ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
今回は最後のおまけ小話だけ台本形式です。某掲示板投稿分とだいぶ変わってますので、三章以降の内容もだいぶ変わってくる予定です
「さて、次の議題だが……」
「兄さん、ペンを貸してくれ」
「構わないが……」
次の議題に移ろうとする克也からペンを受け取り、達哉はこう書き込んだ。
<噂について>
「一度、これまでに流れた噂を整理したい。今後の行動の指針になるかもしれない」
「さっき挙げた以外の噂……」
「確か、私と双葉が集めた噂は四つあったわよね?」
暁と真がこれまで知った噂を書いていく。
『占い師JOKER』
『新生セベクの新製品』
『メジエド創始者の帰還』
『占い師のおかげで就任した? 日本初の女性総理大臣、岡村真夜』
「岡村真夜……まさか、イデアル先生か!?」
「知り合い?」
「七姉妹学園の教師だ。<こちら側>では普通の教師になっているはずなんだが……」
「それが占い師の力で総理大臣……何があったのかしら」
「噂といえば、八十稲羽でも殺人鬼の噂が話題になってたよな?」
「ああ。たしか昔の殺人鬼の亡霊……で……」
そこまで言って、陽介と悠が固まった。
「どうした?」
「八十稲羽でも噂されてたんだ、JOKERが!」
「どういうこと?」
「何か月か前から八十稲羽で連続殺人が起こってて、その犯人がJOKERって呼ばれてるという噂が流れてたんです」
「誰も彼もJOKER……JOKERっていう名前に何か意味があるの?」
悠と湊の言葉を受けた真が聞くと、達哉が口を開く。
「<向こう側>では願いを叶える怪人、<こちら側>では依頼を受けて殺人を行う殺人鬼。どちらも奴――ニャルラトホテプが裏で力を与えていた」
「ってことは、そのニャルなんたらの力を受けた誰かが八十稲羽で殺しをやってるってのか?」
陽介の言葉に、達哉は静かに頷いた。
「悠クン、八十稲羽の殺人鬼についてもっと詳しく聞かせてくれる?」
「はい。ニュースや噂話の受け売りですが、犯行は極めて残忍。遺体はひどく損壊し目撃証言や証拠もほとんど見つからなかったそうです」
「珠閒瑠市の時と同じか」
悠の説明を受けて、克也が呟く。
「そして、犯行現場には必ず怪文書を残していて……達哉、ペンを借してくれ」
達哉から渡されたペンを使い、悠がホワイトボードに何やら書き出す。
『これはJOKERが我が神に捧げる贄である。十四の贄を捧げてから五度目の春、呪われた仮面とともに三つの塔が現れるだろう。仮面に選ばれし女王は偽りの世界を永遠の夜に包み、救世主に選ばれし民は神の船に乗り新世界へと旅立つ』
「これが、その怪文書なのか?」
「ああ。何度もニュースでやっていたけど、確かこんな文面だったはずだ」
言いながら、悠は達哉にペンを返した。
「素人が書いた三流以下のポエムにしか見えんが、気になる単語があるな」
「三つの塔に、呪われた仮面……」
「贄というのは被害者のことと解釈するとして、五度目の春は十四人を殺した五年後の春、という意味か」
悠がホワイトボードに書いた怪文書を見て、南条、尚也、克也がそれぞれコメントする。
「これも放置するわけにはいかないな……」
「殺人鬼JOKERの噂は2017年にも噂されていた。教団にとって不都合な人間を殺しているとか、殺しを願うと現れるという噂だった」
「あと、心の怪盗団のリーダーもジョーカーと呼ばれていて、何か関係があるんじゃないかって噂だったよ」
「わざとうちのジョーカーと関連付けさせようとしてるとしか思えねえな……!」
達哉の説明に湊が補足を入れる。それを聞いて、モルガナが憤りとともに吐き捨てた。
「達哉、他に噂は聞いたか?」
達哉は頷いて、ホワイトボードに書き込んでいく。
『明智という探偵が戻ってきたが、悪の秘密組織と戦って大怪我を負ったらしい』
『占い師JOKERには槍を持った親衛隊がいる』
『メジエドは運命の教団の傘下組織らしい』
『昔作られた自衛隊の秘密兵器をメジエドが奪い、教団に引き渡した』
「こんなところだな」
「明智!?」
「知ってるのか?」
驚く暁たちに達哉が聞くと、モルガナが説明する。
「お、おう……簡単に言うと心の怪盗団のライバルだ。行方不明になってたんだが……」
「槍を持った親衛隊はロンギヌス、秘密兵器はX-1か」
「多分、奴らを復活させるために噂を流したんだ」
説明するモルガナ、予測を立てる克也の言葉を受けて達哉が答えた。
「なるべく急いで動く必要がある。混乱が加速してからじゃ遅いんだ」
各自が新たに岡村真夜、殺人鬼JOKER、明智という情報を頭に入れ、最後の議題へと移る。
<今後の目標>
「これである程度、現状は知れたと思う。最後の議題は、今後の目標だ」
克也がホワイトボードに<今後の目標>と書き込んだ。
「今後は運命の教団とJOKERを追っていくことになるだろう」
「教団の拠点とか、調べられないのか?」
「俺は普通の範囲でしか調べられないからな。双葉、どう思う?」
「実際に調べてみないとわかんないけど……できることはやってみる」
「噂を追っていくだけじゃダメなのか?」
「そのやり方だと、対応が後手になる。一度軌道に乗ってしまえば、崩壊はすぐだ」
暁の問いに苦い顔をして、達哉が答える。
「僕たちは先んじることができたからな。しかし……」
「私たちも結局は周防弟や南条くん達を追ってたようなものだし、どうしたもんかしら」
「レッツ・ポジティブ! 今はとにかくできることをしましょ!情報を集める!私たちが有利になれるような噂を流す!教団とJOKERを追う!以上!」
悩むと沈む雰囲気を吹き飛ばすように舞耶が声を張り上げた。
「……やはり、そうなってしまうか」
「そうするしか、ないですよね」
各々が苦笑混じりで、口々に舞耶への同意の言葉を口にする。
「しかし舞耶姉……」
「達哉、気持ちはわかるけど舞耶姉さんの言うとおりにしよう」
「落ち着け。焦って行動しても良い結果は出ない。」
一人食い下がろうとする達哉だったが、淳と悠に宥められて押し黙る。
「敵は未だ謎も多いが、悪辣かつ強大な存在だ。諸君、気を引き締めて行動してほしい」
「でも今日はもう遅いし、みんなも疲れてるだろうから今日はもう休んで明日から頑張りましょ!」
克也の言葉に頷きあって引き締まっていた空気が、舞耶の言葉で一気に緩んだ。
「言っていることは正しいが、天野くん……」
「ポジティブというか、のんきというか……」
克也とうららを含む舞耶を知る者たちは笑うか嘆息するかして、作戦会議は終了した。
その後、舞耶の突然の発案によって勃発した枕投げ大会を終え、周囲が眠りについた時を見計らってパオフゥと克也が起き上がった。
「よし、寝たな」
「スタミナはさすがのペルソナ使いだが、やはり子供だな」
「ああ。遊び疲れさせて寝かせるとは、天野も考え……」
「ぐー」
「お前まで寝てんじゃねえよ。芹沢もだ」
パオフゥがうららと一緒に爆睡していた舞耶を叩き起こし、モルガナに声をかける。
「おい猫、起きろ」
「……なんだよ、こんな時間に」
「静かに。俺たちは少し出てくる」
「もう寝ろよ……お前らも疲れてんだろ」
「ところが、そうもいかないんだ。夜にだけ得られる情報もあるからね」
「夜は大人の時間、ってね」
「……ちゃんと戻って来いよ」
克也とうららの言葉が頭に届いているのかいないのか。寝ぼけ半分のモルガナはそれだけ返し、再びまどろみ始める。
「もちろん。だからそれまであの子達をお願いね」
「にゃふ、ワガハイを誰だと思って……ムニャムニャ……」
舞耶の言葉に返事をしたモルガナが完全に眠ったところで、眠っていたはずの達哉が起き上がった。
「俺も行く」
「達哉クン、あなた起きて……」
「<向こう側>じゃ、熟睡なんてしていられないからな」
現在の<向こう側>の詳細はまだ聞いていない。
だが、以前より洗練された動きで戦う達哉の様子からも、相当に過酷な状況が窺い知れた。
「それなら余計にダメだ。せめて<こちら側>に居る間はしっかり睡眠をとれ」
「兄さん!」
「達哉クン、克也さんの気持ちもわかってあげて」
「大人と子供とか兄と弟とか関係なくてさ、周防弟が逆の立場だったら止めるでしょ?」
「それに、お前さんとあいつらはあの野郎に対する切り札だ。こんな所で消耗させたくねえ」
大人たちに諭されて、達哉は不服そうな顔をしながらもそれを受け入れる。
「……わかった」
「じゃ、行ってくる」
達哉に見送られ、大人たちは夜の闇へと消えていった。
おまけ小話『寝ようぜ』
これは、ペルソナ使いたちが眠る前の話……
モルガナ「おい、どこ行くんだ?」
湊「夜の探索だけど」
モルガナ「疲れてんだろ、もう寝ようぜ」
達哉「これくらい大丈夫だ」
モルガナ「大丈夫じゃない。明日のためにも、もう寝ようぜ」
悠「いや、だから」
モルガナ「もう寝ようぜ」
湊「あの……」
モルガナ「寝ようぜ」
尚也「暁、どうにかならない?」
暁「ん?」
杏「もう寝ようとしてる!」
真「しかもちゃっかりソファに陣取って……」
暁「モルガナだったら何を言っても無駄だからもう寝ろ」
竜司「マジか!?」
モルガナ「寝ようぜ」
アイギス「寝ましょう」
ゆかり「アイギスまで!?」
アイギス「みなさんの健康管理も私の義務です。夜更かしはいけません」
美鶴「そんな命令を出した覚えはないんだが……」
湊「モルガナに感化されたかな」
舞耶「仕方ないわね……」
杏「舞耶さん?」
舞耶「みんな、枕投げやるわよ!」
「「は?」」
克也「あ、天野くん……こんな時に一体」
舞耶「勝った順に寝床を選ぶ! さあ、いくわよー!」
南条「馬鹿らしい。そんなことをしている場合ではないでしょう」
マーク「とかなんとか言って、負けんのが怖いんだろー?」
うらら「そんなんじゃ一番は遠いわよー」
尚也「山岡さんが泣くぞ、南条」
南条「貴様らぁ!」
そして、煽りあった果てにヒートアップした少年少女たちと大人げない大人による仁義なき枕投げ大会が始まったのである。