プロローグ
艦隊これくしょん、2013年にサービスを開始し、一世を
歴史好きの大学生
「美少女コンテンツということで食わず嫌いしていたが、面白い」
「なんでもっと早く始めなかったのか」
それが大学生田中孝明の「艦これ」に対する感想だった。
すでに無課金提督の保有上限100隻に迫る艦娘を集め、課金を検討している。
今日もプレイしようと画面を開くと、見慣れない作戦名が浮かぶ。
【期間限定海域:?-? 還らずの太平洋】
「……攻略サイトに載ってないんだけど」
違和感を覚えつつ、出撃を押した。
旗艦赤城を先頭にいつも通り進む、空母機動部隊。
そして――敵艦隊が現れた。
黒い。
深海棲艦とも違う、ノイズのような艦影。
艦名表示欄には文字化けした羅列、赤い警告マーク、動揺と混乱のステータス。
「おいおい……バグか?」
砲撃、雷撃、航空攻撃――戦闘は優勢に進んでいる。
「よし勝った……帰投――」
その瞬間だった。
【完全勝利 S――硫黄島泊地を確保!】の文字が画面に踊る。
部屋中が、まばゆい光で満たされた。
「……え?」
呼吸が止まる。
視界が焼ける。
光が世界を飲み込む。
床の感触が、消えた。
――落ちたのか、沈んだのか、それとも飛ばされたのか。
視界が戻ったとき、俺は、艦橋にいた。
鉄の床はかすかに震え、耳の奥でエンジンの唸りが低く響く。
なんだかとてつもない距離を移動したように感じる。
身体がふらつき、手すりに思わず手をかけた。
そこに、ひとりの女性がいた。
長い黒髪。凛とした姿。大人びた清楚さと、戦いの気配。
――艦これで何度も見た、赤城そのままの姿だった。
「君は……?」
問いかけると、彼女は一歩前に出て、静かな声で告げた。
「航空母艦、赤城です。提督、先ほどの敵艦隊殲滅お見事でした。これより我々の拠点、硫黄島泊地へと帰還いたします」
その言葉で、背筋が冷える。
たちの悪い冗談か、あるいは夢か。
そう思った瞬間――俺は、前方の夜海を見てしまった。
炎に包まれた米空母が、夜の海に巨大な灯火のように揺らめいていた。飛行甲板が変形し、黒煙が夜空を覆っている。
少し離れた海面には、横転した巡洋艦が腹を見せていた。鉄の巨体がゆっくりと海に沈んでいく。
そこには、圧倒的な『現実』があった。
「硫黄島泊地手前に米戦艦6、巡洋艦5隻を確認!接近してきます!」
見張り要員の叫びが『現実』を補強する。
太平洋戦争のアメリカ軍の戦力は記憶している。
硫黄島戦でアメリカ軍は旧式戦艦6隻、巡洋艦5隻の戦力で艦砲射撃を行っていたのだ。
「……夢じゃないのか、ここは1945年2月の太平洋なのか」
震える声に、赤城はゆっくりと頷いた。
「夢ではありません、提督。どうか共に戦ってください」
赤城の声には懇願の色が混じっていた。
彼女の目が真っ直ぐに俺を捉える。
日本が勝つ景色を、この目で見たい。赤城を勝たせたい――そんな感情が胸の奥で膨らむのを、俺は否定できなかった。
「わかった。艦隊無線を開け。作戦を伝える」
「敵は旧式戦艦群だ。夜戦でも十分に勝機がある。長門を中心とした戦艦打撃群は射程に入り次第砲撃開始。火力で押し切れ。軽巡・駆逐艦の水雷戦隊は距離8000まで近寄り魚雷を打ち込め」
ーー提督が鎮守府に着任しました、これより艦隊の指揮に入りますーー
ハーメルン初投稿です!
よろしくお願いします!