エルフの老婆ルルシェが現れた日の、夕暮れ時。
ナツメの家の前に、童の背丈ほどの大きさの祭壇が作られた。
ローランが大袋でかき集めてきた大量の木の枝を、ルルシェが何やらを念じつつ、一本ずつ丹念に組み上げたものだ。
炉のようなものでもあるのか、何やら下部には空洞が設けられている。
「俺の首飾りの時みたく、すんなりとは作れないか」
「まあの。お主の戦神の加護は上から衣を覆い被せただけのようなものじゃが、ナツメの場合はそうもいかん。地母神様の力に、きっちり封をせんとならんからな」
「……ご迷惑をおかけしてます、ルルシェ様」
「かっか。何、気にするでないわ。このくらいは大した労でもないわい。よっこらせ」
ルルシェは緑の木の実を三つ、黄色の木の実を一つ、指の間に挟んだ。
「ちょいと離れとれい。燃えるぞ」
ローランとナツメが言われた通りに距離を置くと、ルルシェが祭壇の空洞に黄金の炎を熾した。
そして、指に挟んだ木の実をそのまま、手ごと炎に差し入れる。
「──、──、──」
ローランの首飾りを作ってくれた時のように、人間の言葉ではない何ごとかを唱えるルルシェ。
ナツメはそれを聞いて、小さく感嘆の声を漏らした。
同じ地母神の子であるためか、エルフの呪文が理解できるようだ。
何と唱えているのか少し興味が沸いたが、ローランはあえて聞かなかった。
エルフの秘儀は、エルフとそれに連なる者だけが知るべき叡智だと思い直したからである。
そういうむやみに語るべきでない秘密は、どんな集団にだってある。
ルルシェはそうして、ローランがかき集めた木の実を次々に炎に投入していった。
次いで木の枝もだ。
黄金の炎は、やがて勢いを増し始めた。
しかしそれは決して、祭壇全てを燃やし尽くすような規模にはならない。
空洞の中で、まるで生き物のように激しくのたうつだけだ。
「──、──、──、──」
「す、すごい……! 魔力をあんなに……ウチの魔術と、差がありすぎる……!」
その業に、呆けたように見惚れるナツメ。
ナツメは"地母神の瞳"を杖もなく使える上に、魔術の知識に関しても家の本で多少はあったかもしれないが、しっかりとした魔術士というわけではない。
それでも眼前の光景に夢中になるほどに、老エルフの魔術は凄まじいものらしい。
ローランにはよく分からないが、どうやら本当にすごいことをしているのはナツメの反応で分かった。
「……これでよし。おそらくは三日で出来上がるじゃろう」
「三日……あんたほどのエルフでも、それだけの大仕事なのか」
「なぁに。エルフにとって三日など、まばたきの如き時間よ。さてと、では夕食にしようかの。ナツメとわしの手料理じゃ。ありがたーく味わって食うがよい」
ローラン達は家の中に入り、まだ火が燃えている炉の前で机を囲んで、スープを呑んだ。
外見は香草と木の実が浮いた、どこにでもあるような質素なスープだ。
だがとても芳醇な味わいがして、身体の内側に火が灯るような温かさがあった。
心身の疲れが取れ、活力がふつふつと沸き上がる。
それがはっきりと自覚できるほどに、特別な料理だ。
「美味いな、本当に……」
「ルルシェ様に作り方を教わりましたから、これからはウチも似たようなものが作れますよ」
「そうか。そりゃ旅が楽しみになるな」
「えへへ……」
純白の髪を撫でてやると、ナツメは照れくさそうに笑った。
やはり泣いている顔より、悲しんでいる顔より、笑っている顔が、この少女には一番似合う。
「……わしも作ったんじゃが?」
「何だよ、婆さん。撫でてほしいのか?」
「じゃあ、撫でてもらおうかの」
「えぇ……」
ナツメが少し引いたような声を漏らす中で、ローランはエルフの老婆の頭を撫でた。
輝くような金髪はとても手触りが良く、流石はエルフと言ったところだ。
「えへへ……」
「何が『えへへ』だ。自分の歳考えろよ」
「はぁーん? お主、わしの若い頃を知らんな? フードを浅く被ってその辺の街の大通りを歩くだけで、男がうじゃうじゃ言い寄ってくるほどだったんじゃぞ?」
「そりゃエルフの若い頃ならそんなもんだろ。でも今は婆さんじゃねえか」
「かぁーっ。ふてぶてしいお主の方が好みじゃとは言うたが、少しは女心を弁えんか。その内、何の気もなく優しくした女に刺されるぞ?」
「はぁ? なわけねえだろ」
「あはは」
暖かい家の中に、笑いが満ちた。
「話は変わるが、ローラン。ナツメに、剣を教えておるそうじゃな?」
「……ん、ああ。ただ、最低限の護身が出来る程度の剣だ。正直言って、ナツメに武の才能があるとは思えない」
「あぅっ、すいません……」
「仕方ねえよ。人には向き不向きがあるんだ。俺達みたいな戦神の民なら、ガキの頃から武術叩き込まれるからある程度の才能の有無は補えるんだがな。十二歳から始めるとなると、流石にな。……まあ、ナツメには魔物の気配を感知する力も、手先の器用さもある。それで、充分旅の役には立つさ」
「うむ……とはいえ、もう少し出来ることがあった方が良かろう。どうじゃ、ナツメ。人間の魔術くらいなら、いくつか教えてやれるぞ」
「えっ、いいんですか!」
「……婆さん、それは」
難色を示して口を開こうとしたローランを、ルルシェは手で制した。
「案ずるな。他人を傷つける類以外の魔術を教える。"治癒"と"防護"……あとは火熾しくらいならば問題なかろう?」
「"治癒"と"防護"って……両方かなり高度な魔術じゃないのか?」
"治癒"の魔術は、道中で出会った"探究者"のヴァッセルが行使していた魔術だ。
大量の魔力と引き換えに傷を癒す術で、しかし希少な素質が求められるものである。
"防護"の魔術は、魔力で分厚い壁を形作って弓矢や魔術の飛来を、あるいは敵の接近そのものを防ぐ術である。
素質ありきの"治癒"に比べて、"防護"は魔力を上手く練って整えさえすればまだ扱えるような術だが、それでも難易度の高い術のはずだった。
フォルラザの戦神騎士団でも、"防護"を戦闘中に常時有効に駆使し続けられるような魔術士は、いなかったように思う。
「問題ないわい。生まれもあって、ナツメの魔術の素質は人並み外れておる。まあ、それでもエルフには及ばんし、杖も要るがの。……ナツメ、どうする?」
「覚えたいです。それで少しでも、ローランさんの役に立てるなら」
「ナツメ……」
即答したナツメ。
確かに"治癒"も"防護"も、使えれば非常に有用な術だ。
何より、ナツメ自身の身を守ることにも大いに役に立つ。
ローランがそれをやめさせる理由はない。
「決まりじゃな。まあ、三日あれば余裕じゃろうて」
「そんな馬鹿な」
「わはは、エルフの叡智を甘く見るでない。ナツメはすぐにモノになる。安心せい」
「ありがとうございます、ルルシェ様!」
嬉しそうなナツメを横目に、ローランは残りのスープを飲み干した。
スープはずっと、温かいままだった。
温かいまま、腹の中から全身に広がっていった。
「ふわぁ……さ、今日やるべきことはもう済んだ。あとは寝るとしようかのぅ」
「あ、でしたら、あっちの部屋を使ってください。ウチとお父さんの寝台があります」
「ほほ、ではお言葉に甘えるとしようか。ありがたやありがたや」
「ナツメ、お前も寝台で寝ろよ。久しぶりだろ。俺はここで寝るからさ」
「……いえ。ウチはいつもみたいに、ローランさんと横になって寝たいです」
「っ」
「わはは、そうかそうか。じゃあの。若者達。ちゃんと寝るんじゃぞ? ちゃんとな? 夜更かしせんようにな?」
「な、何言ってんだババア!」
ローランの罵声を笑い飛ばし、ルルシェは二つの扉の内の、閉じていたままだった部屋に入っていった。
「…………」
「…………」
「……寝るか」
「……はい」
ローランとナツメは外套を被り、炉の前に隣り合って横たわった。
エルフの熾した火は薪を差し入れずとも一定の強さで燃え続け、近づいても熱すぎることもなく、心地よい暖かさを保ったまま、それでいて煙も立てない。
あまりに隔絶した不可思議な力をこの一日中ずっと見せつけられ、ローランはエルフの偉大さを噛みしめた。
同朋の魔術士イオが、老エルフとの出会いをすこぶる羨ましがるわけだ。
そう言えば、ルルシェに貰った黄金のスクロールを、探究の国ラガニアにいるというイオの知り合いに見せないといけない。
ナツメのことで頭がいっぱいですっかり、当初の目的を忘れ去っていた。
イオも、イオの知り合いも、あまりに遠回りしているローランに呆れていることだろう。
しかし、それでもこの遠回りな道のりには意味があったと、ローランは確信していた。
「ローランさん……ごめ」
「『ごめんなさい』はなしだ、ナツメ。俺はお前とこれからも旅が続けられるようになって嬉しい」
「……ウチもです。ありがとうございます、ローランさん」
「だけどな。婆さんも言ってたけど、俺のこれからの旅路は過酷だ。多くの死に、直面することになる。俺が大勢の人間や魔物を殺して回るところを、お前は傍で見ることになる。殺した相手を悼むのだって、許してやれないことが多いだろう。……それだけは、覚悟しておいてくれ」
「……はい」
「ごめんな、ナツメ」
「『ごめんな』はなしですよ、ローランさん。それでもウチは、ローランさんと一緒に旅がしたいですから。全部、覚悟の上です」
ナツメはそう言って笑うともぞもぞすり寄ってきて、ローランの胸板に顔を埋めてくる。
ローランはそんな少女を優しく腕で包んだ。
「……ローラン、さん」
「うん?」
「呼んでみただけです。えへへ」
「なんだそりゃ」
二人はそれ以上言葉を交わすことなく、やがてそのまま眠りについた。
………
……
…
ルルシェが調達してきた魔術の杖は、どこからどう見てもありふれた物だった。
しかしナツメはそれを使って学び、本当にたった三日の内に"治癒"と"防護"の魔術と、簡単な火熾しを習得した。
魔術とは本当に素質がものを言うのだと、ローランは改めて実感した。
ちなみにローランも一応振ってみたが、やはり何度振っても火の粉一つ出せなかった。
ルルシェがそれを傍で見ていて、大笑いした。
「……よしよし。完成しとるな」
炎が消えた祭壇の空洞から、ルルシェは何かを取り出した。
それは、黄金の宝玉のようだった。
「首飾りや腕輪みたいな、装飾品じゃないのか?」
「そういった外付けの品じゃと、簡単に外れてしまうからの。ナツメ、ちと腹を見せよ」
「あ、はい」
衣服をまくり上げたナツメの白い腹に、ルルシェは宝玉を押し当てた。
「……?」
「ほい、終わりじゃ」
「え、あれ? ルルシェ様、ウチのお腹に何かしました?」
「んん……しっかりと機能しておるな。ナツメ、試しに"地母神の瞳"とやらを使ってみよ」
「……っ、はい」
ナツメは深刻そうな表情を浮かべて、先日のように小刀で掌を浅く切り、地面に手をついた。
しかし。
「……? ……っ! す、すごい、全然何も出せない……出せる気がしない……!」
「うむ、血から漏れ出る地母神様の気配もないのぅ。大成功じゃな」
「……本当にとんでもねえな、エルフの叡智ってのは」
驚愕に目を見開いたナツメと満足そうに頷くルルシェを見て、ローランは息を吐いた。
「ただ、これはあくまで容貌を欺き、魔術の封印をして、地母神の気配を消しただけじゃ。自分でつけた傷がすぐに治るのだけは、どうあっても防げん。それは地母神様の血によって生じる根源的な力じゃからな。じゃからその様だけは、他人に見られんようにな」
「はい! ありがとうございます、ルルシェ様! 本当に、本当にありがとうございますっ!!」
ひれ伏して何度も感謝するナツメに、ルルシェはやめよと言って苦笑した。
「……しかし。この大陸にひと握りだけ、わしのこの術ですら誤魔化しが効かぬ者達がおる」
「地母神直系のエルフの術が効かない? そんなとんでもない連中が……」
「"霊狼"。わしらエルフよりも古からこの大陸に住まう、最も旧き魔物達じゃ。未だ姿形を保つ神の一族、とまで言ってもよいかもしれん。彼の者達の嗅覚は、わしでも到底騙せぬ」
"霊狼"。
ローランは思わず、息を呑んだ。
大陸最強の魔物は、飛竜に代表される竜族だと聞いていた。
しかしその竜族とは別に、エルフすら畏れる魔物が、この大陸には存在しているというのか。
「……その"霊狼"はどこにいる?」
「んー。ここからちょいと北の、ザリアと呼ばれる高原地帯じゃな」
「えっ……ちょいと北って、近すぎませんか!? そんなすごい魔物達が何で……」
「さあ? わしも知らん。長老のガド様が何やらあの高原に強い思い入れをお持ちのようじゃが、さすがにわし程度の小身ではお聞きするのがはばかられてのう……」
「婆さん程度の小身って……どんだけ偉いんだ、その"霊狼"の長は」
ローランは語られる話の規模に想像が追いつかなくなって、頭が理解を拒み始めた。
「おお、そうじゃ。いっそ、お主らの方から会いに行くのもええかもしれん。種は違えど、ナツメはわしらの新たな同朋。ガド様にも、一度お目にかかっておいたほうがよい。わしから予め話を通しておこう。うむ」
「うむって言われても。……俺達は一応、あんたにもらった黄金のスクロールの件で、とりあえず探究の国ラガニアに行くつもりなんだけど。というかあのスクロールは結局……」
「ああ、それもあったのう。まあ、ええではないか。ラガニアに行って、その次はザリア。やることがどんどん見つかって、ええことじゃ。わはは」
軽く笑い飛ばすエルフを前に、ローランとナツメは顔を見合わせた。
話がどんどん、明後日の方向にすっ飛んでいっている気がする。
戦神騎士であるローランの旅の目的は、戦神の軍の再起と竜神の国への復讐を果たすことのはずなのだが。
この右往左往する道のりがちゃんと、その目的に向けて前進することになるのだろうか。
そんなことを思いながら、ナツメの困惑した顔を見つめていて、ふとした疑問が沸いた。
「……ん? 婆さん、話を戻すけど。容貌を欺き……って言ってたのに、俺にはいつものナツメに見えるぞ? 純白の髪も、真紅の瞳も」
「はぁ~? ……アホか、お主は。お主の目まで欺いてどうするんじゃ。これだから女心が分からん奴は……のーう、ナツメや?」
にやついて問いかけたルルシェに、ナツメは顔を真っ赤にして俯いた。
その様子を見てローランもまた赤面し、そのくらいの女心は分かる、と言おうとして、口を魔術で縫い付けられた。
「もご、もごもごっ、んももっ!」
「さてと、わしが幼き同朋にしてやれることは全て済んだ。あとは、お主ら次第じゃ。わしは西方の小童どものように人の世のあれこれに深く関わることはせんが、それでもお主らの旅の無事くらいは願いたい。……我が同朋よ、生き抜くがいい。戦神の使徒よ、戦い抜くがいい」
「はい、ありがとうございます。ルルシェ様も、どうかお元気で」
エルフの老婆は優しい笑みで頷くと、そのまま姿をかき消した。
「ぶはっ! はぁ、はぁ……ったく、あの婆さん、俺には何も言わせてくれないのかよ。最後にちゃんと礼くらい……」
「……ローランさん。お願いがあります」
「ん?」
「この家を、燃やして旅立ちたいんです」
ナツメは自分の家を見上げて、確かにそう言った。
「ウチにとってはお父さんとの思い出が、いっぱい詰まった家です。でも、ルルシェ様がおっしゃったように、ウチの人生はこれから新たに始まる……そう実感したいんです」
「……分かった」
おそらく、それだけではないのだろう。
あの部屋を埋め尽くすような父親の妄執を、特大の"闇の吹き溜まり"を生むような父親の怨念を、完全に終わらせてあげたい。
そういう気持ちもあるのだろう。
ローランは黙って、ナツメの言う通りにしてやった。
薪になる木をその辺からかき集めてきて、ナツメがそれに魔術で着火した。
パチパチと家が燃え始める。
火は次第に大きく、大きく燃え上がった。
それを少し離れた場所で、ローランとナツメは見つめていた。
全てが、燃えていく。
ナツメのこれまでの、全てが。
ナツメの父親の、全ても。
しかし、ナツメはどこか晴れがましい表情で、炎と沸き立つ煙を見上げていた。
そして、その場に跪いて、両手を組んだ。
「ありがとう、お父さん。行ってきます、お父さん。……ウチは生きます。一人の人間として、しっかりと生き抜いてみせます。……さようなら、お父さん。さようなら」
少しの間一人にしてくださいと、ナツメは呟いた。
ローランは山の麓で待っていると言い残して、先に斜面を下りていった。
「…………ルルシェ様。まだいらっしゃるんでしょう?」
「……やれやれ。少し手ほどきしてやってこの短時間で、そこまで感じ取れるようになるとは。わしの姿隠しは、エルフでも分からん者が多いというに。お主がエルフに生まれておったら、早々とわしを凌いだかものう」
「何か……ローランさんの前では言えないことがあるのかなって、そう感じました」
「はぁ、そうさな……一つだけ、お主にしかと伝えておくべきことがある」
「何ですか?」
「"地母神の瞳"、その封印についてじゃ。わしは確かにそれを、もう使えないように封じ込めた。じゃが、一回だけ。お主が本当にその力を使いたいと、心の底から強く願った時に、たった一回だけ……それを使えるように細工してある」
「っ!!」
「もしも使えばどうなるか。おそらくは、ローランが危惧する通りのことが起きる。その危うさを感じたからこそ、あの若造は己の全てを投げ捨ててでもわしにひれ伏したのであろう。じゃから一回だけでも振るえば間違いなく、お主にとってもローランにとっても取り返しのつかないことになる。……お主はあくまで人間で、わしらエルフのように多くの災難を容易く魔術でやり過ごせるわけではないのだから」
「…………」
「しかし。それを覚悟の上でなお、力を使いたいと願うのならば……その時は迷わず使うとよい。まあ、その時が来ても、お主をエルフの身内で守るくらいの後始末はしてやるわい」
「ルルシェ様、ウチは……いえ、私は」
「やめよ。畏まられるのもひれ伏されるのも、わしは苦手じゃ」
「ナツメよ。笑って生きなさい。それがあの危なっかしい若造への、最大の恩返しとなるじゃろうて」
「はい……はいっ!!」
山の麓で待っていたローランの元へ、ナツメがバタバタと駆け下ってきた。
こけるぞ、と声をかけてやっても、ナツメは走ってくるのを止めなかった。
やがてローランのすぐ前まで来て、荒い呼吸を整えようと肩を上下させた。
「はぁ、はぁ……! ローランさん、行きましょう! ウチがどこまでも、お伴します!!」
純白の花が、咲き誇った。
あの雨の中で出会った日よりもさらに美しく輝く、大輪の花だった。
大陸地図に、"霊狼"の住処である「ザリア」を追加しました。
なお、ヴァルゲンとザリアの間にあるなだらかな山地が、ナツメの山になります。
【挿絵表示】
次回からまた視点が変わります。
今さらですが、非常に冒険要素が多くてすみません。
次回から若干、戦記らしいお話になってきます。