ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~   作:比例文

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初の女性総理は現実に誕生しちゃいましたが舞台設定は2017年なのでセーフということで!


そして試練が始まる

 朝の連絡からしばらくして。暁の友人であり『心の怪盗団』のメンバーがルブランに集合していた。

「さて。こうして、みんなに集まってもらったのは他でもない」

「今朝見た夢について、だよね」

「フィレモンという男と話をする夢を、みんなが同じ日に見た……か」

「それで、噂が現実になるって話だが……みんな、なんか心当たりあるか?」

「それについて、ここに来るまでに少し調べてみたの。今、噂になってること」

「アタシも同じく。こっちはネット情報だけどな」

 モルガナの言葉に、真と双葉が声を上げた。

「二人とも流石だな」

「へへ、もっと褒めていいぞ?」

 暁の言葉に双葉は相好を崩し、真は少しだけ得意げな笑みを浮かべた。

「まずは私から話すわね。……一つ目が、ちょっと前に就任した『日本初の女性総理大臣』の噂」

「ニュースでやってたね」

「私も見たけど……オカモト・マヨだっけ? 目がイっちゃってる感じがして

 何か好きになれなかったな」

「岡村、ね。岡村真夜。あとマヨじゃなくて、マヤ。

 獅童の後任で入って、すごい人気だって話だけど……私もそうは見えなかったわ」

 杏の言葉を訂正しつつも同意する真。暁もそのニュースを知っていたがあまり良い印象は抱けなかった。取材では、"悩み苦しむことのない未来を"という標語について熱心に語っていた。

「そのソーリダイジンが、なんかあったのか?」

「それが関係してくるのが二つ目。"運命を操る占い師"の噂」

「運命を操る?」

「運命を見通して、不都合な運命は覆して都合のいい運命には確実に進めるようにしてくれる……らしいけど」

「胡散臭え……もう占いどころか願いを叶えてるのと変わんねーじゃん……」

「けど実際にその人に相談して、思い通りの道に進めたっていう話、最近よく聞くよ」

「どんな人なんだろ」

「わからないけど……こう自称してるらしいわ。"JOKER"って」

「ジョーカー……」

「コードネーム取られちまったな」

「二つ名として珍しくもないし、仕方ない」

 竜司に言われ、暁は肩をすくめた。

「ここで女性総理大臣が出てくるんだけど……その占い師の力で総理になったって噂なの」

「うっそだろ……」

「占いで総理大臣になれたら苦労しないでしょ……」

 

 突飛な話に驚く竜二と杏に同調するように真は頷いた。

「ユースケ、さっきから黙ってるけどどうした?」

「腹が減った……」

 会議が始まってから黙りっぱなしの祐介にモルガナが声をかけると、同時に腹の音が鳴った。

「真面目な話してんのに、お前……」

「じゃがりこ食うか?」

「助かる……」

 モルガナに呆れられながら、暁に差し出されたじゃがりこを受け取ってポリポリかじり始める。

「私が調べられたのはこのくらい。後は双葉、お願いできる?」

 話の腰を折られた真は、こめかみを指で抑えながら双葉に話を振った

「おう。真……センパイが聞いたのと同じ話は、ネットでも話題になってた。特に占い師の方」

「お、先輩呼び」

「親しき中にも礼儀あり。今から直しておかないと、これから大変だからね」

「やっぱ言いづれー……で、その占い師、人気のあまり教団を作ったなんて噂もある」

「教団て……ほんとかよ?」

「さあ。ネットの噂なんてそんなもんだし」

「それで、ほかに噂は?」

「もう倒産した企業なんだけど……セベク──佐伯エレクトロニクスって会社、知ってる?」

「お姉ちゃんに聞いたことある。セベク・スキャンダルっていう事件で大変なことになったって」

「それそれ」

「なんだそりゃ?」

「とある街がいきなり壊滅して、多数の死傷者を出した謎の大事件。その原因を作ったのがセベクって証言が大量に出てきたんだ。それでセベクの信用は地に落ちて、どこかの企業に吸収された。それがセベク・スキャンダル」

「へえ……そんな事があったんだ」

「よく調べたわね」

「でも謎が多い事件で、わかってる情報が本当にこれだけなんだ。

 いくら調べても事件の原因も犯人も全然わからなくて……」

「随分、徹底的に調べたんだな」

「え!? い、いや……あの……とにかく噂だ! そのセベクが復活するらしい。

 新宿に新しく出来た本社ビルの前で新製品のお披露目をするって……」

 説明を受けた祐介の呟きに、双葉は慌てた様子で身振り手振りし、話題を変えた。

「新製品?」

「詳しくはわかんないけど、世界を揺るがすようなすっごい製品だって話。どんな製品なのか、あっちこっちで噂されてる。超高性能の新型パソコンだとか、ワープ装置とか……タイムマシンなんて噂もあったな」

「タイムマシンって、オイオイ……」

「鷹取神久っていう、なんか凄い研究員がいるんだって」

「聞いたことないわね」

「あたしもない。だからさっきの占い師……JOKERに力を貸してもらったなんて噂もあるくらい」

「もう、そのJOKERってのが絡めば何でもアリみたいになってねーか?」

「ほんとにね」

 竜司のぼやきに杏が同調する。

「最後の一つが……"メジエドの創始者が帰ってきた"っていう噂」

「ん? たしかメジエドの創始者って……」

「フタバじゃなかったか?」

「大正解。アキラとモナには特製モナぐるみをプレゼントだ。

 でもアタシはもうメジエドやめてるし、戻る気もない。リアルが忙しいしな」

「……でも実際、メジエド絡みの事件が最近増えたよね」

「昨日の停電もあいつらの仕業だってハナシだもんな」

「連中の活動はフタバが止めたんだよな?」

「そのはずなんだけど……あたしを怖がってないのか何なのか、勝手に活動してるんだ。あと何度も言うけど! あたしはメジエドにはもう微塵も関わってないからな! モナとそーじろーに誓っていい!」

「なぜワガハイに誓うんだ?」

「整理すると……こうなるわね」

 

 1、【占いで総理大臣になった女性】

 2、【運命を操り、教団も作った占い師JOKER】

 3、【新生セベクの新製品】

 4、【メジエドの創始者が戻ってきた】

 

「うーん……なんかイマイチ、ピンとこないよね」

 ホワイトボードに書かれた文章を見て、杏が眉をひそめる。

「実感わかねえもんなぁ。本当に噂が現実になってるとかわからねーし」

「そういえば、そのセベク? のお披露目会っていつやるんだ?」

「たしか……今日だ。もう始まってると思う」

「今日!?」

「ネットやテレビでライブ配信するって話だったから……見てみよう」

 スマホでは画面が小さいと言う事で急いで暁のパソコンを起動して配信サイトにアクセスする。

『……彼がこの装置の開発を行った、主任研究員の鷹取博士です』

 すでに放送は始まっていて、社長の佐伯がマイクを取って研究員を紹介しているところだった。

 黒いスーツに、傷跡のある両目をサングラスで隠した男──鷹取が、社長の言葉を受け軽く会釈していた。

「噂の研究員だ……」

「なんかワルそうなオッサンだな……」

「こういう時くらい、サングラス外せばいいのにね」

『我が社の新製品についての噂は皆さまもご存知のはず! そう、これこそが世界を震撼させるシステム! その名も、ネオ・デヴァ・システム!!』

「デヴァ・システム……!?」

 社長の高らかな宣言を聞いて、双葉が怯えたような呟きを漏らす。

 一同は怪訝な顔したが、すぐに画面に意識を向け直した。画面では、記者の質問に社長が答えているところだった。

『何がネオなのか、ですか? ははは、よく聞かれます。鷹取博士、説明を』

『デヴァ・システム。かつて我が社で開発していましたが、諸事情で発表できなかった製品です。ネオ・デヴァ・システムは、それを現在の技術を用いて改良・発展させたものなのです』

『そしてこのシステムは、場所も時も超えて物を行き来させる事ができるのです!』

「うそ、ほんとにタイムマシン……!?」

『安全上、人の移動こそまだ試していませんが、このシステムは間違いなく世界を変える!』

『ここに取り付けた台座はネオ・デヴァ・システムと接続されており、転送されたものがここに届く仕組みです。この手にあるスイッチを押せば装置が起動します。皆様、カウントダウンを!』

 カウントダウンが始まる。この時、鷹取が皮肉げに笑ったような気がした。そして、起動スイッチが押されて。

 

 その瞬間、世界が揺れた。

 

 スイッチが押された瞬間、画面が揺れて──その後は何も起きなかった。

『…………?』

 佐伯も困惑しているようで、鷹取と何やら話をしている。

「なにか様子が変だ」

「トラブルかしら」

「……なんか、画面が揺れてねーか?」

 事実、揺れはどんどん大きくなっていた。佐伯は慌てた様子でスマホを取り出し、どこかへ電話する。

『……おい、制御室! これは一体……なに!?』

 マイクを切る余裕もなかったらしく、通話の内容が大音量で響く。何かあったのかと記者達がざわめいた。

『緊急停止しろ! すぐに装置を……』

『無駄だよ……』

 マイクが鷹取のこの言葉を拾ったのは偶然か。いずれにしろ、大きくなる一方の揺れと会場の混乱の中に言葉はかき消えた。

『カメラ止めて!』

『うわぁ!?』

 係員の指示が聞こえたかと思うと、大きな音を立て地響きと共にひときわ大きな揺れが会場を襲った。画面がぐるぐると回り地面に落ちた。その衝撃で機材が破損したのか、画面は見えなくなってしまった。そして、それが波及したかのように暁たちの周囲も大きく揺れた。

「きゃあっ!?」

「地震!?」

「みんな安全なところへ!」

 メンバー達がテーブルの下や机の下に隠れた。揺れがさらに大きくなり、暁は目を閉じる。

 一瞬の浮遊感と同時に、暁の意識は暗闇へと追いやられた。

 

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