母港100隻提督奮闘記   作:あかさた改二

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第3話:開戦準備

【硫黄島泊地 滑走路周辺】

 

「2番滑走路の整備終わりました!」

「周辺に高角砲と対空機銃の設置を急げ! 米軍に見つかる前に仕上げるぞ!」

 

 硫黄島泊地は大工事の喧騒に包まれていた。

工兵を中心に硫黄島守備隊の兵士たちが、次々と運び込まれる対空高角砲を据え付け、滑走路周辺や燃料タンク横に配置していく。

 海風に混じって、金属を叩く音と掛け声が響いた。

 

 汗にまみれた兵たちの間を、艦娘たちが軽やかに歩き、食事を手渡していく。

 

「休憩の時間よ!しっかり食べて、倒れないようにね!」

 

 第六駆逐隊の艦娘たちが調理員とともに、湯気を立てるカレーを次々とよそっていく。

 熱々のカレーを受け取った兵たちは列の端で腰を下ろし、慌ただしい工事現場を眺めながら息を吐いた。

 

「……にしてもよ」

 

 長身の兵士がスプーンを握ったまま、滑走路脇の光景に眉をひそめる。

 

「戦場に、女の子が歩き回ってるなんてあり得るか? しかも海軍の制服みたいなのを着てるし……。それに、突然できた滑走路に高角砲と対空機銃を設置。どう考えても妙だろ。お前、何か聞いてねぇのか?」

 

 隣で座る小柄な兵士は、カレーを一口食べてから首を振った。

 

「いや、上からは何も。けどさ……戦局をひっくり返す何かが、始まったんだろう」

 

 そう呟いた小柄な兵士の視線の先では、並べられた高角砲の群れが海風に照らされ、重々しい存在感を放っていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

【数時間前 硫黄島泊地 工場地帯】

 二人の兵士を困惑させた工事が決まったのは、ほんの数時間前に行われた作戦会議でのことだった。

 

「米空母機動部隊を殲滅し、米海軍を硫黄島周辺から叩き出す!」

 

 俺の宣言に、栗林中将は冷静に問いかける。

 

「田中提督、具体的にどうするのかお聞かせ願いたい」

 

「偵察機が来たことで分かりました。米軍は必ず硫黄島をもう一度攻めてきます。ここに大規模な軍事拠点があると気づいた以上、奴らは見逃しません。だからこそ、迎え撃ちます」

 

 俺の回答に対して栗林中将は腕を組み、さらに問いを重ねた。

 

「あなた方の戦力を教えていただきたい」

 

「主力は正規空母『赤城』、『加賀』、『飛龍』、『蒼龍』と軽空母5隻。さらに『長門』、『陸奥』を中心とした戦艦9隻が支援に入ります。空母の航空機搭載数は、およそ560機です」

 

 俺が淡々と答えると、栗林中将も市丸少将も同時に顔を曇らせた。

 

 やがて市丸少将が、二人を代表するように口を開く。

 

「米空母機動部隊は1000機以上の艦載機を運用すると聞きます。はっきり言って、その数では太刀打ちできません。また、恥を晒すようだが、海軍は燃料不足で動けません。連合艦隊の増援も期待できないでしょう。どうか考え直して頂けませんか?」

 

 市丸少将は無念を滲ませながら話す。

 あたりに重い沈黙が落ちた。

 俺は、その静寂を断ち切るように口を開く。

 

「おっしゃる通りです。普通にやったら絶対に勝てません。だからこそ、私が持つ“強み”を最大限活かします」

 

「強み……?」

 

「はい。私が『艦隊これくしょん』で積み上げた資産です」

 

 栗林中将と市丸少将が眉を寄せる。

俺は倉庫一覧を示した資料を広げた。

 

「ゲーム時代には、いくつかのデイリーミッション――日課がありました。【新装備『開発』指令】で1つ、【装備『開発』集中強化!】で3つ。1日に計4点の装備を必ず開発する仕組みでした」

 

 市丸少将の目が丸くなる。

 

「まさか……」

「ええ。その積み重ねの結果、倉庫には膨大な装備が蓄えられています。中でも特に余っていたのは、航空機と対空機銃です」

 

 俺は資料を指し示しながら続ける。

 

「これらを硫黄島泊地へ大量に配備します。高角砲・対空機銃・電探網で島全体を固め、硫黄島泊地を航空要塞にする」

 

 栗林中将がごくりと喉を鳴らした。

 

「……航空機の扱いは?」

 

「基地航空隊として運用します。零戦、艦爆・艦攻を数百機規模で展開し、硫黄島泊地の防空と艦隊航空戦力を一体化させる」

 

 俺は二人の視線をまっすぐに受け止めた。

 

「基地航空隊と艦娘の艦隊の連携で米軍の攻撃を受け止め、反撃の主導権を握る。これが、小笠原沖で米空母機動部隊に勝つための戦略です。硫黄島守備隊の皆さんには滑走路の整備と対空陣地の作成を行っていただきたい」

 

「わかった、全力を尽くす。すぐに陣地作成に取り掛かろう」

 

 栗林中将は力強く頷く。

 

 こうして、硫黄島泊地の大規模工事が本格的に始まった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 一昼夜に及んだ作業が終わり、硫黄島泊地の航空要塞化は成功した。

 

 高角砲の砲列が滑走路を守り、電探が海と空を監視する。

 

 基地航空隊も、すでに整備を終えて発進準備を整えている。

 

 硫黄島守備隊の兵士たちの敬礼を受けながら、巨大な艦影が一隻、また一隻と港外へ滑り出す。

 

 艦隊は2つに分かれると、広大な海で互いに距離を取りながらそれぞれ輪形陣を形成した。

 

【第1艦隊】

正規空母「赤城」「加賀」

軽空母 「飛鷹」「隼鷹」

戦艦「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」

重巡洋艦 8隻、軽巡洋艦 8隻、駆逐艦 20隻

空母搭載機数:310機

 

【第2艦隊】

正規空母「飛龍」「蒼龍」

軽空母 「龍驤」「祥鳳」「鳳翔」

戦艦 「長門」「陸奥」「扶桑」「山城」 航空戦艦「伊勢」「日向」航空巡洋艦「北上」

重巡洋艦 7隻、軽巡洋艦 7隻、駆逐艦 22隻

空母搭載機数:256機

 

 その他、水上機母艦「千歳」「千代田」潜水艦「伊168」「伊58」「伊8」が支援にあたる。

 

「提督、全艦出港準備が整いました」

 

 赤城の報告を受けた俺は艦隊無線の送話器をしっかりと握りしめ、艦隊全体へ向けて声を放った。

 

「これより全艦、出撃する。敵は強大だが恐れる必要はない。硫黄島泊地を守り、未来を切り開くのは俺たちだ!」

 

 応答する信号灯が一斉に瞬き、艦娘たちの艦影がゆっくりと硫黄島北方へ進み始める。

 

 俺とともに1945年に転移した艦娘の全力出撃だ。必ず勝たせてやりたい。

 

 胸の奥で燃え上がる決意を、俺は改めて噛みしめた。

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