バカとテストと召喚獣 solitary breakers 作:KA2
姫路さんの防具をしっかり整えてから、僕らは再び狩りに赴いた。
「あれ、雄二。いつもと武器が違うね」
「これか? こいつは狩猟笛って言うんだ」
「それくらい知ってるよ!」
「じゃあ狩猟笛の特徴を言ってみな」
「ハンマーみたいに殴れる」
「それと?」
「それと……殴ると気持ちいい」
「試しに明久を殴ってみるか。きっとものすごく気持ちがいいぞ」
しょ、しょうがないじゃないか! 僕は大剣とかしか使ったことないんだから!
「やれやれ、狩猟笛っていうのは特定のコマンドで味方の能力を強化できるんだ」
「へえ~。面白そうだね。今度僕も使ってみようかな」
「お前はコマンドを覚えられないから無理だ」
「む……っ! そんなことは……」
無い、と言いかけたところで自分の自信のなさに気づく。
「ま、まあ確かに僕は味方をサポートするより、前に立って戦うタイプだからね」
そうだ。そのために僕は今回、双剣で来たんだから。
サポートは雄二に任せるか。
そこでモンスターがいるエリアに着くと、早速雄二が狩猟笛の音色を奏で始める。
するとしばらくして雄二、姫路さん、美波のキャラのステータスが向上した。
「って僕は!?」
「ああ、明久には効果が出ないように設定してるんだ」
「何その虐め!? というかそんな設定あったっけ!?」
「ちょっと時間が掛かったが、改造したのさ。お前はこんなもん無くても余裕だろ?」
えらくピンポイントな改造だけど、まさか僕に嫌がらせをするためにそこまでの労力を払ったんだろうか。
まあそれは置いといて、僕らはモンスターに攻撃を開始する。
僕のキャラは双剣で颯爽とモンスターに切りかかると、美波の振り上げた太刀にモンスターもろとも切り伏せられる。
まあ太刀は味方に攻撃が当たりやすい武器だから仕方ないか。
「なんでアキにダメージが入らないのよ!?」
違った、美波は敢えて僕のキャラを巻き込んだようだ。
「島田、残念ながらこのゲームは味方を切ってもダメージは入らないんだ」
「それは残念がる要素じゃないでしょ!?」
「ただし、爆弾を使えば味方にもダメージが入るぞ」
「わかったわ、アキを爆殺すればいいのね!」
「わかってないよ! 爆殺すべきなのはモンスターであって僕じゃないからね!?」
その後美波は、初めてやったとは思えないぐらい僕を巻き込みつつモンスターを攻撃していた。
しかし、そのままたいしたミスもないままモンスターの討伐は完了したのだった。
「ありがとうございました。たまにはこういうのもいいですね」
「そうね。ゲームでもアキを切れば少しは楽しめるしね」
二人がゲーム機を持ち主に返しながら感想を言う。
楽しんでもらえてなによりだ。美波の楽しみ方はどうかと思うけど。
その後、二人が傍を離れてからだモンスターから素材を剥ぎ取っていないことに気がついた。
早く剥ぎ取らないと、と思って倒したモンスターに近づこうとする僕の頭にモンスターの乱入を警告するアラームが鳴り響く。
雄二や秀吉、ムッツリーニも感じ取ったらしく、それぞれの画面を目を丸くして見ていた。
「バカな! このクエストには乱入なんてねえはずだぞ!」
「そうだよね……だとしたらこれは……」
僕らが感じ取った警告は実際音を聞いたわけじゃない。
僕の本能が察知した危機。
それは━━━━
「貴様ら、学校で堂々とゲームとはいい度胸だな!」
「出た! 新種の獣人モンスター、鉄人だ!」
僕らの目の前に現れたのは鉄人(激昂状態)だった。
「よし明久、お前が奴を討伐するんだ! 俺は狩猟笛(リコ-ダー)でサポートする!」
「…………死んだらベースキャンプ(補習室)まで運んでやる」
「それ僕だけが余計に怒られるよね!? くそ、こうなったら双剣(右手に箒、左手にモップ)でやってやる……!」
☆
「惨敗……だったね……」
「俺なんか武器がリコーダーだぞ、勝てるわけないだろうが」
鉄人の討伐に失敗した僕らはゲーム機を没収された挙句、夕飯を作る時間まで補習を受ける羽目になった。
補習室では、昼間召喚獣の訓練をサボったクラスメイトたちが補習を受けさせられている。
ここにいないFクラスのメンツは姫路さんと美波だけだ。
ということは……!
しばらく真面目に出された課題をこなしていく。
「今日はやけに真面目だな。この調子なら夕飯を作る時間に間に合うかもな」
僕ら四人は全員、特に雄二と僕はいつになく真面目に補習を受けていた。
その理由は簡単だ、僕らはどうしても夕飯を作るのに間に合わなければならないからだ。
「よし、終わったあ!」
終了と同時にクラスに向かってダッシュする。
雄二たちも終わったらしく、僕らは同時に教室に入った。
「しまった! もういなくなっているぞい!」
「やつらは家庭科室に移動した後か! 急いでそっちに向かうぞ!」
二人が教室にいないことを確認した後、僕らはすぐに家庭科室へ向かう。
間に合えばいいけど……
家庭科室の前に着くと、中から声が聞こえてくる。
「カレーのルーを作るのに、唐辛子じゃなくてワサビを入れたらおいしいでしょうか?」
すぐさまドアを開けて四人とも中へ飛び入る。
「「「ちょっとまったぁぁあああ!!」」」
姫路さんがワサビをカレーのルー(と思われる何か)に丸ごと投入しようとしているのを何とか僕らはうまく説得したのだった。