比企谷八幡に転生した俺は平和に生きたい   作:れぜ

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第1話

青春とは神であり、言葉で言い表せないほどに素晴らしいものである。青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲に気遣い、自らを取り巻く環境の全てを肯定的に捕らえる。彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる、それって素晴らしいじゃん若いって無敵だよね。もうごちゃごちゃ言ってないで結論を述べよう、青春を楽しむ者ども……存分に楽しんでね!いえーい!

 

かゆい

うま

 

 

「……比企谷、この作文は何だ?」

 

「青春の素晴らしさを説いた作文ですが、それと最後のはオマケです」

 

「私が授業で出した作文の課題は高校生活を振り返ってというものだったはずだが、後バ〇オネタを入れるのはやめろ。私じゃないと分からなかったぞ」

 

「いや有名だしみんな知って―――あっ!?これ発売年的にも先生ぐらいの年齢がちょうど直球世代ですもんね「おい私を何歳だと思ってるんだ?というか女性に年齢の話をするなと教わらなかったのか??」コワ~……」

 

 

ずっと男運無いからってそんな怒らないでくださいよ、平塚先生もゲームでは一応ヒロインとしての専用ルートあるんですからそれで許して……え?急なメタ発言やめろ?いや違うんだよ、それを言うなら最初から既にズレてるし比企谷の口調もこんなじゃないじゃん。手短に事情を説明するなら―――俺は比企谷八幡に憑依してしまった一般転生者だ。

 

前世は特に語る事の無い地味なオタク男子高校生、ある日トラックに轢かれそうな子供を助けて代わりに死んだやら何とやら……ありふれた話だからどうでもいい。もし転生できるならTS美少女を希望する俺だったけど、視界が開けるとそこには涙ぐみながら温かい眼差しを向けてくる2人の男女の姿。そして「あなたの名前は八幡、比企谷八幡よ」と告げられ俺ガイルの主人公になったのだと瞬時に理解した、そして同時にこう思った。

 

―――めんどくせぇ!?

 

一応誤解がないように言っておくと別に俺はこの作品のアンチではない、むしろ前世では好きだったしアニメも全部見ていた。いろはす可愛いよね、俺もあんな風に早口で振られてみたいわ。ハイ脱線してごめんなさい。

 

好きな作品の主人公になれるという普通なら喉から手が出るほど羨ましいシチュエーションなのに、どうしてめんどくさいなどと思ったのか?それは……好きだからこそ俺ガイルが色々拗らせた奴らのお話なのを知ってるし、正直見てる分ならいいけど自分が体験する立場になるとか絶対御免だからだよ。まぁ1期の範囲ならギリギリいいけど、文化祭の後とか俺ならもう胃痛で耐えきれる気しないもん。

 

彼女達に救いが必要なのも当然分かっている、ただそれを理解した上でこんな俺にはきっと務まらない。本来の流れより更に事態を悪化させてしまうだけだろう。でも完全な見て見ぬフリができるほど鋼メンタルというわけではない、だから俺は決意した―――総武高校には入学するが奉仕部には入らないと。中途半端野郎だがどうか許してください。

 

こうして原作と同じ陰キャではあるが友達は一応いてぼっちではない、そんな謎谷八幡君が完成した。そして現在。

 

 

「俺をどこに連れ込むつもりですか……!助けて!百合乱暴されちゃう!」

 

「いや男だろ……その死んだ魚のような目と比例していない舐め腐った作文を書いた罰として君にはとある部活に入ってもらう」

 

「今の普通に酷くないですか」

 

 

この元の逆を行った完璧な作文で平塚先生に目を付けられると思っていなかったから正直驚いていた、このままでは奉仕部にぶち込まれてしまう。メンタル弱くてゆきのんからの罵倒とかきっと耐えきれないと思う、俺はただ小町と平和に兄妹イチャイチャしてたいのに!

 

絶体絶命の俺は秘策を思いついた。

 

 

「成人したら俺が先生と結婚してあげるから許してくださいよ」

 

「なっ!?そ、そういう冗談はやめろ!本気にするだろ……」

 

 

チョロい。

 

この後も俺は色々甘い言葉をかけ続けたが、残念ながら平塚先生を攻略しきる前に奉仕部の部室へと到着してしまった。そして無慈悲にもドアは開かれ。

 

 

「―――平塚先生、入るときはノックをお願いしたはずですが」

 

「ゆきのんキター!」

 

「……は?」

 

「何でもないです忘れてください」

 

 

氷のような凍てつく目つきで俺を睨んでくるゆきのんこと雪ノ下雪乃、彼女は立派な原作メインヒロインであるのだが正直生で雪の女王食らうと怖くて仕方がないのでちょっと泣きそう。この状況になってやはり俺に主人公は荷が重すぎると改めて思った。

 

 

「入って早々変な事を言う彼だが……立派な入部希望者だ」

 

「―――結婚しましょう、平塚先生」

 

「バ、バカ!雪ノ下が見てる前で何を言っている!?そういうのは2人きりのときにだな……は、話を戻すぞ」

 

 

チッ、ダメか……てかゆきのんの視線が氷河期迎えちゃいそうなレベルで冷たくなってるんだけど?

 

 

「み、見れば分かると思うが彼はこの腐った目だけでなく性格も周りを舐め腐っていてな。そのせいで周りからは変人扱いされている、この部で彼の性格を更生する。それが私の依頼だ」

 

「えっ俺ただの地味な陰キャのつもりなんですけど変人扱いなんですか?」

 

「君はどの口で自分を地味だと言っているんだ……」

 

「お断わりします、そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます」

 

「安心したまえ、彼も刑事罰に問われるような真似はしない。相手ならわわ、私がいるしな?」

 

 

生罵倒ちゅらい、このまま奉仕部に入ったら俺の心が持たな―――そうだ。良い事思いついたぞ?むしろこれはいい流れじゃないか、とことん引かれてゆきのんから入部を完全に拒否されればいい。それで俺は平和な生活を送れる。

 

俺は座っているゆきのんの元へと歩き出し、彼女は身の危険を感じたのか立ち上がって壁側へと引いて行った。しかしやがて距離は近づいていき……お互い顔の細かい部分までよく見えるほどに。

 

 

「ひ、平塚先生!やはりこの男は「おいお前」な、何をするつもりなのか知らないけれどやめなさい……」

 

 

壁ドン状態かつ顎クイをし、彼女の耳元に口を近づけ。

 

 

「―――俺の女になれよ」

 

「……!?」

 

 

そう囁いた、ゆきのんの顔が真っ赤に染まり……これは完全に怒ったな。

 

内心で通報されない事を祈りつつ己の勝利を確信していた、でも何でだろうね?

 

 

 

 

「比企谷君、そのぬぼっとした顔は何かしら?」

 

「俺そんな顔してる?」

 

「さっきからずっと見ていたけれど変わらない……つ、つい数秒前にあなたの顔を偶然見たから言っただけよ」

 

 

あれから翌日、俺は今……何故か奉仕部の部員となってしまっていた。

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