アルトリア・ペンドラゴンが行くオーバーロード【王国救済編】 作:アルトリア・ブラック(Main)
ーガゼフー
今日も今日とて貴族達の権力闘争は止むことが無かった。
王派閥と貴族派閥、それぞれが足を引っ張り合う、王派閥に属していても帝国に情報を流す貴族までいる。
そんなやりとりが続く中、王は貴族派閥が押すバルブロ王子と王派閥が押すザナック王子どっちを王にするか未だに決めあぐねている。
「………」
結局今日も王は会議の場に鎮座していた。
「……ハァ…」
王の優しさと慈悲深さは民草からは慕われているが、慕われているだけであり、決定的な事は出来ていないでいる。
ため息と共に自宅へ向かっていると…
「………」
自宅の前に馬がおり、その近くに謎の従者がいた。
警戒して剣に手をかけそうになると
「王国戦士長・ガゼフ殿。此度は護衛に参っただけです」
「…護衛?」
従者が室内を見た為、剣をしまい中に入ると
「自分を倒した人間になんでこんな堂々と会いに来れるんですか」
「自分を倒した相手だからこそよ、貴女強いじゃない」
「法国に行くつもりなんてないですよ?!」
「スカウトしにきたわけじゃないわよ」
二人の声が聞こえて来てん?となると
「…貴殿は…」
スレイン法国漆黒聖典番外席次・絶死絶命がそこにいた。
「…なぜ貴殿がここに…」
荷物を離れたところに置くと
「特に用はないわよ、女同士仲良くしたいと思っただけ」
「…本当に…?」
疑いの眼差しを向けて来るアルトリアに絶死絶命は笑いながら
「神官長達からの伝言はあるけど、それは王国戦士長さんもいた方が良いと思ったのよ」
「どういうことだ?」
「貴女は王国の腐敗ぶりは知ってる?」
「………」
アルトリアがジッと絶死絶命を見つめていた。
「放っておいてもこの国は人間同士の権力闘争で内側から壊滅するのが目に見えてるわ、上手く行くとしても帝国に統治されるくらいしかこの国に救いはないの」
その事実にガゼフも何も言えない。
王は慈悲深く優しい王ではあるが、部下達の暴走は止まる事を知らない
少なくともバルブロ王子が王位に着けばこの国は間違いなく滅びる。
「滅ぼすって算段になったのだけど、そこで貴女の存在が露呈して神官長達は止めたわ、だって神の降臨に真っ向から向かうほどバカじゃないもの」
「……神?」
その言葉に絶死絶命は呆れたように
「てっきり知っているものかと思ったけどね、内緒にしてたの?」
「…別に内緒にしてたとかじゃありませんが…そもそも、神…?私が?なんで?」
そう素で聞いているアルトリアに絶死絶命は『そこから説明しないといけないのね…』と呟き
「貴女、ゆぐどらしるっていう世界から転移して来たんでしょう?これは法国の中でもかなり機密情報だけど」
「ゆぐどらしるという世界…?」
世界を跨いで転移して来るという規格外の話題に流石のガゼフも訳がわからなくなる。
ガゼフはとりあえずアルトリアの隣に座ると、周囲を結界が覆う
「ゆぐどらしるは神々がいる世界。600年前に法国を建国した六大神のいた世界。その世界からこの世界に転移して来た神々は全員破格の強さを持ってた。今から数百年前に大陸を荒らしまわった八欲王もその世界からの来訪者って話」
「……」
「六大神…八欲王…?六大神と呼ばれる方々の名前って教えてもらえますか?」
「良いわよ、もう亡くなってしまわれているから秘密もないし、最後まで残っていたのは闇の神・スルシャーナ様」
「スルシャーナ!?」
ユグドラシル内での世界の一つでもキャメロットと1、2回戦った事があるプレイヤーの名前。
当時異形種狩りが活発になっていた中、異形種なのに人間のみで構成されたギルドに加入したと有名になった人だった。まぁ、相当あのギルドは仲良しだったようだったが
「あら、知ってたの?」
「…あの人が転移していたんですか…」
ガゼフがアルトリアを見る
「…アルトリアは、法国の神と知り合いだったのか…?」
なんとか彼女らの話に着いていこうとする。
「…えっと…まぁはい。その神に私は該当すると…」
「だって貴女、ワールドアイテム持ってるでしょう?」
「ワールドアイテム?」
絶死絶命がガゼフを見て「後でしっかり説明するからとりあえず話させて」と言って来る。
「世界の仕組みを根本から書き換える事ができるアイテム。戦士長さんにもわかりやすく説明するとしたら人々の思考を変更出来るアイテム」
「!?」
「…かなり大袈裟じゃありませんか?その言い方」
「だって、魔法のこと何一つ知らない人に説明するにはこうとしか説明出来ないのよ」
「……すまない。魔法のことを知らなくて」
王国内の魔法への知識力は何もない。
「そして、アイテム以前に神本人が強すぎるから法国でも神が降臨した場合は敵に回らないようにかなり気を配るのよ」
「…その神がアルトリアだから法国は王国を滅ぼす算段を取りやめたと」
「そう、だって、神によって滅ぼされたくないもの」
「…むやみやたらに滅ぼそうとなんて…」
絶死絶命はジッとアルトリアを見て
「今はね」
「…今は…?」
「………」
「あの時戦って思ったけど、貴女人間じゃないわよね、人間に近しい異形種と私は思ってるのだけど」
「…まぁ、そうですね」
「…アルトリア?」
アルトリアが少し俯いてるのを見て
「…私は、人間のことを憎いとも思っていないんです。それに私はこの国の人々が好きです。それ以前に私は貴族達が許せなくなって来ているんです。傲慢、強欲、支配欲、色欲…あらゆる欲望に負け同じ人間同士で奪い合い、人を死なせ続けている。そんな世界に私は耐えられない」
"王の代わりに私が支配し人間を護り、人間を支配する"
『ーー、もしゲームにログインしてモモンガさんに会えたら伝えて欲しい』
兄が最後言ったことを叶える為にいるというのに、それ以上にあの世界のようになりつつあるこの世界に耐えられなくなっている。
「アルトリア…!」
ガゼフの声にハッとなる。
「初め神は人間らしく人間を護ろうとしてくれた。あの八欲王も人間を保護する方向に行ってくれた。だけど、神々は変容して行った、人間をサンプルのように、種族という単位として護ろうとするようになったの、そこに愛情なんてものは無くなって行ったと、貴女がずっと人間らしい心を持っていられるかなんて分からないから神官長達は警戒しているのよ」
その日の夜…
「………」
アルトリアは一人、家から少し離れた所にある丘から王国の街並みを見下ろしていた。
『どうして、そんなに外の人間を気にする?どうして、我々とは無関係の人々を良くしようとなどする』
『アーコロジー内に住む者として相応しいやり方をしてくれ、お前の行動一つで私達家族は危なくなる』
『人間とは犠牲がなければ生を謳歌出来ない獣の名前だ。彼らは歯車として生きていくしかないのだ』
家族や友人達は皆、外の人間と区別し同じ人間であるのに差別し、モノのように扱った。
"自分さえ良ければそれでいい"
そんな心理が見え透いていた。
同じアーコロジー内に同じような心を持っていても言わないでいる人間は山のようにいた。
全てを救うことなど神様でも無理だからだ
(…分かってはいたけど…)
あの世界には明確なものが二極化されていた。
何をしようとどうしようと変わらない世界だった。
『気分転換にゲームをしたらどうかな、私も気分転換出来てるから』
そう兄に言われ、ユグドラシルをプレイした。
まるで現実を見ないようにゲームに逃避した。
(…でもここは現実で、アバターとしてこの世界に転移して来た…あの頃持っていなかった力も…今この手に…)
『貴女がずっと、人間らしい心を持っていられるか分からないのよ』
番外席次の言葉を思い出し空を仰ぐ
空に広がる星空。あの世界では作り物でしかなかった空と違って本物の青空だった。