ミアレシティの人たちとイチャイチャするだけ   作:小説ゾーンです

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ユカリ様とハルジオの三分クッキング

 

「具材の準備良し、お料理道具の準備良し、スマホロトムの準備……よしっと」

 

「ほ、ホントにやるんですかユカリ様……」

 

 

 豪奢な屋敷のキッチンには、天井からまぶしい光が降り注ぐ。白い大理石のカウンターが反射で輝き、壁際の棚には銀食器が整然と並ぶ。ここはユカリ様の屋敷――常に気まぐれで形を変えているかと錯覚する特別な屋敷だ。

 

 

 そして今日の気まぐれは、他の人を巻き込まない分いくらかマシな……なんともユニークなものだった。

 

「ふふ、わたくしったら天才ですわ!こんなことを思いつくなんて……ハルジオ、一応もう一度確認しますわ。今日は『三分クッキング』と称してチャーハン作りの動画を撮影いたしますの!そしてわたくしたちがお料理もできるステキな女であるとキョウヤさまにアピールするのですわ!」

 

(料理のアピールよりも、ベンチで寝るならいつでも屋敷で寝ていいって方が喜びそうだが…)

 

 

 ユカリ様はドレスを優雅に翻しながら、白い手袋をはめた手で小さなカメラにアピールしている。頭に飾られた花の飾りと、そのやる気に満ち溢れた目がまるで宝石のように輝く。正直同じ女としては憧れる美しさだ。

 

 

 しかしそれを悟らせないようにしつつ、ハルジオはメイド服のエプロンを整えながら穏やかに微笑んだ。

 

 

「はい、ユカリ様。うち精一杯お手伝いいたしますわ。チャーハンなど非常に簡単でございますもの。では早速材料を揃えましょうか」

 

 

 彼女の声はいつものようにお淑やか。鍛え上げられたメイドとして完璧で柔らかなトーンだ。

 

 でも、心の中では少しだけざわついていた。

 

 

(三分クッキング? 3分でチャーハン? 確かに料理は簡単にできるに越したことはないが……速けりゃいいってもんでもなくねぇか? まぁユカリ様の機嫌が変わらぬうちにパパっと済まそう)

 

 

 スマホロトムの動画が回り始める。ユカリ様はカウンターに立ち、優雅に手を広げた。

 

 

「キョウヤ様こんばんわ!今日は特別にメイドのハルジオと共に、三分クッキングしますの!作るものは簡単だけど奥が深いお料理のチャーハンですわ!材料は炊いたご飯二合、卵三個、ベーコン適量、ねぎ一本、にんにく一欠片、調味料は……まぁ、醤油と塩こしょうで十分ですわね。さあハルジオ、始めましょう!」

 

(作るのはほとんどうちなんやけど……)

 

 

 タイマーがセットされた――残り3分。

 

 ハルジオは素早く動き、フライパンを火にかけた。メイド服の袖をまくり、あらゆる具材を的確に切り刻む。

 

 

「わぁ早いですわねハルジオ!」

 

「伊達に長いことメイドやってませんから!」

 

 

 続いてフライパンに油とを注げばジュワッと音が立ち、一瞬跳ねるが……当然ユカリ様にかからないように立ち回る。フライパンと格闘する隣で、ユカリ様は優雅に卵を割ってかき混ぜ始める。

 

 

(フライパン握らせたら焦がしそうだしな……ユカリ様には悪いが、ここはうちがほとんどやって終わらせよう)

 

 

 そのままにんにくとベーコンを炒め、素早い手さばきでご飯を投入。

 

 

「えーここでご飯をパラパラするまで焼いて、具材にも火が通るように火加減を中火あたりに……」

 

 

 動画を撮ってることを思い出し、適当な解説を冷静にするが……

 

 

(くっそ時間ねえ! 料理は時間制限決めて窮屈にやるもんじゃねぇだろ! それにチャーハンなんて適当にガツガツ炒めりゃいいのに、この人に見せるようの優雅ぶった感じでやってられっかよ!)

 

 

 どれだけ内面が荒れていようと、プロのメイドとして表面上は完璧だ

 

 

「さ、卵を綺麗にときましたわ!後はちゃちゃっとやってくださいハルジオ」

 

 

 残り1分。ねぎを散らして醤油をジャッと回し入れれば、いい香りでキッチンが一気に活気づく。

 

 

「ふふっ、案外上手いことできてるな!どうですかユカリさ――」

 

 

 横にいない。見渡せばユカリ様はカメラに顔を寄せてはいにっこり。

 

 

「キョウヤさま!わたくしたちのチャーハンは、ただの炒め物ではございませんのよ!愛情を込めて、しかも素早く3分で完成させるのですわ!」

 

(オメー卵といただけだろうが!)

 

 

 ハルジオが怒りのこもったフライパンを振る動作は、まるでポケモンにとどめの一撃を命令させる時のようだ。

 

 

「塩こしょうを振って、全体を味付け……盛り付けしたらほら完成だ!」

 

 

 盛り付けと同時にタイマーが鳴り、ぴったり3分ジャスト。い、意外とやれるもんだな……!

 

 

「まぁ美味しそう!食欲を煽るいい香りですわ……ほらお食べなさいハルジオ」

 

 

 スプーンですくったチャーハンをうちに差し出すユカリ様、人に見られるのを分かった上であーんされろと?

 

 

「わたくしのチャーハンが食べれなくて?」

 

「だからほとんどうちが……あぁもう!」

 

 

 ガチリと噛みつき、喰らう。三分にしては上出来の味付けだな。

 

 

「ふふっ、全部あーんで食べさせてあげますわよハルジオ。ほらあーん」

 

「あーん!」

 

 

 ――後日キョウヤの元に送られた三分クッキングの動画には、ひたすら自分で作ったチャーハンを餌付けされるハルジオの姿があったという。

 

 

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