナは同時に頷いた。ありがたい言葉を聞いたからなのかも知れない。

 

---

ダン・ブラウンに殴られた冒険者は、山で魔力を多く含む木材を伐採する仕事をしていた。

 

もう、冒険者では無い様だった。従業員を3人雇い、ボチボチやっているらしい。

 

男は革の水筒を飲んだ。半袖から見える肌は見事に日焼けをしていた。

 

「それで?こんな山まで俺がボコボコにされた話を聞きに?」

 

俺は首を振った。

 

「彼をどこかの騎士団に入れる予定だ、素行調査も兼ねてる」

 

男は呆れた様に笑った。気さくな男だった。気さくでなければ俺には会わなかっただろう。

 

「は、俺の誘いを断って騎士団ねぇ」

 

「それで揉めた理由は?」

 

男は目を細めた。

 

「このままだと先もねぇし、俺と一緒に木こりをやらないかと誘った。この辺は結構強い魔物も出るしな…この年でA級で燻ってるようじゃ、才能がないと…ま、結構ひどいこと言ったよ」

 

「それでか?」

 

「ま、結構クリティカルな事だったらしい。本人も色々と焦ってた様だしな」

 

男は背伸びをした。

 

「俺は小遣い稼ぎで冒険者を始めたが、アイツは冒険に夢見るタイプだったのさ。アンタもパーティを組んでたから分かるだろ?」

 

カリーナは首を振った。

 

「普段は冗談を言って…そんな風には」

 

「そんな小っ恥ずかしい事言わないよ。冒険者なのに酒も飲まないし、女も抱かない、金は仕事道具に全て使う、見てりゃ分かる」 

 

男は革の水筒を地面に置いて、斧を持った。

 

「どんな男にも酒を飲んだり、嫁にキレられたり、老後の事を考える人生が来るんだ。アイツにもそれが分かる日が来るとは思わなかった」

 

俺はカリーナを見たダンは「それ」が分かっているのだろうか?カリーナは軽く首を傾げた。

 

「にしても残念だよ。一緒に仕事が出来るチャンスだったのにな」

 

ダン・ブラウンが夢を諦めてなかっなら騎士団には絶対に来ないだろう。そうなったら、仕方ないのだが。

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