時は遡り、グレイがポケモン捕獲に動いていた頃、ハンサムハウスにて
「マチエール、もう一人、調べて欲しい人がいるの…追加で依頼していい?」
「ん?大丈夫だよ!」
キョウヤがマチエールの代わりに依頼を三件解決しに行っている間に、タウニーは一枚の紙をマチエールの前に置いた
「この人の素性を調べて欲しい…私の勘だけど、この人は何処か信用出来ない」
その紙に書かれた特徴は、グレイと一致していた
「…名前はグレイ、観光客…うーん…」
その紙を受け取ると、マチエールは顎に手を当て、もう一度タウニーを見る
「この情報だけだと本当に玄関を不注意で破壊した観光客だねぇ…何処が信用出来ないと思ったの?」
「一番は目だよ」
「目?」
タウニーのその言葉に、マチエールは首を傾げた。
「その観光客、私が見た限り気弱に振る舞ってるのに目だけは違ったの
こーんな、半目なんだけど」
そう言って、タウニーはグレイの目を両手を使って真似る。
「あはは、眠そうなポカブみたいだね」
「でも、私にはまるで目の前の敵を値踏みする様な…そんな目に見えたの
それに平然と100万円を出すし、チラッと見えたバックの中はしんじゅやきんのたまがたくさんあってモンスターボールも大量にあったし…」
「…なるほど、分かった、追加で調べておくね!」
マチエールは笑顔で承諾した。
「追加で依頼してごめん!お詫びに今度、ご飯が美味しいカフェを見つけたから一緒に食べに行こ!」
「…あはは、時間が出来たらね」
未だ両脇に積まれた書類を見て、マチエールは力無く笑った。
「タウニー…ちょっと」
依頼を終えたのか、帰って来たキョウヤは…フーディンに抱えられた小さな子供を連れて来ていた。
タウニーがキョウヤから聞いた話はこうだ。
〜〜〜
依頼を終えたキョウヤは、ハンサムハウスに戻る為に歩いていた。
すると、小さな子供とガラの悪そうな男が何やら話し合いをしていた。
小さく聞こえて来た声はユンゲラー、フーディン…交換…と、どうやら交換で進化するポケモンを手に入れる為の話し合いをしている様だ。
そのままポケモンを交換すると、男は背を向けて走り出す
子供がポカンとしている為に、恐らく交換した後にもう一度交換して戻す予定だったのを男が反故にしたのだろう。
「へっ!フーディンさえ手に入ればこっちのもんだ!」
そのまま逃げようとする男は退け!と人々を押して逃げようとする
「カメックス!ハイドロポンプ!」
「オバーッ!?」
逃げようとした男は横からハイドロポンプを受けて吹っ飛んだ
「バニリッチ、あの泥棒にれいとうビーム」
「ヌァー!?」
びしょ濡れになった男の身体は凍り付き、ちょうど盗んだプレミアボールを持つ手以外が氷に覆われた
「ポケモンを盗めば泥棒、子供でも知ってる事だろ?」
「俺の前でポケモン泥棒するとは良い度胸だな」
カメックスを連れた男は、奪われたフーディンの入ったプレミアボールを取ると、追いかけて来た子供に渡す
「ポケモンの交換で盗もうとする奴が希にいるんだよ。次から気をつけてな」
「うむ…汝らには助けられた…次から気をつけるとしよう」
「子供なのに発言が子供らしくないんだが…?」
見た目に反した言葉遣いに、カメックスを連れた男は面食らう
「…コイツ、どうするか」
氷の上から蹴りを入れつつ、バニリッチをボールに仕舞いながら、もう一人のトレーナーは泥棒である男を睨む。
「おぉ…」
二人のトレーナーの連携に、追い付いたキョウヤは目を丸くした
「…そのカメックス、よく育てられているな…」
「おう!俺とカメックスはズッ友だぜ!俺の名前はセフリージ、アンタは?」
「ジンだ… セフリージ…か…覚えたぞ」
明るいセフリージと氷漬けの泥棒をガンガンと殴るカメックス
そんなセフリージを見て疼いているジンは、泥棒がまだ居る為に自制する
「俺たちがこの泥棒を警察に突き出しとくぜ!アンタはその子を親の元に連れてってやってくれ、街で探してるだろうしさ!」
「…安心しろ、俺がいる限りこの泥棒に逃げる隙は与えない」
「ありがとうございます、じゃあ…ちょっとお兄さんについて来てくれる?」
「む?分かった」
いつの間にかプレミアボールから飛び出たフーディンに抱えられながら、子供はキョウヤの後をついて来た
〜〜〜〜
そして、ハンサムハウスに辿り着いた…と言う事である
「…そっか、そんな事が…お父さんとお母さんの特徴とか、覚えてる?」
タウニーはフーディンに抱えられたままの子供に、そう問いかける
「親は居ない」
子供のその発言に、ハンサムハウスは静まった
「…うーん、ミアレシティの孤児かも…クエーサー社が真っ先に孤児の保護に取り組んだから…もう居ないと思ってたけど…」
マチエールはそう言って、子供を見つめた
「じゃあ住む所もない訳だよね…うーん…よし!」
タウニーは数秒悩むも、すぐに決まったのか子供とフーディンを見る
「私の恩人がホテルをやってるの、そこなら住めるし、私やキョウヤ…ピュールにデウロ…他の観光客も居るし…」
しかし、そこでグレイを思い出したのか、少しだけ眉を顰める。
「とにかく、このままで居るよりは安心出来るから、一緒に来てくれると嬉しいな」
そう言ってタウニーは子供を撫でた
「む、そうなのか?ならそこへ行くとしよう」
「…そう言えば、キミ、名前は?」
キョウヤは名前を聞いていなかった事を思い出し、子供に問いかける
「我か?我は実験体番号U-99…と呼ばれていたぞ」
再び、ハンサムハウスに静寂が訪れる
「実験体…?」
「… U-99?」
キョウヤは信じられないという顔で、マチエールは何か思い当たる事があるのか、顎に手を当てて記憶を探る様に目を閉じた。
「…確か、イッシュで人為的にサイキッカーを生み出そうとした組織が居たね…もうハンサムおじさんとポケモンレンジャーの手で壊滅に追い込まれてたはずだし…もしかしたらそこから逃げて来た子かも」
「なら… 実験体番号U-99…なんて呼ばれるか…」
「それなら、ウキク…って呼ぶのはどう?」
キョウヤは実験体番号U-99…から連想したその言葉を子供は気に入ったのか、笑顔で受け入れた
「ウキク…うむ、気に入ったぞ。これからはウキクと名乗るとする」
「よし、じゃあホテルZに帰ろっか!」
こうして、ホテルZに戻ったキョウヤとタウニー、ウキクは
デウロとピュールに誘拐を疑われるも疑いを晴らし
こんな小さな子供がそんな薄い布だけではダメだとピュールが服を作る為にウキクは連れて行かれ
タウニーがいっぱい食べて貰おうとクロワッサンカレーを大量に作ろうとしてデウロに止められたり…と
わちゃわちゃする四人を、AZとフラエッテは微笑ましいものを見る様に眺めていた
静寂なはずのホテルZは、この日だけは珍しく騒がしかった。