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少し時間を遡り、四天王イブキがリーリエと組長の特訓に合流する前
カントー地方クチバシティの波止場にて一人の青年と二人の黒ずくめの男達が睨み合っていた。
「ちくしょー!覚えてやがれ!」
「次こそはリベンジだ!ロケット団に栄光あれ!」
「マニュ!」
「ふん‥あっけねえな。マニューラよくやった。戻れ」
赤髪の青年と対峙していたのはリベンジ・レインボーロケット団の構成員達。
赤髪の青年は手持ちポケモンのマニューラ一体でロケット団構成員のポケモン達を全滅させたのだ。
まさに蹂躙と呼ぶべき圧倒的な実力差
その実力に恐れをなしたのか、ロケット団の構成員達は背を向けて逃走を図った。
「リベンジ・レインボーロケット団‥か。奴らが求めるFallとUB‥」
青年は逃げ去った男達の後ろ姿をただ見ていた。
最近カントー地方で見かけるリベンジ・レインボーロケット団。
彼らが求めるFallとUB。アローラ地方を襲撃した未知の生命体の出現も彼らの仕業だと言うのだろうか。
「そして、この前出会ったスーツの男‥どう見てもガラルのポケモンリーグ委員長ローズ本人だ。何故そんな男がここカントーにいる?」
そして極め付けは彼らと行動を共にしていたグレーのスーツの男。ハンチング帽とサングラスで素顔を隠していたが青年はその正体を看破していた。
その正体はガラル地方のポケモンリーグ委員長のローズ本人だ。しかし現在彼はガラル地方のジムチャレンジの運営でガラルを離れる事が出来ず、その証拠に現地のメディア放送にも出演している。
つまりカントーに来れる訳がないのだ。
「双子の兄弟か或いは影武者か‥わからない事だらけだな‥」
同一人物が同じ世界に二人もいる事に気味の悪さを覚えた赤髪の青年。並行世界や異世界と言った別世界から訪れた人間とでも言うのだろうか。
青年はそのまま歩き始めるのかと思いきやその場で佇んだまま背後の倉庫から感じる好奇の視線の主に声をかけていた。
「さっきからそこで見てる奴出てこい。俺たちを出し抜こうとしても無駄だ。」
「‥やはり見破られていた様だね。」
倉庫の影から出てきたのは黒い帽子を被った緑髪の青年。
その青年の眼は目の前の赤髪の青年を捉えていた。好奇心とポケモンを慈しむ様なその瞳はロケット団とは無関係なのであろうか。
「それにしてもキミのトモダチ‥かなり懐いていたね。とても信頼している‥いいトレーナーだ。」
「友達だと?‥そんな安っぽい関係じゃねえさ。」
緑髪の青年は赤髪の青年とポケモン達との間の強固な信頼に一目で信用できると確信したのだろう。赤髪の青年の元に近づき優しく微笑む。
その姿を見た赤髪の青年は軽く息を付くと緑髪の青年に向き直り口を開いた。
「‥まあいい、見る限り害はなさそうだ。俺はシルバーだ。あんたは?」
「ボクはN。なるほどいい目だ。よろしく頼むよシルバー」
シルバーとN。
二人はまるで旧来の友と接するかの様な自然な語り口で話し出す。
それは世間では悪と称される父を持つ二人だから深層意識で惹かれあったとでも言うのだろうか。
ここでもまた運命の出会いが幕を開けたのであった。
‥‥‥‥
「えっと‥わたしはリーリエと申します。」
世捨て人の様な風貌の男Fにおそるおそる挨拶をするリーリエ。
Fは彼女を一瞥した後に彼女の前に立つジカルデに目をやる。
「ゼッ!」
ジカルデは目にも止まらぬ早さでその場から立ち去って行く。
まさに秩序以外には関心を持たぬ機械じみた装置そのものだ。
「!早い‥まるで見えませんでした。あのポケモンさんは一体‥」
「秩序を司るポケモンジカルデ‥言わば破壊と創造の間である中道中庸を是とする存在‥と言うのでしょうか。」
リーリエがジガルデの早さに驚いている中、淡々と説明するF。
Fとジガルデの関係性も気になったが、何故秩序にそこまで拘るのかリーリエは疑問符を浮かべていた。
「秩序を司る‥?」
「ええ おそらくですが、世界の均衡を保つにはバランスが不可欠‥どちらに傾きすぎてはいけないという事なのでしょう。先程の男がいい例です。奪い支配するだけの存在ではいずれ世界は枯渇し行き詰まる。」
「‥‥」
ジカルデは世界の均衡を保つ為の存在だと言う。
今回もそうだ。森の秩序を乱したUBへの制裁
そして謎の男ゲーチスの強い野心はおそらく支配。搾取して奪い続けるだけでは資源も思いも枯渇し、世界は暗黒の淵へと立たされる。
リーリエが何も言えずにいる中、Fは更に言葉を紡いでいく。
「‥かと言って反対に与え続ける存在というのも良くはない筈‥ジガルデはわたしに何を見出そうとしているのでしょうか?」
「与えるものと奪うもの。相反する二つの事柄‥世界をより良くする為か‥」
だが反対に与えてばかりでは成長に繋がらない。与えるものと奪うものは相反するものでありながら欠かす事の出来ない要素である。
リーリエはまるでFが世界を‥そして未来を案じているかの様な発言に一人の人物を思い浮かべ、その人物である彼とFを重ねて見ていた。
「‥まるでクミチョーさんの様ですね。未来の為に今できる事を考えている様で‥」
「ワビ組の組長‥裏社会の平定者ですか。君から見てあの男はどう映るのですか?」
リーリエの発言を耳にしたFはリーリエの眼を捉えていた。組長が考える未来についても知りたかったがまずは彼が一体どの様な人物であるのか強い興味を示していたのだ。
「クミチョーさん‥いいえ先生は素晴らしい方です。未熟なわたしを教え導こうとしています。あの人が望む意志をわたしに託そうとしているとNさんが‥」
「N‥?かつて解放を謳ったある組織の王がそんな名を語っていたとか‥ワビ組の組長はそんな者とも繋がりが‥」
イッシュ地方で暗躍したプラズマ団の王N
解放という名目で人々からポケモンを解き放つ組織の王だ。だが角度を変えて見るとそれはまさに「奪うもの」に見えるだろう
しかしリーリエにとってNとは組長の友であり、自身にトレーナーとしての在り方を伝える先輩でもある。事情を知らないリーリエは疑問符を浮かべていた。
「?それってどういう‥?」
「‥失礼。ただの戯言です。つまり意志を託すと言う事は彼の過去に関係があると言えるのでしょう。これまでの過去や経緯から彼は自身が望む世界を作りあげ君にその志を託そうとしていると‥」
かつて奪う側にいたと思われる男N。彼が組長の思想を信じてその思想をリーリエに託す事を望んでいる様に見える。
Nが奪う側から与える側の思想へ至ったのも彼に影響を受けたのではないかとFは結論づけた。
リーリエはそんな意図など知らずに言葉だけを受け取り、組長の過去に真意があるのかと彼の過去についてを小言で呟いた。
「過去‥まさかロケットチルドレンが‥?」
「ロケットチルドレン‥次期ロケット団を担う為に教育された二世とも呼べる子供達‥いわば奪われたものか。」
Fは嘆く様に空を見上げていた。
ここから遠き地、カロス地方にてフレア団と呼ばれる組織によって引き起こされた最終兵器騒動。
フレア団は一人のボスによる過激な思想が招いた悲劇の末路だ。そのフレア団の意思を継ぐ二世の子供達。
その子供達の風評被害による冤罪や非難の眼差しは未来を暗いものへと導いていく。
Fはその二世の子供達と彼を重ねて見ていたのかもしれない。
「彼もかつて奪われたものだったと。そうなると‥‥裏社会を平定する為に与える側では無く奪う側にまわった筈‥しかしそれにしては人々から感謝される事が多い様ですね。君も含めて」
大人達の利己的な欲望に振り回された哀れな被害者が彼である。つまり彼は人格も生き方もアイデンティティたる存在そのものも全て奪われていた。
だが彼は持ち前の能力を活かしてどん底から這い上がり、ワビ組を結成して裏社会の監視者にして平定者の座に君臨した。
だがそれは言い換えれば奪う側の人間に成り変わっただけだ。しかし奪うものとして生きているのに彼の周りにはリーリエやしてんのうなど自然と人が集う。
Fはその事に疑問符を浮かべていた。
その反応に対してリーリエは疑いも無く自身の思いを口にした。
「先生はそんな事はしません。素晴らしい世界を望んでいるのですから」
空は青いのが当然と言わんばかりの疑いの無い答え。
それ程までにリーリエと組長の間には強固な絆が芽生えているのだろう。
Fは記憶を失い、己が何者なのかを問う事がある。断片的にふとよぎるもの‥それは自身もかつて美しい世界を望んでいた事だ。
その美しい世界と「奪うもの」と「与えるもの」はどの様に関わって来るのかはまだわからない。
己の使命の一つとしてそれを見つける為にもワビ組の組長とその弟子のリーリエの二人の様子を見るのも悪く無いものかと感じていた。
「素晴らしい世界か。わたしもかつて美しい世界を望んだ‥らしいのですが何もわからずにいる。彼の望む世界とかつて望んだ私の世界はどう違うのか‥」
「彼と君を見ていればわかるかもしれませんね。」
「Fさん‥」
Fが口角を上げて優しい笑みを浮かべる。
その柔らかい雰囲気にリーリエも緊張が解けて、Fの気持ちに寄り添える様な思いだった。
「お話に付き合って頂きありがとうございます。彼が望む世界の在り方に興味が湧きました。それでは英雄の卵よ。またお会いしましょう。」
Fは再び険しい表情を浮かべてリーリエを一瞥するとそのまま森の中へと進み、影に重なる様に姿を消していく。リーリエはその後ろ姿をただ見つめていた。
(Fさん‥とても寂しい目をしていたな‥クミチョーさんも昔はあんな目をしていたのでしょうか?)
(素晴らしき世界‥ありのままの世界とわたしに託す意志。‥先生から教えてもらうものはまだまだたくさんある様です。)
リーリエは拳を握り前を見る。
UBによって破壊された木々の間から照らす光がかすかな希望の光に見えていた。
彼の過去は暗黒の道そのものだったが、これからの未来は明るいものだとリーリエは確信したのだ。
‥‥
‥‥‥
『‥なるほど、UBの調査は進んでいるのね。それはよかったわ。』
「ええ。アローラから来たエーテル財団と協力してUBの調査をすれば何かわかるかと」
私とイブキさんがロケット団とスジモンタッグバトルをした日から大体3日経った。
今、私はイブキさんと通話している。
アローラから来たエーテル財団の職員さんらが数名来てUBの調査をしてくれているから業務負担が減ってかなり助かーる。ちなみにみんな男です。クソが!
女性職員の制服が見たかったのによ!
『‥それにしてもリーリエが無事で良かったわね。彼女は何故拐われたのか‥』
あの後リーリエが拐われた後についてだが、私やイブキさんのポケモン達が捜索し、スピアーが見つけて私の元まで連れてきた。
リーリエが事の経緯を説明し、軽く要約するとUBのテッカグヤと未知のUB‥話を聞く限りデンジュモク?がリーリエを襲った所を別のポケモンに助けられたとか‥何とか
いや情報量多すぎるよー!
『あの後わたしの方でも調べてみたわ。リーリエの言っていたゲーチスについてをね』
そう!そして何と拐った主犯があのゲーチスだったらしい。あのゲドーチスめ!
私はあの時怒りに震えゲーチスにケジメ案件しようかと思ったがリーリエに止められた。
大丈夫だって100回ひんしにするだけよ。
コンクリ詰めしてセキチク湾に沈めるだけだから!
『ゲーチス‥ジョウトで暗躍したプラズマ団リョクシが信奉していた七賢人‥」
『調べた限りだと2年前のイッシュの氷漬け騒動でも彼が暗躍し、その後は姿を消していたらしいけどまさかカントーにいるとはね‥』
リョクシって誰だっけ?忘れた!
それに話聞く限りダークトリニティいなかったし、リベンジ・レインボーロケット団の食客とか言ってたから他の並行世界の住人とかだろうね。知らんけど
この世界のゲーチスはおそらく廃人である事は確かだろう。ゲーチス様はもう正気では‥って言ってたし。
つまり廃人確定濃厚バレバレ
『あと謎のポケモンジカルデか‥聞いた事ないわね。そのポケモンと一緒にいた男F‥』
そうそう!リーリエがあの犬っころことジガルデとも会っていたらしい。
てかどんだけ伝説と鉢合わせるのよ君!
ほしぐもちゃんやスイクンといい最早主人公だろ!
それにFって誰よ!まさか復活のフラダリ!?
私も昔世話になりましたよ。前世で首回してる奴見て笑ってました。クソコラの犠牲者です。はい
ジカルデとフラダリさんの共通点がまるで思い浮かばんが、聞いた話だと白髪に白髭の背筋曲がったおじいさんみたいだし別人は確定やろ。
つまりただのF!なぜイニシャルだけなのかは不明だがね。Nといい流行ってんの?最近のトレンド?
じゃあ‥私はスジモンの
「ジカルデ‥という事はゼルネアスにイベルタルも関係あるのかもしれません。」
私は思わずそう言った。
XYのパッケージ伝説では無い第三の伝説であるジカルデ。Z版というマイナーチェンジ版の主役に抜擢されるかと思ったら、まさかのZ版は世に出ず新作SMのアローラにバカンスに行ってたりとあいつ本当に秩序の守護者か?
『ゼルネアスにイベルタル‥確かカロス地方の伝説のポケモンよね?2年前‥確かフレア団のフラダリが最終兵器を放った時のエネルギー源に使われたとか‥』
流石に知ってるよねー
そっかーフラダリさんが、残念ですが さようならしたのが2年前なんだねーまあ正確に言うと2年半前で、BW2の事件と同時期に起きたらしいがね。
私の思いとは裏腹にイブキさんはため息をつきながら話すのを続けていく。
『破壊と創造‥それに秩序を司る存在か。UBだけでも厄介なのにカントー地方はいつから魔境と化したのかしら?』
それはそうやな。まさに特異点人外魔境巣窟カントーといった所かしらね。
ジムリーダー以上にしてんのうは激務やろうからイブキさんの声色からして疲労の表情を浮かべているのがわかりますよ。
そんな役職とジムリーダーの二足の草鞋を履くアオキさんやばくね?営業入れたら三足の草鞋になるやん。人間辞めてんの??
『全く、プラズマ団といいフレア団といい面倒ごとばかり起こすわね‥今回のロケット団もそう。ボスのサカキは何を考えて‥』
「サカキ様‥」
まあ、そう思うよねー。悪の組織の面倒事なんてリーグ側からしてみればたまったもんじゃないすよね
私としては憧れのサカキ様を見るのは地味に嬉しくて、声色が変わりかけたが向こうからすれば何嬉しそうな声出してんのよ!わたしの事情も知らないで!!っていちゃもんつけられそうなんだよな‥
『‥!やっぱり‥今あなたサカキ様って‥』
あ!ごめんなさい!
憧れの人に会える嬉しさが隠しきれずに声に出てたか!?まずい!イブキさんにいちゃもんつけられる‥
違うんすよこれは!
あー!いい理由が思い浮かばん!!
「‥‥」
『あ‥ごめんなさい。刺激の強い話よね‥ロケットチルドレンのあなたには‥』
いえいえお構いなく‥っていやいや!その話はやめてェ!
ますます誤解と偏見が伝播していくぅうう!
私無関係なんだって!リーリエにもその噂流してねえだろうな!?
「イブキさん。その話はその‥(私の精神にくるから)やめて頂きたい‥」
『そう‥よね。ごめんなさい。わたしとした事が迂闊だったわ。』
私の必死さが伝わったのかイブキさんも思わず黙る。
普段からそれくらい聞き分けよかったらいいのにね
「わかればいいんです。もうあんな思い(変な目で見られるの)はごめんだ‥!」
「イブキさんありがとうございました。それではまた」プツン!
あーもう知るか!私は相手が話そうとする前に捲し立てる様に一方的に電話を切った
あの話すると面倒くさくてね。言い訳するのもだるくなってきて精神がやばい。
『ロトロト!クミチョー!そろそろ充電切れますぜロト!一旦スリープモードに入りやす!ロト!』
あー長電話しちゃったからかー
いつも長時間労働に感謝だぜスマホロトム君!
「そうか‥ありがとうロトム。しっかり休んでくれ」
『オッス‥ではお控えなすって‥ロト!』
スマホロトムは私の袖の中に入り、スリープモードで休んだ様だ。
さぁて事務所に戻るのもだるいし気分転換にちょっと散歩でもしようかな
街中で大人のお姉さんと久しぶりに熱い一夜を過ごしたいぜ!
私が邪念を抱きながら歩き出したその時背後から何かが近づいてきて声をかけてきた。
「おぉー!それはスマホロトムですね!まさか過去の世界‥失礼カントーで見ることになるとはね」
「ん?」
なんだこのおっさん!?
この妙にラフというかテンションが高くてグレーなスーツ着こなした怪しいやつはよお!
「さてと、あなたがワビ組の組長でよいのかな?」
「‥何用ですか?俺に用‥だと?」
私をスジモンとして認知しているだと!?
これは怪しさダイマックスですね‥
黒いハンチング帽にグラサンかけてて相手もその筋の者(スジモン)である事は明白!
目と目が合えばカチコミバトル!
ナニモンじゃ!我ぇ!
「いやいや!これはとんだご無礼を。普段は社長秘書のオリ‥いえマネージャーが管理しているからつい癖が出てしまいましたよ。」
「‥‥」
「わたくしは‥ふむ‥ロサとでもお呼びください。」
はいロサさん。おっさんと混ぜてロッさんでいい?
あと私が話さないことをいい事に捲し立てる様に話すのやめてもらっていいすか?
私が口を開こうとする前に目の前のロッさんは口角を上げてなんか邪悪な笑みを浮かべると更に口を動かしていた。
「あなたにはガラル‥いえこの先の未来についてのお話をしたい。この先100年、1000年後の行く末についてをね」
難しい話はやめてぇ‥
スジモンは頭を使えないんすよ。
未来の話とかまた明日という未来でお願いしたいです
それか1000年後の大人のお姉さんはどうなってるのか興味ありますあります。
だけどこのおっさん見た事あるような‥?
うーん思い出せへんなぁ‥誰やぁん?
‥‥‥
「切られてしまったわね‥」
「相手はあのロケット団。彼も苦悩しているようね‥無理もない話だわ‥未だ過去に囚われている彼にはあまりにも残酷な話だもの」
携帯端末でワビ組組長との会話を終えて一人個室のソファに座るイブキは深呼吸し、彼の事を案じる。
組長やリーリエを交えてカントーに襲来したUBについての情報交換をしていた時にリベンジ・レインボーロケット団の襲撃でリーリエが拐われたが、UB達の襲撃と謎のポケモンジカルデとの邂逅が重なるもリーリエは無事帰還した。
幸いにも怪我や心の傷を負う事も無く日々を過ごしている事を組長から聞いて安心したが、問題は彼自身であった。
(一人称が『俺』の時はワビ組組長として‥『私』と言う時はロケット団関連の時に変わる。つまりそれだけ彼の中でサカキの存在は大きいのか‥)
ロケット団襲撃後から彼の様子がおかしいのだ。
組長として振る舞う時は「俺」といい、ロケット団関係の話になると時折「私」になる。
おそらく己の心の内側に封じ込めていたロケットチルドレンとしての記憶が蘇り、意識が混濁した状態であるのだろう。過去の己と今の己が入り混じる二重人格状態に近いと言える。
(サカキがもし彼の前に現れたらロケットチルドレンの記憶が蘇るのは確実ね。今とは違う冷酷な彼に戻ってしまうか、或いは精神錯乱を起こすか‥いえ、明らかに前者ね。ゲーチスの話を聞いた時の彼の殺意は尋常ではなかったもの‥)
プラズマ団の黒幕ゲーチス。
3年前のジョウトプラズマ団を率いたリョクシが信奉していた存在であり、2年前にイッシュ地方を混乱に陥れた黒幕がゲーチスだ。
ワビ組の組長はゲーチス本人に対して直接的な被害を受けた訳ではないのだが彼に向けた
(‥もしそうなったとしたら彼はサカキに付くかもしれない‥か)
ロケット団との接触が心の奥底で眠るロケットチルドレンとしての彼を目覚めさせた。そうとしか言いようがない。
これまで彼は冷酷な目を向ける事はあったが、何者かに対しての強い殺意を向ける事は無かった。
つまりそれは過去に受けた洗脳の発露。これまで隠していた本性が目覚める予兆だと言うのだろうか。
それが目覚めたとしたら━━
ロケット団ボスのサカキに再び忠誠を誓う可能性が高い。
そんな事はありえない。
彼は心の奥底は優しさに満ちている。
大事な組やリーリエ、そしてライバルであるイブキを捨てて、一人暗黒の道を進むはずが無い。
イブキは未だにそう信じている。
だがもしそれでも彼がその道を進むならば━━
(‥ライバルのあなたにはそうなって欲しくない‥!でも、わたしやリーリエ達が引き止めてもなお、その道を進むというのなら━━)
(‥してんのうとしてライバルであるあなたを倒さなければならない。世に仇する敵として‥)
倒すべきとして立ち塞がらなくてはならない。
握り拳を作り、苦悶の表情を浮かべるイブキ。
それはライバル、いや友として渡すべき引導だ。
揺れ動く感情にイブキはただ一人苦しむばかりであった。
主人公‥ロケットチルドレンである濡れ衣を着せられたがサカキを様付けする時点で残当。それに気づかないのが悪い。
リーリエ‥組長が考えるありのままの世界(勘違い)とその意志を引き継ぐ為にもまずは強くなることを決意。更に特訓にのめり込んだとか。
F‥主人公の思う素晴らしき世界とは何かを見定める為ほんの少しだけカントーに滞在する事に。だが第一優先はジガルデセルとジガルデコアの収集である。
イブキ‥主人公が過去のトラウマからロケット団と向き合えず苦悩していると勘違い。もしかしたらロケット団側に味方すると思い内心かなり苦しんでいる。
N‥巷で悪行を働くRRR団を調べていた時にシルバーと出会った。第一印象は結構良い。
シルバー‥RRR団狩りをしている時にNと出会った。第一印象は悪い奴では無いだろうが警戒するに越した事はないと言った感じ。
ロサ‥グレースーツのおっさん。ガラルのリーグ委員長に酷似したRRR団の食客の一人。
正体はもちろん‥