Infinite・Avenger -無限の彼方の復讐者ー   作:MAI²

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どうもmai²=デス。
じゃかじゃか進めてまいりましょう。



第十一話

 

山田 真耶にとって、雪待 薊は非常に優秀な生徒だ。

予習復習を欠かしていないのか授業の内容をしっかりと把握しているし、小テストは常に満点。大きな問題行動を起こすこともない、正に優等生に相応しい成績を修める生徒だ。

しかし、これまでの経歴がそうさせるのか、雰囲気がそうさせるのか、周囲の生徒と打ち解け合っている様子は見られない。

加えて教師にも心を開いているわけでも無い、完全な孤立。

唯一の希望があるとすれば彼の専属になった布仏さんだけだった。

彼の孤独な学園生活、それだけが少々気がかりだった。

 

いつものようにドジをかまし、あまつさえ教え子である織斑君に迷惑を掛けて。

 

『安心しろ、今のお前たちならすぐ負ける』

 

織斑先生(先輩)の言葉にムッとなるオルコットさんと鳳さん。

少し舐められてる、とはいえ、普段のアレコレを考えれば当然と言えば当然、と自己完結で落ち込んでいた時だった。

 

『──ほう?不服か?だったら、雪待、山田先生と組め』

『………は?』

『え』

 

少し低い声で反応が上がる。

それは僅かな困惑と、不快感を混ぜたような反応で。

予定と違うと張本人の方を見る。

 

また私を揶揄うつもりですかぁ⁉︎と非難の目を向けようとして、やめた。

むしろコレはチャンスなのでは?

彼を理解する絶好の機会だ。

 

『山田先生の実力なら、俺がいなくとも問題ないかと──』

『何よ、アンタまでアタシ達が負けるってワケ…?』

『折角です、雪辱を果たさせていただきますわ』

『藪蛇かよ…』

 

ゲンナリした様子でISを纏った雪待君が前に出る。

 

(そういえば、彼のISも今私が乗ってるのもラファールでしたね)

 

少しだけ見た目が変化したラファールを見て一瞬、此処には無い自分の愛機を思い出す。

更にやる気を出したお二人と距離を取って上昇、その間に雪待君にプライベートチャンネルを繋げ呼びかける。

 

「急に巻き込んでしまってごめんなさい、雪待君」

『いえ、こうなっては仕方がないでしょう。どうせ織斑先生の思いつきでしょう。クソ、なんでんな事に……

 

正に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる彼に苦笑いする。

事情は察してもらえたらしい。

 

『…もとより先生一人で相手取るつもりだったんですよね、俺は引っ込んでましょうか』

「いえ!今のあのお二人は雪待君が目当てといっても過言ではないでしょう。恐らく真っ先に向かってくる筈です」

…ゾッとしねぇ

「なので、そこを叩きましょう。雪待君は撹乱をお願いしますね」

『分かりました』

「…………」

 

それっきり言葉を発さなくなった雪待君。

今のやり取りでなんとなく分かったが、やはり女嫌いな点は未だに…………。

 

(一先ずは、授業に集中…!考え事はその後で!)

『では、はじめ!』

『手加減はしませんわ!』

『さっきのは全然本気じゃなかったしね!』

『『覚悟‼︎』』

「い、行きますよ!雪待君!」

『………ハァ』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「山田先生の使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。恐らくですが、雪待君が使っている機体もベースは同じものになり────」

 

シャルルの説明を聞きながら模擬戦の様子を見る。

 

『コイツ、早くなって…!』

『鈴さん!衝撃砲で砂が巻き上がって狙えないのですが⁉︎』

『アンタこそチクチク掠ってんのよコッチは!』

 

肉眼じゃ、追うのがやっとの速度のアザミに翻弄される二人。

尤も、そのアザミの手は何かを握っている訳じゃない、ありゃ完全に囮だ。

対して、手より若干口が多く動く二人。

敵はアザミだけじゃない事を忘れてないか…?

 

『そこです…!』

『きゃあ⁉︎』『ぐぅ⁉︎』

 

案の定、放たれるミサイルと射撃で姿勢を崩した二人。

そこに放り込まれるグレネード。

 

『『え』』

 

爆発、煙の中から二つの影が地面に落ちた。

誰と誰かなんて態々伝える必要もないだろう。

 

『やりましたね!』

『お疲れ様でした』

 

責任をなすりつけ合うように啀み合う二人を放って、無邪気に喜ぶ山田先生と正反対に無感情にISを解除して列に戻るアザミ。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

手を叩いて千冬姉がみんなの意識を切り替える。

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳、雪待だな。七人グループと六人グループに別れて実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」

 

言い終わるや否や俺とシャルルに大量の女子が詰め寄ってくる。

 

「織斑君、一緒に頑張ろう!」

「わかんないところ教えて〜」

「デュノア君の操縦技術見たいなぁ」

「ね、ね、私もいいよね?同じグループにいれて!」

 

とんでもない繁盛っぷりで、ただ立ちつくす俺とシャルル。

ふと気になってアザミの方を見て──

 

ガンッ

 

何かが地面に打ち付けられる音。

一瞬で喧騒が静寂に変わる。

 

「ちょ、ちょっとあんた──」

「その気色悪い目で俺を見んな、下僕が欲しいなら他を当たれよ」

 

二組の女子であろう生徒が狼狽えている。

その正面には、ISを部分展開したアザミが、絶対零度の如き視線でその生徒を睨みつけていた。

足元には、拳の跡がめり込んでいる。

その隣ののほほんさんも、普段からは想像のつかないような目でその生徒を見ている。

周囲の一組の生徒の反応も似通ってる辺り、あの生徒が何かやらかしたんだろう。

 

「ハァ…この馬鹿者どもが……出席番号順で一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り。つぎにもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!布仏、お前は雪待のグループに入れ、補助だ。以上!」

 

千冬姉の鶴の一声で、蟻のように群がっていた女子が蜘蛛の子を散らすように移動していき数十秒でグループ分けが完了した。

「最初からそうしろ」とため息を漏らす千冬姉。

 

「えっと、いいですかーみなさん。今から訓練機を貸し出しますので、一班一機取りに来てください。『打鉄』と『リヴァイヴ』が三機づつですから、好きな方を選んでくださいね」

 

「早い者勝ちですよー」と自信を取り戻したのかいつもより三倍──いや五倍はしっかりした山田先生の声で、各グループが動き出した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

やってしまった。

 

グループ分けが始まってすぐ。

俺の所に来る奴なんてと思っていた矢先だった。

妙に態度の大きい女子が現れて「男なら女の役に〜」「運だけのお前に専用機なんて〜」と抜かし始めた。

大方織斑やデュノアの人気を見て取り付く島もない事を察しての事だろうが。

俺相手だったらいける、なんてタカを括られてるのが尚更気に食わなかった。

気がつけば布仏さんをはじめとしたクラスの女子が来ていたのにも関わらず、ISの部分展開で脅すなんて行為に走ってしまった。

 

(こんなんじゃアイツらと変わらねぇじゃねぇか…!)

 

簡単にこんな手段を取ってしまった自分に嫌気がさしつつも、目の前の事に集中する。

何を言われるかも分からないんだ、まずは謝罪を入れて主導権を取らせないように──

 

「急にすまなかった。カッとなったから、でしていい行為じゃなかった」

「全然!」

「むしろよくやったって感じだったよ!」

「普段からあんな感じだったし、さっきので少しは懲りたらいいけど」

「ねー」

 

そう言う彼女達の視線は、ボーデヴィッヒの班で縮こまっている一人の元に注がれていた。

 

「……………………」

 

思わず呆気に取られる。

てっきり、野蛮だなんだと非難されるものだと構えていたから。

 

「ユッキー」

「…布仏さん」

「大丈夫?」

「あ、あぁ。あの程度の相手なら、次突っかかってきたら容赦しなければ良いだけだ。問題ないよ」

「……………」

 

心配気な布仏さんにそう返しつつ機体の希望を聞く。

 

……

 

コンテナから訓練機のラファールを引っ張って、外部コンソールで状態を設定、搭乗待機形態にする。

 

「で、最初は「はい!」…始めるぞ」

 

俺の質問に元気よく手をあげる生徒。

機体の装着から立ち上がり、歩行。

まだ数回程度の装着しかしていないとはいえ、そこは優秀なIS学園の生徒。

大して手間を取る事もなく進む。

 

「んしょ、んしょ…」

「あまり足元を見るのに集中し過ぎない方がいい。そのまま前のめりになって転ける」

「っといわれても…」

「慣れないなら、先ずはその場の足踏みから始めればいい。幸い、この班は他より人数は少ない、その分時間はある」

「わ、分かった…!」

 

果たしてこんなアドバイスにもならないものに意味があるかは分からないが。

仮にもリーダーなんだ、やれる事をやる。

途中、織斑の班が騒がしかったが此方は寧ろ、人数差を込みにしてもかなり早いペースで最後の一人まで順番が回ってくる。

 

「それじゃ「は〜い」被せるの流行ってるのか」

 

布仏さんが機体に乗り込む。

 

「いや〜おりむーたちは大変そうだね〜」

 

そういう彼女に釣られて奴を見る。

直立状態のISに、ISを展開して横抱きで生徒を運ぶ奴の姿。

他の班から羨望の眼差しが集まっているのは一目瞭然だ。

 

…布仏さんも、アレが羨ましいと感じるのだろうか。

視線を向けれて彼女を見遣るもその目から真意は読み取れない。

 

(気にするだけ無駄無駄)

 

一体何が無駄になるのか。

そんな分かりきった事から目を背け、ただ自分自身を納得させる(騙す)

そこからは、ひたすら与えられた役割を熟すことに集中する時間が続いた。

 

 

この後誘われた昼は、当然無視して過ごした事もここに記す。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

何一つ見当たらない、地平線の先まで続く草原。

 

「ここ、は……」

 

吹く風は、以前よりも強く感じた。

目線を上に向ける。

 

雲一つ無かった宇宙(ソラ)は、僅かばかり雲が掛かっている。

 

陽の光を遮り、月を隠し、星を覆う。

 

地平線の先、厚い雲は時折雷光を発している

 

嵐が来ル

「⁈!」

 

背後、ナニかの気配を感じて振り返る。

あの時感じたアレじゃ無い。

背筋に走ったのは、寒気。

 

「誰だ…?」

 

真っ黒なヒトガタの影が佇んでいる。

 

忘れタ?

いつモいツもアナタと一緒にいルのに?

「…何を言って」

 

ソレは何かを呟く。

しかし、俺の耳に届くのは意味をなさないノイズと、次第に強くなる風の音だけ。

 

嵐ガ来る

 

指先が水平に上がる。

振り返れば、今はまだ遠い雷雲。

だけども、その指先は、俺を指しているようにも見えて。

 

もうスぐ、だから

「お前は、何なんだよ……何を伝えようとしてるんだ……⁉︎」

 

目の前のソレは答えない。

焦燥だけが募っていく。

 

だかラ、待ッテて

 

 

〔お願い、気付いて…!〕

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「待っーーーーっづぁ⁈」

 

ゴッと側頭部から床に落ちる。

明かりの眩しさに目を細めつつ、辺りを見回して、ここが自室であることを理解する。

 

「ってて…」

 

ぶつけた箇所を摩りながら起き上がって、時計を見る。

まだ時間は夕食前、もう一眠りには間が悪い。

 

デュノアとボーデヴィッヒが転校してきてから五日が経った。

織斑にひっついているデュノアは兎も角、ボーデヴィッヒからの接触も無いまま、俺の日常は過ぎていく。

今日は午前の授業の後、アリーナで訓練メニューをこなして、戻ってシャワーを浴びてーー

 

「寝落ちてたのか……」

 

なんだか不吉な夢だった気がするが…。

上手く思い出せない。

寝起きでぼやけた頭を覚ます為に顔を洗う。

 

「ふぅ……ん?」

 

プライベートチャンネルにメッセージが入っている。

差出人は、山田先生。

見れば、内容は大浴場のタイムテーブル調整が終わったという内容。

週二日、わざわざ男二人の為に二日も貸し切りにするとは、思い切ったものだ。

 

「ま、俺は使うつもり無いし………多分」

 

織斑と鉢合わせて絡まれるなんて想像もしたくねぇ…絶対あの女共から因縁吹っ掛けられーーーー

 

待て。

 

大浴場の、開放?

バッと改めて時計を見る、先も見た通り飯前の時間。

廊下から、ドタドタと足音が迫ってきている。

この部屋は角部屋だ。

つまり、そのドアの前を通り過ぎるなんてオチは存在しない。

 

(まずいまずいまずい完全に忘れていた!)

 

分かってたら寝落ちなんてしないで部屋を空けるなりして対策は取れたが、もう遅い…。

 

ドンドンドンッ!

 

そこそこに強めのノックが部屋に響く。

 

『アザミ!いるか!』

『い、一夏…本当にいるかな…?』

『寮に戻る前にアザミの部屋に電気がついてたのは覚えてる!今だって、ほら!ドアの下から部屋の明かりが漏れてる!アザミー!いるんだろー⁉︎頼む!助けてくれ!』

 

ダンダンダンダンダンダンダン!

 

一層強くなるノック。

…と言うより、そこまでバレてるなら居留守も使えない、か…このまま部屋の前に居座られても困る。

 

腹を括るしかない。

 

ガチャ

 

「!アザミ!頼む、アザミの力が必よっぶ!」

「るっせえ!騒音迷惑だっての!」

 

ドアを開けた瞬間、さらに騒がしくなる奴の土手っ腹をぶん殴って黙らせる。

 

「あ、ゆ、雪待君……」

「…………」

 

おずおずとデュノアが織斑の背から現れる。

その外見は、この学園にきて以来の普段通りといったところ。

ちゃんと男装させて来てる辺り、まだ理性は残ってるらしい。

 

「入れ、茶ぐらいは淹れてやる」

 

さて、どう立ち回ろうか

 

 





山田 真耶:ただでさえ異性経験が無い故、嫌悪ではなく「拒絶」という形で出力された結果、碌に会話もできない関係性となった。
『僕』にとっては危害を加えてこないだけマシ。毒にも薬にもならぬとはまさにこのこと。

雪待 薊について:
「結構綺麗な顔してるよね」
「芸能人とかじゃないけど、整ってるっていうか」
「あと胸とか足ばかり見ないし」
「そもそも目すら合わないだけじゃん」
「でも同年代の男子と比べると雲泥の違いよ」
「こう、雰囲気が大人びてるというか…」
「煙草とか似合いそー」
「どうだろ、イメージが固まらないからなぁ」
「喋ってる所ホントに見たことないからね…」

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