文字通り、飛び込んだ。
「弱ったなぁ…ホテル何処も埋まってた」
暗い夜のミアレシティをトボトボ歩く、何故なら何処のホテルも満室だったからだ。
観光客も多くホテル業は大賑わい、当然な事にホテルは連日満室状態で入れる事もない
「このままだと野宿かぁ…まぁ慣れてるけどさ…」
100万円があろうと、泊まれる宿がないのなら意味がない
ベンチで座りながら項垂れていると
「そこの貴方、ホテルを探していますか?」
配達員の男性に話しかけられた
「はい、そうですけど…」
「宜しければ、ホテルZまで案内しましょうか?あそこは絶対に泊まれますので」
「本当ですか!?」
それを聞き勢いよく立ち上がる。
「どうぞ、すぐそこですので」
配達員に案内され、ホテルZへと向かった…しかし
「…まさか、こんな事になっているとは…」
ホテルZに向かう道にはいくつもの岩が道を塞いでいた
「申し訳ない、まさか道が塞がれてるとは思っていませんでした…昨日は行政が撤去したはずなのに…どうして…」
頭を抑えて謝罪する配達員に、僕はにこやかに告げた
「大丈夫ですよ、このくらいなら」
「へ?」
その言葉に、配達員は目を丸くする、
まず、岩に近寄り、コンコンと叩いてみる
帰って来る音は軽く、大岩と思っていたが石同士が堆積して出来上がったモノだった
「空洞あり、でもある程度は耐えれそうだな…飛び越えよう」
「飛び…無茶ですよ!?」
配達員の言葉を無視して、岩から距離を取り、身体をほぐす
「あ、一応下がっておいてください、当たるといけないので」
「あ、あぁ…」
配達員が下がったのを確認して、僕は走り出した
大岩から30cm手前で足に力を入れて飛び上がり、靴底で岩を蹴る
そのまま軽快なステップで、岩の先に辿り着いた…と思ったら
「あ、目測ミスってる」
予想していた着地先から数十cm先はすでに玄関
着地して勢いを殺そうとしても玄関に激突する。
「…後でオーナーに謝ろう」
そう呟くと同時に、玄関に衝突した。
室内では、見上げる程背の高い老人が、こちらを見つめていた。
側にいるのはフラエッテだろう。心配そうにこちらに飛んで来た
「キュルル…?」
「…君、大丈夫かね?」
「あ、はい…受け身はしっかり取ったので無事です…それより玄関を破壊してすいません。岩を飛び越えたまでは良かったんですが…着地をミスりました…」
そう言って、古来より伝わる最上級の謝罪方法…DOGEZAをして深々と頭を下げた。
後ろを見れば高級そうな玄関は無惨にも破壊されている。
そして、正面にある古いエレベーターからチーン…と音が鳴り、一人の女性が勢いよく飛び出した
「AZさん無事!?」
そして視界に飛び込むのは、DOGEZAする自分と無惨に破壊された玄関。
「…なるほど、強盗ね?」
「違うんですよ…岩を飛び越えたら目測ミスして玄関に衝突してしまい…ご覧の通りに…修理代はこちらにご用意してあるのでどうか…どうかご容赦を…」
全財産の100万を置き、女性にも深々と頭を下げる。
「…岩…?もしかしてあの岩を飛び越えて来たの!?どうやって!?」
「普通に…助走つけてジャンプして、岩の先端を踏んで距離を稼いで着地…しようとしてこうなりました…大変申し訳ございません…」
「えぇぇ…??」
女性にはにわかには信じ難い事で、困惑している
「…玄関の事は謝らなくてもいい、修理代も払わなくて結構だ……君に怪我がないのが一番良い
…それに…こんな夜遅くに来たと言う事は、他にホテルが空いていなかったんだろう?」
「…はい、そうですね」
「なら、君もこのホテルの客だ。当ホテルのオーナーとしてきみを歓迎する」
そう言って老人は優しく笑った
「…ありがとうございます、ですが…自分がやってしまった事なので…修理代はしっかりと払います」
もう一度深々と頭を下げる。
「そうか…では、ここに記入してくれ」
そう言われて立ち上がり、名前と職業欄を記入する
『グレイ』
【観光客】
「…ふむ、グレイというのか…君の部屋は302号室だ…これが鍵だ、無くさない様に…タウニー、案内してあげなさい」
「……はい、ついて来て」
そう言われ、タウニーと呼ばれた女性と共に、エレベーターに乗る。
お互い、無言のまま、エレベーターは目的階へと辿り着いた
「…正面が302号室…それではゆっくりお休みください、お客様」
そう言って不機嫌なまま、タウニーはエレベーターへと戻りボタンを押した
鍵を開ければ、内装はレトロなホテルの一室だ。
「…まぁ、晩御飯もいいや…寝よう」
そう言って、僕はベットに体を預け、すやすやと眠りに着いた。
頭にこびりつくのは、玄関の修理代幾らかな…という心配だけだ。