転生したら竜だった件 作:暁悠
さて、レイヴンの解析も終了したことだし、これからどうしようか?
地図で言えば、ここから一番近いのは〝天翼国フルブロジア〟か〝魔導王朝サリオン〟になる。ただし、フルブロジアは論外だ。そもそも、レイヴンがここから逃げてきたのだから。
だとするとサリオンになるが、俺の興味は別の場所に行ってるんだよね。
俺の興味は、全てクシャ山脈に釘付けだ。端的に言えば頂上に行きたいのである。そんな我が侭なのだが、二人は了承してくれた。ちなみに狙いは頂上からの景色のみなので、飛行してパッパと登ってパッパと降りて、山の向こうの〝ブルムンド王国〟に向かう予定だった。
なので、早速登っている。俺の飛行速度は、全力なら音速すら超える事が可能だ。〝竜種〟の肉体というのは便利なものである。
しかし、それではレイヴン達が追いつけないので、時速百キロ程に抑えている。とはいえそれでも早いので、俺達はすぐに頂上へと辿り着いた。
「おぉお……!」
「素晴らしい景色ですね」
「同感ですわ」
三者三様の感想を漏らす。
──が。
「そこのお前達、何者だッ!!」
俺達の背後に人影が。
「何者って……ただの観光者ですけど」
俺含め全員が完全に
「そういう、あなた方は?」
「俺達はこの先の集落に住んでいる
テング? テングってあの、鼻が長い真っ赤なお面を付けた、あの?
《否。
いつもみたく難しい説明をされるのかと思いきや、俺でもわかるようになっていた。『案内者』は優秀極まりないスキルだな、マジで。
というか、集落って?
「集落?」
「無駄話をする気はない。それで、何が目的だ」
ピリピリしてる奴らだな。って、マズイぞ。ナーガとレイヴンが殺気立ってる……。今直ぐにでも止めなきゃ、彼らを殺しそうな勢いだ。
「ちょっと待った二人とも。悪意はない」
そう言うと、やっと二人の殺気が鎮まった。まったく、二人は世話のかかる奴らだな……。
「俺達、本当に観光客なんですよ。これから、向こうのブルムンド王国に行く予定で──」
「問答無用ッ!!」
そう言って、二人がかりで俺に襲いかかってきた。
お構い無しかよ、コイツら!!
「問題ない、俺が対処する!」
そう言って、俺は二人を『多重結界』で包んでおく。同時に、結界で二人の槍を弾いた。
ここで、俺の憧れた戦闘を実践する番だ。実は、魔法に関しての資料を、かなりの数ナーガが仕入れてくれていたのだ。帝国でのグリン姉さんとの
「
手のひらから巨大な火球を飛ばし、地面を爆発させる。同時に、周囲の小石を浮かせて魔力を込める。
「
その魔力で強化した小石を相手の腹に撃ち込む。これで終わると良かったのだが、相手方が予想以上に辛抱強かったので終わらなかった。しかも、相手も負けじと魔法戦に打って出たのだ。
「
「
片方が小さな火炎球を放ち、俺がそれに反応している隙に炎の壁を作り出した。
もうわかっているだろうが、俺はこの戦いにおいて魔法しか使用しない。いわゆる〝魔法縛り〟を自分に課しているのだ。
はてさて、敵方の
しかも壁使いの方は長年壁張りに徹してきたのか、障壁系魔法の扱いに慣れていた。俺は『案内者』があるので幾らでも魔法撃ち放題だが、あっちはそうもいかない。
これがテング、そして魔法戦か……楽しいな、魔法戦!!
「
水の砲弾を放ってみたが、やっぱり敵の
「
火炎球を三発連続で。凄いな。
……これが最適かな?
「
俺が飛ばしたのは、巨大な槍が如くの
結果、見事
「
「させるか、
「何っ!?」
元素魔法:
こういう事してこそ〝魔法戦〟だよなあ!! ──そんな事を思いながら、段々とヒートアップしていく俺。
「へっへーん、どうだ!」
「少しはやるようだな」
「本当に少しかな?
「くっ、
俺の放った
「
これは、強酸性の水球を相手にぶつける魔法。まともに喰らえば骨まで溶けるらしいが、俺は安心して使える。なぜなら──
「
そりゃ、防がれるよな。そろそろ相手の魔力が復活する頃だと思ったのだ。
「くらえ、
壁の向こうからチマチマ攻撃するのが奴らの常套手段なのね、了解。
「
俺も負けじと相殺。同時に──
「
風の刃を作り出し、相手方の火炎障壁を切り裂こうとしてみるが……失敗。ならばと、
そんな使い方もあるのか──と、俺は少し感心した。
「凄いな、そんな使い方まであるのか。勉強になる……」
「ハッ! 勉強になっているのはこっちよ。俺達が使えないような高難易度魔法をバンバン使いやがって。魔力運用も、とても勉強になっているさッ!!」
そう言って、また連続の
──確かに、コイツらも戦いの中で成長している。ザード姉さんやグリン姉さんの時もそうだったが、格上との戦いってのはこうも人を成長させるものなのか……って、感心してる場合じゃない。
ちょっと技巧を凝らしてみようか。
「
「なっ、何だ!?」
「くっ、何をした!?」
これは、対象を闇で包んで、視界を遮る魔法。『魔力感知』を持つ相手には効かないらしいが、それでも問題はない。
まず、『魔力感知』とは自身を中心にして魔素を放ち、その反発具合で地形を把握するスキルだ。なので、魔素に汚染された雨や吹雪の中では意味を成さない。そういう時は、視界に頼るしかなくなってしまう。
今は、そんなものが降ったり
そして、同時に。
『ナーガ、レイヴン! 耳を塞いで目を強く閉じろ!』
『『了解!』』
結界があるので大丈夫だとは思うが、一応ね。
「──
これは、対象の視覚と聴覚を閃光と爆音で奪う魔法。より効果的になりやすいのは、
「ぐああっ!!」
「うぐっ、うぅあああっ!?」
そして。
「
いわゆる透明化魔法。そのまま二人の背後に〈飛行系魔法〉で飛び──
「──
二人の首を掴んで、俺の勝利が確定した。
「いやあ、もの凄い大規模な魔法戦だったよ。俺も学ぶ事が多かった」
「良く言うぜ! 俺達の攻撃は全部対処して見せた癖に!」
「どういう反射神経してたらあんな戦いが出来るんだ?」
──戦いを終えた俺達は、なぜか仲良くなっていた。
「俺はちょっと特別なんだよね」
「特別って何だよ」
「知りたくなるじゃねーかよ! 素直に教えなって」
「イヤだー! 絶対イヤだね!」
「ケチな野郎だな! あははは!」
激しい魔法戦をこなした後の俺達には、奇妙な友情が芽生えていたのだ。最初は、敵対同士だったのが……。
「お前、『属性転換』を使えるのか!?」
「まあね」
「凄いな! ウチの長老も、そんな事出来ないぞ!」
「俺達が使えるのは火属性と地属性だけだからな」
「おっ、煽てるのが上手い奴らだな! そんな事言っても秘密は教えないぞ?」
「もう『属性転換』については教えてもらったけどな」
「あ!」
「馬鹿だな、お前! ははははっ!」
「馬鹿とか言うんじゃねーし!」
今では、もうすっかり仲良しである。戦いを通じて深まる友情ってのはあるんだなと、思い知ったよ。
「あ、そうだ。もう行かなくちゃ。ほら、仲間を待たせてる」
「もう、行くのか?」
「ああ。また来るからな。俺はアーブ。あっちはナーガに、レイヴン。良かったら覚えててくれよ」
「わかったよ。ここは
──壁役の方がコウヨウで、攻め役がリョクヨウね。覚えておこう。身体的特徴の違いが乏しいから、名前と戦闘時の役で覚えなければ。
俺は名残惜しく思いつつも二人に別れを告げて、クシャ山脈を下り始めた。
「待たせてしまって済まなかったな、二人とも」
道中、キチンと謝罪しておく。俺が魔法戦をやりたかったからとはいえ、二人をほっぽって楽しんでしまっていた。
「いえいえ。アーブ様、楽しそうでした」
「そのお姿が見られただけでも、私は満足でしてよ」
二人の心が寛大だったから許されたが、こういう事はあまりしないようにしようかな。魔法戦、もの凄く楽しかったけど。
俺達は飛行しながら山を降り、数十分足らずで向こう側へ行ったのだった。
よし、目的地のブルムンド王国だ。
ブルムンド王国はジュラの大森林の西側に隣接する小国で、首都は石造りの街〝ロンド〟。温厚なドラム国王と聡明で美しい王妃はオシドリ夫婦として国民に人気があるそうだ。小国ながらにも繁栄しているらしく、俺が触れる人間の国としては二つ目。ただ、一つ目が技術最先端国である東の帝国なので、この国がどんなものか……。
「凄い落ち着く街だな」
「そうですか?」
ナーガとレイヴンはそうは思わないらしいが、俺にとってはかなり落ち着く街なのだ。
こう……日本で言う東京の郊外とか、田舎ではないけど都会でもない感じ? なんとも表現し難い感覚だな……。まあ、そういうものを感じる街なのだ。ブルムンド王国の首都〝ロンド〟は。
あ、公園らしきものがある……。こういうものもちゃんとあるんだな。
ツインテールの女の子が遊んでいる。一人みたいだな……。俺を見つけると、そのツインテールの女の子が走り寄ってきて──
「お姉ちゃんも遊ぼうよ!」
と言って、俺の足に抱きついてきた。
──お姉ちゃんっ!? いやまあ、そう見えるのはわかるんだがな?
「え、ええっと──」
「嫌なの……?」
ああっ、今にも泣き出しそう!
「い、いいよ! 何して遊ぼっか」
「遊んでくれるの? やった!」
泣かせるのは俺の良心が痛むので、それなら遊ぶ方がマシだ。
「で、何して遊ぶ? ……追いかけっこしようか」
「うん、する!」
元気よく答えてくれたので、遠慮なく。
「お──お姉ちゃんが逃げるから、ええと…」
「エマだよ」
「エマちゃんが追いかける側ね! よ〜し、逃げるぞ〜!」
なんて言いながら、ランニング程度に、エマちゃんが追いつける程度の速度にして小走りする。追いつける程度と言っても、全力疾走でやっと追いつけるぐらいだ。
「はぁっ、はぁっ──捕まえた!」
「わっ、捕まっちゃったか〜」
茶番ではあるが、子供を喜ばせるのは案外楽しいものだ。外野──ナーガと、レイヴン──は呆れている様子だけどね。
そんなふうに、何十分かかけてエマちゃんと遊んだ。
「ね、お姉ちゃん」
「うん?」
「来てよ、わたしのお家!」
「えっ」
ちょっとそれはマズくない? 周りは気にしなくても、俺は気にするというか……俺は男だから……女児の家に連れ込まれるってのは、ちょっとなぁ……。
「嫌……?」
「嫌じゃないよ。でも、お姉ちゃん忙しいんだ。また遊びに来るから、待っててね?」
そう言うと、エマちゃんは泣きそうなのを我慢して「うん」と答えた。
「良い子だね」
頭を撫でると、涙も引っ込んで喜んでくれた。
「それじゃあね」
「また来てね、お姉ちゃん!」
「……良かったのですか、アーブ様?」
「え? 唐突にどうした、ナーガ」
「どうしたもこうしたもありません」
何故か怒っているようだ。
「なんで怒ってるんだよ?」
「……怒ってなんて……ただ私は……」
やっぱり、可愛いな。エマちゃんも結構可愛い部類──事案じゃないよ? ──だが、ナーガには勝てない。
「可愛い奴」
そう言って、俺はナーガの頭を撫でる。いつもより、優しく。
「……もう、ばかですね。ふんっ」
ツンデレかな? 可愛い奴だ。
「またまた〜」
「そうですわ。自分の気持ちに嘘は吐かない方がいいですわよ」
「余計なお世話ですっ!」
なんかこう、ほのぼのって感じだ。
◇◇◇
ここから約二年ぐらいは、
その一年の中で、様々な事が起こり、様々な事を経験し、様々な場所を訪れ、様々な人々との交流を続けている。
リムルやミリムを含む、テンペストの人々。俺の姉さん達。エマちゃんもそうだ。コウヨウやリョクヨウとも、これ以降も何度か交流している。それ以外にも、ブルムンド王国を拠点とする大商人や、ジュラの大森林を歩いていた商人の
俺達も冒険者として、三人組のパーティ〝
その他にも、様々な国を訪れた。
一つは、かなりの魔法大国である〝
その次に訪れたのは、イングラシア王国。中央に白亜の王城がそびえ、劇場や図書館、自由学園という、学校のようなもの、ショーウィンドウを備えたブティック等、様々な文化的発展を遂げた施設が立ち並ぶ首都は、〝華やかなるルーラ〟とも呼ばれる大都会だ。サリオンが魔法大国ならば、こちらは文化大国とでも言えようか。グリン姉さんに渡されていたお金や、冒険者として稼いだお金の三割が減ってしまう程には、俺にとって楽園とも言える都市だった。
なんと、リムルはこの国で教師をしているらしい。前提として、俺は死んで、〝魂〟のみが異世界に渡った〝転生者〟に部類されるのだが──『案内者』による情報提供である──、この世界には異世界から転移してくる〝異世界人〟と称される存在や……大規模な儀式によって召喚される〝召喚者〟と呼ばれる存在がいる。今回の問題はこの〝召喚者〟の方だ。リムル曰く──
『詳しくは言えないが……この子達は、ある人から託された子達なんだ。異世界から、まだ子供の状態──存在として不完全な状態──で召喚される、不完全な召喚者の子供達。転生時や転移時の、〝界〟を渡る時に多大な魔素を浴びるらしいんだが、不完全なあの子達は、それを制御出来ない。だから今は、ただただ死を待つ状態なんだよ』
らしい。その子達は──
オレンジ色の髪の、勝ち気な少年──
内気で、控えめな性格の少年──
子供達の中では最年長であり、寡黙な青年──ゲイル・ギブスン。
子供達の中では最年少であり、ケンヤ以上に勝ち気な少女──アリス・ロンド。
珍しい黒銀色の髪を持つ、いつも本を読んでいる少女──クロエ・オベール。
この五人が、不完全な召喚児だそうだ。
いやはや、大変そうである。
更には、〝
まだ〝武装国家ドワルゴン〟には訪れていないが、近々訪れてみたいと思う。
そんな日々を満喫していたある日。新聞のようなものを見て、愕然とする。その中には──
『魔王達の名称が変更! 魔王が八名に変わり、総称も〝
〝
〝
〝
〝
〝
〝
〝
〝
という、一文が。
これを見て、最初に想起したのはリムルの姿だ。
魔王であるミリムと仲良さそうに接する、あのリムル。いや、ナイナイ──そうは思いつつも、リムルの下へは赴かずに日々を過ごした。なんか怖かったし。
それを余所に、冒険者チームとしての日々を満喫する俺達。そんな、ある日の事だった。様々な国が慌ただしく動いている時、俺達の運命を揺るがす大事件が起きたのだった。
それまでっていうのを投げ出しましたが、どうかお許しを。いつまでだって平和ボケ──※言い方──した生活を書くのもいいですが、私が飽きてしまいますし、何より何の進展もないと私が退屈ですから。書くことも減ってしまいますし。
……と、語りましたが、もう決まった事ですのでね。どうかお許しを……。
次回より、時系列としては開国祭辺りにまで一気に飛びます。そのおつもりで……。
あとは、次回から毎週日曜十四時の週間連載(?)にしようと思っております。どうか気長にお待ちください(期間を一定化してみたいと作者が言っています故……。一日一話にしようかとも思いましたが、平均文字数的に難しすぎるなと)。
なので、次回は十一月十六日の日曜日となります。