とんでもスキルでダンジョン放浪メシをするのは間違っているだろうか?   作:有頂天皇帝

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まえがき
今回で怪物祭の戦いは終わります。今作のベルくんは色々と違う性格が異なるところもありますがそれも含めて楽しめて貰えると嬉しいです。


第十話 最速英雄(アキレウス)

────ベル・クラネルは瞳の色を除けば母親であるメーテリアとほぼ瓜二つである。良くて娘下手すれば年の離れた妹?と間違われたことは多い。

 

そんなメーテリアに似ているベルだが、似ているのは容姿だけではなく性格。何よりも怒らせた時の感じが特に似ている。

 

ベルが初めて激怒したのは異世界にてムコーダたちと旅をしていた時、ベルが一人で夕食の準備をしていた途中、どうでもいいことで喧嘩していたフェルとゴン爺の喧嘩の余波に巻き込まれてしまい食材が地面にぶちまけられてしまう。頭に血が上っていたフェルとゴン爺はそのことに気づかず喧嘩に夢中になっており、ベルが静かに怒っているのに気づいたムコーダやスイたちは急いでその場から逃走。そしてムコーダたちが遠く離れた時にフェルとゴン爺の悲鳴が森の中に響き渡り、辺りにいた魔物たちが暴走する事態があったが全員スイやコクヨウたちによって狩られたことで問題はない。

 

しばらくしてからムコーダたちが拠点にもどるとそこには床にぶちまけられた作りかけの料理を食べているボロボロになったフェルとゴン爺の哀愁漂う姿とフェルとゴン爺の牙や毛、鱗などをアイテムボックスにしまう頬に血がついたベルの姿があった。その日何があったのか怖くて聞けないムコーダたちはできるだけベルを刺激しないように普段通りに接することしか出来なかった。そしてこの日を境にフェルとゴン爺はベルの前で喧嘩をするようなことはなくなった。

 

次にベルが激怒したのはベルが8歳の秋頃だった。その日ベルは母親であるメーテリアのためにメーテリアの好きな甘いものであるアップルパイを作成中、あとは魔導オーブンに入れて焼くだけの段階というところでキッチンの壁を壊しながらぶっ飛ばされたゼウスがテーブルに直撃したことによって哀れアップルパイは床に落ちてしまい、アップルパイのなり損ないになってしまった。

 

しばらくの間停止していたベルとメーテリアであるが、ようやく何が起こったのか頭で理解するとメーテリアが気絶しているゼウスの頭をアイアンクローしながら壊れた壁の向こうにいる下手人の姿を捉えるべくベルと一緒に壁の向こうを見るとそこには顔を青ざめたベルの義母にしてメーテリアの双子の姉であるアルフィアが顔を青ざめて立っている姿があった。

 

怒ったメーテリアの怖さを知り、さらにはベルまでメーテリアに匹敵する圧力を放っているのを見てアルフィアは思わず世界三大依頼の1つであるリヴァイアサンと対峙した時以上のプレッシャーと恐怖を感じ、その場からの逃走を一瞬考えたがベルとメーテリアの怒気に恐れをなしたゼウス・ヘラファミリア一同がアルフィアの足止めをして2人に献上してたことでそれも失敗。

 

その日アルフィアは3時間ほど寒空の下ずっと正座させられながらベルとメーテリアの説教を味わい、説教中アルフィアは死を覚悟し説教が終わった頃には真っ白な灰のようになり口から魂のようなものが抜けかけていた。ちなみに覗きを働いたゼウスとアルトを始めとした一部ゼウスファミリアの団員たちはヘラとヘラファミリアの団員たちによって釜茹での刑が執行されていた。

 

この日からゼウス・ヘラ両ファミリアと村の住人たちの共通事項としてベルとメーテリアを怒らせる真似は絶対にしないということとなった。だがそれでも月に何回かゼウス・ヘラファミリアの団員たちの誰かがうっかりやらかしてベルかメーテリアあるいはその両方からの説教の雷が落ちるためゼウス・ヘラファミリアは巻き添えを喰らわないように下手人を差し出し逃げることを覚え、その際に乱闘することもありその結果ステータスが上がりランクアップを果たすこともあったりする。(ちなみにこのベルの怒る姿を見て結果的にティオネがよりベルにメロメロになった)

 

オラリオに来てからベルが怒ることはなかったためにそのことを知るものはまだオラリオでベルのその姿を知るものはザップ、ティオネ、ティオナの3人だけだった。

 

しかしそのベルの怒る姿をオラリオの民たちは知り、かつてオラリオでヘラとその眷属たちの所業を知る者たちはかつての最凶たちの恐ろしさを思い出すのだった・・・。

 

そのきっかけは突如地面を砕きながら出現した極彩色のモンスターたちによるものだ。突然街中にモンスターが出現したことにより誰もがパニック状態に陥る中ベルは深淵の闇のような黒く濁った瞳で目の前の極彩色のモンスターによって破壊された屋台と地面に散乱している砂や埃など色んなものがこびりついたケバブの材料を見下ろしていた。

 

全く逃げる様子のないベルを獲物と捉えた極彩色の巨大な花のようなモンスター:【食人花(ヴィオラス)】はベルに対して涎を垂らしながら迫るが、それに対してベルはいつの間にかその手に握るミスリル製の鎖をヴィオラスに巻き付けて地面に叩きつける。

 

「!?」

 

ヴィオラスは何が起こったのか分からず鎖を振りほどこうともがくがミスリル製なのとベルの純粋な力のステータスを前に身動きを取ることもできなかった。ベルはゆっくりとヴィオラスに歩み寄りそのまま無限収納箱(アイテムボックス)から大剣を取り出しそのままヴィオラスの頭に叩き落とす。

 

「────死ねクソ花が」

 

ベルは淡々と告げながらヴィオラスの頭部を口内にある魔石ごと切り裂く。魔石を失ったヴィオラスはその身体を灰へと変えた。ベルはヴィオラスが絶命したのを確認してから暴れ回っているヴィオラスと二本の触手の様な腕を持った、芋虫型のモンスター:【巨蟲(ヴィルガ)】に向けて手をかざす。

 

「ロックバレット」

 

ベルは掌から岩の塊を弾丸状にして勢いよく放つとヴィオラスとヴィルガたちの体を穴だらけにして絶命させる。ベルが魔法を使用したことによって魔力に反応したヴィオラスたちは一斉にベルに襲い掛かる。

 

「来い虫けらども。貴様らに冒険者の作法を教えてやる」

 

ベルは迫り来るヴィオラスたちに向けて大剣を向けながらそう宣言する。

 

 

 

「すごい・・・」

 

オラリオの中央広場。オラリオの各地で極彩色のモンスターが突如出現しオラリオ五大派閥、ガネーシャ、アストレアファミリアを始めとした実力のあるファミリアたちが対応している中、ロキファミリアのLv.5冒険者【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインは目の前で行われているベルと極彩色のモンスターたちの戦いに魅入っていた。

 

ベルはどこからともなく武器を取り出すまたは周囲にいる冒険者あるいは鍛冶師が投げ込んだ武器を受け取ってはヴィオラスとヴィルガたちを切り裂くまたは弾き飛ばしていた。ヴィルガの溶解液で溶けた武器やヴィオラスを攻撃した際に折れた武器が至る所に転がっているがそれと同じくらい砕けた魔石とモンスターの死骸である灰の山が広場にはあった。

 

さらにベルは武器による攻撃だけでなく魔法で生み出した炎・風・水・岩・雷の弾丸でヴィオラスたちを攻撃し、その体にダメージを与える。

 

ベルの戦い方はダンジョンでのミノタウロスの群れと強化種のミノタウロスとの戦いを見て魔法と大剣を駆使したやり手の魔法剣士だとアイズは思っていたが、アイズの想定以上にベルはぶっ飛んでいた。

 

これまでのヴィオラスたちとの戦闘でベルは大剣やナイフ、短刀というミノタウロスとの戦いで見たベルの得意とする武器でもかなり良い動きを見せていたが、それ以外の武器である斧や槍、ロングソード、さらには弓など多種多様な武器を第一級冒険者たちに匹敵するほどの腕で扱っていた。冒険者というのは一部の例外を除いて基本的に使用する武器の種類を変えることはしない。というのも命懸けで戦うダンジョンにて慣れない武器を用いて戦うのは自殺行為であるし、複数の武器を自由自在に扱えるようになるまでの費用や時間などを考えればそんなことは無駄としか言えない。

 

アイズの知る限り多種多様な武器を扱えるのは同じロキファミリアのラウル・ノードやヘファイストスファミリア団長の椿・コルブランドくらいだろう。アイズが見る限りベルはそんな彼らと同じくらい・・・いや、下手したらベルの方が上手く扱っているかもしれない。

 

さらに複数の武器を戦況に応じて使い分けながらかなりの回数魔法を使用していた。アイズが数えただけでも50回近くは使用しているがおそらくもっと使用しているだろう。だと言うのにベルは魔力切れする様子を見せていない。

 

そんな武器も魔法もどちらの腕も並外れているベルの戦いを前に誰もアイズを始めとした冒険者たちは戦うことを忘れ、先程まで突然現れたヴィオラスたちに恐怖していた市民たちを含めその場にいた全員がただ黙って立ち尽くしベルの戦う姿を前に魅入ってしまっていた。

 

「あれが【最速英雄(アキレウス)】・・・」

 

冒険者の1人がポツリと思わずベルの2つ名を呟く。彼を初めとしてオラリオの冒険者の多くはベルの最速ランクアップをインチキあるいは虚偽だと決めつけていつかその化けの皮を剥がしてやると息巻いていた。だが実際にベルの戦う姿を見てそんな気持ちは消し飛んだ。そのモンスターたちを圧倒するその強さに、周りに被害を出さないようにモンスターたちの意識を自分に集中させているそのあり方に、冒険者たちはベルに嫉妬を覚える前にかつてオラリオで冒険者になる前になりたいと憧れた英雄の姿を幻視する。

 

「英雄・・・」

 

アイズはベルの戦う姿を見逃すまいとジッと見つめながら心の中に渦巻く感情を抑えていた。

 

 

────どうして君はそんなに強いの?

 

────どうしてそんなに君は人のために戦うの?

 

────どうして君はそんなに眩しいの?

 

 

どうして、どうして、どうして・・・。とアイズは頭の中がごちゃごちゃになっているのもお構い無しにたくさんの疑問で溢れている中、アイズはある一言だけを思わず口に出して呟いた。

 

「君は、英雄なの・・・?」

 

この世に英雄なんていないと否定し、自らが戦う道を選んだ少女はベルの戦う姿を見て英雄であった亡き父の面影と思わず重ねてしまったことで願うかのように誰にも聞こえない小さい声で呟いてしまった。

 

 

────少女の心に燻る黒い炎を取り払ってくれる彼女の英雄がその手を取るのはそう遠くない話である。

 

 

 

(────そろそろ打ち止め、かな?)

 

ヴィオラスたちとかなりの時間戦闘を続けていたベルは最初にヴィオラスたちが現れた地面の穴から新しいモンスターが姿を現さなくなったことと遠くの方のあちこちから聞こえていた激しい戦闘音が少しづつ消えていくのを感じて今目の前にいる3体のヴィオラスで打ち止めだと判断する。

 

「── 天穹を統べし蒼き理よ。原初の夜を切り裂きし七星の軌跡よ。悠久の時を越え巡りし光の審判よ。我が身を媒介とし、神代の断罪を顕現」

 

「並行詠唱・・・!?」

 

ベルが詠唱を唱えながらヴィオラスたちの攻撃を回避あるいはその手に握る短剣とナイフで攻撃を捌く姿を見てエルフの冒険者は戦慄する。並行詠唱は魔法の長い詠唱を唱えながら同時に移動や近接戦闘を行う上級技術であり、詠唱に失敗すれば魔力爆発(イグニファトゥス)を起こす危険性もあるため現在のオラリオでもこの技術を使えるのは第一級冒険者の中でも限られたものたちだけであるためその技術の獲得の難しさがよくわかるだろう。

 

「星は語る、運命は定める。天に刻まれし七つの導きがいま此処に集い、裁きの剣となる」

 

ベルはヴィオラスの蔦を回避しながらも詠唱を続け、魔力を高めていく。魔力に反応してヴィオラスたちはよりベルへの攻撃を激しくしていく。

 

「第一の星は導き、第二の星は束縛、第三の星は断罪、第四の星は滅却、第五の星は浄化、第六の星は終焉、そして第七の星は――絶対なる裁定」

 

しかし異世界でのダンジョン経験、そしてゼウス・ヘラという最強たちによる特訓を経験しているベルにとってヴィオラスの攻撃を避けることはそう難しいことではなかった。

 

「我は星を詠みし者、天命を執行する者。逃れ得ぬ因果をその身に刻め」

 

そして詠唱の完了が近づいてきたことでベルは短剣とナイフをアイテムボックスに収納し先端に紫色の水晶が埋め込まれたベルの背丈を超えるほどの長さを持つ黒杖【魔杖ユグドラシル】を構えて貯めていた魔力を収束していく。

 

「七つの星に裁かれよ!!降り注げ、光の剣群。星辰の名のもとに敵を穿て――【グラン・シャリオ】!!」

 

そして周りへの被害を出さないように3体のヴィオラスにだけ狙いを定め、ベルがヴィオラスの攻撃を回避しながら上空に設置した魔法陣から勢いよく降り注いだ七つの星を思わせる魔力砲がヴィオラスを跡形もなく消し飛ばした。

 

 

────ベルが倒したヴィオラスを最後にオラリオの各地に出現した極彩色のモンスターたちは全て討伐された。そしてまだ一部とはいえベルの実力を疑うものが減ったのは紛れもない事実であろう・・・

 

その後はガネーシャ・アストレアファミリアを中心にモンスターが暴れまわったあとの後処理に走り回り、アトラス、オーディン、シヴァを始めとした特級・第一級冒険者たちは極彩色のモンスターたちが出現した穴に入って調査をしたり、ディアンケヒトやミアハなどの医療ファミリアは治療のためにオラリオを走り回ったり、ヘスティアファミリアが炊き出しなどを行ったりなど各ファミリア及びギルドは色々と動かなくてはならなくなったために怪物祭は中断となってしまった。

 

────ちなみにヴィオラスたちを相手に暴れまわったベルだが、一人で危ないことをしていたということでフィルヴィス、エイナ、アミッドたちに説教されてしまったが、ベルは涙目の上目遣いという反撃を行いフィルヴィスたちの胸を『トゥンク』させたことで説教を中断させることに成功した。

 




あとがき

今回ベルくんが使用した魔法の元ネタは【フェアリーテイル】のジェラールが得意とする魔法のグランシャリオになります。次回はダンまち外伝のソードオラトリアの18階層での出来事をやろうかと考えてます。

番外編候補

  • イレギュラー・オラトリア
  • アナザー・オラトリア
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