ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
叩き出されるように出てきた二人を、外で待機していたメンバー達が出迎えた。
「それで、どうなったの?」
真が聞く。玲司とリサの顔を見て結果は察していたが。
「全力で金稼ぎだ」
「にじゅーまんえん払わなきゃここから出さないって……」
「二十万円!?」
「あいつ、いったい何者なの?」
他のメンバーと一緒に驚きつつ、千枝が聞いた。
「トリッシュっていう守銭奴の妖精。回復してくれるんだけど、メチャクチャなお金取るんだよ」
「どこかで聞いたような話だな」
「同じく……」
明彦と千枝が同意する。
「全員意識がなかったからとりあえず回復したけれど、私たちが大してお金を持っていなかったから怒ってるってこと?」
「うん……」
真の言葉に、リサが首肯した。
「でも二十万なんて大金、どうやって用意すれば……」
「交渉でもなんでも、やるしかないね」
「交渉……って、そんなことできるの?」
千枝の問いに、リサと玲司が頷いた。
「うん。話通じないのもいるけど、基本話せる相手だからね」
その言葉に、千枝と明彦が驚く。
「意外……」
「あいつらに話が通じると思ったことはなかったな」
「交渉でもなんでもやらなきゃ。早く外と連絡を取らなきゃいけないんだから」
携帯電話は通じず(玲司はそもそも携帯もPHSも持っていなかった)、外の状況もわからない。
仲間たちがどうなっているのかも気になっていた。ここで足止めを食っているわけにはいかないのだ
「そうだね……みんなで頑張ってお金稼ごう」
そして、自由を手にするための戦いが始まったのだった。
「金よこすか命よこすか、どっちか選びな……」
「お、老い先短い年寄りになんちゅうことを言うんじゃあ!?」
玲司の【脅す】
「千枝、演武行くよ!」
「応!」
「すごい、かっこいー!」
「ところで君……お金、持ってない?」
「お姉さんたちすごく困ってて……」
「楽しかったし、あげるよー」
リサと千枝の合体交渉、【なんちゃって演武】
「俺はもっと強い奴に会いに行きたい……!」
「アニキって呼ばせてくれ!」
「そこで……なんだが。路銀がないんだ」
「おう、少ねえけど持っていってくれ!」
明彦の【強さを語る】
「この投資は、あなたにとっても私にとってもメリットのあるものと認識しています」
「投資……人間も面白いことを考えつくものです」
真の【説得する】
「ウガー! オレサマ、オマエラ、マルカジリ!」
「僕もう怒ったぞ!」
「そんなら力ずくで奪ってみやがれー!」
「無礼者どもめ! この私自ら罰を下しましょう!」
交渉に失敗したら
「Go! <ブレス>!」
【ツインスラッシュ】!
「<ヴィーナス>!」
【マハアクダイン】!
「<カエサル>!」
【ソニックパンチ】!
「<トモエ>!」
【ヒートウェイブ】!
「<ヨハンナ>!」
【マハフレイダイン】!
「「ガァァァー!」」
ぶっ飛ばす。
そんなこんなを続けて、数時間。
「はぁ、疲れる……」
「ハイ回復するよー、<ヴィーナス>!」
【メディアラハン】!
「ありがと、リサ」
一同の傷ついた体をリサのペルソナが癒す。
「そういえば、城戸くんと真田くんは?」
真の質問に、千枝は疲れた顔で階段の踊り場を指さした。
「階段の踊り場で反復横跳びしてる」
「は?」
「あれやるとSP回復できるんだってさ。真田さんはなんか対抗意識燃やして一緒にやってるみたい」
「元気だね……」
「ていうか、反復横跳びで回復って一体どういう仕組み……?」
確かに精神力の回復は重要で、現に回復を担うリサの燃費も心配ごとではあったのだが。
さすがにリサもあれをやる気にはならないようだった。
「こんなの……帰るに帰れねえあの時の苦労に比べりゃ……」
友人と共に異常事態を解決したあの経験は、城戸玲司という男を更に強くしていた。
花子さんやブキミちゃんに命懸けの交渉をしたり、アガスティアの木が見つからないままダンジョンを進み、精神力が枯渇したり。
時にはペルソナの召喚に失敗して体が動かなくなり、泣く泣く仕切り直しとなった事もあった。
「反復横跳びもなかなか奥が深いな、城戸!」
「好きでやってるわけじゃねえぞ!」
この反復横跳びだって友人であり当時のリーダーでもあった藤堂尚也の閃きと発案によるものだ。
縄張り意識でもあるのか、悪魔たちが踊り場に寄ってこないことと、体を動かすことで精神力が自然回復することに気付いたのである。
最初に彼が言い出した時は正気を疑ったものだ。
「なあ、お前たちも混ざらないか?」
「え、遠慮しときまーす……」
「そんなことより、今どれくらいお金たまってるの?」
明彦の問いを断りつつ、リサと千枝が真に現在の所持金を確認する。
「約十九万……あともう少しね」
「あと一万円くらいかぁ……」
「もうひと頑張りよ、頑張りましょう」
とっとと返済して外へ出たい。ここにいる全員の気持ちは同じだった。
鬱憤と執念をさらに燃え上がらせ、さらなる迫力で交渉に臨む。
「金出せ。さもなきゃぶっ潰す……!」
「あと一万円なのよ……一万円!」
「体もいい感じに温まってきたところだ。試してみるか?」
「悪いけど、今すっごくイライラしてるの……うだうだ言わずに言うこと聞いてよ。頼むから」
「私がまだ理性を保っている間に……言うことを聞きなさい。いいわね!?」
究極の五人合体交渉、【拳で語るフォーエヴァー】。
「わ、わかったわよ……そんな怖い顔しなくたっていいじゃない……」
「2380円……?」
「あなたの命の価値はその程度なの……まだ出せるでしょう!?」
「ひぃぃ! わかったわよ、これでいいでしょ! これで全部! これ以上は出せったって出せないわよ!」
「……そう。ありがとう。とても助かったわ」
「人間怖いわ……ほんっと怖いわ……」
悪魔が怯えていたが、そんなことはどうでもよかった。
そして──
「やった、ノルマ達成……!」
苦節数時間、ようやく二十万円を集めることに成功したのである。
「早速トリッシュのところに行こう!」
● ● ●
「はいはい、毎度あり。今度はちゃんとお金持ってくるんだよ」
「やった……!」
「自由だー!」
抱き合ったり、ガッツポーズをとったり、ハイタッチしたり。
トリッシュの態度に各人思うところはありながらも、それぞれの方法で喜びを表現する。
「さあ、脱出しましょう。外が気になるし!」
「待って。入り口は変なメカが見張ってたんじゃなかった?」
「あ……」
これまでの金策の影響で、体力も精神力も削られている。
あの強そうなメカを相手に戦う余力は残っておらず、トリッシュに回復を頼めるような資金もない。
「それなんだが……あいつ、スクラップになっていたぞ」
悩み俯く一同だったが、明彦の声で顔を上げる。
「え?」
「なんで?」
「よくわからないが、俺たち以外の誰かが壊したんじゃないか」
自分たち以外の誰か。味方かもしれない。
「やった!」
「私、ナースステーションで避難してる人たちに伝えてくるね!」
避難していた人たちを警護しながら先に送り出し、最後にペルソナ使いたちが外へ出る。
「外、どうなってるのかしら……」
「外って……御影町じゃねえのか?」
「御影町……やっぱり城戸さんってあの城戸さん!?」
「どの城戸だよ……お?」
「あなた達……」
病院から出た先には、6人分の人影。心強い味方達の姿がそこにあった。
「……助太刀にと思ったが、余計な世話だったな、城戸」
「やっぱり無事だったか! さっすがオレ様の大親友!」
「南条に上杉……お前らと先に会うとはな」
「こいつがあの城戸って、嘘だろ……!?」
「あのオジサン、どこかで見たような……」
「明彦、お前もここにいたのか」
「美鶴! お前も無事だったか」
「うおおお、里中先輩!! 会えてめっちゃ嬉しいッス! 俺、俺……もう疲れました……!」
「完二くん!? どしたのそんなに泣いちゃって……」
「ぴぇ、不良増えてる……って、真……センパイ?」
「双葉! 無事で良かった!」
それぞれの反応を見て、何かを悟ったらしいメンバー達が口を開いた。
「どうやら」
「皆さん、お知り合いの様子で……」
「まずは、情報交換……だな?」
そうして、合流したペルソナ使いたちは情報の共有を始めるのであった。