ナニモンなんじゃ? スジモンじゃあ!!   作:年中裸足の人

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遅くなってすみません!
今回オリキャラ回です


顔面暴力傷跡スジモンの独白

 

俺の名前はチャイブ。

カントー地方で今最も勢いのある組織ワビ組の組長の右腕だ。

 

ワビ組が出来て早2年。カントー制覇もあと僅かだ。組長こと兄貴の悲願もようやく成就するだろう。

 

思えば俺と兄貴の出会いは必然だったのかも知れない

 

 

 

 

 

ガキの頃両親の虐待と借金で家庭は崩壊していた。

頭も悪く、手先も不器用。更には貧しい暮らしを強いられてた事から俺は周りからいじめられていた。だが腕っぷしの強さという才はあった様でいじめてきた奴はぶん殴って従わせて、チンケなプライドを保った。

その経験もありポケモン勝負も強かった。

 

偶々拾った未使用のモンスターボールでマンキーを捕まえ大会の賞金も掻っ攫ったが、いつも賞金を親に取り上げられ、借金返済に充てられていた。

 

俺はこんな生活に嫌気がさした。

親の顔を見るたびにぶん殴ってやろうとも思った。

 

だがあんな奴らを相手にするのも面倒だ。

俺は進化したオコリザルと家を飛び出した。

 

その後は舎弟達と倉庫のアルバイトで食い繋ぎ、売られた喧嘩を買い続けて他のチンピラにやりたい放題の日々を送った。

 

そんな生活を続けたある日、俺はある子供に目をつけた。裕福で親から愛されている様な生意気なクソチビだ。俺は無性に腹が立った

 

何でこんな目に合わないといけないんだ。

こんな奴は愛されてるのに俺を愛さなかったこのクソッタレな世界に嫌気がさした。

そして俺たちはそのチビに因縁をつけて、憂さを晴らそうとしたその時だ。

 

「何をしている。子供だぞ手を離せ。」

 

「あぁ? なんだテメェ…?」

 

ある男が俺と子供の間に入った。

その男は子供の頭を撫でると泣き出した子供を逃し、俺たちの前に立ちはだかった。

 

まだ年若いその男が着ている清潔感のある黒スーツは何らかの組織の人間に見えなくもない。そしてその顔には激しい怒りの表情を浮かべていた。

俺にも劣らぬ強面だが、その怒りは俺が思わず怯みそうになったほど。

 

「兄ちゃん。今なら金を出せば許してやるよ! カッコつけてんじゃねえぞ!オイ!」

「今日は災難だったな。地獄で後悔してろや!」

 

「‥やかましいな。私に目を付けるお前達こそ、運が悪かったんだよ‥」

 

舎弟達を合わせた3人と目の前のスーツの男1人が向き合い、一斉にモンスターボールからポケモンを繰り出した。対する男もボールからスピアーを繰り出す

 

「行くぞ!サンド!オラァ!」 

「3対1だ!勝てるかよぉ!ボケェ!」

「オコリザル!いつも通りぶん殴れ!」

 

「スピアー。速攻で決めるぞ。」

「スピッ!」

 

そして戦いが始まったが勝負はすぐについた。

 

俺たちの敗北という形で。

 

目にも止まらぬ速さで動き、俺達が技を繰り出す前に一体一体を蹂躙していくスピアー。舎弟達が繰り出したサンドとゴローンは一撃でやられ、自慢のオコリザルも地に伏していく。

 

完敗だ。

たった一人にズタボロにされ、これまでポケモン勝負に屈辱的な敗北を経験した事がなかった俺は情けなさのあまりその男に顔を向ける事ができなかった。

 

「‥くそ‥!俺が負けるなんて‥!」

 

「チャイブさん‥」

「ちくしょー!」

 

俺は完全にプライドをへし折られた。

悔しくて涙が出そうだった。そんな俺に対して目の前の男は俺を見つめていたが、口調を変えて語りかける様に話し出す。

 

「‥もうこんな事をするなよ。その才を他の所に活かすんだな。ではな。」

 

「‥!?‥待ってくれ‥!」

 

男は俺の声に耳を貸さずにその場を足早に去っていく。それに縋ろうと手を伸ばすが、届かず俺は地に伏して男を見続けていた。

 

「あいつカッコつけやがって!」

「チャイブさん‥次あいつにあったらぶちのめしましょう!」

 

舎弟達は恨み言を言っていたが俺はそんな気持ちではなかった。

完膚なきまでに叩きのめされたあの男に勝てるわけが無いと本能で理解したのもあるがそれ以上に最後に放った一言に俺は引っかかりを覚えた。

 

『その才を他に活かすんだな。』

 

その言葉が頭の中で何度も反復した。

今までそんな事言われた事が無かったからだ。あの男は他の奴とは違う何かがあると感じた。

まるで俺に期待している様なその言葉に驚きを隠せなかった。

 

俺はあの男に興味を持った。あの男と会って話がしたい。何が目的なのかも気になった。

 

「なあ、お前ら話がある‥」

「「え? 何ですか?」」

 

「実はな‥」

 

俺は舎弟達と話をしてあの男にもう一度会いたい事を伝えた。みんな最初は嫌がっていたが、俺の諦めの悪さに折れる形でしぶしぶ納得してもらった。

 

その後何日か俺たちはあのスーツの男を探し続けた。

 

雨の日でも。

灼熱の炎天下でも。

ところ構わず探し続ける日々。

 

ようやく見つけて声をかけるも男は俺たちをあしらい、振り切っていく。それでも諦めずに後を追い回し続けても結果は同じで男は俺たちの気配に気づくと直ぐに身を隠す。

見失って、また探して見つけて、身を隠される。これの繰り返しだった。

 

「チャイブさん。ここまでやらなくてもいいんじゃ無いすか?」

「そうですよ。あんな奴に何でここまで‥」

 

「‥‥」

 

流石に舎弟達も音を上げていた。

確かにその通りかもしれないが、俺は諦めたくなかった。ここで諦めるのは何か違う‥ あの人と会いたい。そんな気持ちがより一層強まった。

 

 

そんな日々が続くある日の事。俺と舎弟達は街の中でも人通りが少ない広場にいた。表通りから迷い込む奴もいるが、大抵は引き返すほどの鬱屈とした雰囲気。

 

そこで一人のスキンヘッドの巨漢に因縁をつけられる。そいつは縄張りで好き勝手する俺たちを目の敵にしていたのだ。男の挑発に乗り、俺たちとそいつによる3対1のポケモン勝負。数的有利はあったものの奴のカイリキーに俺たちは敗北した。

 

「雑魚共が!好き勝手俺様のナワバリを荒らしやがって!さあ処刑タイムと行こうじゃねえか!」

 

まるであの時のスーツの男と同じ状況だが、流石にあの男の様に見逃してはくれない筈だ。万事休す。ここまでかと諦めていたその時

 

「‥!そこにいるのは誰だ?出てきやがれ!」

 

「‥‥」

 

突如スキンヘッドの男が取り乱すと、奴の脇にある大きな木の影から俺が探していたスーツの男が姿を現したのだ。まるで俺たちを庇う様に。

 

「‥‥」

 

スーツの男は何も言わずに佇むのみ。

一見すると恐怖や緊張で固まっている様で、手足が震えている様にも見える。

だが俺たちを簡単に叩きのめした実力者がそんなに臆病な筈がない。武者震いをしているとでも言うのだろうか。

 

「ほお!テメェもこいつらの手下か?なら丁度いい三下も片付けてやるよ!カイリキー!」

「リキッ‥!」

 

「‥手下じゃない。全く仕方ないな。スピアー出番だ‥」

「スピッ!」

 

スキンヘッドの男とスーツの男がポケモンを繰り出し、ポケモン勝負が始まった。カイリキーは息が上がっているのに対して、スピアーは息を切らさず余裕がある。4枚の羽を自在に動かし、減速、加速、急旋回を切り替える練度。これだけで力量差があるのが窺い知れる。

 

「す、すげえ‥!ここまで出来るのかよ‥」

「やっぱただもんじゃねえあの人は‥!」

 

「‥やっぱすげえな‥でもどうして‥」

 

どうしてここまで強くなれるのか。

どうして強くなろうと思ったのかわからなかった。それだけ強いのならば、俺たちを無理やり配下にして道具の様に扱ってもいい筈だ。なのにこの男は偉ぶる事もせずにいる。その事が理解できなかった。

 

俺たちが考えている間に勝負はスピアーがカイリキーにかわらわりをぶち込んで決着がついた。圧勝だ。

かくとうタイプでも無いのにカイリキー以上の威力を叩き出すスピアーが強すぎる。

 

「な、なんでそんな強いんだよ!おかしいだろぉ!」

 

「‥‥」

 

男はカイリキーがやられた事に腰を抜かし、その場でへたれ込んだ。さっきまでの威勢が嘘の様だ。

 

「ポケモンてのはトレーナーにとっての勝負の道具だろう!? 後ろの奴、お前の腰についてる奴らもそうだろう!?」

 

スキンヘッドはスーツの男を指差して非難する。目線を俺たちに向けた事や言葉のニュアンスからして俺たちをスーツ男の腰巾着と勘違いしている。スーツの男は俺たちに背を向けたままだが手足は強く震えていた。俺には分かる。あれは怒りだ。男は怒りを爆発させるように口を動かした。

 

「!違う!大事な友達だ。」

 

友達‥

その言葉に唖然とした。

最初にスーツの男の手足が震えている様に見えたのは武者震いでは無く、俺たちに危害を加えた事に対して怒っていたのか。

 

因縁をふっかけて、迷惑まがいの事をしたのに。俺たちの事を友と呼んでくれるのか

友達なんて今までいた事なかった。

俺たちみたいな社会のクズを仲間と呼んでくれる事に思わず、目頭が熱くなると同時にこれまでの行いを思い返して情けなくなっていた。

 

「道具をここまで研ぎ澄ますなんて、何考えてやがるんだよ!何が目的だ!」

 

「目的か。そんなの決まっている。将来、未来の為だな。」

 

未来。

スーツの男は目の前の事では無く、遠い未来の為に強くなったというのだろうか。だが未来とは何だ。もしかして自分の輝かしい未来の肩書きとして必要という事なのだろうか。

 

「はぁ!?未来のため!?イカれてんのか!? まさか世の為だとか、平和や平穏を守るためとでも言うのかよ!バカバカしい!」

 

「そうだ。平穏を守る為。強くなった理由の一つだ。」

 

「‥!」

 

迷いも無く当然であるかの様に言い切った事に俺は衝撃を受けた。他人に迷惑をかけても、自分だけが良ければいいと思っていた。そういう生き方しか知らなかったからだ。

 

だがスーツの男は違った。自分の事よりも他を優先する生き方。世の平穏を守る為に強くなった。

俺如きが到底敵う相手ではなかった。

 

俺たちを友と呼び、俺たちの為を思うこの男の器の大きさは計り知れないものがある。その男の行き先を見届けたい。その思いが強くなった。

 

「気持ちの悪い奴だぜ!クソが!覚えてやがれ!!」

 

スキンヘッドは腰を抜かしながらもその場から足早に駆け出していく。恐怖から何度も躓いていたが、スーツの男は後を追わずに佇んでいた。

しばらく立ちつくしていたが、俺たちの安否確認の為か一瞥した後にその場を去ろうとした。

俺はたまらずつい声をかけた。

 

「ちょっと待ってくれ!あの、助けてくれてありがとうございました‥!」

 

「‥‥」

 

「じ、実はお願いしたい事があるんです‥」

 

「‥何だ‥」

 

「お、俺はあなたについていきたい!どうか兄貴と呼ばせてください!」

 

俺は心のうちで思った事を口にした。

兄貴とは呼ばずにはいられなかった。あれだけの強さと器の大きさにその背を追いかけたい。ついていきたいと感じた。

舎弟達は俺の発言に唖然としているようだ。それもそうだ。いきなりこんな状況になると誰でもそうなる。

 

必死の懇願をしたがスーツの男は嫌がっていた。友達の様なフラットな関係を望んでいるのだろうが俺のしつこさに折れたみたいで渋々認めてくれた。

そして俺は兄貴の舎弟になった。

 

 

 

そこからは怒涛の日々だ。

俺の舎弟も兄貴の舎弟になり、俺たちは兄貴の護衛の為に行動を共にしたり、街中のチンピラを片っ端から配下にして兄貴の兵隊を増やしていった。

 

兄貴を支えていく為には俺自身が筋を通せる様な人間にならなければならない。

このままでは俺を通して兄貴の信頼も薄れていくだろう。だから俺はこれまで迷惑をかけた人間に謝罪しにいった。喧嘩で怪我を負わせたチンピラから憂さ晴らしにちょっかいかけた子供など会える人間全てに謝罪と弁償をした。殴られても殴り返さず気が済むまでやらせた。

兄貴の為を思えばなんて事はない。

 

 

兄貴についても多少は知る事ができた。

俺たちと出会う前、どうやら兄貴は大きな建物がある場所に行き来していた。おそらく会社のお偉いさんと話をしていたのだろう。兄貴程の器ならどんな相手でも話せると思ったからだ。

 

だから当初は俺たちを相手にする余裕がなかったのだ。兄貴はおそらく色んな会社に出入りし世の平穏の為に尽力していたに違いない。

 

だがそいつらに理解されずに兄貴は一人になった。

俺はそんな世界が許せなかった。

俺すらも友と認め手を差し出した懐の大きい兄貴を見捨てた世界を見返してやりたかった。

 

「なあ、お前ら。頼みがある」

「「「チャイブさん?」」」

 

「兄貴の願う平穏‥つまりカントーを制覇する為にも兄貴をボスとした組織を作ろう。」

 

そうだ。カントー地方は今有象無象のチンピラや、かつていたポケモンマフィア共によってまだ荒れている現状がある。兄貴の望む世の平穏にはカントーを制覇して、兄貴が頂点に立って治める必要があるのだ。

俺は舎弟達と組織を拡大していき、兄貴にボスになってもらう為に動いていった。

 

そうしてできたのがワビ組。

当初は小さな組も兄貴のカリスマにより、組は急成長。兄貴は組の運営能力も高く、人事や仕事の効率化によって組は更に拡大。

 

そしてワビ組成立から2年と1ヶ月。

ワビ組はカントー地方の主要の街に事務所を置き、各地に構成員を送り込める様になった。シマ争いした組織は全て壊滅させ、好意的な組織などを傘下にし、カントーを制覇した。当初は懐疑的なジムリーダーも兄貴に味方するなど、兄貴のカリスマは計り知れない。

 

ワビ組はカントーにおいて裏社会一の勢力にまで膨れ上がった。兄貴の目的も達成したのだ。俺は正式にワビ組の若頭となり、襲名披露宴も行った。

 

そしてその夜、俺は兄貴と二人で夜風に当たり、今後について話していた。

 

「兄貴。お疲れ様でした。念願のカントーを統一しましたね‥!」

 

「ああご苦労。とりあえずこれでひと段落だな」

 

「ひと段落‥ですか?」

 

念願のカントー制覇を果たしたが、兄貴はどこか浮かない様子であった。まさか俺が粗相を働いたのか。何か不満なことでもあるというのか。俺は思わず考え込んでしまった。

 

「ああ‥ようやくだな。と思っているんだ」

 

「ようやく?兄貴は何か思う事でもあるんですか?」

 

兄貴は夜空に目線を移して、星に目をやっていた。様々な星座が光輝く幻想的な夜空。まるでどこか遠い地に思いを馳せているかの様に見えた。

 

「ひと段落ついたらやりたい事があってな。いや行きたい所‥というべきか。お前にはその間留守を任せたい。」

 

「やりたい事?行きたい所?どういうことなんですか!?何を見ているんですか兄貴!」

 

「ジョウト地方」

 

「!?」

 

「目処が立ったら俺はジョウトに行く」

 

兄貴がやりたい事。それはジョウト地方も制覇という事か。その為にもジョウトに行く必要がある。カントーで俺たちと敵対した組織はジョウトに拠点を移したとの情報もある。カントーの平穏だけでは無く、ジョウトの平穏も願う兄貴の度量の深さに俺は何も言えずにいた。

 

「だからしばらくの間カントーを留守にする。その間チャイブがカントーの指揮をとれ。頼んだぞ。」

 

兄貴は俺の肩に手を置くとその場から立ち去る。

俺は兄貴に「お任せください!兄貴!」と頭を下げた。

兄貴は現場を重んじる人だからまず最初に自分がジョウトに行き、どんな地なのか調査するのだろう。下っ端がやる仕事も率先してやるなど、組全体の事を考えている。

 

ボスとしてはこれ以上にない存在だが脇が甘い部分もある。そこを俺が支えていかないといけないのだ。

 

 

「次はジョウト統一か‥!腕がなるぜ!俺は一生兄貴についていきます!!」

 

俺は星々が輝く夜空に向けて決意した。

その時流星が見えた気がしたが、俺の願いが形になった様な美しい夜だった。

 




主人公(後ろのやつ?腰についてる奴ら?ああ腰につけたボール、手持ちの事ね。大事な仲間やん。道具じゃなくて友達だよなぁ!)

主人公(将来の為、まあ食い扶持を得ないと未来なんて無いしね。)

主人公(私の平穏を守る為ならなんでもしますよ。そりゃあ)

主人公(カントー制覇したからひと段落っしょ!いい機会だし、やりたい事‥つまり観光!羽休み兼ねてジョウトまで旅行しよ!カントー留守にするけどその間チャイブに投げちゃおっと!わーい!どこ行こっかなー♪)


1話に軽くですが経緯などあるので、主人公視点についてはそちらを見て頂ければと。
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