「……外に出るんじゃなかった、嫌な予感がある日は外出しない方が良いって経験があったのに…」
暴走メガシンカしているメガヘルガー達に囲まれたグレイはそう言ってこの世の終わりの様な顔で空を見上げている。
「ギャウッ!」
そんなグレイへ、経験飴を与えたらコイコングからギャラドスへと進化したギャラドスが、器用に尻尾でグレイの頭を引っ叩く
「へぶっ」
尻餅をついたグレイを尻目に、ギャラドスはグレイを守る様に暴走メガシンカしたメガヘルガー達を睨む
「ガブッ!」
そして、そんなギャラドスよりも前に出てメガヘルガーを威嚇するのは、経験飴を与えたらフカマルから進化したガバイトだ。
果敢にドラゴンクローを振り回して暴走メガシンカしていようが関係なしに蹴散らさんと攻撃を繰り返している。
「……キルルゥ…」
そして、グレイの背後でピッタリと引っ付くのは三匹の中で真っ先に経験飴に飛びついて食べたラルトス…がキルリアへと進化している。
グレイを盾にしているが、ムーンフォースを暴走メガシンカしたメガヘルガー達へ的確に叩き込んでいた。
三匹のそれぞれの活躍もあってか、暴走メガシンカしたメガヘルガーも後二匹になった。
「グルル…!」
「グルゥ…」
形勢が不利と判断したのか、メガヘルガー達はその場を離れて行く
「…はー…何とかなった…ん?」
ホッとするグレイの背後に大きな影が出来る
「ネェロ!」
「ネロネーロ!!」
暴走メガシンカしているメガカラマネロだ。
ギャラドスが即座に気付き、ハイドロポンプで引き剥がそうとするも
「ネェェロッ!」
サイコキネシスで動きを止められ、頭を床に叩き付けられる。
「ッ…ギャラドスっ!?」
「キルッ!」
「ネロッ…!?」
キルリアがメガカラマネロへムーンフォースを叩き込んだが、レベル差があるせいか余り効いていない。
「ネローネロ!」
「キルッ…!」
「ネロネーロ!」
メガカラマネロの一体がつじぎりでキルリアを吹き飛ばし、その隙にもう一体のメガカラマネロが触腕でグレイを拘束すると、その強力な催眠をグレイへ向ける。
「うぐ…ぁ…!?」
頭を抑え、苦しむグレイを見て、ガバイトが飛び上がって距離を詰め、ドラゴンクローをメガカラマネロに叩き込もうとするが
「ネロ!!」
「ガッ…!」
無造作に振るわれた触腕によって吹き飛ばされる。
「やっと見つけました、先輩」
「久しぶり〜元気…そうじゃないかぁ」
ギンと少女がメガカラマネロと合流する。
「おま…えら…なんでここに…」
「あっはは、なんでってそりゃ、置いてったなら追いかけるでしょ?」
「先輩、ボクらが弱かったから一緒に連れて行ってくれなかったんでしょ?でももうボクらもあの時の弱いままじゃない。もう先輩を守れる強さを手に入れてる…」
「あれ、周りに転がってるの…もしかして捕まえたポケモン!?ウソ!?手持ちなんてイーブイたちだけだったじゃん!?」
「先輩……遂にモンスターボールでポケモンの捕獲が出来る様になったんですね…」
「生憎…餌で釣っての…ゲットだ…というか…コイツを止めろ!」
催眠術に抗っているのか、頭を抑えながらも普段とは違い覇気のある声で二人へ声を荒げる。
その声に反応し、二人の身体が自然と動こうとするも、寸前で動きを止める。
「やっぱり先輩は、強いね。ボクらの大元だから、当たり前だけど」
「でもやっぱ、『声』が違うね…昔の時よりも強制力がない」
「……いた!!」
「まだ暴走メガシンカしてるポケモンが…今日は戦い続きで疲れます…」
「まぁまぁ…アレで一応最後だし!」
そんな事を話す二人とグレイに、MZ団とマチエールが背後を取る形で路地から現れる。
「キミら、その暴走メガシンカしたポケモンで、何をするつもりなの?」
マチエールがボールを構え、それに続く様にピュール、デウロ、タウニー、キョウヤもボールを構える
「あらら〜4:2かぁ…しかも一人はあの探偵のマチエールか…面倒くさいな…」
「おまえらに話す情報はない、先輩との時間を邪魔するなら…潰れろ」
ギンはやれやれと背伸びし、少女のその言葉に反応してか、メタグロスが空中からMZ団とマチエールめがけてヘビーボンバーを放つ
「うわっ!?」
「危ないっ!?」
「ひゃっ!?ちょっと!トレーナーに技を使うって反則じゃない!?」
「よっ…平和的な解決はやっぱり無理か…!」
5人はそれぞれ散る形でヘビーボンバーを回避する。
「……やっぱり、その使うポケモン、そしてその特徴…貴女達、イッシュに居た…あの組織の…!」
ボールからデンリュウを出しながら、マチエールは鋭くギンと少女の二人を睨み付ける
「流石に調べられてるか…まぁ、それで合ってるよ、元エスプリさん」
「ッッ!?」
エスプリ…5年前、ミアレシティで起こした自らの事件と知る者が殆ど居ないその名を口にするギンへ、マチエールは警戒を強めた。
「うぐぁぁぁぁ!?」
メガカラマネロの洗脳に抵抗していたグレイも、遂に限界が来たのか絶叫を上げてグッタリと脱力する。
「あ、もういいよメガカラマネロ……さっさと消えて」
「ネ…ネロッ!!」
少女の言葉に、グレイをそっと床に置いた二匹のメガカラマネロは急いでその場を離脱する。
「あっ!逃げる!ピュール!デウロ!追って!!キョウヤも!!」
「え、あぁ…はい!」
「分かった!」
「タウニーも気を付けてくれ!」
三人が逃走したメガカラマネロを追う為に路地裏に走って行くのを、ギンと少女は止めなかった。
「…いいの?あのメガカラマネロ、鎮圧されるよ?」
「別にどうでも良い。暴走メガシンカって、流行ってるらしいけど…メガエネルギーの詰まった結晶からエネルギーを抽出して、適当にバラ撒いてみたけど効果覿面だったねぇ」
そう言って、ギンは嗤う
「…これだけの戦力、有効活用出来るならそれが一番」
「…マチエール、もしかして、グレイの正体って」
タウニーが、マチエールに問いかける
「…うん、グレイはプラズマ団の王…Nが死亡、利用が出来なくなった時の為に、保険として教育された『予備』…でも、ポケモンに育てられたNから着想を得て、グレイはプラズマ団の研究者達によって、実験台になった…その実験の成果として得た力は…『声を聞いた人とポケモンを操る』……悪の組織じゃなくても、誰もが喉から手を出したい程に欲しがる力だよ」
「……何それ…!?」
グッタリとしたままのグレイを見つつ、タウニーはその危険性を即座に理解した。
「…まぁ、先輩は争い事が嫌いだから、利用されるなんて事の前に研究者達が逆に『処分』されたけど」
「ホント、あの時は凄かったよねぇ!大の大人が!情けなく悲鳴を上げて相棒のポケモンもグレイに奪われてさ!」
少女は静かに、ギンは嬉々として補足する様に話す。
「……そして、貴女達はその世話役…それと同時に実験台の二代目…名前は…クレア…ディア…その筈」
「正解正解!私はクレア…正解のご褒美に!ここで消えて貰おうかな!!」
「…ボクの名前を…先輩とお姉ちゃん以外が呼ぶの…やっぱり嫌」
ケラケラとクレアは笑い、ディアは眉を顰めてマチエールを見つめる。
「おいで!チルタリス!」
クレアに呼ばれたチルタリスは、空を舞う様に羽ばたいて現れ、クレアの側に寄ると甘える様に頭を擦り付ける
「カイリュー、仕留めて」
ディアがそう呟くと同時に、マチエールのデンリュウが弾き飛ばされる。
「なっ…!?」
驚くマチエールの後ろにいつの間にか現れたカイリューはその腕をマチエールに振るう
「…っと…!容赦ないね君達!?」
寸前で回避するも、少しでもズレていれば直撃は免れなかった。
そして、チルタリス、カイリュー…それぞれの首には、メガストーンがネックレスの形でかけられていた。
「チルタリス」
「カイリュー」
「「メガシンカ」」
二人の腕にある、メガストーンが嵌め込まれた指輪が煌めく
チルタリスは、メガチルタリスへ
カイリューは、メガカイリューへ
それぞれ、メガシンカする。
「…タウニー、ここで二人を止めるよ…グレイを救出するのはその後!」
「…分かってるし…!」
マチエールはカラマネロを、タウニーはメガニウムとエンブオーを出し、構えた
「カラマネロ!」
「エンブオー!メガニュウム!!」
「「メガシンカ!!」」
二人の声に合わせ、カラマネロとエンブオー、メガニウムはメガシンカする
「貴女達の記憶、消さないと」
「当然、目的はほぼ達成しようなものだし…ね」
ディアとクレアは、そう呟いた。
クレア
グレイの世話係だった。いつもグレイを引っ張り色々な場所へと連れ出そうとしては研究者やプラズマ団員に止められていた。
サイキッカーとしては強力で、手を触れずに自分の二倍以上ある重さ、高さのモノを動かすのは片手間に行える…ただし、出力調整は大の苦手
視界に入った対象の未来を視る力を持つ、この為勝負事には強い
現チルタリスとなるチルットは、自らの親が遺したポケモン
ディア
グレイの世話係だった。いつもグレイと姉であるクレアの間に挟まり、何処へ行くにもついて行こうしていた。
サイキッカーとしては姉に劣るが、精密さなら姉を超えており、卵を割る事なく念力で移動させる、
相手の過去を視る、過去の記憶を消す力を持つ