Infinite・Avenger -無限の彼方の復讐者ー   作:MAI²

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どうもmai²=デス。
感想で散々言われたシャルバレ回。

そろそろオリ主の異常性が隠しきれなくなってきたかもネ。




第十二話

 

 

「「………………」」

「………………」

 

グラス一つ、紙コップ二つに注がれる麦茶の音だけが部屋に響く。

織斑はソワソワとあたりを見回し、デュノアは緊張した表情で固まっている。

 

「おら」

「あ、ありがとう……」「サンキュー……」

 

備え付けられた机の上に飲み物を置く。

椅子に座る二人の正面に来るようにベッドに腰掛け、手に持ったグラスを傾けて一口含み、飲み込む。

 

「さて」

「「!」」

 

分かりやすく体を固くする二人。

 

「……んなにビビるな、分かりやすすぎて逆にやりづらい」

「って言われたって……」

「で、まずは要件を聞こうか」

「えっと、信じられないかもしれないけど、実はシャルルは……」

 

織斑の口から語られるデュノアの身の上話。

所々で本人も交えての説明を、黙って聞いておく。

 

(……俺が知る内容と変化は無し、と)

「と、まぁここまでがさっきまでの話で」

「要は、特記事項を盾に、3年の間でコイツの処遇をどうにか出来ないかと言いたい訳だ。そこで、どうして俺の名前が出た?」

「何より、一応同じ男子って訳で、仲間は多いに越したことはないからな」

「俺がそれをバラすとは考えなかったのかよ?」

「それを言ってる時点でしないのはわかってるから」

「お人好しがよ……」

「って言うか、シャルルが女子だってのには驚かないのか……?」

 

もっともな質問だ。

俺は事前に用意していた答えを諳んじる。

 

「そもそも、俺は最初(ハナ)からソイツが男だとは思ってなかったからな」

「……え?」

「そんな、最初からバレて……?」

 

唖然とする織斑と、顔を青くするデュノア。

そんな二人にコアネットワーク経由で机の上のディスプレイにネットニュースを映し出す。

 

「第一、『3人目の男子』の情報が世間に一切出回ってないこと。精々がフェイクニュースやおふざけの投稿程度。フランス政府は一切の動きナシ。織斑や俺の時とは大違いだ。流石に怪しむ」

「それは、政府が秘匿していたから、って言うのは……?」

「だったら尚更、お前は此処に来るべきじゃ無かった」

「「え」」

 

目を丸くする二人。

 

「シャルル・デュノア、デュノア社の非公式テストパイロットとフランス代表候補生」

「「?」」

「対して、俺と織斑は、IS学園入学に際して自由国籍権を与えられている」

「?……あー、なんかあったな、そういうの」

「この話の肝だが、今後も役に立つ、覚えておけ」

 

自由国籍権、それは本来特別な人間に与えられる権利であり、自身の意思で所属する国を選択出来る。

一応は日本国籍の扱いである俺達だが、自ら望み、正式な手続きを踏めば国籍の変更が出来るのだ。

 

「俺達にこの権利が与えられたのは、建前上は俺達の身の自由を保証する為だが、本質は日本に男性IS操縦者を独占させない為に世界各国からの要請があったからだ。あえて俺達の所属を不透明にさせることで、それぞれ容易に手出し出来ない状況に持ち込んだわけだ」

「へー」

「で、デュノアの存在だ」

「え、僕?」

 

ここまで言って自覚が無いのか……。

 

「あのな、さっきも言ったがデュノアはフランスに、代表候補生として所属してるんだよ」

「「……あ」」

 

わざわざ自由国籍権まで与えて宙ぶらりんにした男二人を他所に、自分だけ得してるフランス政府。

非難が集まるのは見ずとも分かる。

 

「本当に男性操縦者の情報を秘匿するなら、そのまま国内で飼い殺しにしとくべきだった」

「でも、そうしなかったってことは……」

「よほどお前を学園に送りたかった理由があるから。男と偽らせたのも転校を強引にでも進める為の理屈づけだろう」

「理由……?」

「……少し長くなるが」

 

一度前置きを挟んで口を開いた。

 

「デュノアが転校した日の内からデュノア社の、特に社長周辺のことについて色々と調べた。

経歴、活動、SNSも含めてな。

中で一番に力を入れたのはデュノア夫妻の子供についてだ。

結果、結婚してから一度も妊娠や出産といった様子が無かった」

「「え」」

「俺達が生まれた年も、一切途切れることなく活動していたのが確認出来てる。

そこから導き出されるのは、シャルル・デュノアは夫妻の実子では無い、ということ。それは、先のお前たちの説明で実証された」

「でも、なんで子供の事を?」

「元々はデュノアの身元をはっきりさせる為に調べていたんだよ。

で、経営が振るわなくなりつつあるとは言え、未だ世界トップのシェアを誇るデュノア社だ。次期ポストの座を狙う輩なんざ内にも外にもいくらでもいるだろう。元々、後継がいないから、擦り寄るなり暗殺なりで成り変わることが出来た。しかし……」

「僕が、見つかった」

「そうだ。ここで社長を消しても、その地位は血の繋がったお前の物になるのは明白」

 

「老い先の知れたオッサンと10代のガキ。

前者は消した所で、目当ての物は他に流れ、前任の件から警戒度は格段に上がるだろう。

その後を狙うにしても時間がかかりすぎる。

後者を消せば、待つにしたって精々10年かそこら、あっという間だ。

どっちを獲るのが正解かは、分かるな?」

 

「「………………」」

「ISは、持つだけで強力な自衛手段になり得る。

代表候補生の立場は、つまりは国からの、政府からの庇護を意味する。

IS学園に入学させれば、国外に出ることになる、簡単に手出しは出来なくなるな。

ただの女子なら難しくとも、男であれば貴重性から保護の名目で強引にでも転校を推し進めれる。

憶測にしては随分と現実味を帯びた話になってきただろ?」

「つまり、僕を守る為に……?」

「さてな、あくまでこれは全部俺が勝手に憶測で喋ってるだけだからな」

 

震える声で問うデュノアに戯けるように答える。

この辺の詳しい事情は『僕』も後からサワリだけ聞いた話だから、確信はないのだ。

核心に近い所は突いてる筈ではあるが。

 

「もしかしたら、本気で俺らの機体データを盗るのが目的かもしれんぞ?尤も、それが役に立つとは思えんが」

「え?なんでだよ?」

「よく考えろ、元よりISは女が乗るモノだ。男用のISを作るつもりなら兎も角、イグニッションプランに向けた新機体開発の為のデータなら、俺らよりも他国の代表やその候補生の機体データの方がよっぽど有効だろ。近接オンリーの欠陥機と自社製品のデータだぞ?」

「……何も言い返せねぇ…」

「ア、アハハ……」

 

肩を落とす織斑と、苦笑いのデュノア。

 

「あぁ、それとだ織斑」

「なんだ?」

「特記事項を覚えてたのはまぁ良いが、アレは学園としての建前だ。例外が存在する事を覚えておけ」

「例外……?」

「企業及び国家に所属する者は、要請があった場合それに応じる義務がある。学園側にこれを止める力は無い」

「それって……」

「デュノアが政府かデュノア社長に呼び出されてしまえば、その事項も意味をなさないんだよ」

「な、なんだよそれ⁉︎なんの為の……!」

 

憤る織斑、その怒りはもっともだが落ち着け。

 

「一般生徒なら兎も角、国家代表候補生や企業所属の人間やISは、それだけ価値があるんだよ。

尤も、これはデュノア社長や政府にその意思がなけりゃそうそう起きっこねぇよ」

「そっか、シャルルの父親が、本当にシャルルを守るなら、態々呼び戻したりもしない、か」

「もし呼び出すにしても、デュノアの身を此方が案じる必要性は低いだろうよ」

 

安堵したように胸を撫で下ろす織斑。

再び視線をデュノアに向ける。

 

「一度、父親と話をしてみればいい……互いに生きてる内に、な」

「うん……?…その、雪待君、君は、もしかして──」

「ほら、話が終わったのなら、先ずは織斑先生のとこに行け」

 

何か言おうとしたデュノアの言葉を断つように織斑に強めに言っておく。

 

「え、なんで」

「なんでも何も、そもそも、んな重要な情報を生徒間だけで完結させようとするな。発覚したら先ず報告、これ社会の常識」

「でも、千冬姉に頼るのは……」

「馬鹿が、それで事が大きくなって取り返しがつかなくなったらどうするつもりだ。

そもそも、学園側がこの事を把握してないとは思えん」

「「え?」」

 

目を丸くする二人に、ため息が溢れる。

 

「あのな?俺みたいな一学生で調べがついたんだ、学園が動かない訳がないだろ」

「「」」

「どうせ性別を差し戻しての再入学なりの準備でもしてんだろ」

 

グラスの中に残った最後の一口を飲みきり立ち上がり、呆然とする二人を急かす。

俺が言いたいことも、『僕』が言いたかった事も言えたからな。

 

「ちょ、待てって」

「待たねぇよ。さっさと寮長室に行くこったな」

「あ、アザミも一緒に」

「俺も一緒に行って、さっきと同じ話しろってか、面倒を押し付けるな」

「う゛」

「……先も言ったが、あくまで俺の考察だ。間に受けるな、ノイズになる。思考の片隅に置いとくだけでいい」

「わ、分かったよ……あの、雪待君!」

 

部屋を後にしようとするデュノアが振り返る。

 

「その、今日はありがとう!今度は、もっと楽しい話がした「無理はしなくていいぞ」え、無理って、何を」

「じゃあな」

「待っ──」

 

ドアを閉める。

 

『一夏に教わるから、結構だよ』

『それぐらい僕でも知ってるから』

 

『言っておくね?君、結構馴れ馴れしいんだよね。一体いつから友達になったつもりなんだい?』

 

結局、『僕』の一人相撲だった。

善意に善意が返ってこないなんて、分かりきった筈だった。

 

たとえそうなると分かっていてもここまでしたのは、ひとえに奴の肉親の存在だろう。

 

『……すまないね、妻も娘も、僕も、君にはとても迷惑をかけてしまったね』

(親、か…)

 

力が抜ける、ドアを背に座り込む。

 

「父さん、母さん、婆ちゃん……」

 

会いたいな。

 

そうだな、近い内に一度家に帰ってみよう。

そう決めて、深まる夜空を見上げる。

 

 

そこで、運命的な(最悪な)的な出会い(再会)が待ってるとも知らずに。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「よっアザミ!」

「おはよ、雪待君!」

 

あの夜以降、織斑は兎も角、デュノアも妙にしつこい。

 

織斑先生に全てを打ち明けたデュノアと織斑。

案の定再入学の手続きの準備が進んでいたらしい。混乱を避ける為、学年別トーナメントまで正体を隠すことになったのは、予定調和と言ったところか。

 

「ったく、何を考えてんだか……()っ」

 

(周りが変わっていることなんてとっくに気がついてるクセに)

 

僅かに痛む頭を抑えながら、自販機から飲み物を買う。

原因は、二つ。

一つは、先も挙げたやけに押しが強い二人の存在。

そしてもう一つは──

 

「あ、雪待君だ!」

「ねぇ!トーナメント私と「用事あるんで」」

「あー、せめて連絡先をー!」

 

『今月末に開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、ふたり組での参加を──』

 

急遽発表されたルール変更のお知らせ。

親切丁寧な事に、ペアが組めなかった奴は抽選で余物同士がペアになるときた。

 

真っ先に飛びつかれた織斑とデュノアは既に組んだ。

それは知ってたから構わない。

そこで余った『僕』は、誰とも知れない生徒と組む事になり罵詈雑言を浴びせられたのは言うまでも無いだろう。

 

しっかしまぁ、ここで『俺』に白羽の矢が立つとは思ってなかったが。

実力が身を結び始めた結果だが、素直に喜べない、というジレンマを抱える始末だ。

 

このままいけば、抽選でまたあの生徒と組む事になるんだろう。

で、その前に“あの事件”が起きて有耶無耶の消化試合に縺れ込むことになる、と。

 

(精々楽させてもらいますか……)

 

元より面倒事を解決するつもりも巻き込まれるつもりもないのだ、今回こそは高見の見物に徹させて貰おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一試合 織斑・デュノア VS 雪待・ボーデヴィッヒ

 

「なんでぇ…………?」

 

 

運命の歯車は、着実に狂い始める。

 

 

 

 

 

 

◾️◾️◾️

 

 

 

『今日は態々来てもらって悪いね。

あぁ、楽にしてくれて構わないよ、人は払ってある。

私と君の二人だけだ。

 

……すまないね、妻も娘も、そして僕も、君にはとても迷惑をかけてしまったね……本当にすまなかった。

どうしても君と話がしたかったんだが、まさかこうなるとは思わなくてね…。

いや、これだけは譲れない、寧ろなんの非も無いんだ、君が謝る事は無い。

 

……クク、いや、やはり聞いていたよりも、よっぽど優しい子じゃないか、直接話して確信したよ。

だからこそ、やはり僕は君に謝らなければいけなかったんだ。

 

実際ね、あんな風に人と話すシャルロットは見たことが無かったからね……どうも君は女難の相があるんじゃないのかな?……………………や、すまない、どうも茶化して良い内容でもなかったらしい……苦労してきたみたいだね。

 

少なからず君の事は調べさせてもらってね。

気を悪くしたかい?………………そうか、君は聡いね。

 

あの調子では学園でも何かと不便も多いだろう?

社長として動くことは出来ないがね、私個人からなら別だ。出来る事は多くないが、少しでも君の力になりたくてね。

何、同じ男としての頼みだ、受け取ってくれ。

一先ずは、君の機体の修復、装備も予備も含めて学園に送らせよう。

何故か?

君はウチの機体を気に入ってくれているんだろう?

私は技術者では無いが、あの機体が大切にされているのは分かる。

社長としても嬉しいものは嬉しいのさ。

今後も、何かあったら頼って欲しい、なぁに、若いんだ、遠慮はするものじゃないぞ。

 

どうか強く生きてくれ、君はどうにも優しすぎる』

 

 

【とある企業社長の会話】

 

 





オリ主:布仏さん以外だとまともに人と話したのは初めてじゃないかな?
少ない予備知識を頼りに事前に集めた情報で喋り倒した。その予備知識もそろそろ役に立たなくなってくる。

おりむー:アザミはやっぱりすげぇぜ!
シャル:雪待君、君は──

社長:善人すぎる『僕』の数少ない味方になった。
ただし、味方になるには少し遅かった。
『俺』との絡みがあるかは、不明。


『僕』:要請されたのは、シャルルの正体を隠し通す際のフォロー。
友達(候補)が女性と知り絶望するも、一抹の希望に縋って張り切るも当人から頼られず、挙句拒絶された。悲しいね。


デュノア親子の確執が解消された頃にデュノア社にお呼ばれされる。
案内のシャル◯◯◯の態度は険悪、挙句夫人も当たりがキツかった為かなり参ってた。

尤も、既に心身が限界だったのはここだけの話である。

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