バカとテストと召喚獣 solitary breakers 作:KA2
Fクラスを出ようとすると、まだ召喚獣を出していなかったみんなの召喚獣が、勝手に召喚された。
「どうやらこれで、今まで召喚獣を出してなかった奴らも強制参加させられたみたいだな」
召喚獣を出さなければ、何もしなくても生き残れる。学園長はそんなのを許すつもりはないようだ。
そしてEクラスに向かうと、ちょうど彼らと廊下で鉢合わせた。
「俺と姫路が前線で戦う。他のやつらは明久の召喚獣をカバーしろ!」
雄二の命令で秀吉、ムッツリーニ、美波が僕の召喚獣の周りを取り囲んだ。
これで僕の点数は見えないはずだ。
「てめえらなんか、俺ひとりでも十分だぜ!」
雄二が単身、敵の中に突っ込んでいく。今の雄二の点数なら、Eクラス相手に数が多くても戦えるだろう。
それにいつもは試召戦争で、代表という立場からこういった乱戦には参加できなかったんだから、一度ぐらい暴れてみたかったのかもしれない。
「張り切ってますね、坂本君! 私も負けません!」
それに加えて姫路さんも、圧倒的な点数でEクラスを蹴散らしていく。
僕も他の三人の陰に隠れながら、敵を切り伏せていった。
そうしてそのまま、Eクラスは全滅させることができた。
「次はDクラスだ。行くぞ!」
今度はDクラスに向かうと、どうやらまだ作戦会議を終えていないらしく、全員教室の中にいた。
「今度は全員で突撃して一気に叩くぞ。ついて来い!」
雄二に続いてみんなでDクラスに突入する。
急に攻められたDクラスの面々は混乱している、いまなら僕の召喚獣を戦わせても平気そうだ。
取り敢えず視界に入った敵を、片っ端から斬り付けていく。いつもとは違ってみんな一撃で倒されていくので、かなり気持ちがいい。
その調子で気がつけばDクラスも全滅していた。
「よし。全員無事だな? おそらく今の間に他のクラスは、作戦会議を終えて行動を開始しているだろう。まずは状況を把握するぞ」
「あれを観て、何か表示されているみたい」
美波が廊下に設置されているディスプレイを指差して言う。
いつの間にかに備え付けられていた様だ。
そこにはたくさんの生徒の名前が表示されていた。
「こいつはどうやら、生き残ってる生徒が表示されているみたいだな」
「Bクラスが随分と減っているみたいですね。それと、Aクラスも少し」
「おそらく、AクラスとBクラスがやりあってるんだろう。しかしまだAクラスは十分すぎるほど戦力を残しているみたいだ。翔子め、本気ってわけか……」
霧島さんが、全力で温泉旅行チケットを狙っていることを確認して慄く雄二。相変わらず僕にはそんな雄二が羨ましくて仕方ないというのに。
ディスプレイの表示を見ると、残っていたBクラスの生徒の名前も、少しずつ消えていった。
「この調子なら、AクラスがBクラスを全滅させるまではもう少し掛かるだろう。その間に俺たちはCクラスを叩くか。ムッツリーニ、偵察を頼む。俺たちは一度教室に戻る」
「…………了解」
Cクラスの様子を探るのはムッツリーニに任せ、僕たちはFクラスへ戻った。
すると、ものの数分で帰ってくる。
「…………Cクラスは複数の部隊に分かれて移動している」
「なるほど、クラスの生存率を上げつつ、単独で行動しているやつを叩く作戦か」
「どうする雄二? 各個撃破しに行く?」
「いや、それじゃあ効率が悪い、AクラスとBクラスの戦いが終わって面倒なことになる。だから俺たちがやつらを明久のところへおびき寄せて叩く」
「なるほどのう。それなら明久を動かさないでおけば効率よく殲滅させられるのじゃな」
「そうだ。だが姫路は明久と一緒にいてくれ、それでもし明久が敵を討ち漏らしたら、そのときは頼む。場所は体育館がいいな、あそこなら誘導しやすいはずだ」
姫路さんの体力では、体育館までCクラスの人たちをおびき寄せるのは無理だろう。雄二の人選は妥当なところだ。
「わかりました! 行きましょう、明久君!」
「うん、頼んだよみんな!」
それぞれ別々にCクラスを誘導しに向かったみんなを送った後、僕と姫路さんも体育館へ向かった。
☆
「さてと、あとはここでみんながCクラスを連れてくるのを待つだけだね。それを僕が倒せばあとはAクラスだけだ」
僕がそう言ってみせると、姫路さんは軽く笑ってみせた。
「何がおかしいの、姫路さん?」
「いえ、なんだか珍しくて。いつもは私が頼られてるのに、今日はみんな明久君を頼ってます」
「確かにそうだね。試召戦争でも僕は部隊を任されることはあっても、今みたいに主力として扱われることはないもんね」
「今日はその力で、私のことも守ってくださいね」
「もちろんだよ!」
そうだ、今日の僕には姫路さんを正面から守れるぐらいの力がある。
僕がこんなふうに姫路さんを守れる日が来るなんて、思ってもみなかった。
「……本当は守ってもらうんじゃなくて、みんなと一緒に戦いたいんですけどね」
姫路さんが小さい声で言った台詞は、体育館の床を鳴らす大きな音にかき消される。
「連れて来たぞ! 明久!」
一番最初にCクラスの分隊を引き連れてきたのは雄二だ。
「あいよっと!」
雄二の後ろに続く敵の召喚獣を、目にも留まらぬ速さで切り伏せていく。
これほど点数があると、パワーだけでなくスピードも凄まじい。召喚獣の扱いに慣れている僕ですら、その制御が難しいほどだ。
『な、なんだ! 何が起こってるんだ!』
わけもわからないうちに全滅させられたCクラスの生徒達が、状況を読み込めず困惑している。
そんな彼らを補習室に連れて行くため、何人かの教師が駆けつけていた。
「ところでお前ら、西村先生を知らないか?」
体育科の大島先生が僕らに尋ねてくる。
この様子だとアイツら、やっぱり保健室には行ってないな。
「それだったら須川たちが複数人で取り囲んで連れて行ったぞ。多分川にでも流しに行ったんじゃないか?」
雄二が答える。確かに鉄人は彼らが連れて行った。川に流しに行ったのかどうかは知らないけど。
「そうか、まったくあいつらめ。今度は西村先生と二人でしごいてやるとするか」
可哀想に、鉄人と大島先生の二人にしごかれるなんて、想像しただけで頭が痛くなってくる。
教師陣が戦死者を連れて行くと、今度は雄二が駆け出していく。
「そんじゃもういっちょ行ってくる。まだCクラスは結構居そうだしな」
そう言い残して。そしてまた姫路さんと二人で誰かが来るのを待つ。
するとすぐに足音が聞こえてきた。
……でもなんだがさっきとくらべて、随分音が小さいような。
「見つけたよ、吉井君」
「アキちゃん、今日は補習室で撮影会だよ!」
入ってきたのはFクラスの仲間ではなく、なんと久保君と玉野さんだった。
「今日は君に補習室で、つきっきりで勉強を教えてあげるよ。だからおとなしくするんだ」
どうしてだろう。勉強を教えてくれるというのは、かなり親切なんだと思うけど、何故か震えが止まらない。
「さて、吉井君を連れ出すのにはまず……」
「瑞希ちゃんをなんとかしないとね!」
そう言うと二人の召喚獣が一斉に姫路さんに襲い掛かる。
「悪いね、でもこれは吉井君のためなんだ!」
「きゃ、きゃあああ! 助けてください、明久君!」
むしろ僕を助けてください。
「落ち着いて瑞希ちゃん。一緒にアキちゃんの撮影会をやろうよ!」
「え? うーん……。それもいいかも知れませんね」
やばい。裏切られそうだ。
「待って姫路さん! 今日は設備向上のための絶好の機会なんだよ? こんなことで負けていいわけないじゃないか!」
そう言って僕の召喚獣を切り込ませる。
「そ、そうでした……。あやうくアキちゃんの魅力に囚われて、本来の目的を忘れるところでした!」
本当に危なかった。撮影会なんてさせられるなら、きっと僕は姫路さん相手でも徹底抗戦していただろう。
しかし今ので、僕は二人の前に召喚獣を出してしまった。
「し、しまった!」
『総合科目 Aクラス 久保利光 5143点&Dクラス 玉野美紀 1032点』
VS
『総合科目 Fクラス 姫路瑞希 5170点&Fクラス 吉井明久 895点』
「あ、あれ?」
さっきまでものすごい点数だったのに、いつの間にか普通の点数に戻っている。
「明久君、点数が!」
学園長がバグを発見して修正したのだろうか?
よりによってこんな時に……
「とにかく今はやるしかないよ! 久保君をお願い!」
久保君を点数で上回る姫路さんに任せ、僕は玉野さんと対峙する。
点差は100点以上あるけど、僕なら勝てるはず。
何よりこの勝負……絶対に負けたくない!