貞操逆転世界で占い師(軍師)を務めていたら、貴族令嬢方に包囲され逃げられなくなった件について   作:ですわお嬢様

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今回のお話、途中で不快な性的描写の部分があります。
申し訳ないのですが、不快な場合は読み飛ばして貰えればと思います。


第27話 報い

 

 略奪が行われている、イスペリアの農村地帯で。

 人々は追われ、難民と化して彷徨っている。

 

 村にも難民が押し寄せて、保護を求めて哀願してくる。

 

 その対応に追われている最中で、宰相からの要請が届いた。

 

 秩序の回復のために、出撃を請う依頼。

 防衛に対しての参戦努力義務条項を行使してきた。

 

 その件でクローデットさんが相談に来たのは、それが文書で届いて直ぐのことであった。

 

 

 

「ジルベールさんのお考えを聞かせてくださいまし」

 

 文書を読み終えた俺に、開口一番クローデットさんから出た問い掛け。

 

 その目は真っ直ぐで、なんとなく考えていることが読み取れる。

 恐らくは、俺と同じ結論に達している目だ。

 

「行きましょう、救援に。実のところを言うと、もう準備は済ませてました」

 

 あらかじめ考えていた返事をすると、我が意を得たりとクローデットさんは頷く。

 

 やっぱり、同じことを考えてたみたいだ。

 通じ合ってる感じがして、素直に嬉しい。

 

「元よりそのつもりでしたのね、ジルベールさん」

 

「はい、逃げてきた人たちの話を聞くに、どうやら敵はゆっくりと北上してきてるみたいですから。放っておけば、いずれこの村にもやってきてしまいますから」

 

 そう、敵は平地部をゆっくりと北上しながら、5日もあればこの村に辿り着く距離まできている。

 

 村で迎え撃つ受け身の態勢よりかは、主導権を握れる攻勢側の方がやり易い。

 

 ……今回の敵は、護るものを抱えていると、相当にやりにくい相手みたいだから。

 後背に村を抱えて戦う愚を避けたかったのだ。

 

「とにかく、村で面倒を見れる人数にも限りがあります。直ぐにでも出撃しましょう」

 

 手段を選ばない相手に対しての憤りも交わっての言葉に、クローデットさんは迷うことなく頷いてくれた。

 

 

 斯くして、マリーナ騎士団は急遽、クルアン教徒……もとい匪賊の討伐へと乗り出した。

 

 今回は調練が足りておらず兵糧にも限りがあるため、屯田兵(元諸侯兵、山賊やってた人達)には留守を守ってもらうことにし、貴族令嬢150に再編されたメイド隊300の450名での出撃だった。

 

 

 

 

 

 目の前の惨状に、アマルは下唇を噛んでいた。

 彼女の眼前では、あまりに惨い宴が行われていたから。

 

「……も、もぅ、許して……くれ……っ」

 

「悪いがね、故郷から離れてこんなところまで来させられて、マトモに男も当てがわれないんだ。数少ない機会なんだ、孕むまで付き合ってもらうよ!」

 

「もうっ、出した、じゃ、ないかっ!」

 

「あん? 山の民どもの貧弱なお精子で、遊牧民のアタシらが易々孕むわけないだろ? あと100回は出せ、出せるだろうが!」

 

「で、出ない、出るわけないだろっ」

 

 辺り一体に響き渡るのは、ガルガン人兵士の下卑た声と、彼女達に捕まってしまったイスペリア人男性の悲痛な悲鳴。

 

 ──苛烈な、陵辱の現場。

 

「おいおい、後ろ詰まってんだからな。早くしろって!」

 

「うっさいよ、最低でも3回は出してもらわないとね」

 

「一発目の一番濃いのもらってんだろ!」

 

「ちん◯んと金玉鍛えて、1000回連続で射精できる様にしてやってる最中なんだって!」

 

「チッ、10分以内には終わらせろよ?」

 

「あいよー」

 

 まるでモノみたいに扱われる男性、この場においては彼らの自由意志などない。

 

「もう、やめて、やめてくれ……っ、父さん、母さん!!」

 

「おっ、それ燃えるな? よし、アタシのことママって呼べやオラァ!」

 

「ふ、ふざけ……っ」

 

「ママだって言ってんだろ、オラァ!」

 

「っぐ!?」

 

 抵抗や抗弁する者は、暴力を持って解らせられる。

 抵抗は無意味で、徐々に言葉は意味を為さなくなる。

 

「ほら、優しいからもう一度チャンスをあげる。マ・マ、簡単だろ?」

 

「…………ま、ま……っ」

 

「くぅ〜っ! 最高じゃん!! やばい、腰が止まんなくなってきた!?」

 

「────っ」

 

 暴力に屈して、痛みから逃れるために慈悲を請うための言葉を口走り、この場の男性の多くは、自らの尊厳と自尊心を著しく傷つけられた。

 

 しかし、抗えばきっと殺される。

 圧倒的に強者なのは、力強い女の方なのだから。

 

「ふぅ、終わったから変わってやんよー!」

 

「うげ、こいつお前の汁塗れじゃん。ちゃんと拭けよ、マナーだろ」

 

「ママって呼ばれた瞬間、50mくらい潮吹きしたからね。しゃーなししゃーなし」

 

「え、キモ……」

 

「今なら暴言も許せる。一年後にはあたしママになってるわ、これ」

 

「ったく、まあ良いや。次はあっちが相手だから」

 

「そ、そんな! む、むりだ、もう無理なんだよぉぉぉぉーーっ!!!」

 

「おっ、生きがいいね? サバンナのガゼルみたいなチ◯ポじゃん」

 

 しかも、一人相手ではない。

 ようやく終わったと思った瞬間に、次が来る。

 

 逃れられない地獄そのものな環境に、次第に使われている男達の反応は薄くなっていった。

 

 心を殺して、何も感じない様にするしか耐えられそうにない為だ。

 ……或いは、幾人かは既に廃人とかしていたか。

 

 

 

「だから、嫌い。略奪……」

 

 この蛮行を掣肘しようにも、既にクソババアもといファイカが許可を出してしまっている。

 

 そもそも、クルアン教の軍法からしてそうなのだ。

 

 本国と征服地の兵の間で扱いに差を作り、略奪を煽ることで戦意を向上させる。

 

 本国兵は待遇は良いが略奪に手を染めることは一切禁止され、征服地の兵は待遇こそ悪いが略奪を権利として認められている。

 

 この歪な軍法こそが、アマルを縛った。

 醜い宴はクルアン教の中では合法で、止めようとする行為は権利の侵害に他ならないから。

 

 そもそも、アマルにはこの部隊の指揮権がない。

 無いけれども、居ても立ってもいられずに、視察と称してここまでしてしまった。

 

 来たからにはと、これまで止めようと幾度かしたが、ガルガン人達に聞く耳持たれなかったのはそのためだ。

 

 ……それでも、とアマルと思う。

 止める権限が無いのならば、止める理由さえできれば良いと。

 

 だから、心の底から普段は思わない様なことを、自らの神に祈っていた。

 

 ──イスペリア人達、早く来て、と。

 

 祈る心の奥底には、ひっそりと一人の男の子の影があった。

 

 泣いていた、あの日に出会った男の子。

 クセのあるブラウンの髪に、涙でエメラルドみたいな瞳がキラキラ輝いていた子。

 

 自分は、あの子に言った。

 戦いに向いてないから、やめろと。

 そう言ったのに、目の前の惨状はなんだろう。

 

 もし、あの男の子が自分の言葉に従って、戦場を去っていたら。

 

 ……もしかすると、この中の一人になってしまっているかもしれない。

 思い至ってしまったら、心が騒めく。

 

 自分があの男の子を、この地獄の中に送り込んでしまったのでは無いかという後悔が、胸の底で蜘蛛糸を張り巡らせていた。

 

 多分、アマルは彼をずっと心配していた。

 あの日、戦場で泣いてるのを見た日から。

 

 この子は迷子で、一人じゃ生きていけないのではとさえ思えて。

 

 本人に自覚はないが、それは母性とでも呼ぶべきもの。

 

 戦場での、戦士以外との邂逅。

 非日常の中に日常が紛れ込んでしまったかの様な違和感が、彼への庇護欲を芽生えさせたのだ。

 

 だから、ずっと気にしてしまう。

 心に棘が刺さったみたいに、チクチクと。

 

 ……この現状を前にして彼のことを考えるのは、もしかすれば目の前の光景から意識を逸らすための現実逃避でしかなかったかもしれない。

 

 他人を見捨てる罪悪感から逃れた先には、自分が突き落としたかもしれない男の子を思う罪悪感が待っていた。

 

 もしそうであれば、アマルは真面目だが難儀な性格をしているといって差し支えないのだろう。

 

 

 だからこそ、気が付けたのかもしれない。

 嬌声と悲鳴、それ以外の力強い蹄の音に。

 

 

「──来た」

 

 まだ遠いけど、かなりの速度でここまで詰めてきている。

 アマルの良すぎる耳が、それを察知して。

 

「敵、来てる! 戦闘準備、入って!!」

 

 これを機に、統制を回復しようとアマルは口数少ないながらも、よく通る透き通った声で指示を飛ばした。

 

 ──されども、指示された側の動きは、著しく鈍かった。

 

「あん、どこに?」

 

「知らんけど、なんか言ってるよ」

 

「大方、私らが羨ましくなって邪魔してんじゃね?」

 

「あの無表情のお人形さんが?」

 

「顔面が海綿体で出来てて、顔面勃起して表情筋が死んでるだけでしょ」

 

 それは、自分たちが攻撃する側に立っている、敵が出てくるはずがないという精神的な油断。

 

 今まで、彼女らの権利が邪魔されることは無かった。

 

 イスペリア軍は、山に籠って出てこないのだから。

 この数年で、彼女らは戦場の意味を忘れていた。

 

 自分たちは肉食獣で、相手側は草食獣。

 そんな勘違いを起こして、ここが戦場では無く狩場だと思い込んでいた。

 

 けれども、その報いは程なく訪れた。

 ──数多の手投げ斧が、彼女達に降り注いだためだ。

 

「なっ、ぎゃあああーーっ!?」

 

「なんだよ、コレェ!?」

 

 自らを肉食獣と称するなら、それすらも狩る猟師も世には存在する。

 

 そんな理を理解する間もなく、強力無比な一撃を喰らった彼女達は、文字通りに身体が木っ端微塵になっていった。

 

 

「……っ、頭、わるい!」

 

 あまりの愚かさに眩暈を催しそうになるが、それを理性で捩じ伏せて、アマルは数少ない掌握した兵を纏めて、即座に占領した農村から退く指示を出した。

 

 ──瞬間、間髪入れずに敵の騎馬が雪崩れ込んできた。

 

「悪党はどこっ、しねーーっ!」

 

「この惨状、流石に見過ごせません!」

 

 騎馬で先行した令嬢達が、辺り一面のクソ景色を目の当たりにして、著しく義侠心が刺激されながら迅雷の如く飛び込んできたのだ。

 

「クロエー、えらいことになってる全裸男性さん達どうするー?」

 

「先ずは敵を掃討しますわ、救護はその後!」

 

「あいあい!」

 

 そのまま、統制が取れない下半身露出兵士ことガルガン族の兵士を、一方的に排除していく。

 

 絶対的な加害者の立場から、急激に立ち位置の変更を余儀なくされた略奪部隊は、その多くが抵抗する暇もなく令嬢達に斬り殺されていった。

 

 その攻撃は、一方的であり効率的でもあった。

 

 この農村を襲っていた部隊はおよそ1000人ほどであったが、その内の7割が150名程の令嬢達に一時間もしないうちに切り殺されたと言えば、程度が知れるであろうか。

 

 その多くが、背中への斬撃で絶命した。

 逃げようとしたところを、抵抗する暇もなく一撃で仕留められたのだ。

 

 

「撤退、する。私に、続いて!」

 

 ガルガン人指揮官の首が物理的に飛んでるのを確認しながら、アマルは指揮権を引き継いだ。

 

 そのまま一路、掌握した兵士だけでも逃がそうと、南方へと退却を開始する。

 

 素早いアマルの判断は、賢明さを持って報われようとした。

 

 令嬢方は農村内の掃討に勤しんでいるから、逃げる敵には構う暇がなかった為だ。

 

 しかし、退路を確保できたと思った最中──二度目の手斧の雨が降り注いだ。

 

「っ、伏兵!」

 

 そう、騎馬で突入した令嬢達とは別口に、退路にジルベールがメイド隊を挟ませていたのだ。

 

「ベルタさん、敵は敗走してますけど秩序を保ってます。手強い相手ですから、手斧を投擲した後は正面から迎え撃たずに矢を射掛けましょう」

 

「そして、側面を通り過ぎた後は後ろから襲う、と。常道だな、悪くない」

 

 令嬢達の化け物じみた投擲には及ばないが、ガリティアの帯剣貴族達に選抜された有望株であるメイド達の一撃は、十分な威力を持ってアマル達に襲い掛かった。

 

「──フッ」

 

 降り注いだ手斧を、アマルは自らの剣で瞬時に三つ叩き落とした。

 

 だが、そんな芸当ができるのは彼女だけで、他の兵士達は甘んじてガリティア人特有の蛮族攻撃を甘受しなければならなかった。

 

 兵士達の悲鳴が、辺りに響き渡る。

 血の海に沈む味方と、それを成したメイド服の一団。

 そのコントラストに、認知が大きく崩壊しそうになって。

 

 そしてアマルも、特徴的な戦闘集団を目視して、目を見開いた。

 

 だって、それはあの日戦った、あの部隊だったから。

 ──あの男の子が、いた部隊だから。

 

 まさか、とアマルは思った。

 だって、出てくるな、向いてないって言った。

 それ、なのに……。

 

「ジルベール、ここは任せた。リリーの班は私に続いて背後からの一撃を加える、良いな!」

 

「承知いたしました、ベルタ様」

 

「委細了解ですっ。他の皆さんは、班ごとに3秒間隔でズラしながら、敵前方に斉射を続けて!」

 

 居る、居てしまった。

 あの日の男の子が、泣いていた男の子がここに居る。

 

 けど、あの日と違う。

 泣いてない、フードで見えないけど聞こえてくる声音はハキハキしていて。

 

 的確に、アマル達を仕留めようと正しい指揮を続けている。

 

「……散開、各個に離脱。バラバラに、別方向に、逃げて!」

 

 隊列を維持できない、敵の手が悉く的確だから。

 そう判断して、アマルはやむを得ず隊を解散する指示を出した。

 

 下手に一塊になっていたら、一網打尽で撃滅されるから。

 事実上、敗走から潰走へと変わった瞬間であった。

 

「チィ、面倒な。ならば、街道上の敵だけでも叩け!」

 

 ベルタは素早く、敵の主力と合流する可能性が高い兵士に狙いを付けて、追撃を指示した。

 

 メイド隊の其々が、余勢を駆って指示通りにしようとする。

 その一部に、ジルベールは待ったを掛けた。

 

「あの子は……っ。アンナさん、待って、あの子だよ!」

 

 ジルベール側も、敵の指揮官が誰だかを、ようやく視認して。

 咄嗟に、アンナの手を引いた。

 

 それは、あの日見逃されたあの子に、思うところがあったから……というわけではなく、単純に令嬢方並みに強すぎて、辛うじて剣戟を交わせられるのがベルタしか居ないと理解したから。

 

 けれど、あの男の子が、自身に情けを掛けたと勘違いをしたアマルは、思わず一瞬足を止めた。

 

 なんで、と降り注ぐ数多の弓矢を剣で一閃し、叩き落としながら。

 

 その振り向いたアマルの目を、ジルベールは見た。

 無表情ながらも、どこか悲しげなその目を。

 

「向いてないって俺に言ってたのに、君だって向いてないじゃないか。こんなことを、悲しい目をして……」

 

 多分、互いに何らかのバイアスが掛かっていた。

 

 ジルベールは、この惨状の最中でそんな目をするなんて、こんな事したくなかったと思っているからだと了解した。

 

 奇跡的にそれは当たってはいるが、今回アマルが悲しそうだったのは、戦場にあって自身が戦士扱いされなかったと感じたが故のこと。

 

 微妙に噛み合ってはいるが、まあまあすれ違いの多い関係性なのかもしれない。

 

 そして、当のアマル自身も、30mは離れていたジルベールの大した声量もない独語を、持ち前の地獄耳で聞き取ってしまって。

 

 恥じらいと屈辱とがないまぜになって、アマルは脱兎の如く遁走した。

 

 あの日と、全部あべこべだと心がぐちゃぐちゃになりながら。

 

 ジルベールは意識していなかったが、アマルにとってそれは痛烈な意趣返しに他ならなかった。

 

 戦場にいるには優しすぎると、あの日の言葉が自分に返ってくるなんて思ってもいなかったのだ。

 

 それも、相も変わらず戦士じゃないのに、戦う意志を持っている男の子からの言葉。

 

 自分が情けなくて、アマルは無表情ながらに泣きそうであった。

 今回の自分は、あまりにあんまりだと。

 

 それでも泣くことがなかったのは、強い女の子であったからか。

 

 この日の無様を、アマルは生涯忘れなかった。

 何処ぞの占い師と口論になる度に、屈辱と共に掘り返される黒歴史と化した為である。

 

 

 

 

 

 この日を境に、マリーナ騎士団は各地の匪賊(略奪部隊)狩りに乗り出した。

 

 それと同時に、イスペリア軍も重鈍ながらに出撃準備を整え、敵を叩くために山を降った。

 

 クルアン教イスペリア方面軍司令官、ファイカ・ビント・ハミダの思惑通りに。

 

 聖教暦722年5月、未だに肌寒さが拭えない春の終わり頃の出来事であった。





この章は、少し短いですがここまでとなります(多分)。
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