「ここが・・・」
遥かなる大海原。かつての名機、航空機銀河で学園館に到着したカチューシャは照りつける太陽を鬱陶しく思いながら1人ごちていた。
「まずは学園長の元に案内してくれる?」
「はい!」
送ってくれた生徒の1人に語りかけ、格納されていく銀河を見送りながら本校舎の道を歩き出す。
「さて・・・鬼が出るか蛇が出るか。」
カチューシャは1人思案する。二つ返事で赴任を決めたとはいえ、ここは
「野馬懸高校・・・ま、なんとかなるでしょ。」
カチューシャは知らなかった。この高校は、全国でも有数の、熱意とカオスが混ざり合う高校だと言う事を・・・
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「よく来てくれました。か・・・いえ、ここではかつてのニックネームで呼びましょうか。ようこそカチューシャ。」
「いえ、本名でも構いませんけど・・・」
学園長室。荘厳な内装であるこの部屋は、割と裕福な学校であることを伺わせる。
「それで、私の見るチームは?」
「それなんですが・・・」
「?」
「まぁ・・・まずは私の自己紹介を。私は半谷美玖。この学園長をしています。」
「はぁ・・・」
「戦車道のチームですが・・・それなんですが。」
「ええ。」
「チームメンバーは40人。既に動かせる様になっています。戦車の数も揃えました。」
「それはいいんですが。さっきの反応はなんです?」
「ちょっと秘書ちゃん。周りに誰も来ないようにしてくれる?」
学園長が指示を出すと秘書がバリケードを持って飛び出していく。カチューシャはどこからともなく出てきたバリケードに違和感を覚えたがとりあえずは無視した。
「ごほん・・・」
「・・・。」
「カチューシャさん。」
「はい。」
「言葉を崩して構いませんよ。ここからはプライベートな話ですから。」
「そうでs・・・そう?じゃあ楽にさせてもらうわ。」
そう言ってカチューシャは姿勢を崩して出されたロシア風紅茶をぐいっと飲み干した。ジャムも忘れずに。
「なんか言い含みがあるようだけど。何か問題でもあるの?」
「問題は無いんです。問題は・・・」
「問題はあるけど別な何かはあるわけね。」
「ええ・・・まずうちのスクールモットーを教えましょう。」
「知ってるわ。文武両道。いかにもありきたりなスクールモットーよね。」
「ならいいんです・・・そのスクールモットーが大変でして・・・」
「何が起きてるの?」
「我が校では数年前からとある生徒会長の意思が継がれているのです。それは文武両道ならば何をしても良いという厄介な意思です。」
「はぁ?」
「もともと自由な校風ではあったのですが・・・それが激化。ルールさえ破らなければ何をしても良いという物に変わっていきました。」
「それで?」
「メリットは文武両道になる為に学業、部活動の成績が全国有名校に並ぶ程の邁進を見せた事です。それはいいんです・・・それは。」
「ええ、そうね。」
「ですが・・・私たちは生徒達の・・・子供達のポテンシャルを見誤ったのです。」
「・・・。」
「ギフテッド、と言う言葉をご存知ですか?」
「ええ。神から才能を与えられた子供達みたいなやつよね。」
「それが我が校には80名確認しています。」
「ぶっっっ」
思わず紅茶を吹き出した。そんなに!?
「ちょっと待って。80名?そんなに?」
「うち8名が戦車道チームに加入しています。それだけじゃありません。ギフテッドには及ばずともスペシャルと言うべき才能を持った子達もいます。その数学園館の生徒70%の2300名・・・」
「冗談でしょ・・・」
「冗談じゃありません。」
「・・・で。」
「はい。」
「私にどうしろと?」
「話が早くて助かります。ここでやっぱり辞めると言われると思いましたから。」
「バカにしないで。これでもプラウダの癖の強い連中のリーダーだったのよ。それぐらいどうって事ないわ。」
「大丈夫ですかねぇ・・・」
「ちょっと不安になったわ。」
「カチューシャさんには戦車道部の顧問として活動してもらいます。ある程度の権限も与えます。お願いはひとつだけ。どうか退学者を出さない様にして欲しいのです。」
「それだけ?」
「はい。我が校ではギフテッド、スペシャルの子達が更なる飛躍を求めて旅立ってしまう事が多いのです。せめて高校生活を謳歌してもらいたいのです。」
「なるほどね・・・」
「お願いできますか?」
「・・・任せなさい。」
「・・・ありがとう。」
「地吹雪のカチューシャは伊達じゃないのよ!」
「では・・・部活動と銘打ってますが選択教科でもあるので。早速射撃場に。」
「わかったわ。」
「どうか、どうかお願いしますね。カチューシャさんも辞めないでください。頼みますよ。」
「わかったって言ってるでしょ。そんなに不安なの?」
「はい・・・」
「ええ・・・」
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射撃場。戦車道の練習用に整備した真新しい射撃場では戦車達が射撃訓練をしていた。カチューシャは精が出るなと感心していたが。どうにも様子がおかしい。
「アンサルドにトルディ、トゥラーン・・・ズリーニィにタシュまでいるじゃない。ハンガリーで揃えたのね。」
ドカンドカンと景気よく撃ってる戦車。的の命中率は決して高くは無い。まぁ結成したばかりのチームらしいしとカチューシャは無線機を手に取った。
『あーあー、聞こえる?』
『はい!!!!!!!!!聞こえます!!!!!!!!!!どちらさまでしょうか!!!!!!!!!!』
『うるっさ。砲撃に負けないくらいデカいわよ声。』
『すみません!!!!!!!!!!!!!!!!!』
『声でっか。私は今日赴任した教官兼顧問よ。様子を見に来たわ。』
『なんと!!!!!!!!みんなああああああああああああああ!!!!!!!!!!砲撃中止!!!!!!!!!ちゅうしいいいいいいいいいい!!!!!!!!!』
砲撃が鳴り止み、なんだなんだと戦車のハッチが開き生徒達が身を乗り出してカチューシャを見ていた。
「みんなーーーーー!!!!教官だってーーーーーー!!!!!」
指示を出していた子がそう叫ぶとワラワラと駆け出してきてカチューシャの前に整列する。
「初めまして!!!!教官!!!!!私は隊長の相馬湊です!!!!」
「よろしく湊。拡声器ある?」
「こちらです!」
カチューシャはメガホン型拡声器を手に取り整列してる生徒達に語りかける。
「今日から教官兼顧問をするか・・・いや、カチューシャよ。よろしく。」
「「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」」
「元気がいいのは良いことよ。自己紹介はまず車長だけしてくれる?じゃあまずあんたから。」
「はい!!!トゥラーンⅢ車長兼隊長の相馬湊です!!!!」
「はいよろしく、次。」
「アンサルド隊指揮車車長の石井望です!!!!」
「はい次。」
「ズリーニィⅠ車長の宇佐美喜美です!!!」
「はい次。」
次々に自己紹介していく生徒達。カチューシャは1人1人見つめてなるべく覚えていく。
「みんな終わったわね。じゃあ次は湊。貴方達の目標を聞かせてくれる?」
「はい!!!目標は公式大会優勝です!!!!」
「そう。出来ると思う?」
「わかりません!!!!」
「まぁそうよね。でも、私が顧問になったからには絶対に優勝してもらうわ。いいわね?」
「はい!!!!!」
「じゃあとりあえず部室で質問を受け付けるわ。案内して湊。」
「はい!!!みんな行くぞー!!!!」
部室に移ったカチューシャは生徒達の質問攻めをいなしながらふと考えが頭を過る。
「(思ったより普通じゃない。学園長は大袈裟に言ったみたいね。)」
大騒ぎする女子高生のパワーに押されながら年取ったなと考えるカチューシャだったがまだ二十代と頭を振って追い出した。カチューシャはまだ味わってないのだ。野馬懸高校の恐ろしさ・・・いや面白さを。