THE IDOL M@STER in 池袋ウエストゲートパーク 作:minmin
アンタには好きなアイドルはいるかい?俺はこの前あるアイドルのファンになった。まあ、今部屋にあるCDは全部貰いものなんだけどな。それでも今までクラシックぐらいしか流れてこなかった俺の部屋から、若い女の歌声が聞こえてきたのにはおふくろも驚いてたよ。だけど、今回はアイドルじゃなくて、そいつを後ろから支えてる奴のお話だ。
華やかな芸能界の裏側で、全力で駆けずり回ってアイドルとファンに最高のステージを用意してやる仕事。ポンポン姉妹グループができる48人なんてとうに超えてる某アイドルグループや、そいつを企画した何かにつけて前に出てくるおっさんとかに嫌気がさしてるそこのアンタ、とりあえずこの話を聞いてくれ。終わった時には、きっとプロデューサーってやつへの見方が変わってるはずだからさ。
そいつに初めて会ったのは、例によって俺が店番をしている時だった。
パイナップルだのメロンだのを切っては串にさすだけの簡単なお仕事。初めのうちはちょっと剥きにくいかもしれないが、慣れればそう難しいもんじゃない。
丁度2個目のメロンを一口大にきり終わって、さあさしていこうか、という所にそいつは声をかけてきた。
「それ、1つくれないかな」
第一印象は、ちょっと気弱そうなサラリーマン。特にセットしているわけでもなさそうなおろしたまんまの髪に黒縁眼鏡。顔立ちは整ってはいるけど、頼りなさそうな優男、って感じだった。
俺ははいよ、200円ね、といってさっきできたばかりのメロンの串を1つわたす。品質は変わってないのに、量当たりの値段は串にするだけで上がってる不思議。もっとも目の前の男はそんなこと気にしちゃいなさそうだった。受け取ってそのまま一番先の一切れを口に入れ、結構うまいね、これ、なんて言っている。しばらく無言のまま一気に食べ終わった後、そいつは串を先だけつまんでプラプラさせながら話しかけてきた。
「真嶋誠君、だね。俺はこういう者なんだが、君に相談したいことがあるんだ」
渡されたのは1枚の名刺、765プロダクション、プロデューサー、赤羽根建一。
「変な名前だろ。それで、ナムコプロダクション、って読むんだ。赤羽根でも、プロデューサーでも、好きに呼んでくれ」
「俺は真嶋誠。マコトって呼んでくれ。よろしく、プロデューサー。それで、相談ってのは?」
すると、突然Pの顔が真剣になった。
「うちのアイドルが、この池袋の誰かに付きまとわれてるかもしれないんだ。そいつを見つけ出して、ストーカー行為をやめさせたい」
俺は顔が勝手にしかめっ面になるのが自分でもわかった。
実際にに関わったことのあるやつなら分かると思うんだけど、ストーカーっていうのはヘタにヤクザやガキどもに巻き込まれるよりよっぽど厄介だったりする。警察は実害がでないと見回りくらいしかやってくれないし、そのくせ付きまとわれてる方の精神は日に日にガリガリ削られていく。最悪なのは、犯人を捕まえたからはい終わり、ってわけにはいかないことだ。そいつが諦めないと、たとえ塀の中にはいっても、すぐにもどってくる。その結果、被害を受けてる方が、わざわざ引越ししなけりゃならない、なんてことにもなる。
「警察は、動いて・・・ないんだろうな、やっぱり」
一応確認はしてみたが、案の定Pは途中で首を振った。
「ここじゃなんだから、詳しい話は近くのファミレスでしようかと思うんだけど・・・」
「後1時間もしたらおふくろが戻ってくるから、それからなら」
「わかった。それじゃあ、1時間半後に、西口公園の近くのファミレスで。ああ、君たちには、ウエストゲートパーク、って言ったほうがいいのかな?」
少しからかい気味の笑顔を見せて、Pは串を持ったまま店から出て行った。で、俺の手には、最後に押し付けられた、たぶん例のアイドルのCD。ジャケットには、黒髪ショートのボーイッシュな女が、満面の笑顔で写っていた。名前は菊地真。なんとびっくり、俺と同じ名前。まあ俺と違って、死ね、なんて言われなさそうな漢字だったけど。
以前arcadia様で掲載していた作品を少しずつ改定して投稿させていただきます。
ようやく仕事も落ち着いてきたもので。
作者はメンタルが弱いのでお手柔らかにお願いします。