一
ツヅリが瞑想しているときに、足音が響く。ツヅリの開いた目にはミカが映っていた。
「なんか久しぶりだね、つーくん」
「ミカ」
「それで、ここで私を殺してくれるの」
笑みを浮かべているミカを前にして、ツヅリは立ち上がる。
「どうして僕に殺してほしいのかもわからないのに、殺せるわけがないよ」
ミカは「ふーん」とこぼしてから言葉を返した。
「あまり言いたくはなかったし、多分言っても殺してくれないんだろうけど、そう言われてしまったら答えるしかないかな」
少し言葉を考えて、ミカは話しはじめる。
「この世界に意味を持っている存在なんて一つとしてないから、人を殺そうとした悪人の私を殺すことで英雄になってほしいんだよ」
「いやだよ」
「そう言うと思っていたよ」
ツヅリの間髪入れない否定に、ミカもすぐに返す。
ミカをにらむツヅリをミカは微笑みで見つめる。
「つーくんはこの世界に意味がないって思わないの」
「思わないよ」
「どんな努力も虚しく、みんな三十八歳くらいになったら死んじゃうのに。大切な人も、無意味に死んでしまうのに」
変わらず笑みを浮かべているミカの表情は、どうしてか能面のように感じられた。
「つーくんが勤めを果たしたとしても、けっきょく意味なんかないよ。死ぬのが早いか遅いかだけじゃない」
「僕は幸せに生きてほしいだけだよ」
「ああ、そっか。つーくんは死ぬことを考えていないのか」
何かに納得したように、ミカは何度もうなずく。
「どうして。私と君は同じ立場にあった。私よりも早くに両親と死に別れた。そういえば、ご両親とのお別れのときも悲しみよりも決意を固めているような表情をしていたよね。それはどうして」
笑顔の仮面が取れたミカに、ツヅリは答えた。
「母さんも、父さんも、僕の幸せを祈り、幸せそうに死んだからだよ。だから、死ぬことそれ自体に悲しんだりしなかった。それだけだ」
「私のお母さんだって、私の幸せを祈ってくれた。儚くとも幸せそうな笑みを浮かべて、死んでいった。それなのに、私の胸には悲しみがあふれていた」
「それは」
「もう慰めなんかいらないんだよ。あのときの私じゃないから、つーくんの言葉がなくても私の道は揺るがない」
ツヅリは何かを口にしようとして止める。その先の言葉は、わかったような言葉はきっとミカの心に亀裂を入れてしまうと感じた。
だから、代わりの言葉を口にする。
「あらゆる命には終わりがある。意味がないというのも理解できなくない。それでも、僕は意味があるって信じたい」
「君はまぶしいよ。目が痛いくらいに」
「僕はミカと限られた時間を一緒に生きていたいよ。ずっと一緒に」
「殺して、私と世界の英雄になってよ。そうして、私の人生に意味があったって、あなたの生に、意味をつけることで思わせてよ。お願いだよ。まだ、足りないのなら、もう本当に人を殺してしまうしかないよ」
「ミカが人を殺す必要なんかないよ。そして、ミカが死ぬ必要も僕が英雄になんかなる必要もないよ」
「それじゃあ、どうして生きているのかわからなくなるじゃない」
ミカはツヅリにすがりついてうつむいた。ツヅリの服に皺がよる。ツヅリはミカの頭を抱きしめた。
「ようやくわかったことがあるんだ。これはミカのお母さんやミカが僕にさまざまなことを教えてくれたから、至った結論だと思う」
子守唄を歌うように、ツヅリは言葉を続ける。
「僕はいつも役目に押しつぶされそうになっていた。僕の言葉が人の安らぎになってほしいと思いつつも、本当にこの言葉でいいのか悩んでいた。言葉が届かなくて、安らぎのために眠ってもらうだけになった人もいた。目をさまして、僕の言葉に救われたって言ってくれた人もいた。ミカにも僕は言葉を間違えないって励ましてもらったこともあったね」
「だから、つーくんは誰かを助ける英雄、ヒーローで救世主様なんだよ」
ミカの言葉にツヅリは首を横に振る。
「僕はそんな大層なものじゃないよ。いつも悩んでいた。でも不思議と役目に押しつぶされそうになると思ったことはないんだ。どうしてかわかる?」
「それがつーくんの強さだよ。絶対に物事を投げださない」
「それも違うよ。僕のそばにはミカがいた。だから、僕は役目を投げださずに済んだ。これだけでも、僕はミカの人生に意味がなかったとは思わない」
「それは私の立場にいたら、ほかの誰でもそうなるよ」
ツヅリはより強くミカを抱きしめる。
「つーくん?」
「でも、僕にとっては君だ。誰かからもらう意味じゃだめかな」
「……ずるい言葉。でも、もう私ではなくてもいいんでしょ。檜垣ミコさんだって、つーくんのことを支えてくれるように見えたよ」
「ミコさんから好意を伝えられたけれど、謝ったよ。今の僕はミカを助けることしか頭にないんだ」
「やっぱりつーくんは救世主様だよ。嬉しいって気持ちもちゃんとある。でもね、私は私のために、そして君のために独りよがりだとしても君に殺してもらうよ」
ツヅリの胸を優しく押して、ミカは離れる。
いつの間にか持っていた手帳に、何かを書き記す。
「人を操ることは簡単なんだよ。幻覚を見せてあげればいい」
ツヅリは離れた分だけ詰めよって、もう一度ミカを抱きしめた。
「え」
「どうやら手帳の力は松木のガラスペンで打ち消すことができるみたいなんだ」
ツヅリはより強くガラスペンをにぎった。
「僕の言葉は、ミカの気持ちを打ち崩すに足りなかった。でも、ミカが独りよがりだとしてもと貫くというのであれば、僕も僕の言葉を貫くよ」
ツヅリはガラスペンを使って宙に綴る。
「ミカが自分の人生に意味を見出すことができますように。そのために僕の人生を使います」
「つーくん、一体、何を」
「女神様へのお願い事だよ」
青く光るガラスペンはツヅリの意思を正しく伝える。世界が青にそまる。光に飲まれていく。
「もしかすると一度、お別れになるかもしれないけれど、僕はずっとミカが幸せになれることを祈っている。祈ることしかできないけれど、君が君だけの人生の意味を見つけることができるって信じている。そして」
ツヅリとミカの間が光でかき消されていく。もうすでに互いの顔が見えないくらいに、飲みこまれていた。それでも、ツヅリはミカをより強く抱きしめて離す。
「好きだよ、ミカ」
声はガラスペンの軌跡と同じようにすぐに消える。
しばらくしてミカが目を開けたときに、周りには誰もいなかった。
二
ツヅリが向かった場所は、家の裏にある山の頂だった。
獣道しかなく、すでに息があがっていたが、どうにか登り切る。
「きっと演算機はこのあたりにあると思うんだけど」
地域の誰も、それこそミカやツヅリも足を踏みいれたことがない場所にあたりをつけて、ツヅリはナノマシンを調律する演算機を探していた。
女神のAIと話をすることが目的だ。
話す内容はまだ固まっていなかったが、とにかくミカの手助けがしたかった。
「まさかアンテナもないなんて」
無線である以上は、アンテナか何かで電波を飛ばしていると考えていたツヅリだったが、目に見える大きな建造物はどこにもない。
それに、不自然な箇所も時間が経ちすぎているせいか見当たらなかった。
「ガラスペンに案内機能なんかがあればよかったんだけど」
いくら見つめても何も変わらないガラスペンに、ツヅリはため息をこぼす。にぎっていても、温かくなって何かを教えてくれると言ったことはなさそうだった。
「まだ晴れているけれど、夕方には野宿ができる場所を確保していないといけないよね」
足元を確認しながら、しっかり踏みしめて移動する。
途中、休憩を挟みながらの探索は、空が橙色が差しはじめても何も成果がなかった。
ため息をこらえつつ、少しひらけた場所で野宿の準備を進める。
ちょうど森にぽっかり空いたような小さな草原で、空を見上げれば穴の中からのぞいているようにも思える場所だった。
そして、すぐに夕日は落ちて星々が隠されていた姿を見せはじめる。
持ってきていたランプをつけ、寝袋に入り横になる。星が満ちた空を見上げて考えることは、ミカの叫びだった。
ずっとそばにいても気づけなかった痛みに、ツヅリは自分のことしか考えていられなかったとほぞを噛む。
ただの自傷行為だと思っていても、自分がそこまで万能ではないと思っていたとしても、ミカの一番そばにいた自分が寄りそうことができなかったことが苦しかった。
一つ息を吐く。
「どれだけかかるかわからないけれど、探さないと」
しっかり寝袋に収まり、冷気に触れないようにする。目をつむり、明日に備える。
小さな寝息が聞こえはじめると、寝袋の中から光がもれた。
青い光が生きているかのように明滅して、ツヅリの顔を照らす。
ガラスペンが呼んでいた。
三
ツヅリが意識を覚醒させて、目にしたのは青く灯る草原だった。周りは木々で囲われている。
「女神様?」
ツヅリの疑問に答えるように、女神が現れた。
「よくもやってくれたね」
疲れた様子の女神に、ツヅリは頭を下げる。
「お手数をおかけして申し訳ございません」
「注文が多いから演算機も久しぶりに熱を出してしまった。タスクが完了するには、まだかかるだろう」
「ありがとうございます」
仕事が増えたと肩を下げる女神は、やはり元が人間だからか疲れ切ったエンジニアのようだった。
「それで、君はどうするんだい。いつまでも山にいるわけにはいかないだろう」
「そこは根気勝負になりますね。昨日の今日なので、準備が万全というわけではないですし」
「だろうな」
女神は少し悩んだあとに、口を開く。
「ひとまずは寒さを凌げる場所に案内しよう。朝、目が覚めたら原っぱの中心に、ガラスペンをさしてしばらく待っていてくれ。そうすれば周りの木々にあるうちに枯れた大木のウロに地下室へ通じる階段が出てくる」
「やはりこの山自体が演算機の隠れ蓑なんですか」
「ああ。藤波と松木のどちらかしか立ち入らない場所を探したときに、やはり私の研究室、というには広いが、そこが一番都合がよかったんだ」
「なるほど」
「地下室に入ったら、あとは適当に過ごしてくれ。万が一の避難所も兼ねていたから、食料の自給設備もある。適当に収穫して腹の足しにすればいい」
「避難所とは知りませんでした」
「何のための避難所なのか忘れてしまっただろうから、やっぱり伝承が途切れているんだろう。ただ、演算機が命令すれば自ずと足を向けるようにすることもできる」
「ナノマシン、万能ですね」
「脳の仕組みが割と単純なんだよ。すべて電気信号で情報の伝達が行われているから、電気信号のアルゴリズムを解析したら、できるようになった」
少し引くツヅリに、女神はため息を吐く。
「AIの技術革新はそれだけすごかったんだ。どんなに人類が研究してAIに追いつき、追い抜こうとしてもできなかった。どうにか理解できたと思ったら、何歩も先にAIは、いるんだ。正直、研究者なんて狂人しかいなかったよ。寝食を忘れて没頭しないと追いつけないと思って、体を壊したり自殺したりした人を何人も見た。自分の研究が無意味だと思って苦しんだ奴も知っている」
「女神様はどうだったんですか」
「私は研究が好きというより知識を得る方が好きな人間だった。だから、AIがまとめた論文を読んで、自分なりに思ったことをまとめていた。するとすぐに論文を作成したAIから返事が来るんだよ。あの時間が自分もこの世界に生きているんだと思えて、苦しいと思ったことはなかった。ああ、そうだな、意味なんてかけらも考えなかった」
楽しそうに語る女神に、ツヅリは本心だったんだろうと思った。
「ミカは人生の意味について苦しんでいた」
ポツリとこぼされた言葉に、ツヅリは意識が向く。
「私は人生の意味なんて考えていなかったから、何もアドバイスなんてできないが、君はどうだ」
「僕も、そのときそのときが精一杯でゆっくり考えられなかったです」
「そうだろうな。松木の人々には苦労を強いてしまったことは後悔かもしれない」
「そういえば、初代様とはどういう関係なのですか」
「あいつか? あいつは私に付きまとうストーカーだよ。鬱陶しいくらいに世話を焼いてくれた。図体はでかいし、見た目通りに力も強いくせに、すぐ感傷的になる。いつまでも過ぎたことを悩んでいた」
コメントに困ると、ツヅリは苦笑する。
「よくいえば優しいやつだったよ。コミュニティを作る際に、できる限り多くの人を救うんだと私と衝突したのが一番大きなケンカだったかな」
「初代様はその後も、救えなかったというと上から目線ですが、コミュニティに参加できなかった人のことを想っていたのですね」
「だろうな。私たちの時代にも宗教はあって、あいつは神職の家系だったそうだ。だから、私を女神としたんだろうが、そのせいで死んだあとも大変だよ」
「今回もお力をお貸しいただき、ありがとうございます」
「気にしないでいいさ。そもそも今の私はAIが模倣しているだけなんだから」
「……それでもですよ」
「そうか」
ツヅリの言葉を女神は微笑ましいもののように受け入れる。
それからも会話を続けていると、女神が何かに気づいたように話題を途切れさせた。
「どうやら演算が完了して、実行されたようだ」
「そうですか。ありがとうございます」
「しかし、君は仮にミカが思い出さなかった場合、もしくは思い出して最悪な行動をしてしまった場合、どうするんだ」
「手帳とガラスペンが万能ではないとおっしゃったのは女神様ですよ。いつか、ミカは記憶を取り戻します。そして、無意味な行動はしないでしょう。意味を一番に求めているのはミカなのですから」
女神は納得したようでうなずく。
「しかし、そんなに人生の意味というのは大事なのか」
「そうなんだと思います。頑張っているのだから、何か証が欲しいと思うのは自然なことなのだと思います。女神様だって、人間に何かしらの意味を見出したからコミュニティを作られたのだと思っていますが違うのですか」
「どうだったかな。当時はそのときそのときで精一杯だったから、意味があるのかなんて考えてはいなかった。ただそうしなければいけないという感情で動いていたと思う」
「初代様だったら、なんていうのでしょうね」
「あいつならきっと、何事も意味はあるんだよって言っていそうだ」
ツヅリは相槌をうち、少し考えこむ。
「まもなく夜も明ける。きっと時間はたくさんあるはずだから、よく考えてみるといい。話し相手が必要であれば姿は見せれないが、私が相手になる」
「本当に、何から何までありがとうございます」
四
目をさましたあとは女神に言われたとおりにして、ツヅリは演算機がある避難所へ入る。
ロボットによる掃除も行われていたようで、忘れられていたとは思えないほどに清掃が行きとどいていた。
行きどまりにあたるまでロボットに案内されながら歩きつづけていると、資料室と書かれたプレートの部屋にたどりつく。部屋には多くの本が鎮座しており圧巻だった。
ロボットは書見台の上に置かれていた一冊の本を指し示す。
手にとって開いてみると、設備の情報がまとまっていた。避難所としてのキャパシティから設備の使い方、さすがに演算機までの道順はないが暮らしていくことに不自由がない程度には情報がある。
ツヅリはひとまず必要になりそうな食糧庫と浴室を見つけて内容を読んだ。
「女神様はどこに」
ツヅリの声に反応したのは、ロボットだった。
「このロボットを通して返事ができる」
「至れり尽くせりとはこのことですね」
「できる限り、不便がないようにしたからな」
「ありがとうございます」
「このあとはどうする。適時、ナノマシンに対する動作は監視しているから、目的が果たされたときに教えればいいか」
「それでお願いいたします」
「わかった」
女神との会話を終えると、資料室内の冊子を眺める。
ほとんどは技術に対する論文を紙に印刷しているようだったが、ときおり哲学や宗教の論文も収集されていた。そのうちの一つを手にとってみるが、宿命というべきか知らない論文を参照する必要があり理解はできない。
「補足は私がするから、言ってくれ」
「ありがとうございます。これらの論文は女神様が集めたのですか」
「技術系は私だが、宗教や哲学のものはあいつだな。神道だけではなく、世界中の宗教を語れるほど勉強していたようだ」
「女神様もですが、初代様もすごいですね」
「会うことは叶わないだろうが、本人に会っても褒めてやるなよ。うっとうしいから」
これまでも女神に邪険に扱われているところからするに、松木の初代はずいぶんと女神と親しかったのだろうと思わせる。
ツヅリは初代に思いを馳せながら、人生論を論じた論文を手にとる。
「やはりそういう系統が必要か」
「ええ、次にミカと会うとき、きっともっと言葉が必要になると思うんです。行動で証明できたらよかったんですけど、あまりに時間がかかりすぎますからね」
「なら、芸術論やその作品も用意しよう」
あまりピンと来ていない様子のツヅリに女神は自嘲の声をこぼす。
「その様子を見ていると、自分の選択は間違いだったようにも感じるな」
「たしかに作品は多くなかったですが、知っていますよ」
「いや、出回っていたのは私の時代よりも前のものだけだろう。古典もいいが、そのときの空気を反映した新作も世界には必要だと思ったんだ。しかし、コミュニティは衝動、つまり感情を調整する必要があったために、日曜大工的に創作をしてもコミュニティ全体で発表してあとの時代に残るような作品は生まれていない」
「本屋にあるのももっぱら参考書のようなものでしたね」
「なら、あまり小説やマンガといったものにも触れていないだろう。絵画や音楽も楽しむどころではなかったはずだ」
「言われてみれば、歴史の出来事の名前と年号を覚えているような、そのくらいかもしれないです」
「なら、論文で自分の言葉を補強するよりも、作品を楽しんだほうがいいだろう。人類が誕生してから生まれてきた作品たちは論文の論理よりも雄弁に世界を生きて語っている」
ロボットは資料室から抜けて、より広い空間により多くの本が収められた部屋へ案内する。部屋のプレートには図書室と書かれていた。
「はまってしまうと時間を忘れてしまうだろうから、定期的に声をかける」
そう言って、ロボットは部屋の隅に収まる。
「とはいえども、何から手にすればいいのか」
ツヅリの言葉に反応するものはいなかった。しかたがなく、図書室を一通り見てまわることにしたが、見ただけで理解ができるタイトルがあれば、理解できないタイトルもあった。
イラストがかわいらしい表紙や胸がドキドキするような表紙の本もある。同じタイトルでナンバリングがされている本の並びもあった。
これがシリーズものか、とツヅリはそのうちの一冊を手にとった。なんとなく、目を惹くタイトルだった。
読み進めていくと、立ち読みでは辛くなってきたのか地べたに座り、読みはじめる。
数時間がすぎる頃には、最初に手にとったシリーズを読破し、次の作品を求めて徘徊するゾンビが誕生していた。
「やはりこうなったか」
ロボットが近寄って、声をかける。
「すみません、ちょっと面白すぎました」
「息抜きにもなっているだろうから、よかったよ」
「いや、僕に妹はいないんですけど、情緒不安定な妹がやりたいことを全力で支える兄と、兄にも全力で楽しむことができるものが見つかってほしいと願う妹の話でしたが、とても胸が熱くなりました、兄が働く本屋の店長さんも、兄妹の両親も暖かく見守っていて。それ以上に、妹のファンを名乗る不審者には笑いました。妹の創作活動のファンということですが、妹の作品に出てくる男のキャラクターは兄をモチーフにしていることを見抜いたと思えば、妹の活動を支えるために一緒に行動していた兄に惚れる展開は怒涛でしたね。ファンの妹もだいぶおかしなキャラクターでしたが、最後は本屋の店長さん、兄妹の両親、ファンの不審者と妹が兄のために力を尽くすシーンはずっと手に汗をにぎっていました」
本当に楽しそうに語るツヅリに、ロボットを通じて会話をしていた女神は固まっていた。
「女神様?」
「いや、ライトノベルはハマると怖いと聞いていたが、ここまでとは思わなかった」
「あ、すみません」
「謝る必要はない。そもそも楽しんでもらうために案内したのだから、本望だよ」
「それで、次はどうすれば」
「この著者の本はまだあったと思うから、案内しよう」
「ありがとうございます」
ロボットに案内されたツヅリは、ライトノベルの世界に旅立った。
読み終えては語っていくツヅリに女神は若干どころかだいぶ引いていたが、ロボットを通じてのためか気取られずにいた。そのせいで、余計にツヅリの語りがヒートアップしていたが、止める術を女神は持たなかった。
本当は劇中内に出てくる作品も書いてみたいのですが、時間も気力もなくてぇ……(弱音)