母港100隻提督奮闘記   作:あかさた改二

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第1章:硫黄島戦役編
プロローグ


 艦隊これくしょん、2013年にサービスを開始し、一世を風靡(ふうび)したブラウザゲーム。

 歴史好きの大学生田中孝明(タナカ タカアキ)は2025年秋にしてドハマりしていた。

 

「美少女コンテンツということで食わず嫌いしていたが、面白い」

「なんでもっと早く始めなかったのか」

 それが大学生田中孝明の「艦これ」に対する感想だった。

 

 すでに無課金提督の保有上限100隻に迫る艦娘を集め、課金を検討している。

今日もプレイしようと画面を開くと、見慣れない作戦名が浮かぶ。

 

 【期間限定海域:?-? 還らずの太平洋】

 

「……攻略サイトに載ってないんだけど」

 

 違和感を覚えつつ、出撃を押した。

旗艦赤城を先頭にいつも通り進む、空母機動部隊。

そして――敵艦隊が現れた。

 

 黒い。

深海棲艦とも違う、ノイズのような艦影。

艦名表示欄には文字化けした羅列、赤い警告マーク、動揺と混乱のステータス。

 

「おいおい……バグか?」

 砲撃、雷撃、航空攻撃――戦闘は優勢に進んでいる。

 

 

「よし勝った……帰投――」

 

 その瞬間だった。

【完全勝利 S――硫黄島泊地を確保!】の文字が画面に踊る。

 部屋中が、まばゆい光で満たされた。

 

「……え?」

 

 呼吸が止まる。

 視界が焼ける。

 光が世界を飲み込む。

 

 床の感触が、消えた。

 

 

 

 ――落ちたのか、沈んだのか、それとも飛ばされたのか。

 

 視界が戻ったとき、俺は、艦橋にいた。

鉄の床はかすかに震え、耳の奥でエンジンの唸りが低く響く。

なんだかとてつもない距離を移動したように感じる。

身体がふらつき、手すりに思わず手をかけた。

 

 そこに、ひとりの女性がいた。

長い黒髪。凛とした姿。大人びた清楚さと、戦いの気配。

――艦これで何度も見た、赤城そのままの姿だった。

 

「君は……?」

 

 問いかけると、彼女は一歩前に出て、静かな声で告げた。

 

「航空母艦、赤城です。提督、先ほどの敵艦隊殲滅お見事でした。これより我々の拠点、硫黄島泊地へと帰還いたします」

 

 その言葉で、背筋が冷える。

たちの悪い冗談か、あるいは夢か。

そう思った瞬間――俺は、前方の夜海を見てしまった。

 

 

 炎に包まれた米空母が、夜の海に巨大な灯火のように揺らめいていた。飛行甲板が変形し、黒煙が夜空を覆っている。

 少し離れた海面には、横転した巡洋艦が腹を見せていた。鉄の巨体がゆっくりと海に沈んでいく。

 

 そこには、圧倒的な『現実』があった。

 

「硫黄島泊地手前に米戦艦6、巡洋艦5隻を確認!接近してきます!」

 

 見張り要員の叫びが『現実』を補強する。

太平洋戦争のアメリカ軍の戦力は記憶している。

硫黄島戦でアメリカ軍は旧式戦艦6隻、巡洋艦5隻の戦力で艦砲射撃を行っていたのだ。

 

「……夢じゃないのか、ここは1945年2月の太平洋なのか」

 

 震える声に、赤城はゆっくりと頷いた。

 

「夢ではありません、提督。どうか共に戦ってください」

 赤城の声には懇願の色が混じっていた。

 彼女の目が真っ直ぐに俺を捉える。

 日本が勝つ景色を、この目で見たい。赤城を勝たせたい――そんな感情が胸の奥で膨らむのを、俺は否定できなかった。

 

「わかった。艦隊無線を開け。作戦を伝える」

 

「敵は旧式戦艦群だ。夜戦でも十分に勝機がある。長門を中心とした戦艦打撃群は射程に入り次第砲撃開始。火力で押し切れ。軽巡・駆逐艦の水雷戦隊は距離8000まで近寄り魚雷を打ち込め」

 

ーー提督が鎮守府に着任しました、これより艦隊の指揮に入りますーー




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