鬼滅の刃〜偽りの鬼狩り〜 作:天之龍
鬼殺隊には階級制度がある。
鬼の討伐や人命救助などを考慮し、その階級は与えられる。
下から順に…
“癸”(みずのと)”壬“(みずのえ)“辛”(かのと)”庚“(かのえ)“己”(つちのと)”戊“(つちのえ)“丁”(ひのと)”丙“(ひのえ)“乙”(きのと)”甲“(きのえ)
そして甲となった隊員がある一定の条件を達した者へ与えられる称号こそ“柱”である。
「いやはや…真菰ちゃんのお説教は長くてイケねぇや…」
鬼殺隊の本拠地である”産屋敷邸“をぶらりと歩く男こと名無き隊士、酒呑童子は真菰のお説教から逃げ出した。腰にぶら下げた酒壺の量が少なくなったため、酒樽がある倉へと歩いていた。
「お、誰かと思えば不真面目な鬼狩り”酒柱“の童子じゃねぇか。」
「おや、そっちは派手派手な“音柱”こと嫁さん3人おる“宇髄天元”くんじゃん。おひさ〜♪」
酒呑童子の前に現れたのは柱の1人である宇髄天元だった。
派手な装飾品を身にまとった天元は皮肉った言葉を言うが彼には効かずヘラヘラと返事を介した。
「…相変わらず酒浸りかよ。そんなんじゃ、いつまでたっても他の隊士達のいい笑いもんだぜ。」
「笑いたきゃ、笑えばいいよ♪オレは酒飲んで金貰えて生きていけんならそれでいいんでね〜♪」
彼の言葉を聞いた天元は怒ることせず少し溜息を吐いた。
「そうかよ…それより聞いたか?今回の”柱合会議“の話…」
「いや、あれ?この前のオレがやらかした話じゃねぇの?」
「オマエの隊律違反は毎度のことだろう…風柱が殺された。」
「ッ!?…あの人が…」
「相手は“上弦”の鬼だそうだ。詳しいことは解ってねぇ…」
「…あっそ!まぁ、あの人からもよく怒鳴られてたし、煩い人がいなくなったってことで♪」
「ッ!?テメェッ!!」
酒呑童子の態度に流石の天元も怒りを露わにし、胸ぐらを掴もうとしたがふらりと天元の手を避けると塀の上へと飛び移る。
「おっと!危ない危ない。天元くん怖いから今日は逃げよーと!柱合会議は欠席するからバイバーイ♪」
そう言うと信じられないスピードでその場から立ち去った。
「…馬鹿野郎がァ。いつまで”演じてる“つもりだ…」
天元の呟きは誰にも届くことはなかった。
ー数時間後ー
「……………」
産屋敷邸から逃げ出していた酒呑童子は片手に酒壺と盃を手にしながらある場所にいた。
彼の周りには多数の墓標が並んでいた。
ピタッ…
ある墓石の前に立つと盃を置き、酒を注ぐ。
「…まったく…これで柱が5人になっちまったじゃないですか…」
そう、彼がいる墓は先程、天元から聞いた死んだ風柱の墓だった。
「…嬉しかったんすよ?こんなオレに毎度毎度と怒ってくれて…それなのに…なんで…」
悲しげな表情で呟く酒呑童子…
酒壺の酒を一気に口にし、飲み込む。
「…げふ…ふぅ…糞っ垂れが…飲んでも飲んでも“酔えやしないよ”。」
そう言って空を見上げる酒呑童子…ゆっくりと口を開く。
「必ず…オレが…鬼を…”鬼舞辻無惨“を殺しますから…あの世で見守って下さい。…オレの命に代えてでも…必ず…」
そして酒呑童子は墓を立ち去ろうとした時だった。
「…やはりここにいたか…」
彼の目の前には背が高く強靭な身体をした男が立っていた。
「…“悲鳴嶼”さん…」
目の前にいる男は鬼殺隊にて最強の名を持つ男…岩柱、悲鳴嶼行冥だった。
「…柱合会議はどうしたんです?」
「オマエが居なくなったのでな…御館様が日を変えられた。」
そう言うと行冥は風柱の墓の前まで来て手を合わせる。
「…まだ名を隠し続ける気なのか…?」
「…悲鳴嶼さんは知ってますよね。…オレは…”罪人“なんです…オレのせいで…何人の命が亡くなったと…」
「あれは…「事故とかオレのせいじゃないとか聞く気ないですよ。」…そこまで自分を潰す気か。」
その言葉に酒呑童子は軽く笑う。
「潰すも何もありませんよ。…オレは鬼を殺す…愚者になろうともオレはオレ以外の命を守り続ける。…でないとオレはオレでいられないんです。」
後は語ることはないと言うように酒呑童子はその場を立ち去った。
「…盗み聞きは感心しないぞ。」
「…やっぱり、悲鳴嶼さんにはバレてたか。」
行冥が呟くと物陰から現れたのは天元だった。
「悲鳴嶼さん…アンタ…アイツのこと何か…「私は語る気はない。」…そうかよ。」
静かな風が吹く…
まるで風もまた…
静かに1人の男を見守るかのように…
次回に続く。