タイガードラゴン -格ゲー奮闘伝-   作:いかのしおから

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第9話「そこには竜がいた」

──そこには竜がいた。

 

 竜吟虎嘯。

 竜が鳴けば雲が生まれ、虎が吠えれば風が起こる。

 同じ領域に立つ者は、言葉を交わさずとも意思を疎通し、嵐を呼べるという。

 

 当たり前の話だが、人間は竜ではない。

 雲を生むどころか、爪もなければ牙もない。

 人間が竜になることなどできはしない。

 

 しかし、どうしてだろうか。

 目の前の男から雲が立ち込めて見えるのは。

 その指先には爪、その口には牙が生えて見れるのは。

 その背に巨大な竜の影を背負って見えるのは。

 竜だった。

 まごうことなき竜がそこにはいた。

 

 分かってる、実際は俺の苦手意識が見せる幻影だってことぐらい。

 実際のアギトはただの人。

 格ゲーが上手いだけの人間だ。

 爪もなければ牙もない。

 当然雲なんて生み出せない。

 

 しかし逃してくれない。

 分かっていてもこの幻覚が頭の中から消えてくれない。

 どんどん世界が歪む、浸食される、塗り替えられていく。

 アギトの気迫が生んだ雲が、呼び起こした雨と雷が、今にも俺の心を八つ裂きにせんと降り注ぐ。

 暴力的なまでの威風に、思わず後ずさりそうになる。

 

 だけどそれは許されない。

 逃げるわけにはいかない。

 俺にはやらなければいけないことがあるのだから。

 

「あんたに奪われた俺達のプライドを取り返しに来た」

 

 啖呵を切って、怯える心を無理やり奮い立たせる。

 

「だーれだてめぇ? 言葉遣いがなってねえな。

 年長者には礼儀を持って接しろって親に習わなかったのか」

「あんたにへりくだるくらいなら自動販売機に頭を下げた方がマシだ。

 広島本通りの瓢風大河だ、今日は雪辱を果たしに来た。

 あの日の勝負、忘れたとは言わせねえぞ」

「いいや忘れたね、雑魚は眼中にないんでな」

 

 アギトはわざとらしく、そう言った。

 人をからかうような表情で。

 雑魚は眼中にない。

 覚える気がないのは本心だとしても、あれからまだ一週間も経っていない。

 完全に忘れたわけではないだろう。

 だから問いかけているのだ。

 今のお前に覚える価値はあるのか?と。

 

「なら思い出させてやるよ、二度と忘れられねえようにな」

「やれるもんならやってみな。

……そんじゃ、形式はどうする?」

 

……前回は三先を選んで敗北した。

 2セットは奪えたが、その後アギトに3セット取られてしまった。

 二先を選んでいれば勝てたものを、中途半端なプライドのせいで巻き返されたんだ。

 

 ここに来てはっきりと分かった、アギトは圧倒的な格上だ。

 となれば選ぶべきは実力差がはっきりと表れる勝負形式ではなく、賭け。

 二先か一先を選び、出たとこ勝負を持ちかけるのが正解だろう。

 それが実力で劣る俺が、最も勝利を手に入れられる可能性が高い方法だ。

 

……だけどそうじゃない。

 俺が求めるべきは、そんな勝利じゃない。

 

「十先だ」

 

 さあ、徹底的に戦おうじゃねえか。

 

「格付けしようぜッ!

 俺とあんた! どっちが上で! どっちが下か! 今ここでッ!!」

「へへっ!」 

 

 アギトは獣のように笑みを深めた。

 負けじと俺も笑みを返した。 

 

 席に座り、コインを入れて、キャラクターの選出画面に移行する。

 俺が選んだのは当然タイガー、そしてアギトが選んだのもタイガー。

 かつてと変わらない同キャラ対決。

 相性差も性能差も一切ない、実力差が如実に反映さえるカードだ。

 勝負の形式も十先、言い訳は許されない。

 これより問われるのは己の存在意義。 

 この勝負によって、才能、努力、実力、全ての差異が自白の下にさらされる。

 ゲーマーとして、男として、同じ時代に生まれた者として。

 どちらが上で、どちらが下なのか。

 全てを懸けた、戦いが始まろうとしている。

 

 もう一度言おう、アギトは格上だ。

 全国大会に優勝した圧倒的強者。

 そんな化け物に挑み、勝利を掴み取れる人間は片手の指にも満たないだろう。

 だけど──

 

 あんたが竜なら俺は虎だ、負けてたまるか。

 

==

 

 ゴングが鳴った。

 

 前回の勝負の序盤、アギトは様子見に徹していた。

 その姿勢を中盤まで貫き、情報を集め終えた終盤、反撃に転じて勝ち星を取りに行く流れだった。

 このことから、アギトが後半戦を得意とする癖読み型のプレイヤーだと予想を立てていた。

 となれば今回の戦いでも、アギトは情報収集から入るのだと。

 

 しかし予想は完全に外れた。

 今回の戦い、アギトが初動に選んだのは電光石火の怒涛の攻め。

 かつてアギトは俺にこう言った。

 お前は同格以上の相手と読み合いができない、と。

 そんなことを宣ったアギトが、今行っているのは対話拒否。

 相手の手札を探らす、考えを読もうともせず、動体視力と反射神経、自からの才能を信じ切り、自分のやりたいことを一方的に押し付ける、天才にのみ許された特権的な立ち回りだった。

 

 もしかすれば前回の戦いで、情報収集は十分できたとアギトは判断したのかもしれない。

 だけど、俺にはアギトがこう考えているようにしか思えなかった。

 お前の実力なんて探るまでもない。

 戦ったところで得るものなんてない、力づくで押し込めて、こんなくだらない勝負、さっさと終わらせてやろう。

 舐めんじゃねえ、そう言ってやりたかった。

 だけどあまりの攻めの勢いに対応しきれず押し切られてしまう。

 

『──WINNERS! プレイヤー1!』

 

 空を暗雲が覆うが如く、雨が降り注ぐが如く、稲妻が走るが如く。

 上段、中段、下段、あらゆる角度から、怒涛の連撃が降り注ぐ。

 反撃の隙間がない、アギトの攻撃によって埋め尽くされている。

 まるでアギトの操るタイガーだけが、雷でも纏っているかのような異様な鋭さだった。

 これほど苛烈で正確な攻勢を行えるプレイヤーは地元では見たことがない。

 画面から伝わってくる衝撃に、今にも椅子から転げ落ちてしまいそうだった。

 

 それでもレバーを握り締めて、アギトの猛攻を耐え凌ぐ。

 ジョーとのスパーリングが活きた。

 目が慣れている。

 地元にはこんな動きができるプレイヤーはいなかったが、ここにはジョーがいた。

 ジョーと闘った経験が、俺をアギトと渡り合えるぎりぎりの領域まで押し上げてくれている。

 防戦一方、ついていくのがやっととはいえ、それでも闘いは成立していた。

 ならば辛抱強く待て、俺達が競っているのは現実ではなくゲームだ。

 アギトの人間性能がどれだけ優れていても、操るキャラクターの運動性能には限界があり、ゲームの中ではあらゆるプレイヤーに公平なルールが敷かれている。

 ならば必ずつけ入る隙はやってくる。

 待ちに待ったその瞬間に、渾身の一撃をお見舞いしてやれ──

 

──来た。

 アギトが見せた僅かな隙、大パンチが当たったのを確認してから、コンボを始動する。

 当然叩き込むのは俺の全力、超必殺技込みの7割コンボだ。

 

『──真・飛虎掌!』

『ROUND2! FIGHT!』

 

 1ラウンド取った……!

 ようやく、ようやくだ。

 セット4にして、ようやく目の前の化け物が、人間であることを証明できた。

 人ならば触れられる、人ならば殴れる、人ならば倒せる。

 無敵の化け物ではないのなら、俺に勝機はある……!

 

「生憎と格ゲーってのは1セット取って1点なもんでね」

『──WINNERS! プレイヤー1!』

 

 っ……!

 ちっ……セット4を取られたか。

 だが1ラウンドは取れたんだ。

 次はそれを2ラウンドに変えればいいだけ。

 化けの皮は剥がれた、アギトは手の届く場所にいる、ならば恐れることはない。

 このままあいつのいる場所まで、上り詰めてやる──

 

『──WINNERS! プレイヤー1!』

『──WINNERS! プレイヤー1!』

『──WINNERS! プレイヤー1!』

 

……なんで、どうして。

 ちくしょう、ワンセットが……遠すぎる……!

 

 これまでの勝負の中、1ラウンド取れたセットは幾つかあった。

 しかし、どうやっても2ラウンド取れない。

 限界近くまで追い詰めても、ぎりぎりで凌がれてしまう。

 運や偶然などではないだろう。

 アギトは追い詰められる度に、驚異の粘りを見せていたのだから。

 戦い方を変えているのだ。

 余裕のある序盤から中盤は攻撃的に。

 ヒットポイントが底を尽きかけた終盤は丁寧に粘り強く。

 まさしく格ゲーマーの手本とも言える理想的な立ち回りだった。

 

 だが……一番の理由は他にある気がした。

 その原因はアギトの強さではなく、俺の弱さにあるような。

 思い返してみれば、俺がラウンド取った勝負は、全て超必殺技ゲージを使っていた。

 つまり俺は超必殺技を使わなければ、アギトから1ラウンドも取れていないことになる。

 

 どうしてだ。

 コンボの火力は劣っていない筈。

 コンボの精度もコマンドの精度も、アギトのようなトッププレイヤーにも大きくは劣っていない技量は持っている。

 それは昨日ジョーにだって褒められたし、前の闘いでもアギトに認められた。

 ならば何が足りない? 何が劣っている?

 

 分かっている……それは読みだ。

 相手の動きを読み取る洞察力と、そこで得た情報からチャンスを作る勝負勘。

 勝負弱さが、読みの浅さが、あと少しを越えさせてくれない。

 あと一歩への道のりを、悉く潰されてしまう。

 お前には、この先へ進む権利がないとでも言うように。

 目に見えない巨大な何かが、行く手を阻んでいる。

 俺は未だに、こいつと同じの領域に立つことが許されていないのか。

 

『──WINNERS! プレイヤー1!』

 

 強い、強すぎる。

 気づけば1セットも取れないまま、7セットも取られてしまった。

 前回の戦い、俺はアギトから2セット奪うことができたというのに。

 もちろん分かっている、あの時のアギトが手加減していたことぐらい。

 本気を出したのは後半からで、それまで情報収集に徹していたのだと。

 真の実力差がどれほどのものなのかは、ジョーに完封されて思い知らされた。

 だけど、想像以上だった。

 

 単純に劣っているのは読みの鋭さだけではない。

 反射神経や動体視力、判断力や思考速度。

 最低限とはいえ、渡り合えるようになった今だからこそ分かる。

 改めて突き付けられた、アギトという男の強さの解像度を。 

 俺は理解できていなかったんだ。

 頂の高さを、世界の広さを、現実の厳しさを。

 

 ああ……こんなにも違うのか、俺とアギトは。

 ”ここが限界なのか、俺の才能は”──

 

「……っ」

 

 何気なく脳裏に過った一言に──俺は打ちのめされた。

 

 格闘ゲームは対戦ゲームだ。

 誰かと競い合っていれば負けることもある。

 時間が巻き戻って本気で格ゲーに取り組み始めてからは、負けなしの日々が続いていたが、始めたばかりの頃は何度も何度も敗北を経験していた。

 自分が一生負けないまま生きていけるなんて思っていない。

 だからこれは目前に迫る敗北への絶望ではなかった。

 

 ならば生まれ持った才能の差に絶望したのか?

 いいや違う、俺が元々自信の根拠にしていたのは、努力量だ。

 反射神経や動体視力、人間性能で劣っていても、努力さえ続ければ追い越せると。

 特に格闘ゲームは、FPSやパズルゲームといった、反射神経や思考速度など、生まれ持った資質がモノを言う他の対戦ゲームよりも、努力量が重要になってくる。

 幾らアギトの人間性能が高かろうと、努力し続ければ、格闘ゲームという土俵で戦っている限り、いずれきっと勝てるようになる。

 そういった哲学を持って格闘ゲームに取り組んでいた。

 

……そう、思い込んでいた。

 

 だけど違った。

 俺に足りなかったのは、才能? 努力? 環境?

 いいや、どれも違う。

 哲学が間違っていた?

 いいや、それも違う。

 

 これはもっと根深い問題だった。

 アギトという強敵と相対し、極限状態に追い込まれ、脳裏を過った一言。

 その一言は何よりも真実味を帯び、俺の心の奥底をえぐる気づきを与えた。

 

……そうか、俺は”自分の限界を知るのが怖かった”のか。

 

==

 

 自分の限界を知るのが怖かった。

 

 薄っすらと感じてはいた。

 だけど、気づかないようにしていた。

 気づけば何か重要なものが壊されてしまうように感じていたから。

 だけどもう知ってしまった、分かってしまった。

 

 思えばそうだ、どうして未来の俺はプロを目指そうとしなかったのか。

 今回もそうだ、どうして大型大会に出ようとしなかったのか。

 あんなにもあっさりとプロへの憧れを手放せたのか。

 

 俺には子供の頃から漫然と抱き続けている万能感があった。

 本来なら子供から大人になる過程で多くの人間が失ってしまうものだったのだろう。

 しかし小学生だった当時、俺が最も得意としていた格闘ゲームを親に取り上げられてしまい、その万能感だけが取り残されてしまった。

 横やりさえ入らなければ、もっと上達できたのに。

 努力さえできる環境があれば、トッププレイヤーになれた筈なのに。

 最初は本気で悔しがっていたとは思う。

 だけどいつしか自分の心を守るための防御手段に落ちぶれてしまっていた。

 

 俺は自分の才能を信じるための言い訳が欲しかったんだ。

 

 だから、努力を辞めた。

 挑戦を諦めた。

 才能と向き合うことから逃げていた。

 自分の才能の限界を知るのが怖かったんだ。

 本気で挑みさえしなければ、自分の限界を知ることはない。

 限界を知らなければ夢を見れた。

 

 俺だって、と。

 

『──WINNERS! プレイヤー1!』

 

 知っていた。

 地方からプロに駆け上がった格闘ゲーマーを。

 知っていた。

 社会人を続けながらプロになった格闘ゲーマーを。

 知っていた。

 四十歳を超えたハラダがプロシーンの一線級で活躍を続けていたことを。

 知っていたんだ。

 俺がどれだけ現実から目を背け、逃げ続けていた情けない人間なのかを。

 

 本気で燻ぶっていたのなら、親に頭を下げて実家に住み直させてもらいプロを目指せばよかったんだ。

 就職に失敗した後なら、親も一縷の望みかけてプロを目指す俺を応援してくれたかもしれない。

 それをしなかったのは何故か、親への反骨心もある。

 だけど一番の理由はやっぱり、言い訳が欲しかったんだ。

 どうしようもない人生を送っていた自分の心を慰められる、数少ないちっぽけなプライドを守るために。

 

 俺がプロになれなかったのは理由は環境のせいではない。

 現実と向き合うことを恐れた俺自身の心の弱さ。

 そして──才能。

 初めから信じ切れていなかったのだ。

 自分がプロゲーマーになれる才能があるなんて。

 ようやくその真実に辿り着いてしまった。

 

『──WINNERS! プレイヤー1!』

『──WINNERS! プレイヤー1!』

 

 操作が覚束ない。

 集中力が完全に途切れている。

 自分の矮小な本性に気づいて心が折れた。

 その精神状態が影響してか、1ラウンドも取れなくなってしまっている。

 そうして気づいた時には9セット取られてしまった。

 

『CONTINUE?』

 

 勝負の形式は十先。

 このセットを落とせば俺はアギトに負ける。

 震える手でポケットの中に手を入れ、100円玉を取り出す。

 これは皆から託されたうちの一枚であり、プライドの一片だ。

 皆が力を貸して、背中を押してくれたからこそ、俺はこの場所に来れた。

 にもかかわらず皆が積み上げてくれたものが全て、今この瞬間、崩れ落ちようとしている。

 何の期待にも応えられず、爪痕一つ残せないまま──

 

「──諦めんなよ!

 お前ならできんだろ! 

 他の誰にもできなくても……瓢風大河なら!」

 

……。

 

……そうだ。

 俺は皆のプライドを背負ってここにいるんだ。 

 瓢風大河なら、俺達の仇を打てるのだと。

 俺の才能を信じて、俺が天才であるのだと信じて。

 それがたとえ、時間逆行という反則によって築いた虚像への信頼だとしても。

 俺は皆を、信じさせてしまったんだ。

 

「……」

 

 一つだけ、はっきりと言えることがある。

 俺はまだ限界を出しきっていない。

 

==

 

 戦況は絶望的だ。

 対戦相手は全国大会にも優勝したトッププレイヤーアギト。

 こちらの勝ち星は0で負け星が9。

 このセットを落とせば敗北が決定される。

 ここからもし、巻き返せる可能性があるとすれば──

 

──己の矮小さを認めた今しかないと思った。

 

 これは理屈のない感覚論だ。

 だがこの逆行を覆す可能性があるとすればこれしかない。

 これこそが、たった一つ、俺に信じることを許された選択肢だった。

 ならば信じて、縋るしかない。

 

──俺は天才だ。

 

 いいや、嘘だ。

 俺が一番わかっている。

 自分が天才じゃないってことぐらい。

 

──俺は天才だ。

 

 確かに周りの皆から持ち上げられたりもしたさ。

 だけどそれは時間を巻き戻すという反則行為によって作り上げた虚像に過ぎない。

 本当の自分は、20代後半にもなって碌に定職にも就かず、無駄に人生を浪費していた無能な人間だ。

 

──俺は天才だ。

 

 自分の才能すら信じ切れなかった凡人だ。

 いいや、それ以下だろう。

 自分の才能を試そうともせず、安易に逃げ道へ縋りついた臆病者。

 言い訳だらけのくず野郎。

 そんな最低の人間が、瓢風大河だった。

 

……だけど、あの頃はそうじゃなかっただろう。

 

 無邪気に信じていたんだ、大人になれば何にでもなれるって。

 

 井の中の蛙であったことは認めよう。

 だけど、それでも全力だった。

 自分の才能の限界を知ることなんて恐れず、本気で挑み続けていた。

 自尊心を守る殻などない、剝き出しだった、安全圏などどこにもなかった、環境など言い訳にしなかった、重り一つ持たない、裸一貫、ありのままの自分でぶつかっていた。

 

 信じろ。

 信じ抜け。

 俺は天才だと。

 根拠もなく、いつかは頂点に立てると信じていた、あの頃の自分のように。

 大人になるために蓄えた全ての常識を脱ぎ捨てて、原点を取り戻せ。

 

──少しづつだが、自分の中の何かが切り替わっていく感覚がした。

 

『ROUND2! FIGHT!』

 

 既にアギトは9セットを取り終え、気づけば1カウント奪われてしまう。

 あと1ラウンド奪われれば十先の敗北条件を満たす絶体絶命の状況だ。

 HPもこちらが残り1割以下なのに対し、あちらは7割も残している。

 序盤から見せていた怒涛の攻勢も衰えることなく健在。

 見上げた頂は確かに存在した、想定していたよりも遥か高みに。

 

 だからこそ──これはアギトが高みから降りたのではなく、俺が先に進んだ証明になるのだろう。

 

──目に映る全ての情報の解像度が高まっていく。

 今なら蝶の羽ばたきが残像を残さず、くっきりと見えるだろう。

 まるでハイスピードカメラで撮ったスローモーション映像のように。

 画面に映る全ての情報が、一つも取り残されず、鮮明に脳に刻まれていく。

 世界の法則が、俺にとって都合のいい方向に捻じ曲げられていく感覚がした。

 

 この感覚を俺は覚えている。

 忘れる筈もなかった、今まで一度たりとも。

 だけど失ってからは諦めていた。

 あれは子供の特権だと、大人になれば取り戻すことはできないのだと。

 だが今ここにある。

 取り戻せたんだ、子供の頃の自分を。

 自分を天才だと信じ込めていたあの頃の自分を。

 あの頃の自分を象徴する最悪の欠点にして最高の特性を。

 

──”没頭癖”。

 

 ゾーンに入った。

 あの頃の自分がここにはいた。

 熱中して、熱中して、目の前のこと以外、全てを忘れ去って。

 どれだけ敗北しても、どんな負け方をしても、底なしの体力で挑み続けて。

 プロゲーマーなんて知らない、ストリーマーなんて知らない。

 金も生活も未来のことなんて何も考えず、ただひたすらに目の前の勝利を追い求め進み続けた、あの頃の最強だった自分が戻ってきた。

 思考が速い、考えた瞬間に体が動く。

 反射神経、動体視力、判断力、思考速度、あらゆる人間性能が高まっていく──

 

 だが……それだけでは足りない。

 あの頃の自分のままでは、アギトは倒せない。

 

 ならば向かうべきは、その先だ。

 

 思い出せ。

 この状況に至った時アギトが選ぶ選択はなんだ?

 確かにアギトは癖が見つからないように上手く動きを散らしている。 

 癖があったとしても、数セット戦った程度では見抜けはしないだろう。

 だが、今の俺ならば。

 あの頃の集中力を取り戻せた俺ならば。

 きっとアギトの中に隠された傾向を見つけ出すことができる筈だ。

 これまで戦った9セット。

 俺の頭の中で、今までのアギトとの闘いの記憶が一瞬にして描写される。

 それらの情報を基に戦術が組み立てられていく──

 

 おそらく、これからアギトが選択するのは──差し込み。

 

 とはいえ、体感として頻度は4割ほど。

 絶対の確証はない。

 もし衝突事故が起きれば、俺の残り僅かなHPは消し飛ぶだろう。

 だから賭けに出る。

 リスクを覚悟して、リターンの大きい選択を選ぶ。

 失敗を待ち続けたところで相手はアギト、簡単に隙を曝すとは思えなかったのもある。

 だが、一番の理由としては──今の自分なら信じられた。

 運命が味方していると、どんな逆境も覆せると、この世界は俺を中心に回っていると、理屈を超えた確信を持てた。 

 脳内で統計された結論に沿い、レバーを動かし、ボタンを押す。

 

──入った。

 

 置き大パンがアギトのタイガーの顎先を抉った。

 ここから叩き込むのは全力全開、7割削りの超必殺技コンボ。

 1ラウンド、取り返した。

 

『真・飛虎掌!』

『ROUND3! FIGHT!』

 

 喜ぶのはまだ早い。

 まだ1ラウンド取り返しただけだ。

 セットカウントは0勝9敗。

 ラウンドは1勝1敗。

 依然戦況は絶体絶命。

 次のラウンドを落とせば今度こそ奈落の底に真っ逆さまだ。

 油断は許されない。

 意識を集中しろ、思考と感覚を研ぎ澄ませろ。

 もっとだ、もっと。

 

『台風突風脚!』

 

 続くセット10ラウンド3。

 開幕早々コンボを叩き込み、アギトのタイガーを壁際まで運んだ。

 相手が起き上がるまでまで時間がある。

 にじり寄りつつ、再びアギトとの闘いの記憶をまさぐる。

 壁際での起き上がり時、今までアギトはどうしていた?

 投げ抜け、前ジャンプ、ガード、暴れなど。

 上手く動きを散らしていた。

 おそらく均等な回数になるよう鍛錬していたのだろう。

 これでは統計が役に立たない──なんてことはない筈だ。

 

 一見ランダムに見えても、必ずどこかに規性がある。

 考えろ、他の情報も統計に加えて考えるんだ。

 順番は?

 HPの状況は?

 このコンボを食らった後に、取りがちだった行動は?

 その法則性は?

 傾向を見極めろ、類推しろ。

 アギトという男の魂の形を理解しろ。

 読み勝て、思考を上回るんだ──

 

「!」

 

──読めた……!

 

 アギトが起き上がり際に選んだのは投げ。

 一歩後ろに下がり、アギトのタイガーの投げを回避する。

 続いて前に一歩進み、隙を曝したアギトのタイガーに大パンを食らわせる。

 相手のHPは残り5割半。

 ならば選ぶべきはランク1の超必殺技を混ぜた5割半削りのコンボだ。

 それで丁度全てのHPを削り切れる。

 全神経を注ぎ込み、レバーとボタンを正確に入力する。

 

『斬空風刃拳!』

『WINNERS! プレイヤー2!』

 

……初めてだ。

 初めてランク3の超必殺技を抜きでアギトからラウンドを奪い取った。

 そして2ラウンド捥ぎ取った。

 1セットとはいえ、あの化け物に、怪物に、対等以上に渡り合えた。

 間違いない、人生最高潮の自分は今この瞬間だ。

 未来も今も全てひっくるめて、ここにいる俺こそが瞬間最大風速。

 

 ああ……分かる。

 雲の上に隠れているように読めなかったアギトの思考が、

 残光を追うのがやっとだったアギトの動きの数々が。

 今ではまるで俺の掌の上で踊っているかのように、分かってしまう。

 

 手に入れたのだ。 

 竜と渡り合う権利を。

 辿り着いたのだ。

 雲を揺らせる領域に。

 許されたのだ。

 嵐を起こすことを。

 

 この日、瓢風大河は風を掴んだ。

 

……ふと、鼻の下に感じた妙な感触。

 手の甲で拭うと、赤く染まっていた。

 どうやら思考を巡らせすぎるあまり、鼻血が出てしまったらしい。

 

「次だ」

 

 もっとだ、もっと思考を加速させろ。

 所詮は1セット、次に繋げられなければ意味がない。

 これは記念受験ではない、俺はアギトを倒すためにこの闘いを挑んだのだから。

 

==

 

 ああ……まるで呪いでも解けたような気分だ。

 

 思い出す。 

 人間は幾ら身体を鍛えても車より速くは走れないし、か〇はめ波なんて撃てやしない。

 もし自分に才能があったとしても、ハラダのような本物の天才には敵いはしない。

 俺は俺として生まれた時点で、漫画やアニメの主人公のようにはなれやしないのだ。

 無知蒙昧だった子供時代ですら、心のどこかでそれを理解していた。

 

 だけど──タイガー、お前はいつだって俺を主人公にしてくれた。

 

 お前と一緒にゲームをしている間だけは現実を忘れられた、夢を見れた。

 画面に映るタイガーの姿に自分を重ねて、まるで本当に自分がゲームの中で戦っているかのようにのめり込めた。

 お前と一緒なら車よりも早く駆けられたし、かめ〇め波っぽいものだって撃てた。

 どんな強敵が立ちはだかっても関係ない。

 何十何百と負け続けたとしても、夢中になって挑み続ければ、最後には勝てるようになった。

 お前と一緒なら主人公であれた。

 これこそが俺がタイガーと一緒に導き出した絶対の真実。

 この回答は例え、全国制覇を成し遂げた王者との闘いだったとしても揺るがない。

 

──タイガー、お前を勝たせてやる、だから俺を勝たせてくれ。

 

「行くぞ!」

『おおう!』

 

 意図はしていなかった全くの偶然。

 たまたま零した意気込に対し、思いがけず返ってきたタイガーのキャラクターボイス。

 まるでタイガーが本当に俺の意志に応えてくれると言ってくれたような気がして。

 そんなこと、常識的に考えればありえないことは分かっている。

 だけど、今だけは子供に戻ることを許してくれ。

 サンタさんや神様の存在を疑わなかった、空想と現実の境目が曖昧だった、あの頃の自分に。

 今の自分には、タイガーの意思が味方をしてくれているのだと。

 

『ROUND2! FIGHT!』

 

 先制で1ラウンド奪取する。

 だがセット数は1対9のまま、依然こちらが不利な状況だ。 

 手に入れた1ラウンドも、HPも1割を削られた激戦の中で辛くも手に入れた勝利。

 こんなぎりぎりの勝負を繰り返していれば、いずれどこかで負けてしまうだろう。

 ならば目指すべきは敗北など考える余地もない、圧倒的な優勢からの完全勝利だ。

 できる筈だ。

 あの頃の力を取り戻した俺ならば、その先に進んだ俺ならば。

 もっと集中しろ、意識を深く潜り込ませろ。

 行きつける先まで、果ての果てまで。

 

 集中力が高まるにつれて、全身が熱を帯びていく。

 10月の秋、未だ未来のように地球温暖化による異常気象も深刻化していない時代、ドアの隙間から入り込んだ冷たい風が肌を撫でる。

 にもかかわらず、俺の身体は真夏の日光に照らされているかのような熱を発し、大量の汗をかき始めた。

 その汗は零れ落ちるどころか、今にも蒸発してしまいそうなほど熱を帯びて。

 きっと今外に出れば、俺の体温だけでアスファルトを揺らす呼び水を起こせるだろう。

 そんな錯覚に陥るほどに、俺はこの瞬間にのめり込んでいた。

 

「……こい─、───と同じタイ─か」

 

 それでもまだだ、まだ足りない。

 周囲から余計な雑音を拾っている。

 世界を狭めろ、無駄な情報を排除しろ。

 聴覚だけではない、視覚や触覚も、五感全て、拾う情報を厳選するんだ。

 必要なのは画面の情報、筐体から流れるSE、対戦相手の操作するレバーの音、レバーを握る自らの手の感触だけ。

 それ以外は何もいらない。

 目の前の闘いに必要な情報以外は全て削り取れ、感覚を研ぎ澄ませろ。

 俺の持つ余力全てを、この一戦に注ぎ込め。

 

「──」

 

 至った。

 画面の情報、筐体から流れるSE、対戦相手の操作するレバーの音、レバーを握る自らの手の感触、それ以外の全ての情報が、この世界から消え去った。

 頭の中を占領していた余計な情報が消えて生まれた余白。

 その余白全てにアギトとの闘いに必要な情報を注ぎ込む。

 俺の全てをこの一戦のために作り替えていく。

 

──読めている。 

 こちらの起き上がりの際、アギトが放ったのは詐欺飛び。

 地元には使い手が殆どいない「対空必殺技を出されてもガードできる、詐欺臭いジャンプ攻撃」を名称の由来とした技術だ。

 これは攻撃側が42F以上の有利を取れている時にのみ使えるテクニックである。

 基本的にタイガードラゴンにおいて、ジャンプ攻撃をして地面に落ちるまでかかる時間は46F。

 対して防御側が42Fのマイナスを負った場合、無敵対空技を放とうとすれば更に5F増え、足せば合計47Fとなる。

 つまりアギトは俺が起き上がった後の42Fから46Fの間にジャンプ攻撃を加えて、こちらが無敵対空が発動できる47Fまでに地面に着地し安全にガードしようとしているのだ。

 

 猶予はたった3フレーム。

 卓越したリズム感と操作精度がなければ使いこなせない高等技術だった。

 

──だからこそ、ジャストガードが刺さる。

 相手のジャンプ攻撃をジャストガードで弾いた後、すぐさま投げを入力する。

 詐欺飛びにはジャスガされても確定反撃されないという強みがあり、切り返される可能性もあったが、投げは見事に刺さり、後ろ投げで立ち位置を入れ替えアギトを壁際に。

 そのままアギトを壁際から逃さず、じりじりと攻め続けてHPを削り切る。

 

『WINNERS! プレイヤー2!』

『CONTINUITY?──ROUND1! FIGHT!』

 

 読めている。

 間合いを図り合う地上戦、距離や時間、HPの状況など。

 この条件を満たした際に、アギトが選ぶのは大前キックだ。

 一歩下がって回避し、大パンチで差し替えし、コンボに繋げて相手のHPを削り切る。

 

『ROUND2! FIGHT!』

 

 読めている。

 この状況下でアギトが意識するのは地上戦。

 対空の意識が薄まり、ジャンプ攻撃が入りやすくなる。

 ジャンプ大パンチが突き刺さり、そこからコンボに繋げて相手のHPを削り切る。

 

『飛虎掌!』

『WINNERS! プレイヤー2!』

 

──これで、こちらの得点は現在3セット。

 反撃が始まってからは1ラウンドも落とすことなく連勝が続いている。

 流れが来ている。

 特に今のラウンドは読みの精度も間合いの管理も完璧だった。

 時間が経つにつれて、全ての精度が異様なほど高まっている。

 今の俺ならどんな相手にも勝てる。

 そんな万能感が身を包んでいる。

 0勝9敗の逆境から、全国王者アギトにだって。

 しかも試合内容も完璧だった。

 先ほどのラウンドは、こちらがHPを九割残した状態で勝ち切った。

 あのアギト相手に、完全な優勢を取れている。

 奇跡のような状況だった。

 とはいえこの奇跡はずっと前から続いている。

 そしてこれから先も続いていく。

 ならば奇跡ではなく必然だ。

 この流れを手放さず掴み続けた先には必ず勝利がある。

 勝てる、今の俺なら、残り7セット取り切って──

 

「───────────────」

 

 今、なんて言った?

 鼓膜を叩いたのはアギトの声。

 集中しすぎて聞き逃していた。

 確か……

 

 アップデート完了、なんてな。

 

 そんな言葉を言っていたような気がする。

 アップデート? どういう意味だ──

 

「……ぁ」

『──ROUND2! FIGHT!』

 

──その言葉の意味は、すぐに分かった。

 アギトは動きを変化させたのだ。

 俺に動きを読まれないよう、極端に、真逆とも言ってもいい方向に。

 闘いの中で情報を収集し、それを活かしていたのは俺だけではなかった。

 たった3セット。

 アギトはたった3セットで、覚醒した俺のデータを集めきり、その対策となる動きを取り入れたのだ。

 俺が9セットかけてようやくアギトに行えた癖読みを、たった3セットで。

 

 忘れていた。

 ここにきて、ようやく理解した。

 アギトの一番の強みは、反射神経や動体視力、操作精度や底なしの体力などではない。

 卓越した分析能力。

 それこそがアギトの真髄だった。

 

「──これでゲームセットだ」

『真・飛虎掌!』

『WINNERS! プレイヤー1!』

 

 3勝10敗。

 勝負の形式は十先。

 俺は急速な戦況の変化に対応が間に合わないまま、呆気なくアギトに敗北した。

 

==

 

……負けた。

 負けてしまった。

 先ほどの一戦は、間違いなく俺の最高到達点だった。

 かつての自分を取り戻し、かつての自分すらも超えてみせた。

 肉体は限界で神経痛がする、頭は許容量を超えて鈍痛と耳鳴りがする。

 全てを振り絞り極限状態に行きついていた。

 にもかかわらず負けてしまった。

 

……これほどまでに目指すべき頂は高いのか。

 またしても突き付けられた、力の差を。

 これから格ゲーで上を目指すなら、この苦渋を何度も味合うことになるのだろう。

 進まなければならない道の険しさに挫けそうになる。

 生涯挑み続けたところで辿り着けるかも分からない。

 

 いつもの諦めの早い自分が顔を覗かせる。

 もう十分頑張った、親の理解はなく、ライバルは地元を去り、地方という格ゲーをするには恵まれない環境の中で、全国王者相手にここまで良い勝負ができたのだから。

 全て出し切ったんだ、これ以上格ゲーを続けるのは辛いだけ、もう思い出の中にしまいこんだって……。

 そんな甘ったれた言葉が脳裏を過る。

 

……違うだろう。

 ようやく向き合えたんだ、自分の弱さに。

 そして決めたんだ、やっと取り戻せた童心と共に。

 過去を乗り越え、前に進むと。

 夢から目覚め、現実を本気で生きると。

 

 これか進む先の道が平坦ではないことぐらい理解している。

 失敗すれば人生が台無しになるだろう。

 だけど俺はこれがいいんだ。

 何を失っても、どんな犠牲を払ってもこれがいい。

 俺は自分の才能に、人生を賭ける。

 

 逃げるな。

 誓いを立てろ。

 俺の本当の望みはなんだ?

 ストリーマーか? プロゲーマーか?

 あの大会に出れれば満足なのか? ゲームを遊んで暮らせれば満足なのか?

……いいや違うだろう、俺が心から求めていたのはこれじゃない。

 俺の本当の夢は──

 

「俺は絶対に諦めねえ……環境も境遇も関係ねえ……っ!

 どれだけ不利な条件だろうが、どれだけ時間がかろうが、俺はあんたよりも強くなる!

 あんただけじゃないッ!!

 全員超えて、最強の格ゲーマーに__一番になってやるッ!!!」

 

 鼻の奥がツンと痛む。

 知らなかったんだ。

 自分の本当の思いを言葉にするのが、こんなにも恐ろしく勇気がいることだったなんて。

 

「……名前は?」

「瓢風大河だ!!」

「覚えておく」

「っ……!」

 

 泣きそうだった。

 それでも唇を強く結んで、溢れそうになる涙を必死に堪える。

 アギトの前でだけは、泣きたくなかった。

 同情されたくなかった、自分を強く見せたかった。

 次に戦った時、手加減されたくなかったから。

 だけど、もう堪えきれそうにない。

 視界が霞む、涙が溢れ出す──

 

「よくやった」

 

 そんな俺の想いを汲んでくれたのだろうか。

 たまちんが、そっと胸を貸して俺の頭を隠してくれた。

 ぽんぽんと背中を叩かれ、店を出ようと促される。

 促されるまま歩みを進める。

 

「ちょっと待った」

 

 呼び止めた声はアギトのもの。

 なんだ……?

 

「お前んち、パソコンあるか?」

「え……あ、あるけど」

「ネットは?」

「つ、繋がってる」

「そんじゃ、家に帰ったらタイドラの最新情報を調べてみろ」

 

 タイドラの最新情報……?




 次で一章の最後となります。

=追記=
 詐欺読みの解釈を間違えていたので修正しました(ご指摘マジで助かりました……!)
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