ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
シャドウまわりのことが無いので、タナトスとネメシスの塔はヒュプノスほど長くならないはず…
続きは相変わらず未定ですが、一ヵ月以内を目指します
タナトスの塔。広いホールの壁には不気味な髑髏がいくつも壁に浮かび、床には白煙が立ち込めている。蠟燭に灯された青い炎が、上階へと続く扉を照らしていた。
「ここがタナトスの塔……なんか、不気味な場所」
「部屋の構造も前と同じだね……こりゃ、あの仕掛けもそのまんまと考えてよさそうだ」
「仕掛け?」
嫌そうに顔をしかめるゆきのに、ゆかりが聞いた。
「ここで死んだり、罠に引っかかるとペルソナを奪われるんだ。そこにある扉も罠の一つで、扉の左右どっちかにある蝋燭の火を消すと扉が開く代わりにペルソナが奪われる」
「しかし、開けなければそもそも先に進めん。厄介というか性格が悪いというか」
「ペルソナを奪われるって言っても、ペルソナが使えなくなるだけだろ?」
「俺たちがいつも炎や冷気や電撃を受けても痛みだけで済んでいるのはペルソナの加護があるからだが、ペルソナを奪われるとその加護が消える。これがどういう意味か分かるな?」
「ひぇっ……」
南条の言葉を受けて、思わず焼死体になった自分を連想した順平が恐怖に体を震わせる。
「とはいえ、ほかに入れそうなところも無い。取り返す手段はあるし、仕方ないが誰かに犠牲になってもらうしか──」
『その犠牲は私が決めてあげる』
部屋に奏の声が響いたと同時。風が部屋を吹き抜け、蝋燭の火の片方を消す。すると湊が呻き声をあげ、力なくその場にしゃがみ込んだ。
「湊!?」
『まずはペルソナを返してもらったけれど、これで許したわけじゃないからね。塔の最上階で待ってるわ』
「扉は開いたが……有里、ペルソナは使えるか?」
「<タナトス>! ……<メサイア>! <オルフェウス>!」
南条に問われ、湊はペルソナの召喚を試すが何も起こらない。
「……やはり、ペルソナを奪われたか。有里、あまり前に出すぎるなよ」
「わかった」
「しかし、取り返す手段があると言っていたな?」
「ああ。俺たちの時はこの塔のどこかにあるタルタロスという場所で取り戻すことが出来たんだが……あの口ぶりだと、有里奏のもとにある可能性が高い」
「ということは、湊は最上階までこのままってこと?」
「そういうことになる」
「みんな、山岸がルートの割り出しに成功したぞ」
唸る一同に、美鶴が声をかけた。
「本当か?」
「はい。近道ができるルートも見つけたんですが、強力な悪魔の反応がたくさんあって……どうしましょう?」
「時間がどのくらい残っているのかもわからない。最短ルートを抜けよう」
風花の問いに湊は迷わず答え、一同も頷いた。
ペルソナ使いたちはタナトスの塔を駆ける。ペルソナの加護を失った湊が道中で魔法攻撃を受け何度も倒れこそしたが、交渉や戦闘を用いて順調に強敵の群れをくぐり抜けていき、やがて大きな扉の前へと辿りついた。
「この扉の先から特に強力な反応があります。でも、悪魔やシャドウじゃありません」
「奏か?」
「いえ、違います。でも、よく似たものを知っているような……」
「ええい、ここでうだうだ言ってたって始まんねえだろ! 開けようぜ!」
栄吉が勢いよく扉を開けると、そこに待っていたのは機械のような鎧を纏った兵隊──ロンギヌスが二体。胸元に記された数字は9と7。そして神父のような服を着て肌も舌も黒く染まった、幾月修司。
「ふふふ……ようこそ、S.E.E.Sの皆さん! お久しブリリアント!」
「お前、幾月!?」
「死んだんじゃなかったの? それに、その姿……!」
「それはもう死んだとも! しかし! 闇の王は私を見捨てておられなかった! 闇の王のお力により、私は魔人・ダークプリンス幾月として再びこの世に舞い戻ったのだ!」
「まだそんな妄想にとらわれているのか……」
狂笑を上げる幾月に対し、美鶴が吐き捨てる。
「妄想!? 小娘の分際で私の夢と理想を妄想と笑うつもりか! 闇の王は私に約束をしてくださったのだぞ!」
「どうでもいい。姉さん──奏はこの奥に居るんだろう。通してもらうぞ」
「良いよ」
「え」
「おやおや、その年で難聴かい? あの小娘……奏から、湊くんだけは通すように言われてるんだよね」
「どういうつもりだ?」
幾月の意外な言葉に、南条が眉をひそめた。
「さあ。あの小娘の考えなど知ったことではないけど、闇の王のご意向でもあるからねえ」
おどけてみせる幾月に対し、南条が湊に耳打ちする。
「有里。ここは俺たちに任せ、お前は先に行け」
「……良いのか?」
「正直に言ってしまえば、ペルソナのないお前がここに居ても足手まといにしかならん。それなら、奏のもとへ行ってペルソナを奪い返す可能性に賭けたほうが良い」
「私たちもすぐに追いつくからね!」
声をかけてきたゆかりに片手をあげて応じ、湊は幾月とロンギヌスをすり抜け部屋の奥の扉へと向かう。
『そのような楽観的な見通しが通ると思っているのか? 愚か者、ここは戦場だ!』
『お前たちはここで屍になるが定めよ!』
「さあ行くぞ! 闇の王より賜ったこの力で、今度こそ私は闇の王子となるのだ! ヒャーッハッハッハッハ!」
ロンギヌスたちとともに戦闘態勢を取りながら哄笑を上げる幾月に対して、ペルソナ使いたちもまた武器を構える。
「強力なペルソナの反応です……皆さん、気を付けて!」
「おう!」
「私たちを騙してくれた恨み、晴らしてやろうじゃない!」
「幾月……父と我々を裏切った罪、その身で贖ってもらうぞ!」
『罪か……ふ、お前にそれを語る資格があるとは思えんがな、フロイライン』
「グダグダうっせえぞ、ロンギヌス! てめえら、今度こそ地獄にぶち落としてやらぁ!」
「やっぱ、あんた達見てると無性にハラが立ってくるんだよね……徹底的にやるよ!」
『愚か者、ここは戦場だ! 感情に任せ吠えるその若さが命取りになると知れ!』
「よしいくぞう! 【暗黒ヤング伝説】!」
「「【ガイスティブブリッツ】!!」」
幾月の体から青白い人面が全身に張り付いた漆黒の神父の像が浮かぶ。すべての人面がにたりと笑みを浮かべた瞬間、部屋に爆風が吹き荒れ、ロンギヌスたちの雷がペルソナ使いたちを追撃する。
「いってェ!」
「いい年こいたオッサンのくせして、なあにが暗黒ヤング伝説だ!」
「私の心はいつだってナウでヤングなのですよ! ひゃーっはっはっはっは!」
「ふざけたことを……!」
湊を除いたタナトスの塔突入組と、幾月と彼が率いる二体の聖槍騎士の戦いが幕を開けた。
● ● ●
湊が最上階へ通じる扉を開くと、大きな窓を背に奏が立っていた。双子は互いに見つめ合う。
「やっと来てくれたね、湊」
「……ずっと話をしたいと思っていた」
「私もよ。でも、湊が先にどうぞ」
「十年前の事故で奏……姉さんは死んだはずだ。どうしてここに居る?」
「ああ、そういえば説明してなかったっけ。まあ他にも生き返ってる人いるし、だいたい想像はついてると思うけど」
「噂の力にしたっておかしい。だいたい、姉さんに噂になるような話なんて……」
「桐条の暗部っていう、世間にとってすごくオイシイ話題があるでしょう?」
奏の言葉を受けてはっとする。会社に不都合な噂のもみ消しなど、いかにもありえそうな話だ。美鶴がどれだけ高い地位に居ようと、彼女一人が行使できる権限にも限度はあるだろう。
「質問はもう終わりかしら。じゃあ、次は私が質問させてもらうわね」
そう言うと、奏が湊の首筋に薙刀の刃先を突きつける。
「なんであなたが生きてるの?」
冷たい声色で放たれたその言葉は、湊に胸をえぐるような衝撃を与えた。
「答えてよ。出来損ないの弟のあなたが、なんで私を差し置いてのうのうと生きているのか」
「あ……う……」
『なぜ奏ちゃんではなくてこの子が』
『奏ちゃんだったら』
『ぼくじゃなくて、お姉ちゃんが生きていたら』
今まで封印していた、自分ではなく姉を求める者たちの言葉が脳裏に蘇り、湊は頭を抱える。
「答えられない? そうよね、あなたは自分が私を差し置いて生き残ったことをずっと後悔し続けてきた。私からの断罪を、心の底でずっと求め続けていたんだもの」
薙刀の刃が湊の首筋にわずかに突き刺さり、血が流れ出る。
「湊、安心して。あなたが求めた、姉からの断罪……そして姉が得るはずだったあらゆるものの返上という願いを、今ここで叶えてあげるから!」
そう言い放った奏は改めて薙刀を振り上げ、湊の首目掛けて振り下ろすが、湊の剣がそれを受け止めていた。
「──そんな願望を抱いたことがなかったとは言わないよ、姉さん。でも、今は違うんだ。死んであげることはできない。他の誰でもない、有里湊を求めてくれるみんなが居るから」
「そう……やっぱりこうなるのね。受け取りなさい、湊」
湊の言葉を受けた奏は薙刀を引っ込めると、青い光球を湊に投げる。光球は半透明の湊の姿に変わり、そのまま湊の中に吸い込まれた。湊の体に力がみなぎり、心にペルソナが蘇るのを感じる。
「これは……」
「ペルソナを返してあげたわ。これで条件は対等。私とあなた、どちらが生きるに相応しい存在か……決着をつけましょう、湊!」
「俺の居場所は誰にも渡さない。行くぞ、奏」
「「ペルソナ!!」」
二人が武器を構えると同時に現れる湊のタナトスと奏のリバース・タナトス。そしてリバース・タナトスの腹を食い破るようにして、触手とともにフードを被った小さな怪物が現れる。
「うおおおお!」
【ブレイブザッパー】!
「はァァァァ!」
【死亡遊戯】!
怒号とともに二人のペルソナが激突する。剣と薙刀での激しい攻防が繰り広げられ、やがて湊の剣が奏の薙刀の柄を断ち切るが、薙刀を失った奏は隙を突いて湊の剣を蹴り飛ばした。得物がなくなった二人がとる行動は一つ。
「「【メギドラオン】!」」
同時に放たれた万能属性の魔法がぶつかり合い、その衝撃でお互いが吹き飛ぶ。
「このッ……<リバース・タナトス>!」
【デスティカ】!
リバース・タナトスの腹に潜む怪物が蠢き湊に古の死の魔法を放つが、湊はそれをはじき返す。
「なぜ死なないの!? あなたは死を、私からの断罪を求めていたはず!」
「死んでたまるか! 俺の居場所は俺だけのものだ、誰にも渡さない!」
メギドラオンの余波で吹き飛ばされた際に拾いなおした自身の剣を手に、奏へ突撃する湊。
「「<タナトス>!!」」
【深淵の扉】!
【冥府の扉】!
力を持った闇が同時に放たれ、激突。湊はそれを気にせず前進し、闇の中に飛び込んでいく。
「姉さんはもう死んだ! 死者は冥界に帰るんだ!」
相殺されながらも残った闇の中を苦痛に耐えながら潜り抜け、湊は奏に肉薄。次の瞬間には、刃が奏の胸を貫いていた。
「これでもう、バッチリ……」
少し時間が経って。倒れた奏に寄り添うように湊が座り込んでいた。
「……うすうす、気付いてはいたんだ。この人は姉さんであって姉さんじゃないって」
静かに語る湊の言葉に、奏は沈黙をもって返す。
「双子だからかな……噂で具現化した姉さんに俺の半影、シャドウとしての要素が混ざったんだ。だから姉さんは俺を狙ったんだろ」
「大正解。だったらわかるよね、私の桐条への憎しみは──」
「ああ。全部、俺が持っていたもの。持っていて、向き合うことを忘れてしまったものだ」
「そこまでわかってるなら、文句なし。ねえ、湊」
「なに?」
「これからも私のこと、忘れないでいてくれる?」
「もちろん」
湊が決意とともに頷くと、奏は太陽のように笑った。
「そっか。それじゃあ、もうバッチリだね」
「ああ、バッチリだ……お姉ちゃん」
涙を流す湊の頬を、奏の手が優しく撫でる。
「泣かないで。私はいつだって湊の心の中にいる」
晴れ渡るような笑顔のまま、奏は光の粒子となって湊の体に入り込む。そして、彼女が倒れていた場所には、彼女が居た証を示すように奏の薙刀と鏡の破片が残されていた。もうしばらく感傷に浸っていたい衝動に駆られるが、時間はそれを許さない。湊は立ち上がり、部屋の入口を見た。どうやらまだ戦いは続いているようで、戦闘音が響いている。
「行ってきます、姉さん」
剣を握りなおして、湊は仲間たちが戦っている部屋へと歩き出す。背後で、奏が見送ってくれている気がした。
別に見なくても大丈夫な敵ステータス
ロンギヌス9
物理耐性、呪殺・神聖・精神無効、地弱点
MG34 ガイスティブブリッツ
ロンギヌスコピー マハガルーラ
ポイズマ
ロンギヌス7
物理耐性、呪殺・神聖・精神無効、水撃弱点
MG34 ガイスティブブリッツ
ロンギヌスコピー マハガルダイン
プリンパ
ダークプリンス幾月
ペルソナ:ニャルラトホテプ(青白い人面が全身に張り付いた黒い神父の姿)
氷結・呪殺・精神無効、銃撃、衝撃、神聖弱点
ブフダイン 暗黒ヤング伝説
切なさ乱れ撃ち スウィートトラップ
不幸のフラダンス スランパ
テンタラフー
奏
ペルソナ:リバース・タナトス・改(色調反転したタナトス[P3]の腹を食い破って異聞録のタナトスが顔を出している)
デスティカ 深淵の扉
ムドオン マハムドオン
メギドラオン 死亡遊戯