遅くなり申し訳ありません!
軽くスランプに陥ったのと体調を崩して寝込んでいたので投稿が出来ずにいました。
暫く更新が遅くなるかもしれませんがよろしくお願いします!
side キョウヤ
さて、時間はタチバナがクエーサー社社長のジェットの身辺警護の依頼より三日前、彼女が借金返済の為の慈善活動を終えたタイミングでマスカットからの連絡で暴走メガシンカ個体が現れた時まで遡る。
MZ団はその後の作戦会議で対象のポケモン2体を撃破した。
そして、その中でも強力な暴走個体でもあるメガガメノデスを静めたデウロとキョウヤであったがそこに突如としてジガルデと謎の男Fが現れる。
ミアレの街の危機、今は小康状態でもある暴走メガシンカポケモンをどう静めるのか、その覚悟をFはキョウヤに問いていたのだ。
「━━わたしはミアレが美しい街‥‥‥
美しい世界である事を望んでいますから」
「‥‥」
Fはキョウヤに期待を寄せるかのように優しい笑みを浮かべるとキョウヤと隣に佇むデウロに目線を移した。そしてFは労うように続けて言葉を紡ぐ。
「これからもよろしくお願いしますよ。
それから組長‥‥いえタチバナさんにもよろしくお伝えください」
Fが不意に漏らしたその一言を耳にしたキョウヤは顔を上げてFを見る。ホテルZの宿泊客であり、タウニーの借金問題の解決の糸口を示したMZ団の恩人タチバナ。彼とFの間に何かを繋ぎ止める関係があるのだろうか。
聞き覚えがあるその単語を繰り返す様にキョウヤは疑問を露わにした。
「クミチョウ?確かタチバナさんのスマホロトムもそんな事言ってたような‥‥それよりFさんはタチバナさんとどんな仲なんですか?」
「確かに‥!
話し方といいタチバナさんのお友達の方とか?」
組長という単語に反応を示したキョウヤとタチバナをまるで友の様に慕うFに興味を示すデウロの二人。
どうやらFは彼の素性に詳しい様子である。キョウヤとデウロが口にした疑問符に答える様にFは更に口を動かしていく。
「友‥‥と言える程親しい仲ではありませんがあの方の考えに影響を受けた者の一人です。」
Fは顔を上げて空を見上げると過去を懐かしむと同時に遠い世界を見つめるが如く、悲哀と同時に希望があるかの様な感情を瞳に宿す。
まるでタチバナの思想に感銘を受け、未来への希望を感じながらも過去の己の思想は悲哀を生む絶望そのものであった事を恥じるかの様に。
タチバナの思想がFという男に何らかの影響を及ばしたのは間違いない。
キョウヤはFにその影響とは何かを問いていた。
「‥‥影響ですか?Fさんはタチバナさんの考えっていうのを知ったと?」
「ええ、彼の弟子もそうですが私を含め多くの人間が影響を受けたと言っても過言ではありません。」
「弟子?タチバナさんに?」
「へぇ〜!タチバナさんお弟子さんとかいるんだ?
すごいなぁ」
Fの言葉を耳にしたキョウヤとデウロはそれぞれが驚きの表情を浮かべていた。
タチバナはあの若さで弟子がいたのだ。その事実も驚愕に値するがその弟子もタチバナの考えに感銘を受けたのだろう。
Fの言葉からして弟子以外でも彼の考え、言わば意志が多くの人間を魅了している。キョウヤはそれ程までに多くの者を虜にするタチバナの思想が気になったのかFの言葉に耳を傾けていた。
「ええ、彼女は素晴らしい素質の持ち主です。あの時のカントーでは今のミアレの様な不穏な動きがありましたが彼女達の活躍で平和は守られたと言えます。
まさに卵から孵化した英雄の雛か」
「彼女?女性のお弟子さんなのかな?なんだか凄そうな人だねぇ‥」
「そうだね。すごい人なんだろうな‥ そのトレーナーさんは」
Fがまるで過去を懐かしむ様に優しい笑みを浮かべるとその思いを口にした。
タチバナがカントーにいた時に一騒動あった様だがその弟子によって平和は守られた。Fが言う様に正に英雄の雛鳥。それ程に大器を持つ傑物なのだろう
デウロとキョウヤはその様な人物を弟子にするタチバナの育成手腕を評価すると同時に弟子である彼女に興味を持っていた。
そしてFはキョウヤに目をやるとまるでその弟子である彼女とキョウヤを重ねるように言葉を紡ぐ。
「君を見ているとその彼女を思い出します。
何事にも動じぬ強固な意志と人とポケモンを繋ぐ絆という繋がりの力を‥‥
だからこそ彼は君と彼女を重ね、この世界の未来に期待しているのか‥」
「‥‥」
Fの言葉に聞き覚えがあるのかキョウヤは押し黙りながら思考に耽る。
タチバナは初対面の時からキョウヤを高く評価していた。それは彼の弟子である彼女と呼ぶべき人物と重ねて見ていた事もあるのだろうか。
英雄の雛鳥と称される弟子を持つ事から観察眼はずば抜けて高い。だからこそキョウヤを初見で英雄の器があると看破したのだ。
英雄を導く教導者たるタチバナとそれに認められたキョウヤ。二人の邂逅はまさに神の企てか。
ただ立ち尽くす事しかできないキョウヤとデウロを一瞥しするとFはそのまま別れの言葉を口にする。
「失礼。とにかくこのままミアレの為に動いてくれる事を期待しています。」
そして二人に背を向けてその場を立ち去るF。
タチバナの望む思想や美しい世界、そして彼の望む意志とそれを受け継ぎし者たち。
英雄の伝説を継ぎしものたちの物語が終わるにはまだまだ早い。ようやく折り返し地点に到達したのだ。
‥‥
‥‥‥
「つ、つよい‥!」
「なんなのこの強さ‥バケモノじゃない‥」
「なんだ終わりか?呆気ないな」
「スピ!」
はぁーようやく終わったぜ〜
という事でどうもスジモンです。
タウニーちゃんに代わって黒幕であるクエーサー社社長のボディガードにして
何やらミアレを守る会とかいう市民団体の皆様に因縁をつけられ10対1とか言う絶望的過ぎる数の暴力に屈しそうになった私であったが相棒のスピアーの前には無力であった。さすがスピアーだぜ!
ここまでダイジェストでお送りしたがこの死屍累々の光景からDIEジェストと言った方がいいかもしれない
私はスピアーをボールに戻して労うと腰に付け直し、カタギの皆様を一瞥した。
それにビビったのかカタギの皆さんは一斉に後ろに下がり始める。あービビらせてすみませんね。
「終わった様やな。あんだけの数を一人で片付けるんは流石裏社会最強や」
「ペンド!」
私がどうするか考えている中、背後からカラスバとペンドラー君が声をかけてきた。あら君の手持ち?どくタイプ使いかね。似合ってるじゃねえか。だから服装が毒々しいんですねぇ
つうかペンドラーでっか!実際に見ると怖いんですけど
てかさぁカラスバ君、ワビ組とサビ組の共同戦線言ってたけど何で君はキョウヤ君とタッグバトルしとんねん。どこが共同戦線じゃ!しかも2対1だったよね?
お前さぁ酷いよ。私は10人相手にしたんやぞ!
私が内心ネチネチとゴネる中、カタギのスジモン達が私を一瞥した後に言葉を吐き捨てていった。
「とんだジャマが入った。
いつかクエーサーの欺瞞を暴くからな。覚えてろ!」
「見てらっしゃい。あなた達のバケの皮いつか剥いで見せるから!」
「捨て台詞として美しいくらいテンプレやなぁ」
おーおー好き勝手言いなさる。
私たちに背を向けて帰る様はまさに敗北者。そして見事なまでの捨て台詞ですな。カラスバも関心するとか中々やぞ。カラスバはペンドラーをボールに戻して労うと駆け足で私たちの元へ近づく若者が一人目に入った。
「お二人とも怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だキョウヤ君。」
「同じくや。お前の方こそケガはないな?」
駆けつけたのはキョウヤ君でした。無事で何よりだぜ。てか君も結構ド派手にやってたよね?強くなりすぎやろ!私とカラスバは心配する様に声をかけたがキョウヤ君は大丈夫ですと返事をして3人で向き合う。
おいおい、ちょっとこの面子ヤバない?
私含めてスジモンクラス3人いるとかカタギに対して過剰戦力過ぎたわ。
これ相手からしたら恐怖でしかありませんね‥
私がそう思う中カツコツとハイヒールの足音が辺りに近づくとその音を出す主が言葉を紡いだ。
「タチバナさんとカラスバさん、それにキョウヤさんでしたか?この度はありがとうございます。」
「‥礼には及びません。ご無事で何よりです(皮肉)」
出たな黒幕!
私は目の前で気品あふれるお辞儀をしたジェットを警戒する様に見つめた。
タウニーちゃんの依頼とはいえ、社長を守るのはガチで本意ではなかったのよ。
今回の件も私達を嵌めるために仕組んだんだルォ!?
ジェットはカラスバやキョウヤ君に目をやった後に私に目を向けると拍手しながら言葉を紡ぐ。
仕草がもうラスボスなんよ。
「流石はタチバナさんです。マスカットを破る実力といい、今回の活躍はまさに国士無双。裏の世界の王の名は伊達ではありませんね」
「なんのことでしょうか?私には皆目見当もつきませんね。私は観光‥カフェを回っているだけですので」
何がいいてえ?
裏社会の王とか言わんでくれる?キョウヤ君ビビるだろ!カタギを怖がらせる趣味はないのだよ。ましてや子供をよぉ‥
今の私は組長ではありませんただのタチバナ、カフェばっか巡っている真面目なスジモンです。
私のくそしょーもない言い訳を耳にしたジェットは考える素振りを見せながらも口を動かした。
「‥‥なるほどそうですか。今はその立場で動いている訳では無いと。あなたが街を巡り、影で手を回しているのも別件であると」
「‥‥?」
なーにを言ってるのかぜんっぜんわからん!
もう遠回しに話すのやめようぜ!(ブーメラン)
影で手を回す?大人のお姉さんのこと?確かにお姉さんの背中やら腰やらに手を回すことはよくやるが影からはやらんなぁー。それ即ち痴漢なり。
合意の上でヤッてるんだからええやろ?ちゃんと相手の了承得てますって!
さっきも言ったが今は組長という立場を忘れたいんだよね。カラスバいるけど。
カラスバとキョウヤ君は私を見ているがキョウヤ君は何故か目を見開き、疑問の言葉を口にした。
「‥‥タチバナさん?それってどう言う‥?」
「なるほど、社長さんも気づいたんやな」
キョウヤ君、それ私の台詞っすね。カラスバは何納得しとんねん!何に気付いたんじゃ!私の性癖か!?
おのれぇ‥!ここはいつもの如くすっとぼけと話を変えるに越したことはない。
キョウヤ君よすまんが無視するぜ。話すと長くなるのもあるがね。
私はジェットに向き直るとおとぼけ仕草で言葉を返した。
「仰る意味がわかりませんね。それより先程の方達が話していたあの内容‥‥本当にクエーサー社はそれに絡んでいないと?」
「ええ、我々は人とポケモンとの共存を望んでいます。」
「ですが彼らをはじめ多くの方々が不安に感じているのも事実。‥‥まさかMZ団をはじめ子供達にそんな重荷を背負わせるおつもりか?」
ミアレを守る会のヤバさは認識したが、彼らが言う事も一理あるよね?街中で暴れるオヤブンや増え続けるワイルドゾーン‥‥これらを操る黒幕の正体‥‥!
つまり黒幕はお前たちクエーサー社だろぉ!?
なんかよく知らんけどタウニーちゃんやたら社長の事褒めてたから洗脳してMZ団に汚れ仕事させるに違いない!!
いくら何でもカタギにそんな事させるとかありえへんよ。これケジメもんよ?そうなったらワビ組の総力を持ってクエーサーのビル内でえげつないポケモン大会するがええんか?と揺りをかけてやる。
私のスジモン流OHANASHI TIMEに恐れをなしたのかジェットは俯くと申し訳なさそうに言葉を続けた。
「‥‥仰る通り耳が痛い限りです。ですが今は一刻を争う事態なのです。だからこそあなたも動いているのでしょう?あなたに残された限りある時間を使って‥」
中々の演技派じゃねえか‥ 本当にそれだけっすか?
それに残された時間だと?
まあそろそろカントーに帰ってこいよとチャイブをはじめ多くのスジモン共から連絡が来ているから時間が限られているのは間違いではない。ちなみに言い訳して先延ばししているのでいつまで保つかわからん。
だが、あともう少しミアレジェンヌの皆様を堪能したい気持ちはある!私はついその思いを口にした。
「そうとも言えますね。私にとってこれは大事な事でもあり、悲願でもあるのだから‥(大人のお姉さんとの遊び)」
「‥‥悲願ですか、それはつまり‥‥」
「ええ、彼女達(大人のお姉さん)と
おおーっと。私の心の欲望が漏れ出たのか超高速詠唱こと早口になってしまったぜぇ‥
彼女達との触れ合いタイムを楽しむ事を暴露しそうになった。いかんいかん。
我欲を出し過ぎるのは良くねえな。あくまで組長としてでは無くタチバナとしての本性は抑えられん。
私はこの場から残念ですがさようならと言わんばかりに立ち去ろうとするが、その動きを見て一礼するカラスバとジェット。キョウヤ君も慌てて頭を下げていた
おいおいスジモンしかいねえのかよこの場には‥
そんな私の背に向かって優しい口調で声をかけた人がいた。
「改めまして本日はありがとうございました。それでは帰りの道中お気をつけて」
ちょっとその言い方黒幕感あって怖いからやめてくださる?ジェットの奴‥何を企んでいやがる?
いや、ここで考えてもしょうがないし、今日はカフェを巡って適当に過ごしとするかぁ!
あとモフモフポケモン吸いも楽しまないとね!
‥‥
‥‥‥
side ジェット
「やはりマチエールさんが仰っていた通りタチバナさんはあのワビ組の組長でありましたか‥」
クエーサー社本社ビルの社長室にてジェットは一人言葉を零す。先程クエーサー社に疑いの目を向けていた市民団体と対峙した着流し衣装の青年タチバナの正体について
裏社会最強とも言われる組織の一つワビ組。
そのボスであり裏社会の王組長こそがタチバナの正体だ。ジェットは彼の言動を思い返すとその目的について考察を深める。
「エーテル財団、そしてシルフカンパニーと協定を結ぶ圧倒的な組織力と財力であればクエーサー社を買収するのも容易い筈‥それを望まないという事はあくまでも裏社会の人間ではなく一人の人間としてこの街に用があるという事なのですね」
ワビ組は裏社会どころか表社会の大企業や財閥とも協定を結ぶほどの超巨大組織。クエーサー社を買収して傘下に取り込むのも容易である。しかし彼はそれを望まず組長としての立場を捨ててミアレに来た。
それはつまり彼の過去や境遇に関係するものだ。ジェットは彼の過去からなぜミアレに来たのかを推察する。
「ミアレ‥いやカロスを手中に収めるのが目的ではないのならその目的は例のロケットチルドレン?
それに彼女達と
だから彼はカフェを巡っていたのですね。」
ロケットチルドレン。
呪われし悪魔の計画と噂されるロケット団最大の汚点にして焼却された負の遺産である。
5年前の最終兵器騒動でカロスを混乱に陥れたフラダリ直下の秘密犯罪組織フレア団。
現在は解散したがその所業から元メンバーである彼ら彼女達は世間から警戒され、差別に近い冷たい対応が今もなお続いてる。
そしてそのメンバーの子供達、所謂二世とも呼べる存在にも同様の目線が向けられていたのだ。
まるでロケットチルドレンの様に風評被害に苦しむ二世の子供達はただ両親や身内がフレア団のメンバーであっただけで彼ら彼女達にその罪は無い。
組長たる彼はその痛みを誰よりも知っている。だからこそ彼女達と呼べるヌーヴォカフェの店員と接触を続けたのだろう。ヌーヴォカフェは元フレア団や二世の子供達が経営していると聞く。
彼がカフェを巡るのはそれが理由でもあるのだ。
「フレア団二世達と自身の境遇を重ねている‥だからこそ救おうとされているのですね。
残された限りある時間をその使命の為に燃やし尽くすと決意したからミアレに足を運んだと‥‥
高潔でありながらも仁義を通す精神性‥なぜ彼ほどの才を持った人間が日陰者として生きざるを得ないのでしょう?彼も未来を生きる若者の一人。ロケットチルドレンの罪は果てしなく大きい‥‥」
彼の素性を理解するたびにジェットの表情が曇り、苦しい思いが胸を支配する。
彼はロケットチルドレンの被害者だ。肉体改造により寿命を縮められその青春を全て奪われた若者なのだ。
世界や大人を憎むのは当然なのだが、彼はMZ団をはじめフレア団二世という同じ境遇の子供達を救い導く為に動いている。何と高潔でありながら純粋な存在なのだろう。
闇の世界に生きながらも純粋に輝き続ける希望の星とも言えるのが彼だ。
彼ほどの逸材も表社会では生きていく事が出来ず、裏社会にしか生きる場が無い。それこそロケットチルドレンが生み出した最大の汚点だ。
才ある若者の人生を奪い、裏社会という檻に閉じ込めたロケット団とそのボスサカキの罪は決して拭えぬものでは無い。
ジェットは彼の過去に同情を寄せながらも強い決意を胸に抱いて立ち上がった。
「裏社会の王が味方してくれているこの現状はとても心強いですが‥‥あなたが倒れたら心配される方もいるのですよ。あなたがMZ団の皆様方やマチエールさんを大切にする様に皆さんもあなたを慕っている筈です。なので体をご自愛してください。そしてどうかお気をつけて」
だが彼は一人ではない。
そんな彼を放ってはおけず彼を慕う若者たちも多くいるでは無いか。彼は裏社会に留まる人間なのでは無い
彼の高潔さと精神性に惹かれた若者たちが次世代の世界を、ミアレを作り出す。ジェットは彼を案じミアレの未来の為に邁進することを強く決めたのだ。
‥
‥‥‥
‥‥‥‥
「いやー美味しかったねぇローリングドリーマー!」
ホテルZのロビーのソファに座り満足したかの様な笑みを浮かべて言葉を発するのはMZ団のデウロだ。
タウニーはサビ組の慈善活動を通して借金の返済を完遂させるのだが無理が祟り体調を崩してしまった。
一部の人助けをタチバナが請け負う事でどうにかトラブルを乗り越えその後はキョウヤがCランクへのランクアップ戦でカラスバを下し、タウニーの体調が回復した頃合いを見てタチバナがMZ団メンバーを連れて高級料亭ローリングドリーマーにてキョウヤの祝勝会とタウニーの借金完遂を労う会を開催した。
費用は全額タチバナが負担した。
普段口にする事の無い超高級料理に一同興奮していたが最も影響を受けたのはなんとピュールであった。
デウロの隣のソファに座るピュールは顎に手を当てながらその感動や思いを口にした。
「ええ、スシの魅力をまた一つ知ることができました。無駄を削ぎ落とした究極の形‥ネタとシャリが生み出すハーモニー、あれも美の一つであると。とても勉強になりましたよ。」
「あ、タチバナさんが言ってた話だよね?
ありのままを愛するみたいな?凄いよねぇ寿司をそんな目線で見るなんて思ってもみなかったよぉ」
うんうんと腕を組み、肯定する様に返事をするデウロ。ピュールとデウロはタチバナが話す美の価値観に共鳴の意志を示した。
タチバナ曰く寿司は無駄を極限まで削ぎ落としたシンプルなデザインであり、寿司とはシャリとネタの持ち味を活かした生命の息吹、つまりありのままの持ち味を活かした最高の美の結晶であると語っていたのだ。
タチバナは個々の強みを持つMZ団をその寿司と揶揄し、個々が強みを発揮する事が大事である事をMZ団に伝えたのだ。
まさにネタとシャリの持ち味を極限まで活かすありのままの美しさこそが至高であると言わんばかりに。
今回の一件で助け合う事の重要性とチームメンバーの個性は輝く事になるだろう。
タチバナという優秀な導き手がいるのだから。
デウロとピュールが談笑を続ける光景を見たキョウヤは優しく微笑むと隣に座るタウニーに目をやり、労う様に声をかけた。
「それにしてもタウニーの体調が回復して良かった。体は大丈夫?タウニー」
「あはは、ごめん。それと借金の事といい迷惑かけてばかりだね。リーダーとしてしっかりしないと!」
デウロとピュールが盛り上がる中、会話に参加せず静かに見守るタウニーをキョウヤは気にかけていた。
タウニーはタチバナに迷惑をかけてばかりいる事を気にして考え込んでいたが、キョウヤの一言で悩んでも仕方がないと頬を軽く叩いて気持ちを入れ直すとデウロ達の会話に参加していった。
そして話題はタチバナ本人の素性について変わるとデウロは元気よく言葉を紡いでいく。
「タチバナさんには本当に感謝だね!
あの人には足を向けて眠れないよぉ。サビ組にも啖呵を切る度胸も凄いけど、ローリングドリーマーの代金5人分全額払うって相当なお金持ちだよねぇ‥本当に何者なんだろう?」
腕を組み彼の素性を探るように考え込むデウロ。
ミアレには観光に訪れたと聞くが彼の素性は未だ謎が多い。
彼の探し人とは誰か、そしてFと名乗る人物が話す彼の弟子やあのサビ組に啖呵を切る程の豪胆な性格といい、高級料亭の支払いも苦にしない潤沢な資金力は並の人間ではない事は火を見るよりも明らかである。
そんなデウロの問いにキョウヤは疑問符を浮かべながら言葉を紡いでいく。
「さあ?‥でもFさんやタチバナさんのスマホロトムは組長と言っていたけどそれと関係あるのかな?」
「そうですね。組長と言うとどこかの組、つまりはサビ組みたいな裏の世界の組織の長でしょうか?」
キョウヤの言葉に肯定する様に彼の正体を探るピュール。タチバナの持つスマホロトムはまるで仁義を重んずる挟客の様な言葉遣いであった。
そして組長という言葉から察するに彼もサビ組の様な裏社会組織の長ではないかと推察したのだ。
ピュールの推察を耳にしたデウロは驚きの表情を浮かべていたが恋焦がれる想い人の正体が裏社会の人間である事を想像出来ず冗談を受け取る様に言葉を発した
「ええ!?タチバナさんが?‥またまたー
だったら今頃サビ組と抗争しているよぉ。だってその筋の人ってメンツ?とか大事にするんでしょ?
だったらカラスバがタチバナさんに因縁をつけて来るのもおかしくないよねぇ」
デウロは今回の一件で裏社会組織の恐ろしさを知ったがタチバナはその正反対。優しく紳士的で頼れる年上の男性。デウロが理想とする男性像そのものである。
そんなタチバナが裏社会組織の長の一人である事がまるで想像出来ない。
デウロの言葉に確かにと言わんばかりに頷く他のMZ団メンバー達。
だが和やかな空気に水をさす様にホテルの玄関扉が開くと一人の男が姿を現した。
「お邪魔しますわ!」
扉が開いて現れたのは紫のシャツに白ネクタイ、丈の長い黒い背広にメガネにつけたグラスコードと背広は毒の雫を思わせる威圧的な衣装をした男だ。
男は周りを見渡すと目に入ったデウロを一瞥すると言葉を紡ぐ。
「ふぅん 中々よさそうなホテルやん」
男の放った一言を耳にしたデウロは声がした玄関扉に佇む男の姿を見て驚愕の表情を浮かべた。
今目にしたくない人物であり、その人物の突然の来訪にデウロは警戒する様にその男に意識を向ける。
「な!カラスバ‥‥さん!?まさかホテルZでポケモン大会!?タチバナさんにお礼参りを‥‥!」
目の前の男ことサビ組のボス、カラスバは表情を変えずにデウロ達を見ていた。
タウニーの借金返済でタチバナがサビ組の事務所に現れる前にデウロとキョウヤは一度カラスバと言葉を交わしたが、カラスバの脅しとも取れる態度と雰囲気に終始恐怖心を抱いてた。
タチバナに借金返済問題をを丸め込まれ、彼に面子を潰された事を根に持っているのかもしれない。デウロはそう考えて震える足を動かしながらカラスバの前に立ちはだかる。
「お前なぁ‥警戒し過ぎやで?ホテルに来たら普通は宿泊やろが。それにオレはあの人に手は出さへんよ」
「‥‥‥」
カラスバは呆れる様にデウロに言葉を返すが、デウロは尚も警戒を解かずにカラスバを見ていた。
カラスバはデウロに警戒を抱かずに済む様に半歩下がると観念したかの様に困惑を交えた声色でデウロに言葉を紡いでいく。
「そないな事したらサビ組の沽券に関わるしサビ組も終わりや。あの人との敵対なんぞもっての外やしな」
「え?それってどう言う事‥‥?」
カラスバの声色が変わった事に疑問符を浮かべるデウロ。カラスバは本気でタチバナに復讐する気は無いのもそうだが、何故あっさりと彼から手を引くのか納得出来ずにいたのだ。
たった一人サビ組事務所へ討ち入りを許した事は裏社会組織ならば面子を重んずる為、タチバナを始末する様に動く筈だが動く気配が全くない。
まるで彼を畏れているかの様に。
考え込むデウロにカラスバは宣言するかの様に言葉を紡ぎ続けた。
「とにかくあの人がいるホテルZにサビ組は手ぇ出さへん。それは保証したる。で、この感じやとオレは歓迎されてへんみたいやな。まさかホテルZさんは客のえり好みとかするんかいな?」
どうやらカラスバはホテルZへの宿泊を希望する様だ
事情はどうあれ客であるのならば追い出すわけにもいかない。困惑するデウロとは違いタウニーはカラスバの前に現れると丁寧にお辞儀をするとカラスバを案内していく。
「カラスバさん お泊まりならこちらに」
そのままタウニーは受付にいるオーナーのAZにチェックインの手続きを済ませ、部屋の鍵や必要備品の説明を簡潔に済ませる。
カラスバはそれらを聞き流すとちょっとええか?と何かを希望する様に言葉を発した。
「折角やしタチバナさんの部屋まで案内頼みたいなぁキョウヤお前に頼むで」
「え?俺ですか?」
突如として目線はタウニーからロビーで佇むキョウヤへと移った。
突然の指名にキョウヤは驚いたがタウニーでは無くキョウヤを指名する辺りカラスバはキョウヤを相当気に入ったのだろう。もしくは別の意図があっての事かもしれないが。
デウロはキョウヤを心配する様に見ていたがキョウヤはデウロに心配いらないよ。と言わんばかりに目配せするとカラスバの元まで近づいていく。
「せやお前を指名するから はよ案内してくれへん?」
「は、はい!こちらです。カラスバさん」
キョウヤはカラスバの荷物を持つとエレベーターに乗り、タチバナが利用する部屋まで上がっていく。
二人は言葉を交わさず終始無言でいた為、エレベーターが動く音すら騒音に感じる程の静かな空間。
それこそたった1、2分の静寂が永遠に感じるほどに
そしてタチバナのいる階にエレベーターが止まると彼が宿泊する部屋までキョウヤは案内する。カラスバは何号室かをキョウヤに尋ね、その号室を教えるとカラスバは突如その場で立ち止まるとキョウヤに向き直り言葉を紡いだ。
「案内はここまででええよ。おおきにな。これチップや受けとっとき」
「え?こんなに貰えませんよ!」
カラスバは胸ポケットから札束を広げるとそれをキョウヤのポケットに詰め込んだ。
突然多すぎるチップを渡された事にキョウヤは辟易としていたがカラスバは笑みを浮かべ宥める様に口を動かした。
「ええから、案内という立派な仕事もこなし更にはあの力作業でお前には世話になったからなぁ。これで貸し借り無しやで?」
このチップは今回の案内料だけではない。タウニーの借金返済でタウニーには出来ない慈善活動を手伝ったキョウヤに対しての報酬だ。タウニーが10万の仕事をきっちりこなした為、キョウヤの慈善活動での働きが余分なものなり、その成果を現金に変えてキョウヤに返したのだ
タウニーに出来ない仕事をこなすだけでは無く彼女をリーダーとして支え、キョウヤなりに筋を通そうとした姿にカラスバが心を打たれたのもあるのだろう。
つまりこのチップはキョウヤに対しての報酬でもありながらそれを労う為でもある。
キョウヤはカラスバにお金を返す事も考えたがカラスバの思いを無碍には出来ないと報酬を受け取ると頭を下げて感謝の気持ちを表した。
「それではお言葉に甘えますカラスバさん。
ありがとうございます!」
「おう、気ぃつけて戻りや。」
キョウヤはエレベーターに乗り、一階のロビーまで戻っていった。カラスバはそれを見届けるとタチバナが泊まる部屋まで移動する。
カラスバは冷や汗を流しながらも意を決したのか扉の前に立つとノックする為に手を動かそうとしたが部屋の中から物音らしきものを耳にすると動きを止めた。
「‥〜!ー!‥━━━‥!」
「ん?お話中かいな。出直した方がええんかな?」
何やら話し声が扉越しに聞こえてきた為、ここは出直すべきかと考え込むカラスバ。
迂闊にノックして彼の会話を途切らせるとカラスバへの心象が悪くなり、ふとした事がきっかけでトラブルに発展する可能性がある。
ここは会話のタイミングを見て部屋に入るべきだと判断したカラスバは扉に耳を当てて彼の言葉に意識を集中させていく。
「‥ぃもうとか‥━━━は大事にすべきものだ‥━━本命はそれだからな‥━━━」
扉越しであり、くぐもっているかの様に壁や扉に言葉が反響して上手く聞き取れないが、話し方やテンポからして誰かと電話をしているのはわかった。
カラスバは小声で状況を確認しながら会話の内容を推察していく。
「妹?本命?何のことや?この感じ組長さん誰かさんと話しとるんか?
内容からしてまさか組長さんのホンマの狙いはその妹さんを探す事なんか?‥‥せやけどその妹さんっちゅうのは一体‥‥」
どうやら扉の向こうにいるタチバナは妹を探しているという事がわかった。
もしかして探し人とも関係あるのだろうか。そう勘繰ったカラスバは次の言葉を聞いて驚愕の事実を知る事になる。
「マチ‥エール‥━━大事な妹‥━━━だからな。‥‥━━は守る必要がある‥━━━」
「!?な、なんやと‥まさか‥!」
思わず声を荒げそうになるが、咄嗟に口を押さえ事なきを得る。
幸いにもタチバナには気づかれずに済んだ様だ。
カラスバは安堵すると同時に一度扉から離れるとタチバナの発言と彼の目的を照らし合わせる様に考えを深める。
「オレはとんだ勘違いをしてたんやな‥‥
マチエールさんはロケットチルドレン。せやから組長さんはそれを助ける為にミアレに、そう思うてたが真実は全く違ったんや‥!」
彼の探し人はマチエール。
ロケットチルドレン。いわば同志である彼女を救う為にミアレに訪れていたと思ったが彼の狙いはそこではない。カラスバは更に思考に耽ると一つの確信を得る様に言葉を紡いでいく。
「納得言ったわ。せやから組長さんはワビ組の人間としてではなくタチバナさんと言う一人の人間としてミアレに来たんやな。マチエールさんはロケットチルドレンなんかやない‥!」
マチエールがロケットチルドレンであるのならば矛盾が生じる。それは記憶を無くした状態からどうやってミアレに戻ったのかだ。
これまでハンサムという名探偵が手を尽くしたと思ったがそれだとハンサムが姿を消した事に説明がつかない。なぜなら記憶を失った彼女が再び記憶が戻らないとも限らず常に監視する必要があるからだ。
つまりそのリスクが無いという事はそもそも彼女はロケットチルドレンですら無い事を意味する。
組長たるタチバナがミアレ出身で彼だけロケットチルドレンとしてカントーに拉致された。
そして彼女はミアレに取り残されたのだとしたら‥‥
二人の関係はロケットチルドレンという間柄ではないつまり二人は━━━
「あの二人は実の兄妹やったんや‥‥
生き別れた妹を探す為にあの方はミアレに足を運んだっちゅうことかいな‥‥!」
━━━血を分けた実の家族にして生き別れた兄妹だったのだ。
カラスバは彼の本当の目的を知った。
ロケットチルドレンの過去の清算ではなく家族を守る為に純粋な家族の愛に言葉を失いかけていた。
彼は彼女を見守る為にミアレに足を運んだのだ。組長という立場では無く兄という家族の立場で今の危険なミアレから彼女を守る為に。
なんと言う愛である事か。
不器用な兄としてのその家族愛が彼の原動力でもあったのだ。
ここでもまた運命の歯車が動き出そうとしていた。
主人公(タチバナ)‥寿司で芸術を語る人。実際は生足とか女性の性癖を遠回しに語っていただけに過ぎない。ちなみに後半カラスバが勘違いした部分は次回明らかにする予定です。
キョウヤ‥タチバナに弟子がいた事や街を巡り影で何かやっている事を知るが、何か事情があるだろうと深く聞く事はしない。してもはぐらかされるのでね。
カラスバ‥裏社会の王の実力を知り戦慄中。社長とタチバナの掛け合いを見て新たに勘繰っていたりする。そしてマチエールと組長が兄妹であったという驚愕の事実を知り言葉が出ない。
デウロ‥タチバナの弟子が何者なのか気になる様子。弟子が女性である事を知りずっと傍にいたって事!?とその弟子を羨ましく思っているとか。
サカキ‥(あーあ、まぁたロケットチルドレンかよ‥フレア団二世とかいう奴らと重ねられてるしあの頭カエンジシの奴にも私みたいに風評被害あったりするんか?よっしゃあ!風評被害仲間ゲットだぜ!)
クエーサー社のお二方に質問!
Qタチバナさんってどんな方ですか?
マスカット‥「物腰が柔らかく実直な方です。あれ程の実力ならC‥いやBランク以上は硬いでしょうね。暴走メガシンカの事といい目の前の事ではなく遥か先を見る先見性と謙虚で驕らない腕前‥流石は英雄王。わたしもあの方の力になれる様に精進しないといけませんね。」
ジェット‥「知謀やポケモン勝負の実力といい、あの若さで裏社会のトップに君臨するのは流石としか言いようがありません。ロケットチルドレンの罪を背負いフレア団二世をも救わんと動いているその精神性はまさに強き魂の持ち主でもあります。彼に強い野心が無く味方でいてくれる事に感謝しないといけませんね。」
おまけ
ゲーム本編との違い
•今回静めた暴走メガシンカポケモンはメガクチートとメガガメノデスの二体。メガデンリュウは無しです。無念
クチートはその後キョウヤの手持ちになるのでここに大きな変化はない。
•Fの口からタチバナに弟子がいる事が明言されるがリーリエである事は明らかになっていないので、この世界線のプレイヤーはタチバナの弟子について様々な考察が飛び交ったとか。
ちなみにタチバナの意志や思想についてをプレイヤー目線だとFから断片的に語られるのでやっぱラスボスじゃね?と思われたとか。
・カラスバとのランクアップ戦後の祝勝会的な集まりはローリングドリーマーでやる事になり、そこでタチバナは寿司のミニマリズム的美しさやありのままの美を語る。話す内容はかなりしっかりしていたのでMZ団も感銘を受けたとか。
ちなみにタチバナはただ性癖を暴露しただけである。本編 ジョウト進出編でのその筋の者(スジモン)と新人若衆スジモンの冒頭の様な思いで語っていたので気になる方は冒頭を見るとイメージしやすいかも。
・カラスバがホテルに来るイベントでキョウヤにチップを払うイベントへと変更した。ちなみにチップは5万円。太っ腹過ぎる。
ゲーム本編だとタウニーのチップ10万でカラスバに借金を返済するシーンになるのだが、タチバナの立ち回りでタウニーが借金を全額返済したのでこのイベントが消えキョウヤに金が回る事に。
この世界線のプレイヤーは歓喜し、カラスバ人気が更に爆発した。