ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
心の怪盗団が代表を決めて数十分が経ち、6組――尚也と南条、達哉と淳、舞耶と克也、湊と美鶴、悠と陽介、暁と真とモルガナがスマル・プリズンのステージの上に置かれたテーブルの椅子に腰掛けていた。他のメンバーは舞台の下からその様子を眺めている。
「天野くんの補佐兼、議論の進行役を務めさせてもらうことになった珠閒瑠警察の周防克也だ。よろしく頼む。まず、これまでの経緯を簡単にまとめよう」
最初に切り出したのは克也だ。舞台袖からホワイトボードを引っ張り出し、ペンで<これまでの経緯>と書き込んだ。
「まずは、杏くんや暁くんから聞き取った情報をもとに時系列を整理する。異変の始まりは2017年。君たち……怪盗団に、フィレモンが警告をした。ここまでは良いね?」
「はい」
「そして君たちが集めた噂、『運命を操る占い師のJOKER』『セベクの新製品』『メジエド創始者の復帰』。この事態を引き起こしたのは、おそらくこの3つの噂が原因だろう」
克也が『占い師』、『ネオ・デヴァ・システム』、『メジエド』とホワイトボードに書き込んでいく。
「推測になるが、占い師にセベクの佐伯社長が何かを願い、ネオ・デヴァ・システムが完成。それが暴走したといったところだろう」
「色んな時代のペルソナ使いたちが集まったのは偶然なんでしょうか?」
「いや、おそらくは意図的なものだ。俺が奴に呼び出されてから、そう時間が経たずにこうなった。装置の暴走だって怪しい。何か仕組んでいたとしてもおかしくない」
悠の疑問に達哉が答え、克也も頷く。
「様々な意味での例外が、<向こう側>からやってきた達哉と、生き返ったという湊くんだ。事情を話してくれるか?」
克也が問うと達哉と湊が頷き、事の経緯を話した。
「そんなことがあったのか……」
「奴は、こちらで大きな催しを行うと言っていた。この事件と無関係とは思えない。そして湊が生き返る前に聞いたという声も奴とフィレモンとニャルラトホテプのものだろう」
「俺が生き返ってるのも、ベルベットルームのエリザベスという人が代わりに封印を引き受けたからなんだ。彼女に接触できる人間なんて、それこそ数えるくらいしか居ないはず。でも、シャドウの大元とイゴールの主人なら……」
「なるほど。では話を戻そう。我々が飛ばされた先は全て異界化して、シャドウ……悪魔が徘徊していた。今のところ、奴らが街の人を襲っている様子はない」
「どこも出入り口に番人みたいな奴が居たんだっけ?」
「X-1とロンギヌスだな」
「でも、八十神高校には居なかったけど」
「七姉妹学園にも居なかったぜ」
尚也と陽介がそれぞれ指摘すると、達哉が口を開いた。
「セブンス……七姉妹学園はわからないが、八十神高校に居たX-1は俺と湊が倒した」
「X-1が四体居たから、装備の足りない尚也達じゃ危なかったかもしれない」
その言葉にうららと美鶴が反応した。
「あれをやったの、達哉クン達だったのね……」
「あの機械が4体も居たのか。よく倒せたな」
「俺たちは装備が整っていたからね」
「俺たちのところにも来たのか?」
陽介の問いに、達哉と湊は首を横に振った。
「いや。最初に八十神に行って、次は秀尽に行ったからな」
「もともと居なかったのか、それとも勝手に持ち場を離れたのか……わからない」
「とにかく。一番早く動くことができた我々が各地を回ってメンバーを集めて、今に至る……と」
そう南条が締めて、この議題は一区切りとなった。
「さて、次の議題は……目下の我々の敵対者……この異変を引き起こしている者についてだ」
克也が次の議題をホワイトボードに書き込んだ。
<敵対者について>
「まずは、御船千早と言ったか……彼女とその側近、来栖くんのシャドウが率いる、『運命の教団』」
「千早は騙されているだけなんだ……」
「大丈夫だよ。僕らはみんなわかってるから」
悔恨を滲ませて俯く暁に、淳が声をかけた。似た境遇にあったために気持ちがわかるのだろう
「<向こう側>の仮面党、<こちら側>の新世塾にあたる組織が運命の教団だろう。やり口もそっくりだ」
「願いを叶える者を首魁に、悪意ある周囲がそれを崇め利用する……そうね」
達哉の言葉に舞耶が同意する。
「その構成員と見られるのが、首魁である御船千早、シャドウ来栖、そして有里奏」
克也がホワイトボードに『運命の教団』『構成員』『教祖、占い師JOKER=御船千早』『元凶? シャドウ暁』『有里奏』と次々と書き込んでいく。
「お姉ちゃん……」
「桐条くん、彼女は君を特に敵視していたようだが、彼女の目的に心当たりはあるか?」
「ありません。桐条の娘である私の命を狙うのはわかるのですが、湊まで狙う理由がわからない」
「これは今考えても答えは出ないか」
克也がホワイトボードの奏の名前の隣に、『目的不明』と付け加えた。
「他に協力したり、所属している可能性の高い人間は2人……鷹取博士と、メジエドの創始者だ」
「待ってくれ、メジエドの創始者は双葉で、もう活動もやめてるんだ」
暁の言葉に、達哉が反応した。
「噂だな」
「噂?」
「双葉がメジエドと名乗って表に出てきた事はあるか?」
達哉が舞台下の双葉に目をやると、双葉は顔と両手をぶんぶんと横に振った
「出るわけない! 出られたら今頃こんなんになってないし!」
双葉の返答を聞いて達哉は頷き、再び暁に向き直る。
「おそらく、噂されている『メジエドの創始者のイメージ』が形をとって、それが活動しているんだ」
それを聞いて、リサと栄吉、淳が表情を曇らせた。
「暁達は双葉がメジエド創始者と知っているが、大衆にとってのメジエド創始者は『噂の中のメジエド創始者』なんだ」
「父さんと同じということだね……」
「橿原くんのお父さん?」
「<向こう側>のことだが、俺たちが淳の父親について噂をしていたら、それが現実になって淳の父親の偽者が現れたんだ」
「父さんが嫌いだった僕は、その偽者を本物と思い込んだ……」
「つ、つまりこの場合は橿原くんのお父さんをメジエド、達哉さんたちを大衆に置き換えればいいのね」
淳の言葉に重くなった空気を振り切るように、真が話をまとめた。
「んじゃ、フタバの正体を今から明かすのは」
「だめだ。大衆が信じるかもわからないし、成功しても双葉の人格が噂の中のメジエドに乗っ取られる危険がある」
モルガナの提案を、達哉が止める。
「メジエドが積極的に協力してるから、教団の傘下にあるんじゃないかって噂は聞いたけど、そもそもなんで協力するようになったんだろうね」
「ネットの噂にそういう噂が流れていたのかもしれない。双葉、どういう噂が流れていたか覚えてるか?」
「……そういえば、カルト教団とつながりがあるとかって書き込みがあった気がする」
「一度の書き込みで大衆が認知するほどにパソコン通信……インターネットが普及しているというのか。俺達には想像もつかんな」
そう南条がこぼし、尚也が苦笑した。
「さて、メジエドの話はこのあたりにして、次は鷹取博士についてだ。藤堂くん、佐倉くんの動画は見たね?」
「あれは神取です。南条も城戸も、俺たち全員がそう感じました」
「奴でなければデヴァ・システムの発展形など作れませんよ」
克也の問いに尚也がしっかりと答え、南条もそれに続く。セベクの新製品発表会の動画は双葉がスマホに保存していて、それはここにいる全員に共有されていた。
「奴は<こちら側>でも一度、今回のように噂の力で復活している。その時と同じだろうな」
「現状、正体がわかっているのはこれくらいか」
「この他にも教団の一般構成員や、まだ我々が知らない幹部も居ると思っておいたほうが良いだろう。各自、用心しておくように」
克也がそう締め、議題は次へと移っていく――