バカとテストと召喚獣 solitary breakers 作:KA2
僕は今、姫路さんと肩を並べて久保君、玉野さんと対峙している。
しかし、何故この二人はここへ来たのだろうか。
AクラスはBクラスと戦っているんじゃなかったのか?
そういえば玉野さんは、さっきDクラスと戦った時にいなかったような……。
「アキちゃんのためにも、手加減しないよ吉井君!」
玉野さんが本人ごと突っ込んできそうな勢いで、召喚獣を突撃させてきた。
「そんな単純な攻撃!」
さっと横っ飛びでかわし、背後を見せた敵に斬りかかる。
するとそのまま剣を後方に振りながら、こちらへ向き直る。
でも僕からしたらそれでもまだ甘い。
「よっと!」
攻撃を一瞬間を置いて避け、突きを繰り出す。手応えがあった、が攻撃をかわしたことで急所までは捉えられていない。
「く、しまった!」
でも今ので相手の点数はかなり削られただろう。
これならもう苦労せずに……
「明久君! そっちに行きました!」
姫路さんの声に反応して咄嗟に回避行動へ移る。
僕の召喚獣が立っていたところには、久保君の召喚獣の鎌が突き刺さっていた。
危なかった、久保君ほどの点数の攻撃を受けたら一撃で戦死するに違いない。
「これ以上明久君に手出しはさせません!」
鎌を引き抜いて僕を狙おうとしてくる久保君の召喚獣に、姫路さんの召喚獣が斬りかかる。
やはり今は久保君を姫路さんに任せて、玉野さんを早く倒そう。
再び僕の方に向かってくる玉野さんの召喚獣の攻撃をいなす。
点数が下がってるぶん、受け流すのは容易い。
「今度こそ止めだ!」
闇雲に斬りかかってくる相手の腕を払い、木刀を喉元に突き立てた。
これで玉野さんは撃破だ。あとは久保君に集中しよう。
見ると姫路さんと久保君の召喚獣は、一進一退の攻防を繰り返しお互いに少しずつ消耗していた。
「加勢するよ姫路さん!」
二人の召喚獣がつばぜり合いをしているところで、僕が敵に切りかかる。
「くっ!」
『 Fクラス 姫路瑞希 3410点VS Aクラス 久保利光 2980点』
今の僕の一撃も手伝って、二人の点差はかなり開いてきた。
このままいけば久保君を倒せる!
そんな時、また複数の足音が聞こえてきた。
今度こそFクラスの誰かだろうか?もしそうだとしたら、今ここに来られるのは非常にまずい。
今の僕の点数では本来の作戦を遂行できない。
だけど、入ってきたのはFクラスの仲間ではなかった。
「Bクラス……だって!?」
最悪だ。仲間が来るどころか敵であるBクラスの人が四人もやってきた。
しかし、どうして?
Aクラスに攻められているとしたら、こんな人数を割く事なんてできないはず。
「苦戦しているみたいね? 久保君、加勢してあげるわ」
四人のうちの一人がそう言うと、全員僕と姫路さんに向かって来る。
なんだ!? どういうことなんだ!
共通の目的がありそうな久保君と玉野さんはともかく、どうしてBクラスが久保君に加勢するんだ!
「あ、明久君! これじゃあ……」
「くそっ……」
☆
再びCクラスの奴らを誘い出すため、俺は体育館を後にした。
この調子でCクラスを全滅させれば、残る敵はAクラスだ。
明久の今の点数なら、翔子ですら一瞬で倒せる。
だが、もしかするとババァがバグを修正するという可能性もある。
そうなるとまた違う作戦を考えないとな。
翔子を倒す方法を思案しながら駆け回っていると、ふと違和感を感じる。
Cクラスの奴らに出会わない━━━
たまたま、だろうか?
AクラスとBクラスの周辺は、戦闘中だと考えて避けてはいるが、それ以外のところはかなり回ったはず……。
だというのにまだ、最初に明久たちのところへ連れて行ったやつら以外誰とも出会わないのはどういうことだ?
ふと廊下の片隅に目をやると、ここにも小型のディスプレイが設置されている。
やはり今回のイベントのために、校舎中に置いてあるんだろう。
それを覗き込んでみる。
「なんだ、これは……」
Cクラスが全滅している!
まさかもう全部隊を誘導して撃破したのか?
いや、それはまずありえない。
奴らは4、5人の部隊で行動していたから、少なくとも一人で二組は誘導する計算だ。
まだそれほど往復できる時間は経っていない。
それだけじゃない! Bクラスの人数が先ほど見た時から変わっていなかった。
これはまさか……
「……雄二。覚悟して」
「翔子……!」
突然振り下ろされた刀を、なんとか受け止めて相手に向き直る。
「Bクラスと手を組んだか……!」
「……私の目的は温泉旅行チケットだけだから」
やられた! コイツはこのサバイバルの優勝を材料に、Bクラスの何人かに協力を取り付けたんだろう。
Aクラスは負けても設備を奪われるわけではないし、Bクラスからすればチケット一枚でAクラスと同等の設備が手に入るならこれを飲まないわけがない。
おかげでもう少し長引くと思っていたAクラスとBクラスの戦いが、こんなにも早く収束しちまった!
「やられてたまるか!」
俺は翔子に背を向けて走り出した。
幸い今回のルールは敵前逃亡が許される。放課後まで逃げ切ればまだどうにでもなるはずだ。
「……逃がさない」
翔子が追いかけてくると同時に、様々な方向からAクラスやBクラスの生徒が仕掛けてくる。
それをかわしながら逃げていると、島田が囲まれているのが見えた。
「み、美春! なんであんたとBクラスが一緒にいるのよ!」
「私とお姉さまの愛のため、力を貸してくださったんですわ! さあ、補習室で私たちの愛を育みましょう!」
清水まで……。いや、あいつが協力しているのは多分成り行きだろうが、島田はもうだめか……!
「さてムッツリーニ君、補習室で保健体育の実技をやろうか!」
「…………そんな言葉に惑わされるものか(ドバドバドバ)」
「ムッツリーニよ、鼻血を大量に流しながら言っても、まったく説得力がないぞ!?」
「あきらめなさい秀吉。あなたも補習室で真面目に勉強することね」
こちらではムッツリーニと秀吉が工藤愛子や木下優子を始めとするAクラスに囲まれている。
この様子だと明久と姫路も同じように……。
とにかく今囲まれてる三人がやられたら、俺の追っ手はさらに増えるだろう。
放課後までまだかなり時間がある。とてもじゃないが逃げきれない。
こうなったら明久を頼るしかないか……。
俺は最後の望みを掛けて体育館へ向かった。
☆
右腕に鋭い痛みが走る。
「明久君!」
姫路さんの召喚獣を守るため、敵の攻撃を受け流そうとしたが、流石に五人の攻撃すべてを防ぎ切ることなんてできない。
さっきから僕も姫路さんも少しづつ点数を削られている。
逃げ出そうにも、入口側にいるのは相手だ。とても避けては通れない。
「きゃあ!」
また姫路さんの召喚獣が敵の攻撃を受ける。
くっ、またさっきみたいな点数になれれば……!
「健気なもんだな! 観察処分者の吉井、自分の体を張ってまでお姫様を守ろうとしてんだな!」
「やめたまえ。自らを犠牲にして誰かを守ろうとするのは、立派な行いだ。馬鹿にするべきではない。だけどこれも勝負、容赦はしないよ!」
Bクラスの生徒の言葉を諌める久保君だが、手を抜くつもりは一切なさそうだ。
一瞬だけ…… 一瞬だけでもいいんだ。 さっきの点数に戻ってくれれば。
たとえ偶然でも、なんでもいいから……!
「あっ……!」
久保君の重い一撃をなんとか受け止めるも、その隙に姫路さんが囲まれる。
さ、させるか!
「うおおおおおおお!」
「気合だけはあるみたいだな、でもそんなんじゃ点数は上がら……」
『総合科目 Fクラス 吉井明久 99999999点』
「え?」
それはたった一瞬の表示の変化だった。
でもそのときの一撃は姫路さん以外の召喚獣を消し飛ばしていた。
「な、何が起こったんだよ!?」
『Fクラス 吉井明久 26点&Fクラス 姫路瑞希 242点
vs
Aクラス 久保利光 戦死 Bクラス岩下律子 戦死 菊入真由美 戦死 井川健吾 戦死 小野明 戦死』
点数では戦死寸前の僕の召喚獣だが、それを前にして敵は全員戦死している。
彼らは状況を飲み込めないまま、教師たちに連行されていった。
「や、やったんですね! 明久君!」
「う、うん。やったよ姫路さん!」
なんだかバグで勝ったので素直に喜べないような気もするけど、とにかく姫路さんを守ることができたんだ。
あの一瞬を授けてくれた神様に感謝しよう。
しかし、こうなってくるともう作戦なんて遂行できる状態じゃない。
外の様子も気になるので、僕と姫路さんは体育館の外へ出た。
そこには、ちょうど戻ってくる雄二の姿があった。
……大量の召喚獣に追われながら。
「無事だったか、明久!」
「雄二! これはいったいどういうこと!」
「翔子がBクラスと手を結んでやがったんだ。島田とムッツリーニと秀吉もやられた!」
「な、なんだって!」
今回も霧島さんに出し抜かれたのか。くそう。
「みんなの、仇だぁああ!」
召喚獣を突っ込ませる。もう一度先ほどの奇跡が起こると信じて。
だけどそんな奇跡は二度も起こらず、非力な僕の召喚獣は霧島さんの召喚獣の刀で切り伏せられた。