魔法科高校の流転者達-夢と現を見定める破壊神-   作:黒乃 柳

7 / 10
遅ればせ乍新年明けまして御目出度う御座います、年末年始は忙しく執筆が遅れましたが仕事中やプライベート時もネタを考えておりました(笑)

さてさて、今回は前回の宣言通り黒瀬明美ちゃんの話に成りますが何方かといえば毎話同じみ伏線張りが挟みまする(苦笑)


現世(うつしよ)と夢で

其々の時を過ごし朝日が昇る頃に月へと赴いていた黒乃 勇気は何処か思い詰めた表情を隠し切れず幼馴染二人と昨日の一件もあり暫く登下校を共に為る事に成った従姉に気遣われ乍第一高へ向かうべくキャビネットに乗車していた

 

[兄様…大丈夫?]

 

[浮かない顔だな…何かあったか?]

 

何時もなら笑顔で応える処であるが相当余裕が無いのか上の空で大丈夫…と返すだけである。三人共長い付き合いであるが故に個人的にでは無く黒乃の家絡みの事案で悩んでいるのでは無いか?と確信に近い予想を立てるのみで深く追求はしない、傍目から見たら軽薄な対応に映るかもしれないが"今は"手を貸すタイミングでは無い事も付き合いの長さから心得ているからだ。

 

だが…此処数ヶ月の内に知り合った人物に対してはそんな事は計り知る事は出来無い、校門前に四人…正確には明美個人を対象に待っていた少年と彼に倣う様に佇む少女には。

 

[お早う、明美さん…勇気兄さん達も]

 

[昨日は大変みたいだったね…勇気さん…?大丈夫?]

 

紋入りの制服に袖を通す二人に気後れする事も無く談笑している従妹に内心杞憂であったか…と苦笑を漏らす勇気に対し話し掛けてくる少女、冬月 燗(ふゆつき らん)…彼女達の家と黒瀬家は何かと縁が有り勇気自身も燗の姉にあたる人物に淡い恋心を抱いた時期もあったが訳有って失恋していた。

 

故に彼女自身に非が有る訳では無いが勇気は冬月 燗と云う人物が苦手だ…仕草一つ取っても姉に似ている彼女が、好きだと言いつつ自分の弟と恋に落ちた女性を思い出させる彼女が。——尤も彼女の身を案じて身を引いた勇気にも非はあるのだが語れば長くなる為此の場では割愛する…己が身を案じていた彼女に対し勇気は[うん、大丈夫だよ。心配してくれて有難う。]

 

と、社交辞令と受け取り微笑を浮かべ乍返す。彼は自分の事になると比較的冷静に対応する為燗と彼女の姉とを混合する事無く実に"完璧な微笑み"を浮かべていた

 

———

 

[……]

 

[……そっか、同じ教室みたいだし一緒に行こ…?]

 

[目的地は同じだから一緒も何も無いでしょ…行こう、時間の無駄だ…]

 

 

明らかに無関心…否、俺や燗からしたら必死に自分の感情を理性で殺そうとしている勇気兄さんが痛々しく感じる…無理も無いか、兄さんからしたら俺も燗も"裏切り者の身内の一人"でしか無いのだから…数ヶ月前に知り合った頃の…喩え誰が死のうが自分や周りに不利益が無ければ見捨てる…彼の頃の兄さんに戻ってしまった彼の人の後ろ姿を見送り乍項垂れていたのを見兼ねたのか明美さんが裾を引っ張っている

 

[…御免なさい…兄さん…今、大変みたいだから…]

 

[否…俺こそ悪い…、そうだよな…真護(まこ)さんが此処に居ないのも…明美さんが二科生なのも俺と恋が人質にさえ成ってなければ…]

 

三ヶ月前のとある事件を思い出し罪悪感で心が染まるのを感じる…彼の事件で将来有望と迄称された明美さんも、明美さんの双子の妹である真護さんも魔法師としての才を潰された様なものなのだから。

 

[…其れは違う…黒乃家も其れに連なる黒瀬家も…昔からこう…寧ろ巻き込んで御免なさい…。]

 

あんな事が有ったのに逆に俺達に謝罪する明美さんの優しさに安らぎと保護欲が湧いてしまう…校門前である事すら忘れ俺は唯衝動的に彼女を壁際に追い詰め壁に腕を付き耳元に唇を近付ける、今、この時に伝えるべきだと思うから。

 

[…君だけは…俺が護るから…冬月の名に…否、俺自身に誓う…俺は——。]

 

———

 

眼の前で起きた事に理解が及ばない…ボク自身に起きた事なのに何処か夢の中でボク自身を見ている様な、うん…多分そう、じゃなきゃ恥ずかしい…。

 

[その…あり、がと…でも今は…恥ずかしい…。]

 

…上級生かな…風紀委員の腕章を付けたショートボブの女の人が此方に近付いてくる、如何しよ…すっごく恥ずかしい…!

 

[ほら、其処!新入生だな?もっと分別を持て…ま、私もそうだッたから余りとやかくは言わんが…往来の場では分別を持てよ?もうそろそろホームルームが始まるぞ]

 

[ッ、す、すみません!明美さんも御免…返事…何時迄も待ってるよ!]

 

[やれやれ…、黒瀬明美…だね?後で君の従兄の黒乃勇気に放課後生徒会室に来る様伝えておいてくれ、私よりも君の方が適役だからね。]

 

走り去る廉君の背を見送り乍気恥ずかしさを隠す様にボクもE組に向かおうとするが風紀委員の先輩に呼び止められてしまう…昨日の件かな…取り敢えず小さく頷いて了承の意を表した後に自分のクラスへと向かう。——後ろから聞こえてくる呟きに振り返る事無く。

 

[…然し、真由美にも困ったものだ…今年に限って生徒推薦枠を一名増加とは…彼の能力を其れ程迄に買っているのだろうが…]

 

———

 

[教室の窓から見ていたけど後でお仕置き…かな、まァ既に注意を受けていたみたいだから個人的にすこーーし…釵(サイ)で突っつく位にしとくけど。]

 

一見すれば琉球空手の武具を象った特殊な形状をしたCADを掌の上でくるくると回転させ乍黒い笑みを浮かべ呟いている僕に炎や輝、燗は苦笑している。誤解が無い様に断っておくが僕にシスコンの気は無い、何故なら僕は身内(男女問わず)が可愛いだけだから

 

朝から軽く不機嫌な僕に対しクラスメイトの大半も戦々恐々としている、…黒乃の名前が恐れられるのは慣れているが別に取って食うつもりは無いし…向かいの氣の弱そうな女子…確か…光井ほのかさん?に至っては隣の表情の変化が読み取り辛い

北山雫さんの背に隠れる始末だ…入学式早々に遣り過ぎたかな、まァ…家族に危害を加えられて指を加えている様な奴は男女問わず屑だと思っているから周りに如何思われ様が構わないが。

 

そんな僕に敵意…否、畏敬の眼差しを向けてくる生徒が何人か居るのも解る、良い加減此の気配を探る癖…直すべきかな…如何でも良い事を考え乍つかつかと近付いてくる気配に視線だけ向ける、あれ…?此の気配…何処かで感じた様な…。

 

[…まさかとは思っていたが…何で貴方が答辞をしなかったんだ?ボディガードをした経験がある身だからこそ解るが貴方の実力なら…!]

 

あー…思い出した、確か森崎駿君…だったね、中学の頃、兄さんと義姉さん達の結婚式に森崎一門の一人としてボディガードとして雇われたは良いが暇潰しに模擬戦をして10回中10回とも負かして自尊心を粉々に打ち砕いたのは印象深い。

今にでも食って掛かりそうな勢いの彼に対し微笑で返した後肩に腕を回し耳打ちで

 

[否、流石にあんな事件に首を突っ込んだ身としては自粛もするし…寧ろ自粛の意味合いも込めて二科生として三年間通おうと思ったら…今でも充分恵まれてるよ?]

 

と、懇切丁寧に僕が置かれている立場を説明する、耳打ちしたのは周りに対する不協和音を軽減したかッただけだが彼は中学時代に炎、輝、僕と面識のある数少ない知人だ…僕達三人の実力には圧倒的に劣るが彼のボディガードとしての腕は実績からしても信用出来るし彼も一応三ヶ月前の当事者だった事を思い出したからである。

 

[彼れは…悔しいですが俺や森崎一門の対応が遅れたからです、寧ろ貴方は世間から称賛を受けるべきだし黒瀬の令嬢達も本来は一科生として…]

 

…如何やら森崎君も彼の事件を引き摺る者の一人の様だ、依然として微笑を携えている僕に居心地が悪くなッたのか此方に一礼だけして自分の席に戻る彼を見送りつつ僕も自分の席に座りホームルーム開始迄寝入る事にする。——本当、僕を含めて面倒臭い性格の持ち主ばかりだと微睡んだ矢先に僕の代わりに答辞を行った美少女、司波深雪が教室に入ってきた男子生徒が奏でるざわつきを聞き流し内心苦笑した。

 

閑話

 

ほんの少しの微睡みの中で僕は夢を見た…。

 

夢とは記憶の整理であるが時として過去や未来を見通すきっかけと成る、黒乃の当主に選出為れる者は程度に依るが刻を制する力を有していなければならない為割と頻繁に此れから起きる事を夢で見る。

 

だが、偶に未来に起きる事象とも過去に体験した事とも云えぬ不可思議な夢を僕は物心付いた頃から今に掛けて見続けている…

 

夢の中故に僕には何ら干渉する力は無いのに此の手が…此の肌が感じる感覚は生々しいのに言葉遣い等といったものは僕が普段使わない様なものなのだ。

 

夢の中の僕は自分の事を我と呼び見目麗しい女性と子供達に囲まれていて幸せそう"だった"…如何やら今日は此の場面の夢らしい。

 

正直自分が手を降している様で気が滅入るのだが唯の傍観者としては如何しようも無い…僕は眼が覚める迄の短い間此の殺戮に満ちた夢を見る傍観者に徹する事にした。

 

———

 

[…疾く失せるが善い…貴様には死すら生温い。]

 

買っては為らぬ神の怒りを買った___、周囲は見渡す限りが闇…草も木も…小鳥の囀りすら聴こえぬ死の世界。

 

無表情だが明確な怒気を孕んだ言の葉を紡ぐ破壊者と対峙し暑いのか寒いのかすら解らぬ程感覚は疎か感情が…身体より先に心が死ぬ程の純粋な殺意に凍え其れに伴い抵抗する意思を挫かれる___。

 

 

破壊者の首に掛けられた頭蓋骨は破壊者の怒りを買った者達の成れの果て…彼等の眼孔から放たれる熱線は辺り一面を破壊し尽くす光の雨…いや、最早暴風雨と成り降り注ぐ。

 

此の場に於いて絶対の存在である彼は額に開かれた第三の眼から世界を焼き尽くす焰を投槍と弓へと変換させる、無駄の無い動作は死に行く者に一切の慈悲を与える事なくきりきりと弦を引く…[嗚呼…此れが…死か…]眼前に迫る闇色の極光に何の感慨も無く感じた侭の感想を呟き乍幻想郷の大地…其の二分の一を数百年は草木も芽生えぬ不毛の大地へと変える極光に飲み込まれ_____此の世から消滅

 

 

——したかに見えた。

 

 

 

———

 

もう何れだけの時間が建ったであろうか…、数日?数ヶ月?…其れとも…数百年?

 

自分の名前が思い出せぬ程の気が遠くなる程の時間を____消滅と復活に伴う虚脱感を繰り返す。

 

ある時は見渡す限りの闇が瞬く間に煉獄の焔に包まれ____と焼き尽くし。

 

またある時は蛇や虎、翼の生えた獅子等の動物達に其の身をゆっくりと咀嚼され喰い殺される苦痛を延々と味合わされ尚"魂"は此の地獄から抜け出せない…身体に定着させられた魂も同様の苦痛を刻まれる為輪廻転生すら出来ず…未来永劫此の無間地獄を味わう。

 

涙は既に枯れ果てた…声を発していたであろう声帯機能は破壊者により意味を成さぬ痛みを感じさせる為だけの悲鳴しか出せぬ様破壊された…心は彼の漆黒の極光の前に消滅させられた。

 

[…未来永劫…我の怒りを其の身に背負うが善い…貴様の罪もそうして贖われ様。]

 

希望と云う名の光を灯す事を忘れた視界の先に現れた破壊者が淡々とした口調で呟き乍___の身体を三叉戟で貫くのを感じ唯此の終わらぬ闇の中で今日も地獄を味わう…決して終わらぬ地獄を前に最後に残った思考は考える事を放棄した




漸く二日目や…(遠い目)

いやァ、主要キャラの人数が多いと伏線張りやら何やら考えるのが大変ですね(苦笑)
ですが今後やれる事が増えて考えるのが楽しいので一概に悪い事ばかりではありません、かなり間を置いてしまいましたが何れだけ時間を掛けようと完走はするつもりなので見守って頂ければ幸いですm(_ _)m

次回は魔法師としての黒乃勇気の実力の一端と何故九重八雲師と手合わせに及んだか等の細かい裏設定等を執筆途中であります、今月中には仕上げたいなァ…ではでは、また。
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