今話も視点ゴロゴロ変わりますのでよろしくです!
原作と同じ展開の所はカットしている場面もあるのでご了承ください。
困惑。
皆さんはどんな時にこの言葉を使うのだろうか。
私は先日マチエールに本性を知られた事もそうだし、カナリィさんとキョウヤ君のランクアップ戦をアーカイブで見た時にキョウヤ君が『自分が瞬殺して終わりです』と煽り散らす姿を見た事に対してこの言葉が当てはまると言えるね。炎上案件かな?
そして今この場においても私‥‥と一緒に過ごすムクちゃんは二人同じ気持ちを抱いております。
それを代弁するかの様に横にいるムクちゃんは言葉を紡ぐ。
「タチバナさん。‥どうしてこうなった?」
「シャーン‥」
「いや私に聞かないでくれ」
ムクちゃんとその相棒シャンデラが仲良くため息を吐き、私はそれに何も言えず困惑するのみ。
シャンデラも呆れる事あるんだね。私はシャンデラに目をやるとシャンデラとムクちゃんの前に佇む大きな影に目を移す。
「なるほど、あなたが絡んでいたのですね?タチバナさん」
はい、ミアレ神拳‥いやジャスティス拳法の使い手にして筋肉モリモリマッチョマンの変態ことシローが私達を見ています。威圧感半端ねえ‥!
その背後にはキョウヤ君に‥‥うーわ、マチエールもいるよ‥‥
こんな狭い地下空間だと逃げれへんわな。
私が絶望の空気を出す中、背後のキョウヤ君はゆっくりと口を開いた。
「タチバナさん‥あなたがムクさんが姿を眩ましたのはあなたが原因だと?」
「‥どういう事だ?」
私は思わず聞き返す。何が言いてえ?
まさかムクちゃんが姿を眩ました事を誘拐と思ってらっしゃる?誤解じゃよ!見た目スジモンフェイスだがそんな事しないって!
「‥‥っ!」
私は咄嗟にマチエールを見るとサッと目を逸らされた
はぁー泣けるぜ。‥そうだよね。私の下心ありきの脳内を知ったらこんな汚物見たくも無いわなぁ‥
気まずさダイマックスだよ‥‥
私の本性(全然&下心)を唯一知る人だよ?ぶっちゃけると会いたくなかった。‥あー辛いぜ。
私は必死にどうしてこうなったと言わんばかりに考え込んでいた。現実逃避しないとやってられんからな。
えーと、確か色々あってお昼頃街を散歩してたら元気なくトボトボ歩くムクちゃんがいたので心配になって声をかけたのよ。そしたら死んだ目で事情を語ってくれました。経緯は以下の通りです。
『裏世界の王。やばい。シローがうるさい。もう嫌になる』
↓
『ストレスがやばい。ランクアップ戦させたくない。お気に入りの場所にいく。』
↓
『‥折角なら来る?日頃話を聞いてくれるお礼。
お気に入りの場所を教える。』
↓
『やはりこの場所はいい。タチバナさんはいつでも使ってくれて構わない。ここのヒトモシ達には話しておくから』
↓
『まさかシロー?‥探しにきたか。面倒。』
↓
そして今に至る‥という事だぁあ!
とまあ彼女は定期的にここミアレ下水道に足を運び、一人で過ごすらしい。
今回もシローが相変わらずジャスティスの会でやらかしまくり、クレーム対応やらで市役所に呼び出される日々が増え、遂にムクちゃんは限界に達してここに逃げ出したみたいな感じだ。
ちなみに彼女のお気に入りの場所でもあるミアレ下水道に私を連れてきたのは日頃の恩返しでもあるらしい
私のシャンデラ好き発言を覚えてくれていたのか、ここにはヒトモシ系が多くいる。素晴らしいね。
何故か私に寄って来る子が多くて、ムクちゃんのシャンデラにも好かれております。嬉しいけど、なんか怖いっす。
あと「裏世界の王ならこういう場所の方が落ち着くでしょ?」との事。
いやそれってあの世のことじゃ‥冥府の王ってこと?
‥んなわけないか!私死んでないし!まあ一回死んだけど!転生したからノーカン!
おふざけはさておき何やらキョウヤ君が推理しようとしているが‥君はいつから名探偵の助手になったんだいワトソン君?
「俺も何がなんだかって感じなんですが‥何か事情があるんでしょう?あのタチバナさんが誘拐‥いや人を連れ出すなんて深い理由がある筈‥!」
いや私連れられた方なんですが‥‥
まあ深い意味はないですよ。探偵と化したキョウヤ君はさておき問題はシローお前じゃい!
腕組んでわかってますよと言わんばかりに頷いてて腹立つねん。
そしてシローは私とムクちゃん交互に目をやると目に涙を浮かべて言葉を発した。
「水臭いですよタチバナさん。まさかムクと駆け落ちなんて‥!自分は認めてますのに‥‥」
「はぁ‥だから違う」
「シャン‥」
「まだ誤解してるのか‥」
まーだ誤解してんのか。頭ジャスティスすぎん??
もう何も言えんわ。脳内お花畑過ぎて除草剤で枯らしてやりたいくらいだぜ。B◯Gモ◯ターの様にな!
私とムクちゃんは互いにため息を吐きシャンデラもフリフリと左右に動いております。
「え?シローさん今なんて?」
「‥どう言う事なのかな‥」
私達が困惑するのだから当然奥にいるキョウヤ君とマチエールも例外ではなく、二人して首を傾げて困惑していた。
二人から見たらまさに置いてけぼりの超展開と言えるだろう。私もそう思うが‥
そしてシローは感涙しながらも握り拳を震わせて私達に迫ると嬉しそうに声を荒げていく。近いしこわい
「遠慮する必要はありません!自分の相棒をメガシンカ無しで破ったその実力‥あなたこそムクのパートナーに相応しい!」
「大声うるさい。そんな訳ない。」
シローのテンションとは逆に冷ややかな目線と心底ウザそうな態度でシローに毒を吐くムクちゃん。
わかるってばよ‥うざいよな私ですらうざいと思うもん。悪い奴ではないと思うんだが‥その‥‥ね?
私とムクちゃんがドン引きする中、恐る恐ると言った感じでキョウヤ君が近づくとこの状況に対して理解出来ないのかシローに疑問を口にした。
「あの、パートナーってなんですか?タッグバトルの相棒的な?」
「いえ!人生のです!タチバナさんとムクはまさに運命とも呼べる仲!!」
「えぇ‥」
いい加減にシロー!
キョウヤ君ドン引きしてるじゃないか‥シローの勢いに押され気味のキョウヤ君だが、彼のそばに来たマチエールが状況を見て何やら耳打ちしているのが見えた
「これは誤解だよねキョウヤ?」
「ですね。反応から見るにこれはシローさんの思い違いかと。ムクさんはこんな人をお兄さんに持って大変だ‥」
「!‥兄‥か。‥‥あたしとの距離がこんなにも近いのに、こんなにも遠いなんて‥‥お兄ちゃん‥」
「マチエールさん?」
「あ、うん‥なんでもないよ。‥本当になんでも‥‥ないんだ。」
内緒話をしている様だが、小声だから全く聞こえん。何やらマチエールがびっくりしたかと思ったら落ち込んでいる様に見える。よくわからん。
考えても埒が明かないので私はとにかく周りに任せる事にした。
下手に動くとボロが出るからね。
私がキョウヤ君達から目線をムクちゃん達に向けると相変わらずため息吐きまくりの彼女に思わず同情した
「とにかく違う。シローはいつも私の話を聞かない。そろそろ反省して」
「お聞きしたいんですけど、ムクさんは何故ここに?それとタチバナさんと一緒にいるのはなんで‥?」
「‥わたしに勝てたら真実を教える‥‥
だってわたしはポケモントレーナーだから」
あーこれ結構イラついてるねムクちゃん。
キョウヤ君が純粋にムクちゃんに質問するとムクちゃんは面倒だと言わんばかりに髪をいじる。
最早勝負でしか語れないと思ったのだろうキョウヤ君はボールを取り出すとムクちゃんと対面し、ポケモンバトルの態勢へと移っていく。
「わかりました。じゃあ行きます!」
「みんなを追い返す為にも絶対勝利‥!
力こそパワー!力こそジャスティス!」
ここからはカットォ!
そう言う訳でムクちゃんとキョウヤ君がバトりましたが結果はメガアブソルを使ったキョウヤ君の勝ちです。
まさかのムクちゃんもメガシンカ使いとな。レベル高いっすよ。あの謎ポーズことジャスティスポーズ決めたり、気に入ってはいるのか‥
メガアブソルが可愛い事はよくわかった。
しかしメガシャンデラデザインいいなー!
余計な物は足さずに必要なものだけ加えた最高のデザインだね。流石はゲームフリークだ‥!新規デザインマジセンスよすぎぃ!
勝負後は誤解が無事解けた様でシローはムクちゃんと私の関係が間違った事を謝罪。
私とムクちゃんがこの場にいる理由を話した後、シローとキョウヤ君はランクアップ戦の為、先にここから出た。
ムクちゃんはキョウヤ君を知っていた様だが会話の内容からしてムクちゃんもカナリィカルトクイズ王に出てたらしい。
まさかカフェで一緒にいるフード被ったギャル少女ってカナリィさんなの??じゃあ想い人ってカナリィさん??禁断の恋ですわね〜 あら〜
そこも驚きだがまさかキョウヤ君がカナリィカルトクイズ王だとはね‥つまりはファン!ピュール君もガチ勢だしなんなの???ファンなのにカナリィさん煽り散らすって意味不明です。
あ、ちなみにだがその後私はマチエールと話す事なく帰りました。
私いなくても問題ないし、なんか気まずいからなぁ!目線を向けても目を逸らされるし、確実に引かれてるよねあれ?泣けるぜ‥
ムクちゃんとマチエールで仲良く話しててくれ。
さらばだ!!!!
‥‥‥‥
side マチエール
「なんと言うか‥奇妙な事件だったね。」
ミアレ一の名探偵マチエール。彼女の今回の依頼はまた難儀であった。
それは失踪した捜索対象の保護である。
対象はジャスティスの会の代表シローの妹ムク。
突如失踪した彼女であったが無事対象である彼女を持ち前の推理と調査でミアレ下水道にて発見。
そこには思わぬ同行者もいたがその同行者こと彼はこの騒動の黒幕ではなかった。
何故彼女が失踪に踏み切ったのか、その理由は彼女の兄であるシローへの不満が主である。シローが引き起こすジャスティスの会へのクレーム処理を彼女が請け負っており兄への抗議を兼ねての行動であった。
そして隣に佇む同行者である彼ことタチバナもムクをを心配して彼女に寄り添っていただけと言うのが事の顛末である。
今回ムクの捜索を手伝った助手とも呼べる存在キョウヤの活躍もあり現在騒動は一段楽。
キョウヤはシローとのランクアップ戦の為ジャスティス道場へ一足先に向かったのでマチエールとは一旦別れる形となったのだ。
マチエールは一人、この騒動での聞き込み調査での発言などを振り返っていた。
『ああ、この写真の子なら前にDG4の子と来てたしタチバナのダンナが気にかけてた子だな!ダンナが気にかけたからか結構仲がいいみたいだぜ?』
『ムクちゃんならどこにもない世界を探しているって言ってたけど、え?タチバナ‥‥?ごめん、知らない名前だなー探偵さんが言ってた服装の特徴からしてMr.ふりそで氏しか頭に浮かばないけど』
『なんと!タチバナさんとムクはそう言う仲ではなく、自分の思い違いだったと‥!タチバナさんの実力やお人柄ならムクに相応しいと思ったのですが‥‥多大なるご迷惑申し訳ありません。』
ヌーヴォカフェの女性店員やDG4のカナリィ、更にはジャスティスの会のシロー。カナリィは別として概ねタチバナに対して好意的な意見が多く、彼がこの街に馴染んでいるのかが良くわかる。
ムクとタチバナが互いに想い人であるとシローは勘違いしていた場面もあったのだが、現在その誤解は解けた。だが言い換えればそれ程までに二人は仲が良いと言える。
彼にとってはある意味生まれ育った故郷でもあるからミアレの住人達と話が合うのだろう。
そんな彼への評価に対して、マチエールは拳を握り強い思いを抱いていた。
(お兄ちゃん‥色んな人から慕われているんだ‥
すごいなぁ。でもあたしには一言もなかった‥無理もないよね。お兄ちゃんは悪くない。悪いのはあたし‥
お兄ちゃんが何回かあたしを気遣って目配せしたのはわかったけどあたしは怖くて目を逸らした‥最低だよね。そんな妹呆れちゃうよね‥)
マチエールは俯き、ただ後悔の念に包まれる。
先日タチバナが実の兄と判明した時から彼に対して向ける感情の整理が出来ずにいたのだ。
彼は今回も幾度かマチエールを気にかける様な目線を向けていたのだが彼女はその目線に怯え、目を逸らし続けていた。
彼の事を兄と呼びたい感情もあるが、これまでタチバナに疑いの目を向け続けた強い罪悪感と自罰的思考に彼女は苦しんでいたのだ。
荒い呼吸になりながらも深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせると背後から一人の女性が姿を現し、声をかける。
「マチエールさん。世話になった。戻ってシローとキョウヤのランクアップ戦の手続きをしなくてはならない。お先に失礼する。」
マチエールに声をかけたのは今回失踪したムク本人。メガシンカ使いでもある実力あるトレーナーである。
今回の騒動にタチバナは関与しておらず、ただ彼女を純粋に心配して寄り添う為にいただけであった。
シローが誤解するほどの仲の良さもそうだが、彼女の否定は嘘で本当は彼に対して想いを秘めているのではないのか、マチエールは彼女に言葉を発していく。
「ちょっと待ってムクさん」
「?何?」
「おにい‥‥タチバナさんと仲がいいんだね?
物凄く懐いている様な感じがしたし、シローさんも評価してたし本当はそんな気があったりするのかな?」
揶揄う様に優しく笑みを浮かべてムクに問いかけるがマチエールの心の奥底では無意識の内に黒い感情が芽生えようとしていた。
これまでであればなんとも思っていなかったが彼を兄と認識してから唯一の家族であるタチバナをムクに盗られてしまい孤独になる事を恐れた身勝手な独占欲。
ムクがその問いに対して口を開くまでの僅か1秒弱も長く感じるほどの緊張感。
その緊張を破る様に彼女は言葉を紡いだ。
「否定。わたしにそんな想いは毛頭ない。
さっきも言ってたけど全てシローの勘違い。そもそもあの人のパートナーなんて恐れ多過ぎる。だって裏世界の王なのだから」
「!?ムクさん‥なんでその事を知ってるの‥?」
マチエールはムクの最後の一言に別の意味で強い衝撃を受けていた。
何故ならばムクがタチバナの素性を知っているからだ現在彼を裏社会の王としての一面を知っているのはマチエールただ一人。
名探偵としての観察力や彼の行動に疑問を抱いた事がきっかけで辿り着いた真実だがムクはあっさりと彼の素性を看破したのだ。
マチエールは何故ムクがその事を知っているのかを聞き返すと彼女もゆっくりと言葉を発した。
「街中であの人を慕うゴーストポケモンに護衛達‥
わたしのシャンデラも魅了される程の魂の強さは正に王者である。故にそう判断した。あの人はあまり触れて欲しくない様にも見えるが」
「そうなんだ‥‥タチバナさん。ムクさんを闇の世界に巻き込まない為にしているんだね‥」
タチバナは表社会の人間を巻き込む事を是としない人間である。
つまりムクに正体を明かさず彼女もマチエールと同じ様に彼の正体を突き止めたのだ。
マチエールとは違いゴーストタイプ使いのエキスパートらしい彼女なりのアプローチで突き止めた。
彼女の腕前の高さに驚くがマチエールが気になったのは彼女の放ったある一言。それは彼の魂についての言及だ。
マチエールはその魂について考察を深めていく。
(それに魂が強い‥か。つまりそれだけ高潔な魂を持っているって事だよね?
強い魂を好むゴーストタイプを魅了するほどのカリスマ‥‥お兄ちゃんはやっぱり王としての教育を‥
いやそれだけじゃない)
彼が持つ魂の強さ、それは彼自身が持つ高潔な魂の事であるのだろう。
マチエールに疑われても尚兄として妹を守ろうとするその気概や人を思いやれる優しさこそが彼の魂の持つ本来の強さである。
そこにゴーストタイプポケモン達が惹かれているのだろうか。
だがそれ程までに強い魂を持つにしても限度がある筈だ。ゴーストタイプは本来人の負の側面を好むものである。つまり彼の強い魂とは別の負の側面‥それこそがゴーストタイプポケモンが彼に惹かれる本当の理由であるとマチエールは推察を続ける。
(もしかしてこれもロケットチルドレンの弊害?その才能を引き出す為に魂にも干渉をして能力を高めた‥その結果体はボロボロになり、寿命が少なくなった‥‥やっぱりロケット団は許せないよ)
マチエールは奥歯に力を入れて強く噛み締める。
彼はロケットチルドレン。そこで感じた強い負の感情や改造によって魂を弄られた弊害なども関係しているに違いない。
どこまでも人の尊厳を踏み躙るロケット団という組織に怒りが湧くが、目の前にムクがいる事を思い出した彼女は怒りの感情を隠す。
そんなマチエールの心境に対してムクは自身がタチバナに抱く思いを口にしていた。
「‥タチバナさんにはいつも世話になっている。ジャスティスの会の雑務を手伝って貰ったり、わたしが思い悩んだ時‥特に兄であるシローの相談事にも真摯に聞いてくれる。もし兄ならば理想の兄と言える」
(そうか‥兄としてのシローさんの立場になりながらもムクさんを妹の視点からフォローする。二人の仲を取り持ってくれてるんだ。‥‥やっぱりわたしよりもムクさんの方が妹に‥━━)
━━相応しいのではないか。
その思いが更に彼女の心をかき乱す。
ムクとタチバナの関係性は家族に見える程の仲の良さであった。
兄は自分よりもムクの様な人間を妹として見ているのではないか。唯一血のつながった家族に見捨てられたかの様な絶望感が再び彼女を包む。
本来ならば憎悪や嫉妬の気持ちでムクを見ていたのかもしれない。
だがマチエールは探偵であるのにも関わらず兄の真意にも気付けず、疑念の目で見続けた己を卑下した為かその様な感情を持つ自分すらも嫌いになりかけていた
その思いを吐き出す様にマチエールは無理やり笑みを作り言葉を紡いだ。
「‥‥ムクさんにとってもタチバナさんは頼れるお兄ちゃんなんだね」
「だが血の繋がりは無いから兄とは呼べない。わたしの兄は一応はシロー。‥‥確かにシローはうざいし、うるさいし、話を全く聞かない。
認めたくはないが血の繋がりがあるのなら家族。そう簡単に縁は切れない
だからタチバナさんにもし血の繋がる家族と呼べる存在がいるのだとしたら羨ましい。」
「!」
ムクの発言に驚く様に目を向けるマチエール
タチバナは確かにムクを可愛がってはいたが妹として見ているわけではなかった。
実の妹はマチエールただ一人。彼が向ける家族、つまり兄として向ける側面はマチエールだけなのだ。
どんなに距離が離れていても血の繋がりだけは決して途切れる事がない不変の絆。
ムクが羨むほどの兄としての無償の愛こそがマチエールに向けられているのだ。
「どんなにうるさくてもやかましくても認めざるのを得ない。切っても切れないもの‥‥家族ってそう言うものである事は確か。」
血は水よりも濃い。
その言葉の真意を理解するのに十分なムクの思い。
ムクの発言を聞いたマチエールは俯くと彼との向き合い方をどうすべきかをひたすらに思案していく。
(家族の縁は切れない‥‥か。あたしのことを見捨てた訳じゃないって見ていいのかな?
じゃあ、お兄ちゃんって呼んでもいいの?家族の温もりを感じてもいいの?‥こんなあたしが‥それを求めても‥‥)
(でもあたしにはやっぱりその一歩が重い‥‥
前に踏み出せないよ‥拒絶されるのが怖い‥‥!)
しかしまだ彼女は恐れていた。
強い罪悪感を払拭できず、自罰的な考えが思考を停止させる。
これまで彼を疑った自分を卑下する気持ちもあるが、兄としての無償の愛に甘えたいという相反した想いも持つなど矛盾した思考に嫌気がさすほどに。
その感情がマチエールは一歩先に踏み出す勇気が持たせなかったのだ。
彼女は家族としてタチバナと向き合うにはまだ時間が必要である。
‥‥‥
‥‥‥‥
side キョウヤ
「それにしてもキョウヤはすごいねぇ!これでDランクだよ!」
「きゅるる!」
ジャスティスの会のシローとのランクアップ戦の為にシローの妹ムクの捜索から始まった今回の騒動は無事解決した。
その後はシローとのランクアップ戦に勝利してDランクへと昇格し現在はホテルZの奥の小部屋にてMZ団メンバーによるキョウヤの祝勝会が行われていた。
キョウヤのDランク昇格に喜ぶデウロとフラエッテは満面の笑みを浮かべ更に胸に抱く思いを口にした。
「最近は暴走メガシンカポケモンも控えめだし、レッスンに集中できるのは最高!タチバナさんに披露できるダンスが増えるのは嬉しいなぁ」
ミアレシティの各地で猛威を振るう暴走メガシンカポケモン。MZ団は街を守る為にクエーサー社と協力してそのポケモン達を静めていた。
しかしここ最近は数も少なかった為、デウロは余った時間をダンスレッスンに充てられる事に強い喜びの感情を抱いていた。
彼女が想いを寄せるタチバナに自慢のダンスを披露できる幸せを噛み締めていたのだが、その言葉に水を差すようにピュールは言葉を紡いだ。
「でもタチバナさん。色々と忙しいみたいですよね。電話することが多いし仕事関係でしょうか?」
「まぁしょうがないよねぇ。それに関しては‥
まぁすぐカントーに帰る訳でも無さそうだしこのままずっといてくれたらいいのになぁ‥」
タチバナは最近電話をしている事が多い。
遠目からで詳しくは分からないがおそらく仕事関係の電話ではないかとピュールは勘繰っていた。
デウロもそれに関しては仕方ないと言わんばかりに苦笑いするが想い人と接する時間が減るのは面白くない
二ヶ月以上もミアレに滞在している為、忘れていたが彼は観光客なのだ。
長期に渡り滞在している為、もしかしたらこのままミアレに永住してくれないかと思うデウロであったが、MZ団もデウロと同じ意見である筈だ。
その事をタウニーにも尋ねようとした矢先、突如タウニーのスマホが彼女の眼前に飛び出すと、その画面を見たタウニーは眉をひそめる。
「え?」
「どうかしましたか?」
タウニーの態度の変化を見たピュールは心配の眼差しを向けていく。
タウニーはその問いかけにすぐさま反応せず目を瞑って黙り込むが、すぐさまスマホロトムをしまいピュールに言葉を紡いでいく。
「たいしたことないよ。
それよりピュールおかしくない?今夜もクロワッサンカレーじゃないし」
「ありえないですね
確かに美味しそうですが美的感覚が足りていないのです」
普段と変わらぬ口調でピュールと言葉をかわすタウニー。先ほどの態度は杞憂であったのだと感じる程の和やかな空気。
キョウヤとデウロは不器用ながらも歩み寄ろうとするピュールを微笑ましく見ていた。
MZ団メンバー達の交流はいつまでも続くものであると誰もが思っていた。
しかしこの時誰もが皆思いもしなかったであろう。
MZ団がこの後あるメンバーによって引き起こした新たな騒動に巻き込まれる事に。
‥‥‥‥‥‥
先日のムクちゃんとの騒動後にキョウヤ君も無事シローを下しDランクへランクアップしたらしい。やっぱ早いよね。流石主人公!
私はコーヒー片手に平和なこのひと時を謳歌する。
「やはりここの景色は素晴らしいな。まさに絶景だ」
ソファに座りご満悦の組長くん。私は今ホテルZの屋上にいるのだが、あーやっぱここは最高やね
いつ見ても絶景っすよ。なんかプリズムタワーの工事の関係で徐々に景観が台無しになってる気がするが‥‥まあそれも良きものだね。
ふわぁー眠ぃ‥
またワビ組の奴らから生存確認の電話が多く来るしで割と寝不足なのよね。少しは休ませて欲しい
今日はいつもより起きるのが遅くなったが、ちょっと散歩でもするかね
私はエレベーターを使ってロビーに降りたがそこにはAZにゃんとフラエッテ、そしてピュール君がおるではないか。
おっはー!いや今ほぼ昼だからちわーっす!
何かあったんかいな?
「タチバナさん‥」
「きゅるる‥」
あれ?なんか空気重くね?誰か死んだの?
葬式かよってくらいピュール君死んだ顔したけど何かあったんすか? まさかカナリィさん引退したとか?
おいおいフラエッテ姐さんもどうしたんすかー?姐さんもカナリィファンってやつ?すげえなカナリィさん
「タチバナさん‥!デウロさんとキョウヤが‥」
何やら只事じゃ無さそうだな。うーんどうしたもんか
とりあえず私はピュール君に目をやり状況を説明して欲しい旨を伝える。
「どうした?何かあったのかな?ピュール君」
「はい。実はタウニーがホテルZの宣伝動画を作る為に━━━」
という事でこの死んだ空気をピュール君が説明してくれました。
ふむふむ、タウニーちゃんがホテルZ宣伝動画を作る為にサビ組とかいうスジモン達からお金を借りていたと。そして利子がやばいと。
そして借りた張本人であるタウニーちゃんは連絡がつかず代わりにデウロちゃんとキョウヤ君がその事で話を付けに行った‥‥‥と。
は?????
なんで???
理解が追いつかんのやが????
だが一言言わせてくれ
タウニィ!!なにやってるんだああ!!
サビ組ぃ!?私が前助けたあのスジモン野郎の組織の事!?それ一番やばい奴っすよ!!
まさか彼女はついに闇金に手を出したかぁ‥
状況はわからんが利子のヤバさからしてトイチ?
いやそれ以上だな兎に角スジモンから金借りるとか毟り取られるに決まってるじゃろがぁあ!
これ本当ならマジでまずいぞ‥
私は事実確認の為にAZにゃんに話しかけた。
「AZさんそれは本当なんですか?
タウニーちゃんが借金した事やその利子について」
「その様だな。サビ組は理不尽な利子を条件にしているがそれだけなら先ずは話だけで済むだろう。
サビ組は警察の世話にもなっていないし、それをもとに解決法を探るべきだとわたしは提案した。
‥いずれにしてもサビ組に行かなければ事は進まないからな。だから二人はサビ組に向かったのだ」
警察の世話にはなってない?利子だから話し合いで済みそうだから向かわせただと?
AZにゃん‥いくら何でも軽率すぎるぜ。
警察の世話にはなってないって事はもしかしたら裏で警察とグルの可能性がある。公僕とスジモンはズブズブなのは常識だよなぁ!
まあワビ組は警察どころかリーグ委員会の奴らにエーテル財団やシルフカンパニーとズブズブなのだが‥
最近だと芸能界ともズブズブです。うん最悪だね
つまりこれは非常にまずいと言えるかもだぜ
私はAZにゃんに結構真剣な声色で言葉を紡いだ。
「いえ、これは非常にまずいことです。あの子達だけでは話が纏まらないでしょう。私も向かいます」
「タチバナ‥」
「きゅるる‥」
私の真剣な声にどうやら本気でやばいと思ったのか、より一層どんよりした雰囲気になる。
フラエッテ姐さんなんか怒りのあまり震えてますよ。姐御だからね。
子供であるあの子達はまさに極上のカモ‥いやカモネギか?ここは私が話をつける必要があるな
私はピュール君に向き直ると言葉を発した。
「ピュール君、キョウヤ君とデウロちゃんが向かった先はどこだ?そのサビ組とやらの事務所は?」
「ブルー地区の警察署前にあるのですが‥まさかタチバナさんもサビ組の事務所へ向かうのですか?」
「ああ、少なくともあの子達の力になれる筈だ。」
「その‥タチバナさん。いつもすみません。観光客のあなたに迷惑をかけてしまって‥」
ええんやで。もう観光客じゃねえってくらいミアレのイカれ具合に順応しちまったのでね
ピュール君は申し訳なさそうに俯きながらも二人を心配している様だ。拳を震わせてかなり不安な気持ちを抱いているのだろう。
私はピュール君の頭に手を置き、ガシガシと撫でながら優しく声をかけた。
「大丈夫さ。子供は大人を頼るものだから安心して欲しい。それに私も仕事柄そう言った者達とは縁があってね。それなりに手慣れてるんだ。だからそんな顔するな。」
「‥はい‥!その‥ありがとうございます‥!」
普段私が頭を撫でると嫌がる素振りを見せるが、今回は嫌がらず受け止めてくれた。それだけ緊迫しているのだろう。
私はピュール君、AZにゃん達に更に言葉を紡いだ。
「君はいい子だ。そこまで気負わなくていいからな。
AZさんフラエッテ心配なさらないで。すぐに戻ります。もちろんデウロちゃんとキョウヤ君も連れてね」
「きゅるー!」
「すまぬタチバナよ。気をつけるのだぞ」
「二人をお願いしますタチバナさん!」
私が手を振ると真剣な顔つきで健闘を祈る!と声を上げるフラエッテ姐さん。AZにゃんとピュール君の掛け声に私も続けて言葉を発した。
「行ってきます。留守は任せました。」
私は覚悟を決める様に玄関扉を開けて外に出るが普段とは違って重苦しく感じるぜ。ミアレに来てまでスジモン業務とはな‥
私はスジモン業務の一環みたく、例のあやつに声をかけた。
「ロトム。起動しろ」
『ロト!ここに!』
袖の下から出てくるスマホロトム。私の声に反応するとは流石だな。私の口調と態度を察したのかスマホロトムは背筋を正すように私を見る。背筋は無いがね
私はすぐさまスマホロトムに指示を出した。
「道すがらでいい。少し調べて欲しい事とやって欲しい事がある。」
『ロト!ダンナ!何か問題ですかロト?お任せくだせえですぜロト!』
「ああ、実はな━━━」
私の声を聞いてただならぬ事態だと勘付いたのだろう
スマホロトムは私の説明に耳を傾けてくれた。
タウニーちゃんがホテルZの宣伝動画を作る為にサビ組から借金し、利子が膨れ上がってやばい事やデウロちゃんとキョウヤ君が話し合いの為にサビ組の事務所に行った事などを掻い摘んで説明した。
するとスマホロトムはふむふむと納得しながらも怒ってるのかカタカタとスマホが揺れ始める。
『なるほど、デウロ嬢と話に聞くキョウヤ坊がそんな目に‥そいつは筋を通さなくては行けないと言えますですぜロトォ!』
「そうだ、カタギ‥しかも子供相手にやる手口じゃないな。あの子達に手を出すとは許せんな」
こいつと同じ感情を抱くとはね。サビ組めぇ‥!
カタギの‥しかも子供に手を出すとは許せん!!
未来のお姉さん候補デウロちゃんと主人公様に手を上げるとかとんだ奴らだぜ!
寝不足だからかイライラが止まらない。私は怒りのあまり拳を握りしめると宙に浮いたロトムが私のそばまで接近し普段以上に声を荒げていく
『ロト!ダンナ!いえクミチョー!奴らに落とし前、きっちり付けさせてやりますぜロト!
仁義を重んずる我らがクミチョーにして裏社会の王のカチコミロトォ!!』
そうじゃカチコミじゃあ!!戦争じゃ!
組長自らお礼参りにいくぜ!
首を洗って待ってやがれサビ組さんよぉ!
‥‥ってやっぱこわいなぁ‥
組の奴ら抜きで私だけか‥
ええいままよ!!
主人公(タチバナ)‥気まずさからマチエールをスルーしたスジモン。ちなみにカタギに手を出すとIQ高くなります。さすがスジモン
ムク‥裏世界の王こと冥界の王であるタチバナの事を尊敬はしているが異性としての好意は勿論ない。
シローからの誤解が解けて何よりだが、ここからマチエールからは何故か兄妹としての距離感について聞かれることが増えて困惑したとか
マチエール‥兄と発覚したタチバナ(勘違い)との距離感を掴めず家族と呼んでいいのか本気で苦悩している。自罰的になり過ぎており、兄の件では些細な事で己を責める様になり夜眠れない日々が続く。
本当は兄の胸に飛び込みたいが拒絶される事を怖がり一歩先に踏み出す勇気が持てない。
キョウヤ‥ムクが行方を眩ました事にタチバナが関わっているのか?と当初は驚いたが理由を聞き納得。
ちなみにデウロが知ったら狼狽するかもと思った為、デウロにこの件の詳細は伏せた。賢明な判断だ
シロー‥相変わらず話を聞かない人。ムクとタチバナの関係の誤解はマチエール、ムクの弁解により完全に解けました。ちょっとは反省しているかと思ったがあまり変わっていない。
タウニー‥まさかのやらかし。ZA本編では彼女及びガイの好感度はここから下がるが今作ではどうなるのか?
ラシーヌ工務店の皆様に緊急質問!
Qタチバナさん(着流しを着たカントーからの観光客さん)についてどう思っていますか?
カナリィ‥「Mr.ふりそで氏のこと?あの有名Pは伝説のプロデューサーと言える人だよね。ボクもそれなりに有名だとは思ってたけどボクのことを全く知らないあの眼中の無さには頭にきたよー
だからボクが本当にすごいんだという事を認めさせたらあの鉄仮面も剥がれるのかな?それを想像するだけで笑いが止まらなくなるよ!」
タラゴン‥「有名Pとやらか。カナリィの事を知らんかったりすっとぼける様な物言いから本当に業界人か?と心配したがとんだ策士じゃのう。
やはりカナリィの良さを知らんのだけはセンスが無さすぎるわい。いずれはカナリィの天下になる所をあの御仁に見せつけてやらねばな!」
この世界のZAについて
・シローとのランクアップ戦前のムク捜索時にタチバナが関わって来る。ここからタチバナはゲーム本編に本格的に絡む様に。
・本編だと知り合い程度の仲であるムクとマチエールだが、この世界線だと兄についての距離感を聞く為の相談事が増え、それなりに話す仲に。
・ムクの捜索時にタチバナと仲が良い事を知り、二人でいる事が多いから誘拐されたか?と思われる描写がある。(ここでこの世界線のプレイヤーは遂に本性を出したか!と怒りを露わにするが結末は全く異なる為タチバナに疑ってすまんかったする人がいたとか。)
・マチエールはゲーム当初からタチバナを警戒する描写があるが中盤以降何故か思い詰めるシーンがあり、マチエールの弱みを握っているのでは?と推察される描写がある。(実際は兄だと勘違いしてどう接するかを思い悩んでいるだけ。ここでもこの世界線のプレイヤーはやっぱり悪者じゃないか!と再び掌返しをしたとか)
・タウニーの借金問題にタチバナが介入する事に
と言う事で長らくお待たせしました。次回ついにミアレのスジモンことサビ組とカントーのスジモンである我らが組長が本格的に相対します。
果たしてサビ組と抗争になるのか、それとも和解するのか?それとも別の結末か?
次回はサビ組メイン回の予定です。
是非お楽しみにー