魔法科高校の流転者達-夢と現を見定める破壊神-   作:黒乃 柳

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えー、前回の予告通り今回は三ヶ月前の事件と魔法師としての黒乃勇気君の実力の一端を御披露目するつもりでしたが気付いてみれば何やら考案していたものを詰め込みまくりで私自身がワロイマシタ、故に文章自体も過去最多かと(笑)



失恋と覚醒

 

 

[……ふン]

 

勇気達が授業を受けている頃、幻想郷の地底よりも更に深い空洞、広大な草原…優しく包む様な風が吹く常闇の地下世界を照らす月…其の人為的に作られた空間の中央に位置する神社の本堂で座禅を組む破壊神は今と過去を映す鏡でとある人物のターニングポイントを見詰めていた

 

[…想厳…?また見ているの…?]

 

境内の掃除を早々に終わらせ牛柄模様の服を着た幼女を膝上で寝かしつけ乍彼が見ているものに視線を向け問う

 

[其れにしても…今や我を人の名で呼ぶのは百合…御前とナンディンだけだな…噫、三ヶ月前の件を観ていた]

 

百合と呼ばれた巫女に擦り寄り寝入る従者の名を冠した幼女の頭を優しく撫でる仕草は何処となく慈愛に満ちたものである…だが、三ヶ月前と云うワードに巫女である百合は眉を寄せて何やら考え込む

 

[…四年前もだよね…?虚無(ヴォイド)絡みの事件…四年前は古明地姉妹、三ヶ月前は幻想郷の人じゃないから良く解らないけど…想厳は宇宙を統べる主の権能で17年前からこうなる事を予想していたみたいだけど…]

 

宇宙を統べる主(ヴィシュヴァナート)とはシヴァ神の千を超える呼び名と権能の内の一つ、云ってしまえば独身バンザーイ!!(!?)…失礼、宇宙規模で此れから起きるであろう事象すら予知出来るのである、某ロボットアニメとは関係が無いので注意されたし。

 

[…惑星クレイの人達も此の世界に転生させて…想、貴方は何をしたいの?態々此の星にも災厄を招きそうな人達も転生させて…]

 

唯でさえ無表情な神に問う様な眼差しを向け乍膝上に確かに存在を主張する幼女を撫でる巫女…17年前に幻想郷に蔓延した虚無を幻想郷の民ごと破壊し尽くし其の後自身に関わる記憶の全てを100年前に生きていた過去の幻想郷の民と僅かな生き残りから奪い蘇らせ地上から姿を消した彼は過程は如何であれ幻想郷を救った"救世主"でもある…本来称賛を受けるべき神に付き従う彼女からしたら歯痒い気持ちなのであろう。

 

[……此の世界は…増長し過ぎた、故に自滅の道を歩もうが後数百年は栄えようが知った事では無いが役割上何もせぬ訳には行かぬからな…我が分霊が人として英霊達から何を感じ…如何云う選択をするか…其れを見定めた後からでも事を起こすのは容易い]

 

破壊を伴う再生の神、元は暴風雨の神である彼は恐ろしい面も多々有るが一方で医療神等の優しさも併せ持つ…はっきり言ってしまえばピナーカの一矢だけで滅ぼせる此の世界に猶予を与えるというのだ…本来起こり得ぬ事件や__等を内包させて…だが。

 

其の答えにまたもや考え込む百合、そんな彼女を傍らに置きシヴァ神こと想厳は彼の分霊…現代を生きる黒乃勇気に訪れた三ヶ月前のターニングポイントに眼を通す…。

 

———

 

一月×日 横浜ベイヒルズタワー

 

[あは、楽しかった〜♪ね、次は何処に行こっか?]

 

[そだな〜、腹減ったし飯食いてェ…恋の手料理なら尚更食いてェ]

 

[もう、勇はしょうがないなァ…でも今日は明美と真護も後で合流するからご飯食べに行こっか?]

 

栗色の髪を肩に掛けたスタイルの良い恋と呼ばれた少女の問いに対し呑気に応える少年、仲睦まじく歩く姿は誰が見てもカップルに見えるが…恋と勇気は此の時点では友達以上恋人未満という何とももどかしい関係を築いていた。

 

[其れにしても…勇気も大変だね…?]

 

[まァ…アニキは歴代の当主の中でも"力"が強いらしいからな…親父もあんま長生き出来無ェからって餓鬼の頃から鍛えてたし]

 

二人は此の場に居ない勇気の話題をしている

 

現当主である父から家を引き継ぐ為に必要な知識、延いては黒乃流古武術の手解きを受ける為最近忙しい勇気に留守を任せ彼女等は休日を利用し息抜きに来ていたのだが…

 

[兄様も来れれば良かったのに…]

 

[うん…お土産買ってこ…?]

 

と、口数の少ない明美と彼女に瓜二つの黒髪ツインテールの少女、黒瀬真護は敬愛する従兄の喜びそうな土産を探す為に一時的に二人と別れショッピングモールへと向かっていった…——そう、此処迄は何ら変哲もない穏やかな時間であったのだ。

 

———

 

[明美!真護…ッ!]

 

 

密かに放っていた黒乃家御抱えの密偵から身内が遊びに行った施設が犯罪シンジケート"無頭龍"の息が掛った数十名からなる犯罪者集団に占拠されたという報せを受け周りの反対を押し切り単身殴り込みに来た黒乃勇気。

 

正面入口に配備された数名の見張りを"背後からの手刀"で瀕死に追い込むという物理的に不可解な技を以って侵入し個別に警戒をしていた魔法師を襲撃、首筋に釵の切っ先を突き付け人質の収容場所へと案内させた後始末する手際の良さは他者の命を奪う事に何ら迷いは無い顕れを人質となった人達に見せ付ける形となり恐怖を植え付けてしまう。

 

[兄様…っ]

 

[私達は…大丈夫…でも…恋お姉さんと勇が…]

 

人質の中に従妹達の姿はあった、が、冬月家の令嬢である恋と黒乃の血が流れる勇は人質以上の利用価値があると判断されたのか個別に囚われている様だ。

 

暫く瞳を閉じ長年親しんだ"氣"を辿ると勇の近くに恋も居る…其の周辺に数名の人の気配と其の連中とは一線を画す程強い氣を感じ眼を開ける、戦力に成りそうな明美と真護へと振り向き

 

[…皆さんは此処に居て下さい、来る最中に何名か片付けてきましたが何れ異変に気付くでしょう…明美、真護…辛いとは思うけど此処を護って欲しい、じきに警察が動く筈だから]

 

[…兄様は?]

 

[僕は二人を助けに行くよ、家族を放ってはおけないからね…]

 

明美の問いに安心させる様に優しい笑みを浮かべ応える、其の笑みを幼い頃から何度も見てきた双子の姉妹は小さくこくりと頷き笑顔で返す。

 

そんな三人に水を指す様に

 

[ま、待ってくれ…貴方は黒乃さん…だろ?俺にも手伝わせて欲しい…!人質を取られていなければ力に成れる!]

 

と、人混みから拳銃型のCADを片手に助力を申し出る森崎駿の姿、彼の言葉通りなら如何やら人質を盾にされ囚われていた様だ…暫くの沈黙の後勇気は

 

[…なら、君には御家族に連絡を入れてもらった上で此処に残って一般人を護って欲しい、森崎一門のクイックドローの技術力は認めるが今回は早打ちよりも隠密行動がものを言うからね…一人の方が身軽だしね?]

 

CADを一眼見て森崎一門の子息である事は解るが如何せん、興味の無い相手や事柄は記憶すらしない事を知っている明美と真護は(一度逢ってるんだけどなァ…)と内心苦笑し、駿はといえば確かに早打ちに定評はあるが今回の様に人質を取られては実力を完全に振るえない事を自覚している為此の場において迅速かつ的確な判断を下す勇気に反論出来ず[…解りました、任された以上此処に居る人命はボディガードの威信に掛けて護り切ります]と、同年代とは思えぬ程落ち着き払っている勇気に敬意を払い一礼する。

 

此れによりある程度の無茶が効く様になった勇気はにこりと笑うや否や次の瞬間には姿は無く遠く離れた場所からダダダダダッ…!とガトリングガンが乱射される音が聞こえ始めた、其れも複数。

 

[…あの人本当に人間なのか…?]

 

[……黙秘]

 

[…某仮面のカブト虫戦士と同じ事が生身で出来るとしか…お兄様の事だから建物や人命の心配をして大規模な魔法は使わないだろうし…]

 

と、此の場に削ぐわぬ心の声を漏らす三名であった

 

———

 

[な、何なんだ彼奴は…ッ…し、死神か!?]

 

今回の事件の首謀者である男が事態の異変に漸く気付いた頃には仲間の大半はたった一人の少年の手で蹂躙されていた、幾ら無系統以外の現代の魔法とサイオン保有量が見栄え以外関係ないとはいえ連続で魔法を使えば疲弊して然るべし…だと云うのに画面越しの少年は疲れる様子を見せる処か本来刺突と打撃を以って攻撃手段と為す双振りの釵のみで近代兵器を寄せ付けぬ圧倒的な戦闘力を奮っている

 

[ふふ…くふふ…ッ…]

 

リーダーが慌てるのとは対照的に彼の協力者であろう眼帯を装着した流零の女性剣士は数名に囲まれても尚慌てる凶弾を釵で軌道を逸らし、弾き返し同士討ちさせ、動揺して僅かに硬直する者が居れば自己加速術で肉薄し高周波ブレードを発動している釵の斬撃により発射口を切断•間髪入れずに水月に鋭い蹴りを浴びせ壁に減り込ませる…といった正しく死神と呼ぶに相応しい活躍を見せる勇気を狂気に満ちた笑みを浮かべ眺めている

 

[おいあんたッ!本当に大丈夫なんだろうなッ!?あんた達が力を貸してくれるからッて事で俺等は今迄俺達を蔑んできた奴等を見返す為にこんな事を…ッ!]

 

笑っている女性の胸倉を掴み半狂乱するリーダー、魔法が使えるという優越感と自尊心から魔法科高校に入学するも結局は井の中の蛙だという事を嫌という程思い知らされ失意の内に世間からはぐれてしまった彼等には闇の世界でも行き場が無かった…そんな彼等に手を差し伸べたのが彼女、朧(おぼろ)である。

 

胸倉を掴まれ尚にこにこと笑う朧に逆上した男は拳を振り上げんとする

 

が、

 

[…大丈夫ですよ、貴方達はちゃんと…]

 

私達の役に立ったのですから…

 

最期に聞いたのはそんな科白であった、心臓を貫手で貫かれた男はごふ…っ、と…吐血した後辺りを血の海にして此の残酷な世界から永遠に解放された。

 

[さて…彼の覚醒を促す為にとっておきの相手を用意するとしましょう…ふふ…あははははッ!]

 

眼帯を外した女の瞳は異なる色彩を放ち其の両方が妖しく輝いている…彼女等が捉えたある人物の元に朧はモニターから離れるのであった。

 

———

 

[…氣が…一つ消えた…?]

 

三棟の超高層ビルからなる施設内を駆ける勇気の知覚から突如として消えていく気配に彼自身が訝しむ…、そんな中…見知った男女の組み合わせに気が緩むのは些か不用心であったと後の彼は語る事となる。

 

[………]

 

[………]

 

[勇…ッ!恋…ッ]

 

探し求めていた実の弟と一人の女性として慕う女と再会出来た喜びから彼等に駆け寄る勇気…此の時点で彼等の異変に気付けていれば…或いは違った未来があったであろう。

 

 

ドスッ…!

 

[な…んで…]

 

信じられないものを見たという顔をしていた、腹部と心の臓を鋭利な刃物…隠し持つに適したコンパクトナイフで貫かれると判断し身を逸らして心臓への一撃は躱すが腹部は避け切れず深々と突き刺る…刺したのは冬月恋…本当の意味で初めて他人を愛する喜びを教えてくれた女性…信じていた相手に傷を負わせられたという失意の中で此れ迄の疲労より…傷の痛みよりも深い精神的ショックに彼の意識は此処で途絶えた。

 

 

———

 

[…やりましたか…、存外呆気なかったですね…]

 

催眠下に置かれた勇と恋の前に立つ朧、彼女は前世からの因縁からか邪眼(イビルアイ)とは些か異なる人の心を掌握するBS魔法を扱えた、眼の前で俯せに倒れる勇気を見降ろす彼女は何かを成し遂げた様に天を仰ぐ。

 

[噫…此れで漸く…]

 

彼女は気付いていなかった…勇も…恋も、傀儡と化しているにも関わらず…其の手を血で汚して尚涙を流している事を。

 

[…恋さん、貴女は勇気さんと勇さんとの間で揺れていた…で無ければもう少し苦労していましたよ…御礼を云います。]

 

[勇さんはずっと優秀な兄である勇気さんが疎ましかった…邪眼に掛けるのは幾分楽でしたよ?血の繋がらない恋さんに比べて。]

 

あははははッ!アハハハハッ!

 

愉快とばかりに笑う朧の頬には血涙の様な模様が浮かび上がる…虚無(ヴォイド)と呼ばれる力を持つ異星の軍勢が使う反転(リバース)の影響下にある証であるが此の場に立つ者にはそんな事は預かり知らぬ事、だが…。

 

———

 

(…立つが良い…)

 

(…誰…?)

 

深い闇の中で勇気を呼ぶ声が彼自身の内なる魂を震わせる

 

(……御前には未だ闘う力があろう?)

 

冷たく響く声…勇気に瓜二つな顔…然し、如何してか此の声の主からは氷の様な冷たさの中に獣の如き猛々しさと全てを見詰め見守る優しさを感じる

 

(……闘う力はある…筈、だけど(闘う意思が折れた…か?)

 

返事の声に重ねる様問いかける声、暫しの沈黙の後小さく頷く勇気

 

(…為らば…死ぬだけだ…御前も…御前の家族も…御前が愛した者も…)

 

(ッ…それは…)

 

息を呑む…周りの反対を押し切る形で救出に来たのに…護れないのか…?其れでは何の為に来たのか解らない

 

(……悔しいか…?何も成せぬ事が…)

 

煽る様な言葉だが一言一言が黒乃勇気という人間の心に突き刺さる

 

(……悔しい…し、無念だよ…出来る事なら…自分の我儘位は貫きたい…)

 

そう、此処に来たのは家族を守るという自分自身の我儘…為らば…此の様な場所で止まれる道理は無い…!

 

(……ふ…善かろう…特別サービスだ…我自身が力の使い方を教えてやる…此の力を今後何の様に使うかは御前が決めろ…我が____)

 

分霊よ…そンな言葉が聞こえた気がした。

 

———

 

[ッ…?!]

 

むくり…そんな描写が似合うであろう立ち方で仕留めたと思っていた黒乃勇気は立ち上がる…先程迄と一つ違うのは彼に意識が無い、唯其れだけである。

 

[…コオォオ…ッ…!]

 

ビュッ!

 

風切り音と共に双振りの釵は投郷され勇と恋の持つナイフを破砕する、途端に糸の切れた人形の様に地に伏す二人。

 

[しまった…ッ、まだそんな力を…!?]

 

ナイフを媒体に彼等の精神を縛っていたのが災いした、人質を奪われては先程の戦い振りを見れば正面から戦えば勝ち目が無い…其れを見越した上での催眠であったのだが何やら様子がおかしい。

 

[精霊を…食べている…?!]

 

邪眼で見て初めて気付いた、彼の身体が黒く覆われているだけで無く周囲の精霊やエイドス其のものを分解し己が力としているのだ。

 

 

[シャ…ッ!]

 

構えすら無い…唯の蹴りであった筈だ、だが其の蹴りは長年積み重ねられてきた修練による賜物か恐ろしく鋭く重い一撃であった。其れに加え本来非物質である精霊を喰らい己が力としているのだ、明らかに人の領域を逸脱しおり肉体を持った精霊…否、神の域に達した一撃は肉体は疎か情報体其のものを破壊する事も理論上可能なのである。

 

[クッ…!]

 

然し…此れでも朧は前世ではとある一族の長を務める程の実力者であった、そんな彼女を以ってしても見切れぬ速さと破壊力を賞賛は出来様が彼女も彼女で直感により防御に使った刀ごと腕をへし折られ本来曲がらぬ方向へと腕が曲がる程度に済ませたのはある意味では流石と云えよう。

 

[オォォオンッ!]

 

周囲の精霊達を喰らい勇気の傷は完治していた、それ処か黒い膜は修行僧が着込む様なものへと変化し勇気の手には三又槍が握られ首には夥しい髑髏が巻かれている。

 

一瞬消えたと思った矢先、突如上空に姿を現し三又槍の切っ先と髑髏の眼孔からフォノンメーザーに似た熱閃を放つ勇気、其の熱閃の数たるや千を超え朧ごと辺り一面を灰燼と化す事も出来様が間一髪の処を装飾品に偽装した耳飾り型のアンティナイトを用いたキャスト•ジャミングで熱閃自体は無効にするが槍に片腕を貫かれる。

 

突き出される槍は亜音速を軽く超え床を突き崩し繰り出される風圧は屋内に吹き荒び暴風雨が通過した様に荒れ果てるが恋と勇の周りには恐らく勇気が張ったのであろう、強固な結界が張られており傷一つ無い。

 

朧とはいうと咄嗟に上空に飛び退くも痛みからか上手く跳べなかった為空中でよろめいていた。

 

[馬鹿なッ!無から有を作り出す等…!]

 

三又槍も彼の趣味の悪い髑髏の首飾りも魔法で其の様に見せているのであろうと思っていたが実体のある武器であった事に驚愕する朧、此の世界には錬金術の様な技能は確立されていない為常識的に考えたらあり得ない状況に困惑が続く。

 

[…去ね…ッ!]

 

はッとした瞬間、三又槍を短槍のリーチに創造し直し乍弓に番える姿を遠目で視認…直後周囲のエイドスを分解•吸収し膨大な魔力塊と化した黒い極光が朧の真横を素通りし天上を突き破り大気圏の更に上空へと消える

 

此の時の記録は衛星で捕捉されていたが過ぎ通ったエネルギー波の余波で回線が混線し其の記録のみが抹消されていた、其の儘槍は近くの隕石に衝突、光速に達した三又槍はマイクロブラックホールを発生させた。

 

 

———

 

瓦礫が降り落ちる戦場での勝負は最早決した、元々真っ正面からの戦闘を避けた相手なのだ…人質が手を離れた時点で逃げ帰るべきだったが

 

[…退け…我の気が変わらぬ内に…]

 

大事な身内を他でも無い自分自身が苦しめてきた事による戒めか…其れとも単なる気紛れか…自身を殺害しようとした相手に一瞥もくれず気を失った恋と勇の元に歩み寄る勇気を見詰める朧。

 

[…其の甘さは…何時か貴方自身を殺しますよ…、いえ…——もう…心は死んでいますか…私の目的は一応果たされた様ですね…]

 

誰に見せるでも無く涙を流す勇気にただ一言…リバースから解放された朧は同情の念を込めて立ち去っていく、本質は意識も無く自分の知らない間に垣間見た"破壊と創造を司る"権能の力に身体がついて来なかっただけだが。

 

だが…薄れ行く思考の中で勇気が感じた想いは

 

[ごめ…んね…二人…とも…僕な、んて…産まれてこなけれ、ば…]

 

謝罪と…後悔…其れだけが残された感情であった…。

 

遠くで聞き慣れた双子の悲鳴が聞こえる…如何やらポカをやらかして瓦礫に巻き込まれたのだろう…薄れ行く意識を必死に繋いで力の入らない身体を引き摺り救出に向かおうとした処で彼の意識は完全に途絶えるのであった。

 

———

 

[……何時観ても…気分の良いものじゃ無いね…]

 

三ヶ月前の事件の顛末を見届けて百合はポツリと呟く

 

[……然うか、だが此の事件のお蔭で勇気はまた一つ我の高み迄近付いた…恋とやらも進むべき道を選んだ、勇と云う分霊の弟も兄に一つだけ勝るものが出来た…素晴らしいでは無いか?——まぁ、あの双子はあの後一般人の誘導をしている途中に瓦礫に巻き込まれ其の後病院に運ばれた様だが…命があるだけマシだろう。]

(尤も…朧個人の目的は勇気の神としての力を覚醒させる事だった訳だがな…何を考えておる…)

 

 

[想…怒るよ…?そんなのちっとも素晴らしく無い…如何して其れが解らないの?]

 

悲しそうな顔で仕えるべき神を見詰める百合、そんな百合の気持ちよりも結果に一応の満足をしつつも転生者の一人である邪眼のオボロこと叢雨朧と其の仲間達の思惑を掴めずにいるシヴァ神

 

[…解らぬな、噫…解る筈も有るまいよ、何故なら我はシヴァ神で在ってシヴァ神では無い…元は"誰にもなれなかった者"だ…其れに、分霊が選ばれなかったのは奴自身に魅力が無かった…戦闘以外なら代わりは誰にでも務まる代用品だ。]

 

ぱちンッ!

 

…渇いた音と共に啜り泣く女の声…巫女である百合のものだ。

 

[…泣くな百合…案ずるな…我が御前を…]

 

頬を叩かれて尚抱き寄せるシヴァ神…只々泣き晴らす百合…二人の想いが真に交わるのは何時になるか…其れは…神にも解らないのであった。

 




何とか今月中に投稿出来た…(笑)
此の話自体は一番最初に考えていたのですが戦闘描写に納得していなかったので何度も直していたものです、現段階で此処から違う作品の話に繋げる事も視野に入れておりますので見掛けた際は何卒宜しく御願い致しますm(_ _)m

では、また御目に掛かれる日を
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