バカとテストと召喚獣 solitary breakers 作:KA2
しかも予想以上に長くなって、本題からかなり外れているような……
第五話「俺と翔子と温泉旅行1」
体が微かな揺れを感じて目が覚める。
見慣れない窓と見慣れない景色、それも絶え間なく動いている。
いや、動いているのはこちらのほうみたいだ。
これは小型のシャトルバスだろうか。
「……雄二、起きた?」
すぐそばにいたのは、見慣れた幼馴染の姿。
「翔子、何故俺が目を覚ましたらバスに乗ってるのか、説明してもらおうか」
「……新婚旅行」
「ちょっと待て! 俺たちはいつ結婚したんだ!?」
「……私たちは事実上結婚してるようなもの」
「その認識について言いたいことは山ほどあるが、とりあえずこのバスはなんなのか教えてくれ」
「……チケット」
「チケット?」
そう言って翔子が見せたのは、この前の召喚獣サバイバルの優勝賞品になっていた、如月グループプロデュースの温泉旅行チケットだった。
「なぜお前がそれを持ってる……!」
「……先生にもらった」
「どの先生だ? たとえ教師でも関係ない。そいつの頭をかち割ってやる」
「……西村先生に、この前のテストの成績が一番だからって」
「ちくしょう! よりによって復讐できそうも無い奴じゃねえか!」
「……恩を仇で返したらダメ」
鉄人め、余計なことをしやがって。
しかもこの温泉旅行はあの如月グループ主催のものだ。
如月ハイランドで俺たち二人を無理やり結婚に追い込もうとした、あの如月グループ。
前に思いっきり失敗した分、今度こそ成功させようと躍起になってくるだろう。
こうなったら……
「……雄二、高速道路に飛び出すのは危ない」
「な!? なんで俺のしようとしてることが……」
「……雄二の考えてることはわかる」
普通、高速道路に飛び出すやつがいるなんて考えないだろ……。
しかし、これじゃ逃亡も難しいか。
こうなりゃ、行くしかないのか。
「ところで、俺たちはどこへ向かってるんだ?」
「……如月温泉」
如月温泉っていうと、如月グループの本社の近くじゃねえか!
今回はそうとう覚悟しておいたほうがよさそうだな。
☆
シャトルバスで移動しながら少し経つと、駐車場と思われる所で止まった。
「はイ、到着しましタ。それでハ、現地のガイドさんが来てくださったのデ、ついて行ったくだサイ」
今まで喋らなかった運転手が言う。
ん? 待てよ━━━この声どこかで……。
「て、てめえはあの時の似非外国人!」
「なんのことデースか? ワタシは正真正銘の外国人デース」
「まだその設定を貫いてるのか!?」
コイツがいるとなると、まさか……。
いや、流石にこんなところまでは……。
「ようこそ如月へ! まずは如月自然公園をご案内させていただきます」
バスを降りて早速、女性と思われる声が聞こえてくる。この旅行のガイドを務めるであろう人物のものだ。
だが……
「なんでガイドが着ぐるみを着ているんだ……?」
その人物は如月ハイランドでも見た、例のキツネの着ぐるみを着ていた。
「如月グループがプロデュースする旅行ですから、そのマスコットキャラがご案内させていただくのは当然です」
「だが、目立つだろう……?」
どう考えても、こんな格好で歩いていたら目立つ。
その上、そんな姿でツアーガイドをやっていたら、グループ自体が変な目で見られるとは思わないのだろうか?
そう言っても、ガイドは頑なに着ぐるみを脱ごうとしなかった。
何か理由があるのか?
「それでハ、ワタシはここでおまチしておりマすので」
「おう」
「……行ってくる」
似非外国人を残して、俺たちはガイドに着いて行く。
「各員、ロイヤルウエディングシフトの準備は出来ているな? 今度こそ逃すな」
後ろの方から聞こえてきた言葉は、予想していたことなのでさほど驚かなかった。
☆
ガイドが案内する公園内は、名前のとおり自然が溢れ、吹き抜ける風が非常に心地よかった。
少し歩くと、ビニールハウスのようなものが見えてくる。
「こちらが、当公園自慢の植物園でございます」
それは自然保護を目的とした設備のようで、中には色んな植物が植えられていた。
「しかし、本当にたくさんあるな」
それぞれのプレートに書かれた名前を見てみる。
リンドウ、クロユリ、メハジキ、イラクサ、クワ、ホトトギス、これらが左から順に並んでいる。ここにあるのはこんなところか。
「……雄二はどれが良いと思う?」
「俺か? 俺はこの中ではホトトギスって言うの良いと思うな」
「……嬉しい」
「ちょっと待て!? 俺は一番綺麗だと思った花を選んだだけなのに、なんでお前が喜ぶんだ!?」
「……雄二は花言葉、知ってる?」
「花言葉? いや、そんなものには興味がないからな」
「……ここにある植物の花言葉は左から順に、
「随分と物騒な花言葉ばかりだなオイ!?」
「……ちなみに雄二が選んだホトトギスは、永遠にあなたのもの」
「なんでこの中で、よりによってそんなものを選んじまったんだ畜生!」
「……ちなみに私はリンドウが好き」
「お前本当は俺のこと嫌いだろ!?」
そんなことをやっていると、ガイドがそろそろ時間だからと、出発を促してきた。
バスに戻るための道を歩いていると、ポツンと一つだけお祭りの屋台のようなものが置いてある。
……あきらかに怪しい。
「…………らっしゃい」
近づいてみると、それを経営している人物は、あるムッツリなクラスメイトに似ていた。
「…………タピオカはいかが?」
「そんなことよりムッツリーニ、さっき姫路が向こうの茂みで着ぐるみに着替えてたぞ」
「…………!?」
そいつは俺の言葉を聞くと、すぐさま俺が指差した方向へカメラを持って駆けていった。
「やっぱりムッツリーニだった(ブス!!)かって、目が、目がぁああああ!」
「……覗きは許さない」
「い、今のはムッツリーニだってことを確認するための嘘だ!」
「……それでも予防のため」
理不尽だ……。
しかし、あいつの反応からすると姫路も来ているらしい。
そうなると、秀吉や島田もいるかもしれないし、明久がいるのは間違いないだろう。
あの野郎、今度こそ見つけ出してしばいてやる。