ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~   作:比例文

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大っっっっ変、お待たせいたしました!


ネメシスの塔①霧と幻惑の塔

 町が氷に閉ざされている中、なぜかネメシスの塔の内部は深い霧に覆われていた。

「ここがネメシスの塔……それにしても、なんでこの塔の中だけ霧が?」

「前に俺様が来た時はこんなんじゃなかったぜ」

「塔の守護者によって、塔もその性質を変えるといったところか」

 ブラウンの言葉を受けて克也が呟く。

「この霧、マヨナカテレビを思い出すな」

「わかる。なんかフンイキも似てるよね」

 周囲の霧を見て呟いた後、悠はりせに視線を向けた。

「りせ。ペルソナで霧の特性や塔の構造を分析できないか?」

「わかった。試してみるね」

 この霧は本当にただの霧なのか。疑問に感じた悠が頼むと、りせは頷いてペルソナを展開し周囲を調べ始める。

「ところで鳴上。お前たちまでついて来て良かったのか?」

「相手が須藤だけとは限らないって、尚也も言ってただろ。それに、須藤とはミツオとのこともあるし」

「八十稲羽のJOKERか」

「許されないことをしていたとしても、焼き殺す必要はなかったはずなんだ」

 達哉の問いに答える悠に対して克也も頷く。

「そうだな。彼には法の裁きを受ける義務があった」

「やっと無力化できたと思ったのに……」

 一方的ではあるが告白された身である雪子も思うところがあるようで、悲しそうに目を伏せた。

「淳、お前もわざわざ来ることは」

「達哉の頼みでもそれは聞けないよ。これは僕の問題でもあるんだ」

 淳は毅然とした態度で答える。<向こう側>でJOKERとして須藤に崇められていた淳は須藤に達哉たちとは違った複雑な感情を抱えていた。

「なあなあ、お喋りも楽しいけどさ、そろそろ進もうぜ。時間ねえんだろ?」

「ブラウン先輩が珍しく真面目なことを」

「どーゆーイミかは聞かないでおいてやるよ、カンちゃん。──経験則ってか、前に来た時に急いで進んだんだよ。進むのに時間かけるほど敵が有利になるんじゃねえかって」

「なんで?」

「そん時に塔を守ってた奴が『ゆっくり上がってこい』とか言ってたからさ、全会一致で『こりゃ急いだほうが良い』ってことで」

「な、なるほど?」

「説得力があるような、ないような……」

「俺様そんなに信用ないかなぁ!?」

「普段が普段だから……」

 返ってくる微妙な反応にブラウンはショックを受けるが、ともあれ時間がないのは事実。一行は速足で塔を上っていく。

 

 

「──にしても、こう霧が深いと互いの位置もつかめねえな。みんな、ちゃんと居るんだよな?」

 塔を進みながら陽介が後ろを振り返る。しかし悠たちの姿はどこにも見えない。慌てて周囲を見渡すと、霧の中から一つの人影が現れた。

「花……ン」

 夢遊病者のようによろよろと歩いてくるその人影が発する声に、陽介は聞き覚えがあった。あり得ない。しかしこの声を聞き違えることはない。

「小西、先輩?」

 霧の中から出てきたのは、全身をずたずたに切り裂かれたかつての思い人の姿。

「なンで……はやく助ケて……くレなかッたの」

「嘘だろ、なんで……!?」

 動揺する陽介に組み付こうとする少女の体を、横から飛び込んできた黒い影──達哉が切り飛ばした。

「小西先輩!? おい周防、お前──!」

「落ち着け、陽介! これをかけてよく見ろ!」

 いつの間にやらそばにいた悠に抑えられ、陽介が渡されたのは眼鏡だった。忘れもしない、マヨナカテレビで使っていたものだ。もしやと思い、眼鏡を付けてから倒れた『小西先輩』を見ると。

「悪魔……?」

 塵となって消えてゆく悪魔がそこに居た。裸眼では霧で良く見えなかった周囲も、眼鏡を通すとよく見えた。

「全部、霧が見せてた幻覚だったってことか!?」

「りせが霧を解析して教えてくれたんだ。それで急いでクマに眼鏡を出してもらった」

「ふふーん、これはあの犬や猫には出来ないシゴト! まだまだクマの時代は終わらんクマ!」

 ドヤ顔で眼鏡を取り出してみせるクマを呆れ半分の顔で見ながら、陽介は悠に視線を移す。

「俺たちの分の眼鏡はともかく、周防たちは? あの眼鏡、簡単に用意できないんじゃないのか」

「直斗のぶんが余ってたから、それを舞耶さんに渡した。ただ、克也さんと淳、ブラウンと園村は戦闘に参加できないな。あの四人は完二とクマ、りせが先導してる。達哉は──」

 見たほうが早いと言わんばかりに、悠が陽介の背後へ顔を向けた。同調して同じ方向を向くと、霧の影響などまるでないと言わんばかりに、鬼気迫った顔で悪魔を的確に斬っていく達哉の姿があった。

「マジかよ、おい……」

「達哉クン……」

 明らかに前よりも強くなっている達哉を、舞耶が悲しそうな顔で見つめていた。

 

 

「知り合いが恨み言を言いながら襲ってくる幻覚を見せてくる霧か……」

「塔の主人が変わってもインケンなのは変わんねえどころか、前より酷くなってるぜ」

「復讐の女神ネメシスらしいと言えばそれらしいけれど、いい気分ではないね」

「ごめんね、りせ。手を貸してもらっちゃって」

「気にしないで、園村先輩!」

 引き続き、塔を昇っていく一行。克也、ブラウン、淳、麻希の四人は念のために目隠しを付けて、他のメンバーに手を引いてもらっている。

「それにしても、周防が問題なく戦えてるのが不思議だぜ」

「殺気で敵味方の見分けはつく。あとはこっちに向かってくるのを斬るだけだ」

「頼もしいやらコワいやら……」

「でも、やっぱり手を引いてあげたほうが良いと思うわ」

「なんでです?」

 陽介の問いに、舞耶は達哉を指さす。

「達哉クン、壁に向かって歩いてるもの」

 達哉は一行から外れて壁に向かって直進していた。

「幻覚で壁が階段に見えてるみたいだ」

 陽介の疑問に、あえて眼鏡を外して観察し答える悠。

「そういう効果もあんの!?」

 結局、達哉も戦闘時以外は手をひいてもらう形で塔を進んでいくことになった。幻覚と霧さえなければ道中の敵はそれほど強いものではなく、眼鏡を持っているメンバーだけでも簡単に倒すことができた。

 

 ● ● ●

 

 そして塔の最上階。須藤の待つ部屋に入ると、須藤がソファに座り待ち構えていた。

「よォ、意外と早かったじゃねえか」

「須藤……!」

「じゃあ、こんなもんはもう要らねえな。亡者どもとの再会は楽しめたかよ、ええ?」

 須藤が指を鳴らすと、立ち込めていた霧が消え去った。

「やっぱ霧はてめェが作ってやがったのか。よくもあんなもん見せやがったな!」

「余計な連中を大勢引き連れてきやがった罰だ。てめェらクソガキどもはお呼びじゃねえって言ったろうがよ。まあいい。まとめて皆殺しにして──」

「待ってくれ」

 憤る陽介を嘲笑いながら懐から刀を取り出す須藤。それに対し武器を構える達哉を制して淳が須藤の眼前に進み出ると、須藤の顔色が一変する。

「JOKER様!?」

「須藤──いや、キング・レオ。もう戦いも殺しも、世界の滅びも必要ないんだ。あなたをここまで歪めてしまったのも、<向こう側>のすべての騒動も、すべては僕に責任がある。殺すのならば、僕を殺してくれ」

「淳!?」

「淳クン、何もそこまで……」

「止めないでくれ。たとえ仕組まれていたことだとしても、彼をさらに歪ませてしまったのは僕なんだ」

 驚く一同──特に達哉と舞耶に対し、決意を秘めた顔で淳が答えた。

「ど、どうしちまったんだよJOKER様……<向こう側>で俺を導いてくれたあなたが、なんでそんなこと言うんだよ」

 今までにないほどに大きく動揺する須藤。その様子は<向こう側>と<こちら側>の須藤にとってJOKER=淳がどれほど大きな存在であったかを知らない面々にとっても大きな驚きだった。

「『おい須藤よお、お前の親父──竜蔵の死に様に興味はねえか?』」

「達哉、いったい何を」

 そんな中で、急にパオフゥの声マネを始めた達哉に視線が集まる。須藤は淳の言葉に動揺を隠せないながらも、父である竜蔵の死に様という言葉に須藤は大いに興味をひかれたようだった。

「お、親父の死に様だぁ? 面白ェ、聞かせてもらおうじゃねえか」

「『無様なもんだったぜ。悪辣な手を使って人を陥れ続けた果てに、お前の言う<電波>にバケモンにされちまった。あんまりにも惨めなんで、復讐する気も消え失せたぜ』──竜蔵に復讐するために舞い戻った男の言葉だ。お前に伝えるように言われた」

「忌まわしき狩人……たしかに、罪穢れにまみれたあの姿は惨めを通り越して哀れとしか言いようのないものだったな」

「ざまあねえぜ! やっぱり俺は正しくて、あのクソ親父は間違ってたわけだ!」

 どれだけ憎んでも足りない男が無様に死んだと聞いて喜ぶ須藤に、達哉は最後の言葉を突きつける。

「だが、竜蔵が最後まで信じ続けたのもお前の言う<電波>だ。そんな奴を、お前はまだ信用するのか? お前の言う本物のJOKER、淳を差し置いてまで!」

「ぐ、く……!」

 頭を抱え、葛藤する須藤。まさか説得できるのか。周囲が息を呑み見守る中、扉の開く音が静寂をかき消した。

「誰!?」

「口先で須藤くんを懐柔しようとするなんて、やっぱりあの女の子供とその仲間ね。須藤くん、騙されてはいけないわよ」

 現れたのは、2017年の世界において占いによって総理大臣となったという噂が流れていた女、岡村真夜。その表情は狂気と妄執に取りつかれ醜く歪んでいた。

「思い出しなさい、彼らはマイヤの託宣を台無しにした大凶星とその仲間! 真実は私と橿原先生、そしてチャネラーであったあなたがもっともよく知っているはず! そこに居るJOKERこそ彼らに騙されているのよ!」

「何意味わかんねーこと言ってやがんだ、このババァ!」

 瞳孔を全開にして叫ぶ叫ぶ岡村に戦慄する一同の内心を代表するかのように完二が言い返すが、その言葉は岡村にも須藤にも届かない。

「なぜ、託宣のことを知っている!? <こちら側>のイデアル先生は普通の教師だったはず」

「あなたと同じよ周防くん。十数年も遅れてしまったけれど、あの占い師のおかげで私はすべて思い出し、目覚めたのよ! さあ須藤くん、あなたも思い出しなさい! 橿原先生との日々を、私たちの執筆したイン・ラケチを! 正しいのはあなた! 間違ってるのは<こちら側>なのよ!」

「俺は、正しい……<こっち側>は間違ってる……そうだ、そうだ」

「待ってくれ、キング・レオ!」

 うわごとのようにブツブツと呟きながら再び刀を取る手に力を込める須藤を見て、淳が再び制止に入る。

「ヒャハ……親父の死に様を聞いてスカッとしちまって、つい気を緩めちまった……おかしいと思ったぜ。本物のJOKER様がこんなこと言うはずないもんな。JOKER様、俺が今あなたを救って差し上げるぜ!」

「キング……」

 もはやこちらの声は届かない。狂ったように笑う須藤を見て、淳が悲しげに呟く。

「淳、下がってろ。こいつとは俺がケリをつける……!」

「そうだ! 俺は正しいことをやってんだ! こんな偽物の世界は消えなきゃいけねえ! 間違ってるんだからよ! 託宣だってそうだ! あれは必要な犠牲だったんだ! それをてめぇらがメチャクチャにしやがったんだ!」

「人を何人も殺して、正しいも何もあるのか!?」

「人殺しと放火、そして世界の破滅に手を貸すこと……人の正義は万別だが、僕には理解できないな」

「お前は奴に操られているだけだ……!」

「操られてるだと!? いいや違う! 俺の意志でやってるんだ! 親父にだって従わねえ! JOKER様は俺を騙すようなお方じゃねえ! 俺は──」

 悠、克也、達哉の言葉を振り切るように頭を振って狂乱する須藤に呼応するようにして、達哉と悠、須藤を囲むように炎が渦のように吹き上がる。

「ク……ヒャハハハ! 電波だよ電波ァ! 電波電波電波電波電波ァ! 来てるぜ、電波がよォ! 今度は、今度こそは負けねえ! 運命から逃れられると思うなよォ!」

「これまでか……須藤、お前との因縁はここで断ち切る!」

「達哉、援護させてくれ。殺人鬼、お前のやったことの償いはしてもらうぞ!」

「<アポロ>!」

「<イザナギ・改>!」

「<JOKER>!」

 

 激突する三人のペルソナ使いたちの様子を見ながら、岡村もまた動き出す。

「須藤くんだけに戦わせるわけにはいかないものね。来なさい、我がしもべたち!」

 岡村の号令に従って現れたのはX-1が四機とロンギヌスが二体。ロンギヌスの胸元に刻印されている数字は6と5。

『ふん、戦士が情にほだされると思っていたのか? 愚か者、ここは戦場だ!』

『すべて思い出したと言ってもしょせんはその程度。戦場で説得など愚の骨頂よ!』

「X-1とロンギヌス!」

「一気に出てきやがった!」

「そして託宣を否定し、橿原先生を否定し、私たちの理想を否定したお前たちとその仲間に復讐を! 出でよ<ネメシス>!」

【エクリプスミラー】! 

「そう来ると思ったわ! <アルテミス>!」

【クレセントミラー】! 

 不意打ち気味に岡村が出してきたペルソナを見て、身構えていた舞耶がすかさず反応した。舞耶と岡村の魔法が激突し、爆風を巻き上げる。

「一度はともかく、二度も不意打ちは効かないわよ!」

「ネメシスだと? では、この塔の主は須藤ではなく……」

「そう、私こそが本物の守護者、復讐の女神ネメシス! さあ、この力で再びこの世に理想郷を!」

「悪いけど、その願いを叶えさせるわけにはいかないの!」

「けっ、フクシューのメガミとかカッコつけてるけど、どいつもこいつも逆恨みばっかじゃねえか。もう逆恨みの女神に改名したらどーよ!」

 うんざりした声で言うブラウンら、道中の霧で戦力になれなかった者たちも同じく武器を構えだす。

「達哉がいない今、舞耶姉さんは僕が守る……岡村先生、あなたが相手であってもだ!」

 そう言って岡村の前に立ちはだかろうとする淳を、ロンギヌス5の巨体が遮った。

『ふ、未だ罪を自覚していないと見える。大罪人のお前に誰が守れるというのだ?』

「罪の自覚……どういうことだ? もう僕は<向こう側>で犯した罪も、達哉に押し付けてしまった罪も思い出したはずだ!」

『未だ気付かぬとは、やはり愚かなり! いや、気付かぬふりでもしているのか。まあどちらでも良い、目的も果たせずここで朽ちて死ねぃ!』

「舞耶さん、克也さん! 私たちもすぐにこのメカたちをやっつけて援護に行くから!」

「エルミンじゃ逃げるしかなかったけど、今回はしっかりブッ潰してやるぜ!」

『戦争の何たるかも知らぬ青い子供がよく吠える。愚か者、ここは戦場だ!』

 そうして、炎の渦の中の達哉と悠と須藤、そして渦の外にいる舞耶達ペルソナ使いと岡村率いる機械の軍勢の戦いが始まった。




別に見なくても良い敵ステータス

ロンギヌス5
物理耐性、神聖・呪殺・精神無効、水撃弱点
MG34 ガイスティブブリッツ
ロンギヌスコピー マハラギダイン
バルザック

ロンギヌス6
物理耐性、神聖・呪殺・精神無効、疾風弱点
MG34 ガイスティブブリッツ
ロンギヌスコピー マハマグダイン
ドルミナー

須藤竜也
ペルソナ:オリジナルJOKER(ボロボロになったオリジナルJOKERの衣装を纏った黒い人型)
火炎吸収、神聖・呪殺・精神無効
迷妄のチャネリング ダークノヴァサイザー
ギガンフィスト デスバウンド
オールドメイド

岡村真夜
ペルソナ:ネメシス(異聞録版ネメシスのコスプレをした学生時代の岡村)
氷結・精神無効、火炎弱点
迷妄のチャネリング シバブー
ランダマイザ アステロイドボム
エクリプスミラー
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