ブルアカクラフト   作:蒼/ao

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10話(アンペア編):街の襲撃・再

 紫の渦が揺れている。

 アレックスの姿は、その中に吸い込まれるように消えていった。

「大丈夫かな....」

 ウチは、ぽつりと呟いた。

 

——行ってくる。

 アレックスの最後の返事は短かった。

 いつもの不安な感じがない。だから、不安になる。 

 

 普段、手に触れていた工場で扱っていた機械なら分かる。壊れた部品も、直し方も。

 けど、この門は明らかに違う。

 どう動いてるのかも、仕組みも、原理も——何も分からない。

 

 帰ってくるまで、何もできない。

 ただ、待つしかなかった。

 ——そんな時だった。

 

——ドォン。

 

 低い音が、遠くで鳴った。

 

「....え?」

 遅れて、地面が揺れる。

 石畳が軋み、空気が震えた。

 

——ドォォン!!

 

 二回目。

「な、なに!?」

「きゃっ!」

 ヒフミがよろめく。

 どこかで悲鳴が上がった。

 

 ——爆発。

 そう理解した時には、目の前に三発目が落ちた。

 

「危ない!」

 反射的にシロコがウチの前へ飛び出した。

——ドカァァァン!!!

 耳をつんざく音と、衝撃波が路地を吹き抜ける。

 

——パリンッ。

 耳に、嫌な音が届く。

 ガラスが割れるような、何かが砕けるような——そんな音だった。

 

「....大丈夫?」

「....ウチは大丈夫だよ」

 シロコの目が緩んだ。「ありがとう」それだけ伝えて、体を起こす。

 

 ただ、ホッとしたのも束の間だった。

 なにかが、おかしい。

 ネザーゲートの紫色の渦が——まるで水面へ石を投げ込んだような不自然な感じに揺れていた。

 

「な、なにが起きているの....?」

 渦の揺らぎが大きくなって、紫の光が明滅している。

 一瞬。そして——消えた。

 

「ネザーゲートが....!」

 煙が晴れる。

 そこにあったのは、紫の輝きを失った黒曜石の枠だけ。

 その向こうには何もない、ただの空間が広がっているだけだった。

 

 頭が真っ白になる。

 ほんの数分前、アレックスはあの向こうへ行ったばかりなのに。

 

 消えたはずの場所に、近づいて、無意識に手を伸ばしていた。指先が空を切る。

 

 ——ヴォ、ヴォオオオオオオン。

 その瞬間、警報が街を切り裂いた。

 現実に、無理やり引き戻される。

「な、なにが起きているんでしょうか....」

 

 大通りの方から男の叫び声が聞こえてくる。

「ヴォルクス・リベレーターが来やがった!」

「避難しろ!」

「まだ砲撃が来るぞ!」

 路地の壁が、振動で細かい砂埃を吐き出し、通りの先では人影が次々と駆け抜けていく。

 

 足を動かさなきゃ。

 わかっているのに、視線だけが黒曜石の枠に縫い付けられたまま離れない。

 

「とりあえず、様子を見に行きましょう」

 ノノミが、そう言った。

 みんな、走りながら武器を取り出して弾倉を装填していた。

 何度見ても、この子達は戦い慣れている気がする。

 

 一度、振り返った。

「アレックス....」

 口にしてから、自分の声に驚いた。

 ——今は、それどころじゃない。

 

 踵を返し、路地を抜ける。

 

 影が、唐突に途切れた。

 一気に視界が開け、目に光が差し込んだ。眩しさに一瞬、目を細める。

 肌を焼くような熱風。焦げた匂いが鼻を突く。

 それと同時に、立ち昇る黒煙、抉れた石畳、崩れた建物——。

 気がつけば、戦場に立っていた。

 

——————

 

「おい、そこのやつら!」

 道の左から、腕章を付けた隊員が叫んだ。

「すぐに逃げろ!ここ北側にヴォルクスの攻撃が集中している!」

 隊員の声は、ところどころ掠れていた。怒鳴り続けて、喉が限界に近いのかもしれない。

 

「わ、私たちも手伝います!」

 ヒフミがそう言った。

「子供は危ない!死ぬかも知れないんだぞ!」

「でも!」

「ダメだ!今は避難が先だ!」

 協力したいヒフミと、避難を優先する隊員。どっちが正しいかは、正直分からなかった。

 ただ....——そう言い争っていると。

 ヒュゥゥゥ——。

 

「....?」

 その音に、隊員が顔を上げた。

 何かが飛んでくる音。砲弾?——いや、違う。

 

 

「まずい、伏せ——」

 ドォォォン!!

 言う間もなく、辺り一面は爆風と煙の嵐。

 爆炎が弾けた。

「ぐあぁっ!」

 隊員たちが壁へとたたきつけられている。

 

「なっ!」

 石畳の破片が雨のように降り注ぐ。

 衝撃波に思わず身を縮めた。

 

「な、何が....」

 今までの砲弾とは比べものにならない爆発。こんな威力の、ウチも知らない....。

 

「はーっはっはっはっは!」

 向かって右の、黒煙の向こうから聞き覚えのない高笑いが響いた。

 煙が晴れる。建物の瓦礫の上に立っていたのは——

 

「ッ!あんた....!」

 セリカの顔つきが、一層厳しくなる。

 背中まで伸びた紅い髪。黄金色と赤が目を引く長い銃。そして、頭の後部から角が生えている。

「ふふふ、どう?見たかしら?」

「便利屋!」

 

 瓦礫の上に立っている少女が、セリカたちに気付いたように目を丸くする。

「あら、あんた達じゃない」

「なんであんたがここにいるのよ!」

「仕事だからに決まってるでしょ?」

 彼女は、胸を張った。

 

 吹き飛ばされた隊員たちの周りに、人が集まっていた。

 誰かが必死に呼びかけているけど、返事はない。

 ウチは、思わず目を逸らした。

 

「....仕事ですって?」

 セリカが睨み付ける。

「それでこの街を攻撃してるっていうの!?」

「依頼なんだから仕方ないでしょ?」

 彼女は肩を竦めた。当たり前かのような、そんな感じで。

「第一、そっちだって武器持ってるじゃない」

「そういう問題じゃないわよ!」

 

 と、そこに。

「社長」

「お~、アルちゃ~ん」

 瓦礫の奥から、階段を上るように姿を現した。

「カヨコ!ムツキ!ここにいたのね!」

 

 知らない子。いや、街の中でどこかで見かけたことある....。

 けれど、シロコたちの反応は明らかだった。

「都合良く出てきやがって....」

 セリカの声は明らかに苛立っていた。

 

「社長」

「なにかしら?係長」

「"本当に、そっち側?"」

 その言葉に、アルと言う子は少しだけ首を傾げた。

 カヨコの声は静かだった。でも、その意味だけは妙にはっきり伝わってくる。

 

「え?」

 けど、社長って言われた子は、何を確認されているのか分からないっぽい。

「....まぁ、そうね。仕事だし」

 深く考えずに答えているように見えた。

 いや、本当に分かっているんだろうか。

 さっきからカヨコという子が聞いていることと、答えが噛み合っていない気がする。

 

 ——あの子、本当に社長なの?

 

「はぁ....分かった」

 そう言って、カヨコとムツキは瓦礫の上に登ってこちらを見下ろした。

 あの二人の反応からして、どうやらあながち社長という肩書きは正しいのかもしれない。

「じゃあ、今日から敵だね~」

 ムツキが楽しそうに笑う。

「....」

 シロコがライフルを構える。セリカも銃を持ち上げた。

 ノノミは、撃つ姿勢に入る。

 空気が張り詰める。

 

 でも、その時、アルたちの後ろから緑色の頭がぴょこっと——。

「あっ」

 

 ウチは、つい言葉を漏らした。

「?なによ?」

「いや、特に。それより、後ろ大丈夫?」

 ウチはそう忠告した。

 

「へ?後ろ?」

 腑抜けな声を出して、アルは振り返る。

 すると、そこには——。

 

——シュー....。

 クリーパーの姿があった。

「ほえ?」

——ドオォォォォォーーン

 

 爆発した。多分、ウチが気づいた時には手遅れだったと思う。

 

「な、なにすんのよあの化け物ぉっ!」

 煙の中から、アルが飛び出した。

 

 その時だった。

「....ん?」

 シロコが上を見上げる。

「まだいる」

 

 つられて視線を向ける。

 建物の屋上。そこに、緑色の影が並んでいた。

「ゲッ」

「あ~これは面白くなりそう~」

「うわぁ」

 

 ぽとり。

 一匹が落ちる。続いて二匹、三匹。

 まるで雨みたいに。

「社長」

「なによこんな時に!」

「逃げた方が良い」

「言われなくてもそうするわよ!」

 アルがそう言った。

 

 その直後。

 連鎖する爆発が、空気を叩き続ける。

 煙の中、惨めに逃げていく様子が見て取れた。

 

——————

 

 便利屋のやつらが去った後、クリーパーの雪崩も止った。

「それより....!」

 ウチは振り返る。

 まだ、ワールドディフェンダーの人たちが手当てをしていた。

「ウチはこの人達を手当をしてる!ヒフミ、手伝って!」

「わ、分かりました」

 

 遠くで、また爆発音が響く。

「まだ戦ってる」

 シロコが煙の向こうを見つめた。

「....助けに行きたい」

 その瞳には、迷いはなかった。

「なにが避難しなさいよ。私たちだって戦えるんだから!」

 

「わかった。でも、くれぐれも怪我をしないようにね」

 そう言って、見送る。

「私も行ってきます」

 ノノミもセリカに続いて大通りを駆けていった。

 

「大丈夫ですか!?」

 ヒフミの鞄から、包帯を受け取る。

「すまない....」

「喋らないで」

 倒れている隊員の腕に包帯を巻いていく。

「すぐに手当しますからね」

「ありがとう....」

 ヒフミの指先が、ほんの一瞬だけ震えていた。

 それでも、包帯を巻く手つきに迷いはない。

 

「何がおきているの?」

「戦車だ」

 隊員が苦しそうに答える。

「ヴォルクスの奴ら、戦車を持ってきやがった」

「戦車....」

「こっちは対戦車兵器が足りねぇから、クリーパーを向かわせてたんだが....」

 そこで別の隊員が顔をしかめた。

 

「近付く前に撃たれる」

「数も足りねぇ」

「それに、今ほとんど爆発しやがった....」

 なるほど。

 だからあんなにクリーパーが集まっていたんだ。

 ——あの子、相当運が悪かったのね....。

 

 

 ....いや、違う。本当に運が悪いのは——!

 

——ドォォォン!!

 地面が震えた。

「っ!?」

 交差点の向こうで黒煙が噴き上がる。

 飛んでいく砲弾。えぐり取られる石畳。崩れ落ちる建物。

 

「戦車だ!」

 誰かが、叫んだ。

 ゆっくりと、その砲身が出てくる。

 ウチにとっては、見覚えのある形。黒く塗られた鋼鉄の塊。履帯が瓦礫を踏みしだく音が、腹の底まで響く。

 砲塔に刻まれたクリエイト社の紋章——忘れるはずがない。

 

——パパパン!

 戦車の後ろから銃声が走る。

 けど、弾は砲塔に当たって弾かれた。

 

「そっちには行かせないわよ!」

 セリカの声が飛ぶ。

 ノノミの重い連射が空気を震わせた。

 戦車の砲が、向こうを向く。

 まずい——セリカ達が撃たれる。

 

 直後、爆音。

 瓦礫が崩れる音。

 ....けど。

「あっぶな!今のギリギリ!」

 セリカの声が返ってきた。

 あっちは、あっちで任せても大丈夫そう。自然と、肩の力が抜けた。

 

「ヒフミ!今のうちに路地裏に!」

「わ、分かりました!」

 一人を担ぎ、他にまだ動ける人を使い、路地裏になんとか持っていかせる。

 

「....くそ....でも、助かるよ.....」

 兵隊の一人がそう言ってきた。

「感謝は後でして。今は安全な場所に行くわよ」

 一人、一人と路地裏に避難させる。

 そうして、どうにか路上に居る人を全員持ってくることができた。

 

「っで、あの戦車どうするのよ....」

「コバット小隊が、この街にいち早く駆けつけていることくらいか....」

 外では戦車が闊歩している。

 唯一の打開策だったクリーパーも、全滅。

 まずい事に、変わりはない状況。一体、どうしたら....。

 

「....古い、対戦車陣地が、2つ戻った先にある」

 頭に包帯を負った兵士が、そう言った。

「今は錆付いてあんま動かないが、弾はある。上手いこと誘導できれば撃退できるはずだ....」

「それって、クリエイト社製?」

「あぁ、そうだが....」

「なら、直せるかも」

 

 ゴーグルを取り出して、頭にはめた。

 ウチは、これがないとやる気が出ない。

「もしかして、お前、この街で噂になってる....」

「対抗できる唯一の方法なんでしょ?早く案内しなさい」

 兵士は一瞬だけ言葉を飲み込んで、慌てて頷いた。

「わ、分かった。この裏路地を使えば、安全に行けるはずだ」

 

 そう言って、その兵士は走り出した。

 ウチは、その背中を追う。

 

 足元は最悪だった。

 瓦礫に空薬莢、割れた瓶。転がる工具で、一歩でも踏み外せば確実に転ぶ。

 足を取られないように、神経を張り詰めて飛び越えていく。

 

 乾いた銃声、爆発音、どこかで戦車が動くエンジン音。

 後ろを振り返ると、ヒフミも追ってきていた。

「急げ!」

 角を二つ曲がり、視界が開けた。

「あれだ!」

 案内していた兵士が、指で指し示した。

 

 半ば崩れた土嚢。コンクリートで固められた円形の基部。

 その中心に、据えられた長い砲身。

 

 ——対戦車砲。

 防盾は煤け、塗装は剥がれ落ちている。

 砲身には赤茶けた錆が浮き、ところどころに白い腐食跡が走っていた。

 

 だが——

 照準器はまだ形を保っている。

 旋回ハンドルも、完全には固着していないように見えた。

 周囲には木箱がいくつも転がっており、蓋の外れた一つからは"長い薬莢"が覗いている。

 動かせれば、まだ——

 

「あれ、直せるのか?」

「直す」

 即答。考える余裕なんてない。

 

 レンチを当ててみると、意外にもわずかに動いた。

「....かみ合わせ」

 嫌な予感がして、下に潜り込む。

 案の定、小さな歯車が一つ欠けていた。

 

「やっぱり!」

「原因分かったか!?」

「えぇ!ギアが一枚死んでる!」

 視線を走らせる。周囲の箱。工具。外れた部品。

 ——代わりになるものは。

「どれくらいで直る!?」

 

 ——その時。

 遠くから、低いエンジン音が——。

 瓦礫を踏み潰す重い振動が地面越しに伝わってきた。

 ウチは顔を上げずに答える。

 

「一分!ヒフミも、なるべくその時間を稼いで!」

「わ、分かりました!」

 

 油と鉄の匂いが鼻を突く。

 外れた歯車を抜き取り、代わりになりそうな部品を漁る。

 ——大きさが、合わない。

 油にまみれた指で、部品を探す。

 

 合わない。

 これも違う。

 ——早く。

 ——早く。

「あぁもう!あいつの構造、ここがダメなんだから!」

 つい、そう叫んだ。

 

 頭上で銃声が連続する。

 シロコ達の声も、兵士達の叫ぶ声も、くぐもって聞こえた。

 みんな必死に頑張ってる。ウチが、これをなんとかしないと。

「急いでくれ!」

「分かってる!」

 

 頭の奥で、誰かの声がする。

 ——行ってくる。

 

 手が、わずかに止まる。

 アレックス。

 帰れないかもしれない、ネザーの奥にいる。

 ——だから。

 

「....こんなところで止まってられないの!」

 力強く、歯車を押し込んだ。

 

 遠くで何かがひしゃげる音。

 戦車のキャタピラが、瓦礫を踏み砕く振動が伝わってくる。

 近い。もう、すぐそこまで。

 

 最後のボルトを締める。

 手のひらに、汗が滲んでいた。

 ——パパパパンッ!

 頭上で銃声が連続する。

 

 ——ガキンッ!

「できた!!!」

 叫ぶよりも先に、体が動いていた。

 

 もう一回、対戦車砲をレンチで動かす。

 なめらかな動き。

「よくやってくれた!!!」

 

 ウチはすぐに対戦車砲から離れる。

 兵士たちが砲弾を押し込み、閉鎖を叩き閉めた。

 その瞬間、戦車が姿を現す。

 

「なに!?対戦車砲!?」

「撃てぇぇ!!」

 

 

 ——轟音。

 砲が跳ね上がる。

 視界が白く弾け、遅れて衝撃が腹に叩き込まれた。

 

 ——次の瞬間、静寂。

 砲弾だけが見える。

 

 真っ直ぐに。

 戦車の側面へ。

 

 

 ——鈍い音。

 内側から弾けた。

 

 火が噴き出す。

 鉄板が吹き飛ぶ。

 爆音が遅れて世界を満たした。

 

 戦車は、動きを止める。

 ハッチが弾けるように開いた。

 

 中から兵士たちが転げ落ちる。

 誰も振り返らない。瓦礫の向こうへと走り去っていく。

 

「コバットだ!コバット小隊が戻ってきたぞ!!!」

 誰かが叫んだ。

 その声に、一気にざわめきが広がった。

 

「なに!?」

「くっそ!皆の者撤退だ!」

 敵陣から響いた声と共に、ヴォルクスの兵士たちが一斉に動き出す。

 武器を放り出す者、瓦礫を乗り越えて逃げる者。

 怒号も悲鳴も、潮が引くように遠ざかっていった。

 

 

 銃声が、止んだ。

 誰も撃っていないのに、しばらく耳の奥で音だけが鳴り続けている。

 

「....終わった、のか?」

 誰かが、ぽつりと呟いた。

 返事はない。ただ、誰も動かなかった。

 

 気づけば、手が震えていた。

 レンチを握ったまま、力が抜けない。

 さっきまで動いていたものが、全部止まっている。

 煙だけが、ゆっくりと空に昇っていっていた。

 

 その煙に釣られて、視線が自然と空へ向く。

 黒曜石の枠。何もない、あの空間。

 アレックスが、向かっていったネザー。

「....街は、この手で守るから」

 だから、無事で戻ってきなさいよ、アレックス!

 

「アンペアさん!」

 セリカたちだ。

 煤と汗で汚れた顔。それでも、口元には抑えきれない笑みが浮かんでいた。

「みんなも無事で良かった」

 

 みんなの服の上に、みんな黒焦げの部分がある。

「あとで、洗濯しないといけませんね」

 ノノミがそう言った後、小さな笑いが起きた。

 ——でも

 まだ、ウチの手は震えていた。

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