青春学園……テニス部が強く関東大会でもかなりの成績を残している学校だ。去年のメンバー大和を始め全国クラスの三年生達が引退し、戦力は不足になるかと思われた。
しかし去年一年生ながらにして当時部長だった大和を破った手塚、天才と言われる不二周助、そして他校で博士とまで言われる乾が二年生を率いており新一年生達を迎えることが出来た。
その新入生の中でも特に目立つ三人がテニス部に入部してきた。
1人目は桃城武。高いジャンプ力を生み出すバネを生かしたパワータイプのテニスプレイヤーである。
2人目は海堂薫。スネイクと言われる曲がる球を打ち、相手を走らせて相手のスタミナを奪うテニスプレイヤーである。
3人目は古賀大地。前の2人とは違いやや小柄な方だが肩の力が異常に発達しておりサーブの速さは国内では敵なしと言われる。またボレーも得意でボレー戦で打ち負けることはない典型的なサーブ&ボレーのテニスプレイヤーである。
今回のお話は3人目のお話。
3月14日午前5時前。2人の男が上り坂をランニングをしていた。1人は古賀大地だ。
大地は九州の小学校を卒業して東京の青春学園に入学することになっていた。しかし父親や母親は海外に行くことになってしまい、東京には住めなかった為に大地の伯父にあたる人物に頼ることにした。
そして昨日……つまり3月13日に東京に着いて大地の伯父の家に居候し始めた。
「大地、ペースが落ちているぞ!」
ハリネズミのような髪型をした中年がそう言って大地の頭を叩く。
「痛っ! 伯父さんやめてくださいよ!」
そう言って大地はペースを上げる。
「だったらペース落とさず走れ!」
大地の伯父は厳しく、そう言い放った。
「ぬおぉぉぉっ!」
そして最後に2人は坂を登りきり、そのままUターンをし坂を下った。つまりこれからランニングして帰るということだ。
「馬鹿野郎、ペースが早い!少し落とせ!」
大地の伯父はさっきとは真逆のことを言って大地のペースを落とすように命じた。
「えっ!? どうして…?!」
大地はそれに納得がいかなかった。スタミナを少しでもつけるためにはスピードをつけて走った方が良いと考えているからだ。
「坂の下りはペースを上げるよりもブレーキをかけて下る方がスタミナを奪う。スタミナを少しでもつけるためにはそっちの方が良いんだよ!」
大地の伯父の言う通り、下りでスピード出すよりもブレーキをかけて下る方がスタミナを消費する…
「わかりました」
大地はそれに従い、ゆっくりと坂を下った。すると足の疲れを感じるようになって坂を下り終えると
「遅いぞ! もっと速く走れ!」
などと言って大地の頭を叩いた。
大地達がランニングを終えると着いたのはボクシングジムだった。
「よし! 早朝ランニングが終わったから次のメニューをこなすぞ!」
そう言って大地の伯父がボクシングジムに入って行った。このジムの会長の名前は古賀大志。大地の伯父の名前である。
大地の伯父こと古賀大志はボクシングをやっていたがテニスプレイヤーだった。高校生の時にテニスに出会い、僅か一月で自分のテニススタイルを確立させてシングルス九州No. 1の相手にも勝ったという経歴があった。しかしボクシングの夢を諦めた訳ではなく、むしろ高校のテニス部をボクシング部に変える程ボクシングが好きだったので高校を出た後はしっかりとボクシングをやってプロとなりチャンピオンとなった。世界まであと一歩及ばず引退し、東京でボクシングジムを作り現在では名ボクシングコーチとして知られている。
「何やっている? とっとと入れ」
大地は大志にそう言われるとボクシングジムに入って行った。
これが古賀大地の東京の日常の始まりだった。