TS聖女は男装がバレたくない!   作:門邪

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久々に投稿しました。
プロットや描きたい内容は大分出来上がっているのですが執筆に要する体力が必要以上に大きいタイプでしてサボってしまいました……
ネタならまだまだありますので執筆続けていきたいのですが体力が……みんな!!オラに元気を分けてくれえええええ
それとこの機会に、今までの話を読みやすくするよう改稿を施しました。改稿といっても一文毎に改行を加えることと、視点が変わっても基本的に三人称一元視点を統一することくらいですので読み直す必要はないです。


乱入

 林間合宿三日目。

 最終日である今日は、学年全体の大規模な人数による実戦形式の訓練となっていた。

 鬱蒼と生い茂る山林の中、生徒達は無作為に配置され、生徒同士が会敵した時、戦闘が開始される。

 負けた者にはまた別の厳しい訓練が待っているため、多くの生徒は逃げ回るなり徒党を組むなり、なんとかして長い時間生き残るべく努めているようだ。

 だがある程度の実力を持った生徒は違う。

 学園での実戦は成績に深く影響する。

 ここでどれだけの相手を処すことができるかで、将来使徒となり教会に所属する際、大きい教会に所属できる可能性が広がるのだ。

 そんな野心を胸に奔走する男子生徒……彼らは、無慈悲にもシグレ=クロウゴードの手によって儚く散っていっているのだった。

 

「汚らわしい男しかいないわね。ヴィリアはどこなの?」

 

 抵抗虚しく捩じ伏せられた男子生徒を背に、シグレはつまらなそうにため息を吐く。

 

――『アネモス』

 

 突如、シグレの喉元へ風の刃が襲いかかる。

 瞬時の反射神経がシグレの身体を動かす。

 抜き出された刀により風の刃は難なく無効化された。

 

「弾かれたと思いましたら、シグレさんでしたの」

「すごい脊髄反射だね!!」

 

 樹木の陰から現れたのは、キルシェ=コールドレイン、そしてネネ=ストロベリーの二人。

 その姿を確認すると、シグレは刀身を鞘に戻した。

 

「ちょっと、随分と舐めてるんじゃないですの」

 

 戦意のないように見えるシグレの姿は、キルシェの目には侮辱として映ったらしい。

 

「そうじゃないわ。私、女の子には刃を向けないから」

「えー!ボクは戦いたいのに」

 

 ネネは不満そうにほっぺを膨らませる。

 

「そうですの?まぁ貴方を相手するのは厄介でしょうしこちらとしても助かりますけれど」

 

 キルシェ達の横を通り去ろうとしたシグレは、思い出したように足を止める。

 

「そういえば、ヴィリアを見なかった?」

「ヴィリア?見ていませんけど……」

「そう」

 

 再びシグレは歩き出す。

 

「ねぇ」

 

 だがその歩みはキルシェの呼び声により止まった。

 

「あの……貴方、ヴィリアと仲がいいようですけれど、あんな男の何がいいんですの?誰もあの外道には近づこうとしないというのに」

 

 自然と片眉がぴくりと動く。

 

「……まぁ無理もないわね。貴方達は、まだヴィリアのことを何も知らないのよ。かの……彼の本当の姿を知ってしまえば誰でも虜になってしまうわ」

「そうでしょうかね……もう私の第一印象は最悪ですので難しいと思いますけれど」

 

 あまり女の子に刃は向けたくないけど……このままじゃ胸糞悪いわね。

 

「私に負けたら、ヴィリアを外道と罵ったこと、撤回してちょうだい」

 

 戦う意思を見せなかったシグレの手が柄に置かれる。

 

「……そうね。この勝負次第で、考えを改めることにしますわ」

「お!やろっか!!」

 

 杖を握り直すキルシェと、構えをとるネネ。

 戦闘が幕を開ける。

 

 

 

 

 

「うぅ……アレクさーん……!レイナさーん……!どこですかぁ……!」

 

 身体を縮こまらせながら森を歩く女生徒が一人。

 カルミア=ローデルシアである。

 

「私戦闘はだめなんですよぉ……」

 

――ガサガサ

 

「ひっ」

 

 近くから音が聞こえたことでカルミアは小さな悲鳴を上げる。

 恐る恐る音のした方へ目を向けると、そこには複数人の男子生徒が束になってこちらを見ていた。

 

「や、やりますか!?」

 

 虚勢を張っているのが見え見えのカルミア……だが、男子生徒らも同様に背中を丸めている。

 

「カルミアさん……」

「カルミアさんだ!」

 

 そんな男子生徒らの顔だが、カルミアを目にした途端みるみる明るくなっていった。

 

「安心してください、俺が貴方を護ります」

「いや俺が護るんで、この背中に隠れていてください」

「足疲れてませんか?俺馬になりますよ」

 

 さっきまでの怯えたような顔が一瞬にして凛々しく変わる男子生徒達。

 カルミアの男子人気は学園でもかなり高く、ポイントを稼ぎたいのであろう。

 

「え、あ、助かります……」

 

 男子生徒らに囲まれ、謎の姫プレイが始まった。

 カルミア率いる謎の姫プレイチームは存外カルミアのサポートにより強く、他生徒を圧倒し進んでいく。

 

「俺の後ろにいてくれれば、もう安心なんで」

 

 調子が良いことから彼らは自信を持つようになっていった。

 それがカルミアの能力の賜物であるとも知らずに。

 

「……ん?」

 

 奥の方からなにやら悲鳴と、物凄い衝撃音が近づいてきている。

 すぐそこの大樹が倒れ、地を揺らした。

 樹木を薙ぎ倒しながらやってきたのは……半裸で薄汚れた身体を晒したオーク……だろうか。

 少し判断に迷うのは、なにやら顔に一つ目の描かれた面布が貼り付けられているのだ。

 

「オーク!?相手は人間だけのはずじゃ……」

 

 今までの戦闘で自信の湧いた彼らは勇敢にもその巨体と対峙する。

 

「カルミアさんは下がっててください。ここは俺達グァッ!!」

 

 オークの振り回す棍棒の一撃により、生徒達は瞬く間に一蹴されるのだった。

 

「皆さん!!大丈夫ですか!?」

 

 声をかけるが誰も起き上がろうとしない。

 オークは無言で近づいてくる。

 

「こ、来ないで……!」

 

 後退りするカルミアへ、オークの手が伸びる。

 カルミアは耳を塞ぎ目を瞑る……が、一向に予想していた衝撃がやってこない。

 恐る恐る目を開くと……

 

「無事?カルミア」

「レイナさん……!!」

 

 こちらを庇うようにしてオークへ剣を構えるレイナ=セルフォードがいた。

 自身の手が弾かれたのを確認したオークは、棍棒を握る手に力を込めた。

 振りかぶった棍棒がレイナの脳天へと降り注ぐ。

 だが美しい軌跡を描いたレイナの剣筋がその棍棒を細切れに打ち砕いた。

 そして棍棒が崩れ落ちる頃、そこにはもうレイナはいない。

 いつの間にかオークの背後へ回っているレイナの剣から、その首元目掛けて鋭い一閃が放たれる。

 その一撃は無防備となったオークの皮膚へ直撃する……が。

 

「硬ッ!」

 

 間違いなく虚を衝いたはずの攻撃は、鋼鉄のようなその肌により弾かれた。

 レイナは急いでオークから距離を取る。

 

「おかしい。そこらのオークならこれで確実に首が飛んでるはず」

 

 レイナへ振り返り、棍棒を失くしたオークは拳を振り上げて彼女へ襲いかかる。

 

――『(さざなみ)

 

 オークは拳を振り上げたまま、動きを止めた。

 そして斜めに、レイナの描いた剣筋を証明するようにして静かにその巨体が崩れ落ちる。

 

「断末魔の一つも上げないなんて、なんか気色悪いわね」

「レイナさぁ〜ん……」

「ちょ、!」

 

 剣を鞘に収めるレイナへ、カルミアが抱きつきにかかる。

 

「だずがりまじだァァァ」

 

 子供のように泣きつくカルミアを見て、レイナは笑みを零す。

 

「無事でよか……って!鼻水付いてるじゃない!?」

 

 

 

 

 

「さっき大きい音がしたが……楽しそうだな」

 

 ヴィリアは森の中を一人、彷徨いていた。

 今日は初めての他クラスとの合同訓練。

 もしかしたら出会ったことのない強者と相見えるかもしれない。

 そんな期待を抱きながら相手を探してかれこれ暫く経つが、一向に生徒と巡り合わない。

 

「一体どんな辺境の場所に配置されたんだ」

 

――イタッ!

 

「ん?」

 

 樹木の陰から、なにやら囁き声が聞こえだした。

 

「バカッ、静かにしてって言ったじゃない……!」

「だって枝が突き刺さって……ひッ!」

 

 声のした方を見てみると、そこには顔を青ざめさせた女生徒二人がいた。

 見覚えがないので他クラスの生徒だろうか、彼女らの一人と目が合うと、その生徒は蛇に睨まれた蛙のように身体をびくりと強張らせた。

 

「ほらバレちゃったじゃない……!!」

「や、やっぱりあのヴィリア=ローゼン……だよね……」

「間違いないわ……刺激すれば私達まで標的にされるわよ……!」

「あの」

 

 ヴィリアの呼びかけ一つで、彼女らは激しい怒声でも浴びせられたかのように身体を震わせた。

 

「全部聞こえてるぞ」

「ち、近寄らないで!!それ以上近づいたら、容赦しないから!!」

「ちょっと!刺激しない方がいいんじゃ……」

「……」

 

 ようやく相手が現れたかと思えば、酷く怯えている。

 ヴィリアが求めていたような相手ではない。

 

「……ん?」

 

 が……ヴィリアは彼女らの元へ全速力で駆け出した。

 

「ひ!!」

 

 辛うじて防御を構える彼女達……の背後に伸びる巨大な掌を黒手袋の着用した拳で弾き飛ばした。

 こいつは……オークか?

 不可解なのが、顔に一つ目の面布を付けていることだ。

 余計に不気味さを感じさせる。

 まあちょうどいいサンドバッグが現れたなということでヴィリアはオークの顔面へ拳を見舞う……が腕で防御され、棍棒による反撃を食らってしまう。

 受け身を取り、体勢を立て直す。

 

「そこらのオークにしては骨があるらしいな」

 

 構えをとるヴィリアに対し、オークは棍棒を振るう。

 果てしない膂力を以て迫り来る棍棒は、ヴィリアの流れるような所作でいとも容易く受け流された。

 胴をがら空きにし、隙だらけとなったオークをヴィリアは決して見逃さない。

 先程よりも力の込めた拳がオークの腹を突くと、大穴を開けた。

 

「きゃあああああ!!」

 

 蒸発するように消えてゆくオークを目に一息ついていると、背後から悲鳴が聞こえ振り返る。

 するとそこにはまたしても面布を貼り付けたオークが女生徒二人を片手ずつ捕えていた。

 

「二体目!?」

 

 オークに握り締められ、彼女らは苦痛に顔を歪めている。

 急いで駆け、飛び上がるとオークの頭部へ踵を脳天直下に振り下ろす。

 頭蓋が変形したオークは力なく倒れ、消失していった。

 オークの掌から解放された彼女達の元へ、安否を確認すべく急いで向かう。

 

「……失神している」

 

 身体中には痛々しく青あざが出来ている。

 これは何本か骨が折れているだろう。

 失神しているのなら、聖女の能力を利用しても問題ないだろう。

 彼女達の腹に片手ずつ掌を乗せる。

 そして力を発揮しようとしたそのとき。

 

――『(そう)

 

 空間を切り裂くような見えない斬撃がヴィリアを襲う。

 咄嗟に飛び退き、攻撃を回避する。

 

「誰だ」

 

 現れたのは……レイナ=セルフォード、そしてカルミア=ローデルシアの二人だった。

 二人共、親の仇を見るような顔でこちらを見ている。

 レイナの手元には剥き出しにされた刃が。

 先程のは……斬撃を飛ばしたといったところだろうか。

 

「つくづく、救いようのない下衆ね。それ以上痛めつける必要はないはずよ」

 

 カルミア=ローデルシアは女生徒のところへ駆け寄り、急いで回復魔法をかけている。

 どうやら彼女らの痛々しい姿はヴィリアによるものだと思っているらしい。

 

「いや、違」

「これ以上被害者を増やさないためにも、貴方は今ここで、私が倒す」

 

 こちらを睨みつけながら、姿勢を低くし、臨戦態勢へ入るレイナ。

 まぁ、ちょうど強者に飢えていたところだ。

 なんでもいいか。

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