ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~ 作:比例文
「はァァ!」
「ヒャハァ!」
達哉と須藤が互いに譲らぬ剣戟を続けながら、時おり距離をとってペルソナの応酬を行う。ハイレベルの剣戟に割って入る危険を冒せず、オールドメイドを使われる可能性もあるため、悠はアイテムによる達哉のサポートに専念している。
「<アポロ>!」
【ギガンフィスト】!
「<JOKER>だ!」
【デスバウンド】!
互いに炎が効かないことは理解の上で、物理属性の攻撃を同時に叩き込む。JOKERの放つデスバウンドは達哉とその後ろに控える悠も巻き込んで二人を切り裂くが、アポロのギガンフィストもまた須藤の鳩尾をとらえて吹き飛ばす。
「くそッ……いつもいつも肝心なところで邪魔しやがってよォ! なんでクソガキどもはいつもうまく行って、俺たちは失敗するんだ!? 不公平じゃねえか!」
「うまく行ってる、か。──鳴上、頼みがある」
血の混じった唾を吐きながら悲痛に叫ぶ須藤に、達哉が傷を押さえながら皮肉げな笑みを浮かべ、悠にあることを耳打ちする。
「この作戦、頼めるか?」
「でも、お前は……」
「大丈夫だ。──ここで終わらせる」
「死にやがれえええええ!」
「頼む!」
「死ぬなよ! <イザナギ・改>!」
【マハジオダイン】!
再び達哉に向かい突進する須藤を雷の嵐が襲う。
「はッ! こんなもんで俺を倒せると思って──」
「思っていないさ」
悠が不敵に笑う。魔法の雷が巻き起こした強い衝撃と閃光は須藤の足を止めた。そう、これは必殺の一撃を叩き込むための足止め。
「お前との因果、ここで断ち切る!」
ダメージを覚悟して自ら雷の中に飛び込み、懐に入り込んだ達哉の日本刀が須藤の体を一閃した。
「間違ってるのに、不公平なのに……お前らはなんで……」
そう言い残して須藤は倒れ伏す。その姿を二人は憐れみの目で見つめていた。
『お前たちの本当の罪にいつ気付くのか……』
『対価なしに得られるものなどありはしない……』
須藤が倒れ、炎の渦が消滅した時。部屋に残っていたのは傷を負ったペルソナ使いたちと岡村だった。X-1は破壊され、ロンギヌスはまた不吉な言葉とともに消えていった。
「達哉、鳴上くん、無事だったか!」
「そ、そんな。須藤くんが……」
希望に満ちた克也。それに反するような絶望の声を上げる岡村に、達哉は刀を突きつける。
「お前の仲間はもういない……もう勝負はついた」
「もう戦うことはないでしょう、岡村先生!」
「まだ、まだよ! マイヤの託宣も、JOKERの予言もまだ終わっちゃいない! 私は悩みの無い世界を、イデアリアンをぉぉぉ!」
「戦ってる時もそうだったけど相当キてるぜ、このオバサン……」
「俺様渾身のギャグはかすりもしねえしな。マーヤ姉さん、かっちゃん兄さん、こいつどーします?」
達哉と淳の話も聞かず、狂気に取りつかれた岡村をぞっとした顔で見る陽介をはじめとしたペルソナ使いたち。代表してブラウンが舞耶と克也に話を振った。
「かっちゃ──いや、いいか。仕方ない。気絶させて鏡の破片だけでも回収を……」
「触るな! 橿原先生の夢! 須藤くんの、私の夢ェェェ! 渡さないわ! あなたたちなんかに、私の希望も夢も渡さないわよォォォ! 力をよこすのよボロンティック、シバルバー、JOKER、ネメシスゥゥゥ!! 私をイデアリアンにィィィィ!!!」
「みんな気を付けて! あの人、様子が変だよ!」
「見りゃわかるだろ! そもそも変なのは最初からで」
尋常でない岡村の様子に何かを感じたりせの警告にツッコむ陽介の言葉を遮り、りせはペルソナで感じた何かを伝えようとする。
「そうじゃないの! 何これ、シャドウのカタマリがあの人に集まってる……?」
「……! 久慈川、それ以上見るな!」
りせの言葉と岡村の様子に這い寄る混沌の気配を感じた達哉が、強引にりせのペルソナを中断させる。すると、狂乱する岡村のペルソナが勝手に出現し、語りだす。
『幾年月を経ても変わらず、己の願いと希望とやらに縋り付くか……良かろう、その意思の強さに免じてお前の理想の姿とやらを与えてやる』
淳の父、橿原──正確には、噂によって出現した偽者の淳の父の声──が響く。
「この声……父さん?」
「違う、ヤツだ! やめろイデアル先生、そいつの言うことを聞くな!」
「ああ、橿原先生! 橿原先生が見える! 見える見えるみええええェェェeeeeee!!』
「みんな、目を閉じて耳を塞げ!」
白目をむいてがたがたと体を揺らす岡村。もはや手遅れとみたか、達哉は手の届く範囲の味方の視線を遮りながら叫んだ。
ぐちゃ、ぼきゃ、ぶちゃ。岡村の上半身が内側から弾け飛んだ。生々しい音とともに肉が裂け膨張していく。間に合わず<変形>する姿を見たり、音を聞いてしまったペルソナ使いたちの一部は口を押えて吐き気をこらえたり、恐怖に悲鳴を上げる。
『ITaaaaieeeeee!!』
変身が終わった時には、岡村はすでに人ではなくなっていた。上半身はグロテスクな肉腫の塊で、そこから血管と肉塊でできた細長い触手が二本伸びている。
「また一人……堕ちた……!」
「こ、これがイデアリアン!?」
「うげえ、気持ちわりィ!」
「下がれ!」
雄叫びを上げながら腕を振り回して暴れるイデアリアンの攻撃を達哉が受け止める。しかし、イデアリアンの質量と勢いを前にじりじりと押されていく。
『TakUseeEeeN!』
「ちィッ……!」
「させるか!」
その時。飛んできた銃弾や花、矢がイデアリアンにヒットし、その隙に悠たち前衛組が達哉を助け出す。
「兄さん、舞耶姉、淳、麻希さん……」
「俺たちも忘れんなよ、周防!」
「なんでも一人でやろうとするな、達哉」
「すまない、花村も鳴上も……助かった」
悠の手を借りて立ち上がる達哉に、ブラウンが声をかける。
「先輩後輩とか仲間とか以前にトモダチなんだしさ、困ってんならエンリョなく俺様たちも頼ってちょーだいってな!」
「友達……」
「こっちこそ助けられてばかりで申し訳ないくらいだ。達哉、イデアリアンの特徴や弱点はわかるか?」
「放っておくと自己再生する。だが、タフさと力を頼りに暴れているだけで理性はない。炎を含めて、属性魔法はだいたい効果がある」
達哉の言葉に悠は頷き、声を張り上げた。
「わかった。雪子とブラウンはこっちへ来て、他のみんなはそいつにできるだけダメージを与えて引き付けていてくれ!」
「任されたぜ!」
「踏ん張りどころクマ!」
「んで、俺様たちは何すんのよ?」
「みんなの攻撃で弱ったところに合体魔法を使って一気に奴を倒す。タイミングを合わせてくれ」
再生能力を備えるイデアリアンのタフネスは桁外れで、ペルソナ使いたちによる四方からの攻撃を浴びながらも暴れ続けていた。
「わかった! 来て、<アマテラス>!」
「ペルソナ切り替えは先輩にお任せあれってな! ペルソナチェーンジ! からの<ゲンブ>!」
「行くぞ、みんな! <アスラおう>!」
【アギダイン】→【マハマグナス】→【マハラギダイン】
【メルトダウン】!!!
悠の合図とともに放たれた合体魔法によって、すべてを溶かす超高温の炎の柱がイデアリアンとなった岡村を包み込んだ。
「やったか!」
「まだだよ、油断しないで!」
炎の柱が消えた後も、まだイデアリアンは焼け残り蠢いていた。
『KA……sHI……Ha……』
「うっそーん、まだ生きてんの!?」
「もはや抵抗する力も残っていないだろうが……放っておけば再生するし、ここから元に戻す手段もない。俺にケリをつけさせてくれ」
そう言って達哉が前に進み出たところに、淳と舞耶が同じく並んだ。
「彼女と因縁があるのは僕も同じだ」
「私もね」
「……わかった」
達哉は頷き、三人は同時にペルソナを召喚する。
【ノヴァサイザー】!
【クレセントミラー】!
【クロスフォーチューン】!
『OnoooNoooooREEEEE!!』
火炎、氷結、疾風の同時攻撃を受けてようやくイデアリアンは消滅し、そのあとには鏡の欠片が残されていた。
別に見なくても良い敵ステータス
イデアリアン岡村(菅原だったものの色違い)
物理耐性、火炎・水撃・地変・氷結・疾風弱点
雄叫び マヒひっかき
大暴れ 触手
自動回復