転生したら竜だった件 作:暁悠
座標転移を抜けた先にあったものは──
「ここどこ!?」
広大な広場だった。
『あちゃあ、〝庭〟に出てしもうたか』
『ま、初めてにしては上々というものよな。ヴェルアーブよ、手に〝欠片〟を持っておろう? それがあれば、いつどこからでもここに
「りょ、了解……」
もう何が何だかサッパリである。まさかの『案内者』さんまで沈黙を貫いているのだから驚きだ。
目的地に到着したからなのか、ディゴルネが道すがら話してくれた。
『まず一つ、教えてやろう。ここは〝
「ヘブンホールド?」
『せや』
基本的におちゃらけた様子だったラタトスクも真面目そうだ。
『さっきおれ達が居た〝庭〟にも、確かな〝戦力〟がいたんやけどね』
『じゃな。それらもヴェルダナーヴァが用意した対抗戦力──頼もしき幻獣達じゃ。じゃが、ある時以来、全員が無惨にも〝魔化〟してしもうた。力半分な
『おれの能力面で考えても、おれが優先して〝浄化〟されるのは当たり前なんだよね……』
「能力?」
『せや。おれの能力は、あらゆる面においての『伝達』や。思考、情報、力、五感、言葉……全てにおいて、な。おれはこの
『概ね間違いではないな。厳密には監視者とでも言おうか』
『せやな。そんな事はあり得へんかったけど、ヘブンホールドに侵入者が入った時、それを伝えるのもおれの仕事やからね』
ふーん。いや、待てよ?
「他の幻獣は?」
『
そんなにいるのか、幻獣。
「取り戻さないとな」
何の気なしに呟いたのだが……。
『──フッ、そうじゃな。
「……あの」
終始黙っていたナーガが、ようやく口を開いた。
『なんじゃ、お嬢さん?』
「その〝魔化〟した幻獣達って、どう対処すれば? 文献、なんていうのは……」
その問いを聞いたディゴルネは、一瞬の躊躇いもなく言い放った。
『キッパリ言おう。お主ら……お嬢さん方に出来る事は限りなく少ないとな』
「「えっ!?」」
当然、二人は驚いている。
『丁度目的地にも到着したし、説明するとしようか。その前に……この姿では、示しがつかん。──『
ディゴルネがそう呟くと、緑色の発光体が小さなディゴルネに収束していく。
《解。個体名:ディゴルネの細胞と思われます。ここから推察するに、ディゴルネは群生生物です》
群生生物か。つまり、一種の細胞が寄り集まって初めて〝ディゴルネ〟を形成する、と。
『──この程度か。まあ、良かろう』
十センチくらいの小さな緑のプニプニだったディゴルネは、大型犬程度の大きさの犬の姿になっていた。ただし、体の色は大部分が黒、緑で構成されている。
『ここは、見てわかる通り〝玉座の間〟じゃ。台座があるのが見えるな?』
確かに、目の前には台座がある。玉座とセットって感じで、椅子と机みたいな関係性なのかもしれない。そしてその台座には──
「……」
ゲームでよくある伝説の剣みたく、剣が突き刺さっていた。ただ、伝説という感じはしない。錆びついていて、ボロボロで……とても、伝説の剣のようには見えなかった。
『あれは〝
チャンピオンソード? 随分ちゃっちい名前だな。
「で、それが?」
『触れてみよ』
またかよ……。
「へいへい……」
嫌々ながらも、俺は朽ちた
「これは……」
と、その時。
《確認しました。個体名:ヴェルアーブが〝
何だとっ!?
《告。直ちに解析を開始します》
宜しく頼んだ……が、一体何だっていうんだ?
『やった、やった! 成功したやないですか!』
『さもありなん。こうなると決まっておったからな』
『姐さん、そんな薄情な……。運命とはいえ、褒めるもんは褒めなアカンもんですで?』
ラタトスクとディゴルネが何やら話し合っているが……当の俺にそんな暇はなかった。
《告。
流石の『案内者』さんで、今まで並行して行っていた解析作業を全て後回しにしてこの権能を解析してくれたようだった。
それで、このスキルに含まれる権能は『幻獣調停・幻獣寵愛・幻獣召喚・幻獣核化・幻獣装化』……らしいが、かなりエゲツナイ能力だ。
まず『幻獣調停』だが、この能力は単純明快だ。〝魔化〟から逃れた幻獣達を調停する……簡単に言えば、幻獣が言う事を聞いてくれるという能力だった。
そして『幻獣寵愛』。これは上記のスキルと似たようなものだが、少し違う。幻獣へ、自身の感情を伝える事が出来るようになる権能だ。これは一方通行ではなく、幻獣の方からも感情思念を送れる。懐くのが早くなる感じかもしれない。
更に単純明快な能力の『幻獣召喚』はそのままの意味だ。〝魔化〟から逃れ、俺の庇護下に入った幻獣を自由に召喚する事が出来る。ただし、向こうが不都合な時は突っぱねられるそうだ。
最後に、『幻獣核化』と『幻獣装化』だが、これは最も強力と言っていい。まず『幻獣核化』だが、これは従えた幻獣をエネルギー性の球状結晶体に『圧縮』する能力だ。そして『幻獣装化』は、この『幻獣核化』と二つでセット。結晶化させた幻獣──仮に、
このヘブンホールドの為に創られたであろう能力だけに、幻獣特化の性能だった。
光が収まると、そこには。
「こ、これ……!」
絶対的な空の色──
『……そうか。主を得る事で、太古の真なる姿へと戻ったのか』
ディゴルネも興味深そうに見ている。俺はそれをチラリと見てから、
鍔はない……が、驚いた。
《四角内に特殊重力力場が発生している模様。それにより、
長ったらしい名前だが、要は問題ないって事だな?
というか、ここまで長々考えたが……
そして、チャンピオンソードの素材だが。
《現時点で解析不能の
俺はこれを仮に、〝
『どれ、ヴェルアーブ。お主の魔力を注いでみい』
言われた通りに魔力を注いでみると──
「おわっ!?」
俺の体に、剣と同じ
『問題なく起動したようじゃな。それは〝天頂の鎧〟。
なんだかもの凄い説明を受けている気がするが、全く頭に入ってこない。
『さて、無事に主も決まった事じゃし……ラタトスク、
『賛成でさ! それじゃあ、早くこの城に順応してくださいや』
それだけ言い残して、二人は元来た道を帰っていった。
「………………ふぅ〜〜〜……」
緊張の糸が切れてしまった。一体何が起こってるんだよ。
「……なんだか、凄いことになっていませんか?」
「ええ、でしょうね」
ずっと黙っていた二人だったが、朧気ながらかなりヤバイ事に巻き込まれていると悟ったようだ。
「……これから、どうしたもんかね」
「とりあえず、この
確かに……それは良い案だな。気分転換にもなりそうだし。
「いいね。それじゃあ、早速探検開始だ!」
「おー!」
「……お、おー…」
──俺は、気づいていなかった。俺の中にある、俺自身や『案内者』でさえもアテにしていなかった、小さな問題児の〝因子〟が失われていた事に。
◇◇◇
この浮遊城探索で、わかった事を紹介しよう。
まず一つ目。全ての前提とも言える事。今俺達がいる〝
そして二つ目。幻獣達についてだ。既にわかっているものも含めて、おさらいしておこう。
……とまあ、この辺りが一番文献に残っている幻獣達だった。それ以外にも様々な動物の存在も確認している。名のある特殊個体として、ダーイン、ドヴァリン、ドゥネイル、ドゥラスロールという四頭で一頭の牡鹿がいる。その他にも、名はないにしても狐や狸、兎、猫、犬、猿、
三つ目。これは案外どうでも良かった事だ。このヘブンホールドの中に、最低限暮らしが出来る設備があった事だ。台所、個室、寝台、書斎、共有スペース……とまあ、こんな感じ。間取り的には、一階と二階に別れていて、一階には台所、個室、庭、その他様々な共有スペース。この共有スペースは幻獣達も使っていたようだな。二階には、馬鹿に出来ない広さの書斎と玉座の間。かなり古い時代からある魔導王朝サリオンの図書館よりも広大で、歴史的文献がビッシリと敷き詰められた書斎だ。幻獣達の情報を調べたのもこの書斎である。
「幻獣……面白いものですね」
「ああ。早く残りの幻獣達にも会ってみたいもんだ──って、そういえば……残りの幻獣達ってどこ行ったんだ?」
「そういえば聞いていませんでしたわね」
「どうすればいいんだろうな。ディゴルネ辺りにでも聞いてみるか?」
「それがいいでしょう」
アイツ、まだ何か隠してそうだしな。アイツに聞いてみるのも手だろうが、教えてくれない可能性があるのが懸念点か……。
早速、ヘブンホールドの〝庭〟に向かった。そこには、未だ昼寝中のディゴルネとラタトスクがいるだろうから。
到着したのだが……。
「あれ、いないのか? テッキリここで昼寝してるもんだと……」
「……」
二匹ともいなかった。庭で昼寝してくるって言われたような気がしたんだけどなぁ……。
《是。確かにそう言われています。ですが、ディゴルネとラタトスクが共謀して欺瞞工作を行った可能性もあります》
ま、そうだよな。どうしてもバレたくない不都合な事をしているのか、それとも……。
『お主等か。そろそろ来ると思っておったぞ』
「うわっ!? 急に馬鹿でかい『思念』で話しかけて来るな!」
『おお、スマンスマン。ちと加減を間違えたようじゃ……これで良いな?』
そう言って少し待つと、ディゴルネの思念の強さ──音量が調整された。
「あ、ああ……。それで、何だよ? まるで俺達が訪ねてくるのがわかってたみたいに言うじゃねーか?」
『そう、わかっておったとも。
そう言って、俺達の前にディゴルネが現れた。会った時と同じ、緑のプニプニの姿で。
「ラタトスクはどうした?」
『奴は今、ある事に励んでもらっておる。故に、今は会えん』
「ふぅん……」
何をしてるんだろうか。地味に気になる……。
『察するに、聞きたい事というのは幻獣達の事か。それぞれの所在を聞きに来た、というところじゃろう』
コイツもコイツで聡い奴だ。こう思うと、ザード姉さんと相対した時の、あの底知れなさを感じる。同類なのだろうか?
『不明じゃ。どこにおるのかも──いや、そうか。元々の棲家であった
ほう。つまり、この浮遊城が活性化したのに起因して、同じく〝魔化〟した幻獣達も……って事か。
「そういう事ね。じゃ、少し待ってみるかな」
と、その時──
『緊急事態や!〝魔化〟したフレースヴェルグが襲来してきよった! ヴェルアーブはん、直ぐに〝
ラタトスクの大音量の『思念』が、
やっと戦闘を書けます。