バカとテストと召喚獣 solitary breakers 作:KA2
「…………タピオカはいかが?」
ムッツリーニがいつの間にか帰ってきて、飲み物を勧めてくる。
心なしか残念そうな顔をしながら。
「しかし、ムッツリーニがこんな役に回されるとはな」
「…………俺はムッツリーニという奴じゃない」
「いや、もうバレバレだからな……?」
とりあえず喉も乾いたし、買ってみるか。
タピオカと言っても、結構種類があるみたいだ。
「……どれがオススメ?」
「…………カップル用カフェラテ、坂本雄二の写真(際どさMAX)付き」
「お前もう最初から正体隠す気無いだろう!? つーかなんで俺の写真なんて持ってやがるんだ!」
「……もらう」
「…………まいど。ちなみに+50円のトッピングで媚薬か睡眠薬を付けられる」
「……どっちにしようか迷う」
「迷うな! そもそもそんなトッピングを用意するんじゃねえ!」
それでも翔子が、カップル用とやらを買うと言って聞かないので、薬を絶対入れないと約束させてそれを買った。
「…………おまち」
「……なんだ……これは」
出てきたのは大きめのカップ、それに先端が尖っているストローを突き刺すタイプだ。
そしてそのストローは片側が二つに分かれている。
「…………カップル用ストロー」
「このストロー、飲むほうじゃなくて突き刺すほうが二つに分かれているんだが!?」
「……きっと素直になれないカップルのための配慮」
「そうだとしても、突き刺す方を二つにする意味はあるのか……?」
こうなったら無理やり、二人で飲むためのストローとして使うしかない。
尖ってない方の先端を、なんとかしてカップのなかにねじ込む。
「……雄二は恥ずかしがり屋」
「そ、そんなんじゃねえよ。俺は衛生面を考慮しただけだ!」
「……大丈夫、歯はちゃんと磨いてるし、雄二の歯も磨いてあげてる」
「磨いてもらってないからな!?」
「……とにかく心配は要らない」
そう言うと翔子は、二つに分かれた両方に口をつけて飲み始めた。
「……雄二にも」
「お、俺は別に……」
「……飲まないとこのストローを目に突き刺す」
「ありがたく頂戴させていただきます」
流石に目の方が大事だと思った俺は、一気にそのタピオカを飲み干した。
「それでは本当に時間なので、バスに向かいましょう」
ガイドに促されて、俺たちはまた例のシャトルバスへ戻る。
今の寄り道も計画のうちだろうが、今度は何を仕掛けてくるんだろうか。
俺と翔子が乗るバスに、ガイドも同乗しようとするが、着ぐるみのせいでドアでつかえてなかなか入れずにいる。
特に頭の部分が大きく、それを外せばなんとか通れそうではあった。
「その頭のが邪魔なんだろ? 一旦外せばいいんじゃないか?」
「い、いえ、大丈夫です。入れます」
やはり頑なに外そうとしない。顔を見せたくないのだろうか。
そうなるとコイツは━━━
「手伝ってやるよ」
「あ……どうも」
「よっと」
「あ!」
つっかえている頭を引き抜いてやると、予想通りその下にはクラスメイトであり、演劇部のホ-プである木下秀吉の姿があった。
「声色が変わってて気づかなかったが、秀吉だったか」
「秀吉? 私はツアーガイドの森上秀子です」
どうやら完全に演劇モードに入っているようだ。
こうなるとコイツも役を貫き通すつもりだろう。
「そんな役をやってると、余計明久達から同性として認識されなくなるぞ」
「も、問題ありません。私は女ですから」
今の秀吉の発言を携帯に録音する。
これを明久たちに聞かせたら、面白いことになりそうだ。
「とにかく、そろそろ次の目的地に着きますよ」
秀吉がそう言って少しすると、また駐車場にバスが停車した。
まず、秀吉が降りて着ぐるみの頭をかぶり直し、俺と翔子はそれについて行く。
ここは商店街らしく、古風な商店がいくつも建ち並んでいた。
その中に一つに秀吉が俺たちを引き連れていくと、そこにも見知った姿を見つける。
「いらっしゃませ! 旅のお土産に、ストラップなんかどうですか?」
そう声をかけてきた店員は、どう見ても成績優秀なクラスメイトだった。
「行くぞ、翔子」
「ま、待ってください! このストラップは持ってるだけで色んな効果があるんですよ! 例えば……恋愛に関する効果とか!」
「……全部もらう」
「待て翔子! 流石に全部はないだろう!?」
翔子が食いついてしまった。
仕方ない、少し見てくか。
「……これはどんな効果?」
「これはですね……持ってるだけで恋人が従順になるストラップです」
「なんでそんな恐ろしいストラップがあるんだよ!」
「……これは?」
「これは輪っかの部分で、恋人の腕を拘束するためのストラップです」
「それどう見ても手錠なんだが!? 恋のストラップとか、そんなロマンチックなものには全然見えないからな!?」
「それとこれは……お料理が上手になるストラップです!」
「……!!」
それを聞いた瞬間、俺の本能が自身に告げていた。
これ以上ここに留まるのは命に関わると。
「ちなみにこちらにあるのが、そのストラップの効果で作った……って、あれ?」
姫路の言葉を最後まで聞かないうちに、俺は翔子の手を取って走り出す。
秀吉も危機を感じ取っていたのか、俺たちのあとを着ぐるみで必死に追いかけてきていた。
するとまた、俺たちの視界に見知った人間が入る。
先ほどもいたムッツリーニと、島田と、そして━━━
「やあやあお二人さん、人力車体験をしていきませんか!」
ようやく現れやがったか……。
「よお明久、まさかこんなところまで出向いてくるとはな」
「人違いです」
相変わらず否定するが、それなら俺にも考えがある。
「乗せてもらうことにしようか、いいよな翔子」
「……うん」
「分かりました、どこまで行きますか?」
「そうだな……取り敢えず北海道まで頼む」
「んな!? 僕らを凍死させるつもり!?」
「たどり着くつもりなのか!?」
「いくらなんでもそれは無理ね……」
「…………もうちょっと短くして欲しい」
さてと、冗談はともかく、せっかく乗せてくれるというのだから乗ってみるか。
と、そう思ったが、よく見ると座席は狭く、一人で座るのが精一杯のように思えた。
「これじゃ二人で乗るのは無理だな」
「……大丈夫、私は雄二の上に座るから」
「俺の膝の上に座るのか? ……まあ仕方ないか」
「……ちょっと大変だろうけど頑張って」
「おい待て翔子、なんでさっきのストラップ型手錠で俺の手足を拘束する。そもそもなんで持ってるんだ」
「……実は買ってた。これで雄二にイスになってもらう」
そう言うと翔子は俺に座席部分で肘と膝を付けさせて、その上に座った。
「それじゃあ出発します! 如月の美しい景色をお楽しみください」
「楽しめるか!! この体制じゃなんにも見えねえよ!」
くそ、明久め。これ以上好きにはさせねえぞ。