ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
「…………ラ」
「……キラ、おい! アキラ!」
「モナか?」
先ほどまで自分の部屋に居たはずだったのに、なぜかベッドに寝かされていた。聞き馴染んだ声に返事をして、ベッドから起き上がる。
「やっと起きたな。見たところ怪我とかはなさそうだが、調子はどうだ?」
「大丈夫だ。モナこそ大丈夫か? それに、みんなは……」
「ワガハイも大丈夫だ。他の連中はわからねえ。このあたりにはワガハイ達しか居なかった」
意識がはっきりしてきた暁は改めて周囲を見渡すと、ここが秀尽学園の保健室であることに気がついた。
「ここ、秀尽学園か? 一体どうして……」
「ワガハイも驚いてる。……この格好も含めて」
「その格好は……!」
言われて気付く。猫そのものの姿だったモルガナが、両足で立つマスコットのような姿──メメントスや認知の世界での姿に変わっていた。
「気付いたらこうなってた。でも、猫の姿にもなれる。車になれるかは試してねーけど」
「目が覚めたかい? あまり急に動かないほうがいい。君たち、気絶して倒れていたんだからね」
話をしている二人の様子に気付いたのか、離れたところに座っていた少年が声をかけてきた。どことなく見た目が祐介に似ているような気がした。
「祐介……じゃ、ないか」
「そこのモルガナくんにも間違われたんだけど、その祐介って人とそんなに似てるのかな」
「こいつはジュンだ。倒れてたワガハイ達を介抱してくれたらしいぞ」
苦笑する少年を、モルガナが紹介する。
「そうなのか? ありがとう。ええっと……」
「僕は黒須……いや、<こちら側>では橿原淳。君と同じ、ペルソナ使いだ。よろしく」
「俺は来栖暁。よろしく。君も……」
ペルソナ使いなのか、と聞こうとする前に、複数の人の気配が近づいてきた。
「淳くん、彼の様子はどう?」
「大丈夫そうです」
「起きたのか。元気そうで良かった」
「怪我はなさそうでしたけど、これで安心ですね」
「これで全員かクマ?」
「うん。とりあえず、みんな無事で良かった」
「え、えっと……?」
一人、また一人と顔を出してくるメンバーに混乱する暁たちを見かねたか、そのうちの一人である鳴上悠が声を上げた
「ひとまず、状況を整理しようか」
暁とモルガナは、彼らを介抱していた橿原淳に案内され、2階にある教室の一角に集まっていた。長期休みということもあって人はいない。集まったのは、合計7人。
「秀尽学園の来栖暁、八十神高校の鳴上悠、月光館学園の山岸風花、春日山高校の橿原淳、聖エルミン学園の園村麻希……」
「見事にバラバラだな。一致してるのは年頃くらいだ」
「猫のモルガナくんと着ぐるみのクマくんもいるね」
「ワガハイは猫じゃねえ!」
「クマはクマだよ?」
「そうだ。モナはクルマだ」
「そうだ。クマはクマだ」
淳の指摘に反応するモルガナとクマに対し、暁と悠はそれぞれ返答する。
「クルマでもねーよ!」
「センセイ……!」
ボケているのかいないのか、暁にツッコミを入れるモルガナと少し感激した様子のクマの反応を見て一同が笑みを浮かべる。わちゃわちゃと話すメンバーの中、淳が静かに口を開いた。
「──もう一つの共通点は、みんなペルソナ使いってところだね」
「淳」
「自己紹介も終わった事だし、どういう経緯でここに来たのか、話さないか?」
「――じゃあ、みんなも地震に遭ってここに来たのか」
「はい。急に大きな地震があって、気がついたら……」
「ここに居た、ってわけか……」
ここにいる全員も経緯はほとんど同じで、暁たちと同じく地震で気を失い気が付けばここに居たのだという。
「モナ、やっぱり原因は……」
「アレだろうな。ネオ・デヴァ・システムとかいう機械。JOKERって奴も相当怪しいぜ」
「デヴァ・システム!?」
「「JOKER!?」」
がたんと音を立てて、麻希と淳、悠が立ち上がった。風花とクマはそれに驚いたのか固まっている。
「おいおい、どうしたんだよだよみんなで……」
「どうやら、これまでの経緯をもっと詳しく話す必要がありそうだね」
● ● ●
「精神世界、噂の現実化と世界の破滅とリセット、影時間、テレビの中、認知の世界か……」
各々の事情を聞いて驚き驚かせを繰り返しつつも、まとめるように淳が呟いた。
「噂の現実化……おい、アキラ!」
「ああ。夢でフィレモンが言ってたな」
「フィレモンに会ったのか?」
「あ、ああ。今日、夢で……」
「マキチャン、俯いてどうしたクマ?」
「やっぱり、デヴァ・システム……それに鷹取って……」
その時。教室の扉を破壊して、大きな3つの影が飛び込んできた。乱入者の姿を見て淳が驚愕した。
「ロンギヌス13!?」
航空機を模したような装甲を纏った兵隊、聖槍騎士団ロンギヌス13。胸元にはそれぞれ10、11、13と書かれている。
『愚かなマリオネッテが4人、抜け殻が2匹……ようやく見つけたぞ!』
「な、なんだ、ロボット!?」
「ロンギヌス! なぜお前たちがここにいる!?」
戸惑う一同の中で淳が問いかけるが、ロンギヌスは相手にすることなく槍を掲げた。
『JOKER様は新たな世界にお前たちは要らぬとの仰せだ! ここで朽ち果てるが良い!』
「占い師がどうして……」
「こいつら、殺人鬼の手下……?」
「バカな、JOKERはもう居ないはず!」
「「「???」」」
それぞれの回答のズレに、暁と悠と淳がお互いを見返す。
『口を動かしている暇があるのか、愚か者! ここは戦場だ!』
「くっ、装備が……みんな逃げて! こいつらと戦うのは危険だ!」
淳が脱出を促すが、ロンギヌスたちは教室の出入り口をふさいでいた。
『笑止! 我らから逃げられると思っているのか!』
そして、戦闘が始まった。
機械の鎧を纏った兵士3体を相手に、3人の少年と2匹のマスコットが戦闘を繰り広げていた。
『【ガイスティブブリッツ】!』
ロンギヌス10から槍から放たれる雷が少年たちを打ち据える。
「大丈夫か、悠!」
『私を目の前にして味方の心配とは、甘いな……愚か者! ここは戦場だ!』
「アキラ、ロボが来てるぞ!」
「わかってる! ペルソナ、<アルセーヌ>!」
【シングルショット】!
『ふん、この程度……』
「淳! 隙を作ったぞ!」
「助かったよ、暁! <クロノス>!」
【クロスフォーチューン】!
『ぬおお!?』
暁に迫るロンギヌス11を銃撃して少しだけよろめかせると、その隙を逃すまいと淳が大技を叩き込む。
魔法の旋風がロンギヌス10と11をまとめて吹き飛ばす。
「今だ、麻希、風花!」
「うん!」
悠の声に答えて、その隙に風花を連れて麻希が教室から脱出する。
『小癪な……!』
「このまま園村たちが戻るまで粘るぞ!」
「「おう!」」
一方、モルガナとクマは残るもう一体、ロンギヌス13を相手にしていた。
『私の相手は抜け殻2匹か……つまらんな』
「抜け殻とは失敬な! クマのふつくしいボディを見せてやるクマ!」
「そういう問題じゃねーだろクマキチ!」
「だーれがクマキチじゃーい! この妖怪バケネコ!」
「なんだとぉ!?」
『戦いの際に口論とは、愚か者! ここは戦場だ! 貴様らまとめて普遍的無意識の海へ帰してくれる!』
暁たちに逃された麻希と風花は、外から感じた味方の気配を追い、救援を求め走っていた。
全員手持ちの装備はなく、使えるのはペルソナのみ。急がなければならなかった。
「風花ちゃん、次の道は?」
「左! ここを抜ければ昇降口です!」
『最初のマリオネッテ……あの男に逃げるなと言われただろうに、忘れたのか?』
走る二人の目の前に現れたのは、またもロンギヌス。胸元には12と書かれていた。
「まずい……風花ちゃん、先に行って!」
「はい!」
『非戦闘員だからと、この私が見逃してやると思っているのか? 愚か者! ここは戦場だ!』
「私たちを助けて、<ヤヌス>!」
【永遠の白】!
ペルソナから放たれた光がロンギヌス12を飲み込み、風花の逃げる隙を作る。
「あなたの相手は私だよ、ロボット!」
『おのれ、小賢しいマリオネッテが! まず貴様から血祭りにあげてやる!』
風花を逃がし、さらに麻希の啖呵に憤るロンギヌス12が、麻希へと襲いかかった。