ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
「なおりんは時々、コワい」ーーブラウン、当時を振り返って。
① 思わぬ場所での合流
『JOKER』。最近、八十稲羽を騒がせている連続猟奇殺人鬼がそう呼ばれているという噂があった。
そんな事情もあって、かねてからJOKERとマヨナカテレビの関連性を疑っていた鳴上悠以下、八十稲羽のペルソナ使い達はジュネスに集まった。
しかし、話の途中で大きな地震に巻き込まれて、そこから記憶が途切れていた。
「一体、何がどうなってんだ…?」
どうやら学校の教室のようだが、八十神高校ではない。
痛む頭を抱えて起き上がり周囲を見渡すと、見覚えのある一人の少女が倒れているのが見えて、陽介は慌てて駆け寄った。
「天城!」
軽く揺すると、少女――天城雪子が目を覚ました。
「花村くん…ここは…?」
「わかんねえ。俺も気付いたらここに居た。だが、この感覚は…」
肌にまとわりつく不快感と、周囲を闊歩する何者かの気配。二人はこの空間の雰囲気に覚えがあった。
陽介の言葉に、雪子も頷く。
「テレビの中…」
「ケータイも通じねえようだし、とにかくここから出ようぜ」
「待って花村くん、まだそこに人がいる」
雪子の示す方向を見ると、まだ一人倒れている少年がいた。年頃は陽介たちと同じくらいだろうか、見慣れない制服を着ている。
こちらも怪我はないようで、軽く揺すってみると少年は呻きながらも目を開いた。
「ここは……」
「怪我とかはしてなさそうだな。名前、言えるか? 俺は花村陽介、こっちは天城雪子だ」
「あ、ああ…俺は坂本竜司。地震があって、気が付いたら……花村って言ったっけ。そっちはどうしてここに?」
「お前と同じ。地震が起きて、気付いたらここにいたんだ」
「そうか……どこかわかんねえけど、とりあえず外に出ようぜ」
そう言いながら、竜司が教室の扉を開けると。
「レッツゴゥエビバデ!ホォォォォウ!!」
「ヘイヘイヘーイ!」
一同の目に飛び込んできたのは、ニット帽を被った少年をバックダンサーに、バシバシにメイクを決めた男が怪物の目の前で歌っている謎の光景だった。
その傍では犬を連れた帽子を被った少年と、呆れ半分退屈半分といった雰囲気でそれを見るコギャルの姿。
悪夢のような光景を前にして、陽介は扉を閉めた。
「ちょっと待ったァ!」
こちらに気付いたらしい変人集団(暫定)が声をかけてきて、陽介と竜司は大きなため息をついた。
稲葉正男(マーク)、綾瀬優香、三科栄吉、伊織順平、コロマル、花村陽介、天城雪子、坂本竜司。
みんなが同じような経緯で気を失い、この学校、七姉妹学園で目を覚ましたのだという。
「武器も防具もろくなものがないだろ?ペルソナに頼るのだって限度がある」
「だから、悪魔だかシャドウだかを相手に交渉して、戦わないよう立ち回ってたと……」
シャドウーー悪魔を相手に交渉など、陽介と雪子からすれば信じられない話だった。
「でも、順平の奴がシャドウと交渉なんて信じらんねーっていうから、俺と栄吉で手本を見せてたんだよ」
マークの言葉を受け三人は真偽を問うように順平に視線を向けると、順平は帽子を目深に被り、一言。
「マジでした……」
● ● ●
順平「――てな感じで、交渉しまくって無事に学校を出た後、栄吉の共鳴ってのを頼りに電車に乗ったら……」
美鶴「私たちと居合わせた、というわけか」
八十稲羽へと向かう電車の中で順平の説明を受けた美鶴の言葉に、合流した一同が首肯した。
ブラウン「交渉だけで乗り切るとかさっすがマーくん!」
マーク「マーくん言うな。」
真「でも、出口にロボットとか居なかったの?」
竜司「ロボット……栄吉、そんなん居たか?」
栄吉「いや、見てないねェ。どうせ僕の美貌に恐れをなして逃げたんだろうさ……ホォォォォウ!」
雪子「うっ、く…うう…!」
千枝「雪子、大丈夫? まさか怪我とか……」
陽介「あんま心配しなくて大丈夫だぞ」
千枝「なんで? お腹おさえて、こんなに苦しそうに……」
陽介「笑いすぎて腹筋痛めただけだから」
千枝「えええ……」
② 八十神高校
「行くぜっ! <セイメンコンゴウ>!」
【マハーガル】!
「Come here、<ニケ>!」
【ハマ】!
「やっちゃいなー、<アステリア>!」
【マグナス】!
「ペルソナッ! <カーラ・ネミ>!」
【ジオンガ】!
「ペールーソーナー! <ミラディ>!」
【マハサイオ】!
「ペルソナ、<ゴエモン>!」
【ブフダイン】!
「敵の全滅を確認! ようやく学校を抜けられるよ! みんなお疲れ様!」
道をふさぐ悪魔を一掃した六人――藤堂尚也、桐島英里子、芹沢うらら、天田乾、久慈川りせ、奥村春、喜多川祐介――は安堵の息を吐いた。
「ふいー、疲れたー」
「お疲れ、うららちゃん」
「りせちゃんも、的確なサポートありがとね」
「藤堂先輩の指示がすごいんですよ。まるでセンパイみたい」
「出たわね、ウワサのセンパイ! こ~んな可愛い子を夢中にさせるなんて、どんな色男なのかしら? いっぺん見てみたいわぁ」
「あ、うららちゃんには渡さないよ!」
「あの子、やっぱりアイドルの久慈川りせちゃんだよね……もっと年上のはずなのに、どうして……」
「後でモデルになってもらえないものか」
「ヌードはダメだよ」
疑念を抱きながらも、春は祐介にくぎを刺すことを忘れない。
「こんな悪魔だらけの学校ともようやくオサラバね。せいせいする……わ……」
一番に昇降口を出たうららは、飛び込んできた光景を見て硬直した。
「どうしたんですか――って、うわっ!」
「何があったんだ……?」
後に続いたメンバーたちも、その光景を見て驚愕した。
校門の周辺には大規模な戦闘の跡があった。それに関わっているとみられるロボットが四体、スクラップとなって転がっている。
「なんですか、これ……」
「あいつらのロボット……なんでこんなところに」
乾の言葉に、スクラップとなっていたロボットーーX-1を調べていたうららが返す。
「うららちゃん、これが何か知ってるの?」
「ウンザリするほどね。もし動いてたら間違いなくここから出られなかったわね」
「誰か、ここに来たのかな? あと祐介くん、スケッチは後にしようね」
困惑する面々に、マイペースにスケッチを始めている祐介を諫める春。そんな彼らに尚也が声をかける。
「今は考えても仕方ない。無事に学校は抜けられたんだ。回復して装備を整えて、それから考えよう」
その言葉に一同は頷いて、校門を出た。
「こんなことで良いのかな……」
「いいんじゃないか」
呟く乾に、尚也が答えた
「藤堂さん」
「ずっと深刻な顔してても疲れるだけだ」
「でも、状況もよくわかってないのに……少しは考えましょうよ!」
「気持ちはわかるけど急ぎすぎだ。ようやく学校を出られたんだから、まずは安全の確保が先だ」
「Naoya」
諭す尚也に、桐島絵里子──エリーが声をかけた。
「エリー。何かあった?」
「Riseからこの八十稲羽のMapを頂いたので確認をと思ったのですが、お邪魔でした?」
「大丈夫。あと、天田」
にっこりとした笑顔。しかし迫力は圧倒的。乾の背筋に悪寒が走った
「反復横跳び、まだ終わってないよな?」
踊り場反復横跳び。それはこの場で暫定リーダーを務めている尚也からの唯一の『おねがい』だった。戦闘するたび、精神力を回復するために反復横跳びをしろというのだ。最初はエリー以外の全員が反対したのだが。
「や、やっぱりナンセンスですよ、反復横跳びで回復なんて」
「ペルソナは俺たちの命綱だ。今後も何があるかわからない。そうだろ?」
八十神高校は異界化して長い長い迷路となっていた。ろくな武器がなくペルソナだけが頼りの状況は反復横跳びをさせるに十分な動機であり、結局全員それに従うことになったのだ。
「でも、もう学校は抜けて……」
「逃げるな」
有無を言わさぬ迫力。後ずさりすると、次はエリーに肩を掴まれた。
「大丈夫、すぐに慣れますわ。……私たちもやったのだから」
よくよく見れば、精神力を消耗していないりせ以外のメンバーが反復横跳びをしていた。エリーからも恐ろしげな迫力を感じ、乾も諦めて反復横跳びに勤しもうとして。
「相変わらずだな、藤堂……」
それを、ゲンナリしたような声が呼び止めた。
「南条!それに城戸にブラウンにマークも……!無事でよかった」
声の主は南条圭。彼の親友の一人だ。さらに彼の連れた大所帯の中に他の親友たちの姿も認めて、尚也は駆け寄った。
「あったりめーよ、なおりん!」
「お前の適応力も流石だよ……まったく」
「あの、お知り合いですか──って……?」
「天田!」
「お前もここに居たのか!」
「芹沢よぉ……ダイエットに勤しむのは結構だが、そういうのは一人でやってろ」
「パオ、あんたも居たの! それに……」
「あーっ! 舞耶ちゃんのルームメイトの人!」
「久慈川!」
「カンジ! 里中先輩!」
「春!二人とも無事でよかった!」
「マコちゃんも!」
「オイナリはいつもどーりっぽいな」
「俺はいつも俺だぞ」
「さて、例によって……」
「自己紹介といきてえが、もう面倒だ! 名前と時代だけでいい! あとは全員揃ってからだ!」
がやがやと騒がしくなってきたところで、パオフゥがうんざりといった風に声を上げた。
「次はどこに行くの?」
「辰巳ポートアイランドだ。行くべき場所も見当がついている」
大所帯を必死でまとめるパオフゥを尻目に真が問うと、美鶴がそう答えた。