バカとテストと召喚獣 solitary breakers   作:KA2

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召喚獣サバイバル編
第一話「僕とバグとサバイバル」


「あー、突然だが学園長からの知らせがある」

朝のHRが始まって早速鉄人から告げられる。

 

「今日は一日、テストを受けてもらう」

 

『おい、ちょっと待てよ』

 

『聞いてねぇぞそんなの』

 

クラス中から不満の声が湧き上がる。

そりゃあそうだろう。僕だって急にテストなんて受けたくない。

 

「まあ落ち着け、今回貴様らにテストを受けてもらうのには理由がある。それは明日から二年生は全員で召喚獣によるサバイバルをやってもらうんだ。ルールは簡単だ、今日から明日の四限までテストを行い、五限から放課後の時間まで学校全体を総合科目の召喚フィールドにする。そして出会った人間が召喚獣を戦わせる、もしくは逃げてもいい、そして最後に生き残った召喚者が優勝だ。もちろん優勝賞品もある」

 

なるほど、今までの試召戦争とは少し違うシステムで戦うことになるみたいだ。

きっとこれは学園長が急に思いついて始めたことなのだろう。

 

「ちょっと質問いいか? もし生き残った召喚者が放課後までに一人に絞られなかったらどうなるんだ」

 

雄二が尋ねる。確かに戦わないで逃げてもいいと言うのなら、今日の放課後までに決着がつかない可能性もある。

 

「さぁ、今回のことは学園長の咄嗟の思いつきだからな。正直俺にもわからん。また次の日に持ち越しになるかもしれないし、優勝者なしで終わるかもしれない」

 

やっぱり僕の思い通り学園長の思いつきだったか。

 

「ところで、優勝賞品ってなんですか」

 

鉄人に尋ねる僕。肝心なのはルールより優勝賞品だ。

 

「優勝賞品か? それはお前らが喉から手が出るほど欲しがっているであろう……Aクラスの設備だ」

 

な、なんだって!? この手のイベントは何かと豪華な商品が多かったけど、まさかここまでだなんて。

確かに今の僕らにとって、いや、Aクラス以外のすべての生徒にとって喉から手が出るほど欲しいものに違いない。

 

「雄二、これはやるしかないね!」

 

「いや、正直めんどくせえな」

 

「え? だってAクラスの設備を……」

 

「そんなもん手に入れったって、翔子から婚姻届を取り戻せねえだろ」

 

あ、そうか。雄二が試召戦争を頑張っていたのは霧島さんに勝って婚姻届を取り戻すためだったんだ。

だから設備自体にはそこまで興味がない、むしろ設備を手に入れてみんなの戦意が無くなってしまうのは雄二にとって都合が悪い。

 

「ちなみに副賞として如月グループの温泉旅行チケットがついてくるぞ」

 

だから彼の協力を得るのは無「あんのクソババァ!! なんでまたそんなもんを付けやがるんだ」 雄二も味方になってくれそうだ。

 

 

「まったくババァ長め、面倒なイベントを思いつきやがって」

 

HRが終わって雄二が呟く。

 

確か如月グループは以前、如月ハイランドで雄二と霧島さんを無理やり結婚させようとした。だから今回の温泉旅行も、そういった趣向で計画されていると考えていいだろう。

そうなれば霧島さんがそれを狙ってくるのは確実だ。雄二としてはそれだけは優先的に阻止したいに違いない。

 

「まあこれで雄二も参加せざるを得ないわけだね。それじゃあみんなで頑張ろ……」

そう言おうとした瞬間、クラス中から殺気が伝わってくる。

何故だ、何故僕にそんなものが向けられている!?

 

『サバイバルってことは同じクラスの奴と戦ってもいいってことだよな』

 

『ああ、つまり』

 

『吉井に今までの恨みを晴らすチャンスだな』

 

『しかもボコすのは召喚獣だから合法的だしな』

 

なんて不穏な会話をしているんだ。

こんな時までクラスメイトの処刑を考えているなんて、ていうかいつも合法的じゃなくても暴力振るわれてる気がするんだけど!?

 

「落ち着けお前ら、鉄人の説明によればサバイバルだからと言って、同じクラス内でも争えとは言ってないぞ。つまりFクラスはFクラス同士協力するべきだ」

 

さすが雄二だ、その一言で殺気立ったFクラスの面々を押さえつけた。

 

「助かったよ雄二、やっぱりFクラスみんなで頑張らないとね」

 

「まあでも、明久一人ぐらい欠けてもそこまで戦力に影響はねえけどな」

『うおおおおおおおおおおお』

 

「雄二ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

さすが雄二だ、たった一言で消えていたFクラスの殺気を取り戻しやがったよちくしょう。

 

その瞬間放送が入る、それは召喚獣によるサバイバルの開始を告げる合図だった。

 

「くそっ、こうなったらやるしかない! 試験召喚(サモン)!」

 

僕が召喚獣を出すと同時にみんなも召喚獣を呼び出して一斉に襲い掛かってきた。

 

咄嗟に手にしていた木刀を振り回す。

 

するとそこには━━━━信じられない光景が広がっていた。

 

『Fクラス 吉井明久 99999999点&Fクラス 須川、横溝etc. 戦死』

 

僕以外の召喚獣が消し飛んでいたのである。

 

「んな馬鹿な!? ほぼ一億点じゃねえか。何が起こってんだ!?」

 

雄二が驚いて言った。驚いたのは僕自身もだけど。

 

「まさか、明久君の頭が凄く良くなったわけでは無い……ですよね?」

姫路さんも困惑してるようだ。それはそうだ、僕には到底取れない、それどころか僕でなくてもあんな点数を取るのは物理的に不可能だ。

 

「(ガラッ)言い忘れていたが試召戦争と同じように戦死者は補習……って、もうそんなに戦死してるのか貴様らは!?」

 

彼らが戦死したところで鉄人が登場する。可哀想に、僕を襲おうとしたFクラスの馬鹿どもはみんな鬼の補習を受けるハメになったようだ。

 

そして彼らを連れて行こうとする鉄人は、ふと僕の召喚獣の方を見て驚く。

 

「何!? 吉井、その召喚獣の点数はなんだ!?」

 

「なんだって言われても……僕にもよくわかりません」

 

「貴様、まさかシステムを改造して得点を稼いだのか」

 

そう言うと鉄人はゆっくり僕の方に近づいてくる。

 

「そ、そんないくらなんでもそんなことしませんよ」

 

「いいや、貴様のことだから信じられん」

 

「待つのじゃ西村先生、バカな明久にそんな高度なことができるはずなかろう」

 

「秀吉、フォローは嬉しいけどその言い方はひどい!!」

 

「ううむ、確かにこの世界一のバカがそんなことできるわけがないな」

 

「あーもう、いいよ!! 僕は国士無双のバカだよ!!」

 

「何を言ってるんじゃ?」

 

「多分古今無双って言いたいんだろ、この宇宙一のバカは」

 

うう……、みんなして僕をバカ呼ばわりして……。

 

「それで、どうしてこんなことになってるんでしょうか?」

 

姫路さんが鉄人に尋ねる。僕としてもなんでこんなことになってるのか知りたいところだ。

 

「吉井の仕業でないとすると、おそらくはバグでも起きたのだろう」

 

バグか、あのいい加減な学園長のことだからそれぐらいやってもおかしくない。

 

「でもこの点数なら誰にも負けない、つまり優勝はもらったぁ!」

 

「待て、そんなことをこの俺が許すはずがないだろう。すぐに直すからまずは学園長のところまでついてこい」

 

「ええ!? そんなぁ。せっかく夢のような点数なのに」

 

「そうだ、この点数があれば俺たちでも簡単に優勝できる。鉄人に捕まるわけにはいかない、逃げるぞ明久!」

 

雄二がそう言うと同時に、僕たちは鉄人が入ってきたのと反対のドアへ向かって走り出した。

 

「逃がすかあ!」

 

するとものすごい速さで鉄人が回り込んでくる。こいつ、本当に人間か!?

鉄人はドアの前に仁王立ちしながら、迫る僕に向かって手を伸ばしてきた。

 

慌てて召喚獣を盾にしようと全面に出す。

そうするとまたも信じらないことが起きた。

 

「うお!?」

 

僕の召喚獣に触れた鉄人が吹っ飛んだのだ。

 

吹っ飛ばされた鉄人は、そのまま壁に頭を打って気絶した。

 

「ま、まさか鉄人までこんな簡単に……しかも僕は触れただけなのに」

 

「明久のいつもの点数ですらかなりの力を持つ召喚獣だ、そんだけ点数がありゃ、軽く死人が出るな……」

 

「西村先生、大丈夫でしょうか……」

 

心配した姫路さんが鉄人に駆け寄る。

 

「鉄人のことだ、そのぐらいで死んだりはしないだろ。とはいえそのままにしておくのもまずい。そういうわけだから戦死したやつらは鉄人を保健室まで運んできてくれ」

 

雄二が命令すると、戦死したFクラスの面々が複数人で気絶した鉄人を運んでいく。

かなりの人数がいるのにずいぶんと重そうだ。

 

『へへへ、いつも俺たちを苦しめてきた鉄人もこうなるとまったく怖くないな』

 

『そうだな、今日は一日、飯がうまそうだ』

 

「あいつら、本当に保健室に行くのかしら」

そんな彼らを見て美波が言った。

 

「少なくとも、保健室には連れて行かないだろうな。目を覚ましたら地獄の補習が待っているだろうし」

 

さらば鉄人、あんたのことは忘れない。一週間ぐらいは。

 

「それで、今Fクラスで生き残っているのは明久と、まだ召喚獣を出してなかった俺、秀吉、ムッツリーニ、島田に姫路か。ずいぶんと減ったな」

 

「もう少し早くアキに襲いかかってたら巻き込まれてたわ」

 

「…………危ないところだった」

 

いつか僕は本当に仲間に背後から襲われそうだよ……。

 

「そんじゃ、まずは明久を中心に固まって行動だ。それも明久の召喚獣を見られないようにしながらな」

 

「なんでそんなにこそこそと? 今の僕の召喚獣なら、全校生徒だって相手にできるぐらいなのに」

 

「バカ、それじゃあ目立ちすぎるだろ。また鉄人みたいに教師から咎められるに決まってる。だから、少しずつ敵を暗殺していくんだ」

 

「しかし、それでも完全に隠しきるのは無理ではないのか? 優勝しても、それでは学園長に失格にされてしまうかもしれんぞ」

 

秀吉の言うとおり、こんな点数を持った僕の召喚獣を隠し通すのは不可能だろう。

 

「大丈夫だ。あのババァがバグだなんて自分の失敗を認めると思うか? むしろおおっぴらにならない限り、事態を隠そうとするはずだ」

 

確かに雄二の言うとおり、学園長は以前にも僕らとそういった取引をしたことがある。

今回もそうやって事実の隠蔽と引き換えに僕がバグを利用したことは見逃してくれるだろう。

 

「さて、そうと決まれば出発だ。まずはEクラスから潰していくぞ」

 

こうして僕ら6人はこの召喚獣のサバイバルに乗り出した。

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