転生したら竜だった件 作:暁悠
第一話 異世界での目覚め
ん?
目が覚めると──いやいや、そんなこと言ってる場合じゃなくて。ここ、どこ? てか、どうなった?
ユニークスキルとかなんとか言われたよーな……。
そこで、俺の意識は覚醒した。
俺の記憶を振り返ってみよう。
俺の名前は
学校の帰りに通り魔に襲われて、好きな人を庇って、刺されて死んで。
よし、ちゃんと覚えてるな。まだ慌てる時間じゃない。
今の俺はというと、ゴツゴツした岩に囲まれている。つまり洞窟の中。どう考えたって病院の中じゃない。 特に刺されたであろう箇所に痛みは……感じない。快適だ。それどころか、熱くもなく寒くもない。エアコンで温度調節された快適な部屋にいる気分だ。
そして、問題は俺の体だ。
腕を見てみると、図体に比べてかなり小さい。指が六本あって、絶対に人間とは言えない。指を含む全身が、黒光りする竜の鱗に覆われていた。
──って、はあっ!?
信じられない。というか、信じろという方が難しい。
なんたって俺は、気づいたら〝竜〟になっていたからだ。
◇◇◇
少ししてから落ち着いて、自分の体を分析してみた。さっきまであんなに取り乱していたのに、不思議なものだ。人間というものは、パニックであるほど逆に冷静になるらしい。
人間……というか竜だが。
さっき見た通り、図体に比べて腕は細く小さく、指は六本。全身を黒光りする
頑張って確認してみると、翼は二対四枚。なんとも〝竜〟って感じの翼だ。
俺の全体像は、東洋の細長い〝龍〟ではなく、西洋の、どちらかというと翼の生えたトカゲに近い〝竜〟に似たものだった。
飛べるかどうかも試したかったが……思ったより洞窟の天井が頭に近かったので断念した。
というか、ずっと俺の体から何かが漏れ出している……鬱陶しいし、止まれっ!
そう念じると、その感覚が綺麗サッパリ消え去った。ふぅ、これで安心できる。
ってか、そんな呑気なこと考えてる場合じゃない! これ、どうなってるんだ? そもそも、どうして俺は洞窟にいるんだよ!?
《解。
どわっ!?
突然頭ん中で声がしたかと思えば……なんだって? ユニークスキル?
というか、この声は……死ぬ直前にも聞こえた気がする。どうなってるんだ? あんた、誰なんだ……? てか、どうして突然声が!?
俺の問いに答えるように、また頭に声が響いた。
《解。ユニークスキル『
NO! とりあえずNOで!
なんだかよくわからないこの場所で独りだなんて耐えられない。
とりあえず……『
《是。
堅苦しいな……。
ま、まあ、良き隣人になれることを期待しているよ。
そう言ってみたが、それ以降返事はなかった。
◇◇◇
返事はなかったと言ったが、それは撤回しよう。俺が困った時には、必ず返答してくれるし、質問にもシッカリ答えてくれる。
現在、俺が竜になってから三十日が経過した。正しくは、三十日と八時間三十九分。どうしてここまで正確に時間を掴めるのかというと、それはユニークスキル『
いやぁ、このスキル、マジで便利。困った時にはコレ! と、文句ナシで言える。
『
いやぁ、かなりの大惨事である。竜だからという理由で、寝ている間に討伐でもされたらどうなることか。
《否。半端な攻撃では
といった感じに、返事をくれる。返事があるというだけで、誰かと会話をしているというだけで、人間とは不思議なほどに落ち着くものだ。
通常では、疑問に対して心に言葉が響く、などということは起こり得ないらしい。世界の改変が行われたり、スキルの獲得や進化が行われた際に、こうやって言葉が響く──〝世界の言葉〟が聞こえるのだとか。
ならば、俺のユニークスキルが普通に喋ってるのはどういうことか?
それは、このスキルの誕生秘話にある。スキル……特に、世界を渡る際に獲得するユニークスキルは、持ち主の願望や性格に左右されて能力の強弱、多種性が変わる。そもそもとしてユニークスキル『
ただし、それは前代未聞なので、定着に約二週間と少しかかったわけだ。
つまるところ、俺が『案内音声』に彩花さんの声を選んでいれば、彩花さんの声でこの異世界を案内してくれるということか……それも悪くない。が、ちょっと
話を戻すが……尤も、スキルの獲得や進化は日常茶飯事ではないらしい。何らかの成長を〝世界〟が認めた時、ごく
まあ、いいや。
と、いうわけで。異世界について色々と疑問が増えたし、やることないし、暇なので、俺は『案内者』に質問しまくった。それはもう、質問攻め。
結果、これが夢ではないことが判明した。いや、そりゃ、死んだし、夢じゃないことはわかってたんだけどね? 俺がそういう夢見てる可能性も無きにしもあらず……と思って質問してみたけど、無慈悲にも《否》と、一言でバッサリ切り捨てられたのだ。
良くも悪くも機械的である。
それに、食事や睡眠を必要としなさそうだった。竜ってのは快適便利な存在だねぇ。
『案内者』によると、この世界には〝竜種〟という、世界に四匹しかいない最上の存在がいるらしい。怖いね。
俺が前世で〝ドラゴンになりたい〟と願ったせいかお陰か、転生した俺の肉体はその〝竜種〟相当なのだとか。
──って、エグくね? まあ、続けようか。
しかし完全なる〝竜種〟ではなく、どちらかというと〝竜種〟の近縁種……というか、そのワンランク下のものらしい。
種族名は〝
最初に獲得したであろうユニークスキル『
俺の知らない間にすごいことが起こっていた。いやはや、ビックリである。
そういえば、俺の記憶はどこに保管されているのか? そもそも、竜に脳はあるのか──という問いに、『案内者』はこう答えた。
《解。劣等種とはいえ〝
と、聞き捨てならない単語が聞こえた。精神生命体ってなんだ?
《解。精神生命体とは、物理的肉体に囚われることなく存在できる、存在としての上位種です。精神生命体は、魂が残る限り不滅です》
……だそうだ。俺の体、かなりえげつないことになっているのでは……?
話を戻すが、俺の種族は亜種とはいえ、〝竜種〟。俺の体にはそれ相応の固有スキルや耐性スキルが宿っているらしく、固有スキルは『
それに加えて、転生時に獲得したユニークスキル『
ユニークスキル『
一、思考加速。
知覚・伝達速度を通常の千倍にまで上昇させる効果。
二、解析鑑定。
対象の解析及び、鑑定を行う。
三、並列演算。
解析したい事象を、思考と切り離して演算を行う。
四、詠唱破棄。
魔法等を行使する際、呪文の詠唱を必要としない。
五、森羅万象。
この世界の、隠蔽されていない事象の全てを網羅する。
というものだった。
ってか、森羅万象だって? もしかすると俺は、全ての知識が苦労せず手に入ったのか!? と、思ったのだが……。
実際には違うようだ。俺が触れた情報に対して、俺の知り得る事柄にのみ、情報開示が可能とのこと。
つまり、俺が実際にその情報に触れる必要があるが、その後はすんなりと〝思い出せる〟というわけだろう。簡単に言えばまっさらな辞書といった感じだ。情報に〝触れる〟ことで辞書の中に書き込み、あとは好きな時に辞書の中にある必要な情報を〝見れる〟ということ。
俺が思う〝森羅万象〟ではないにしろ、かなり便利な能力だった。
そして、何よりも気になったのが詠唱破棄だ。これって、一度魔法を覚えたら詠唱ナシで使えるってことか? というか、やっぱりあるのか、魔法!!
答えはYES。
今すぐにでも魔法が使いたくなった。
ダメ元で『案内者』に使えないか聞いてみたが……答えはやはりNO。最初は『森羅万象』で知識・情報を入手し、『詠唱破棄』を使って円滑に実行……なんていうのを考えていたが、『森羅万象』の詳細を知った時点で諦めていた。
長々と説明したが、次はユニークスキル『
一、願望祈願。
精神の奥底での〝願い〟を可能な範囲で叶える。ただし、発動タイミングや叶えられる願いの範囲は不安定で、任意発動不可。
二、無意操作。
無意識下で『法則操作』を実行する。ただし、こちらも『願望祈願』と同じく任意発動不可。
というものだった。見てくれはいいが、かなり制約が多いものだ。ただし、それ相応に能力としては優秀だ。優劣つけられないが、特に『無意操作』。無意識下、つまり意識的に発動できないにしろ、一定範囲の『法則操作』が可能。かなりのぶっ壊れである。
ついでに解説してもらったが、『法則操作』とは、魔法的干渉の操作だそうだ。というか、ほぼそのままの意味である。
まず、魔法は、この世界の空気中に満ちる〝
俺に関しては特定の魔法に触れたり、経験した時点で『森羅万象』により情報獲得、『詠唱破棄』でスムーズに発動という式が完成しているので問題ない。
話を戻すが、その『法則操作』で操作できるのは本当に〝法則そのもの〟だそうなので、実質的に魔法の上位互換である。
それを無意識的に行えるといえば聞こえはいいが、発動タイミングがわからないし任意での発動も不可なので、優秀問題児なのは言うまでもない。
◇◇◇
と言っても、これで出来そうなことを全て終えてしまった。かかった時間は二日とちょっと……全然暇が拭えていない!!
ということで、この洞窟内を探検してみたいのだが……俺の体は大きすぎる。洞窟の道一つくぐり抜けられそうにない。というか、下手に突っ込んだら洞窟を破壊してしまいそうだ。体大きいだけだと思っていたが、俺の種族について聞いたあとだともしかしたら……と思ってしまう。
どうにかできないだろうか? 出番だぞ、『案内者』さん!
《解。固有スキル『万能変化』にて、身体組織の改造及び再構成が可能です。〝人間態〟へと『変化』しますか? YES/NO》
もちろんYESだ!
そう答えるとすぐに、俺の肉体が変態を開始した。竜の体はみるみる小さくなっていき……見覚えのある、人間の姿へと──って!?
俺は服を着ていなかった。これは想定外である。洞窟内なので、誰かに見られる心配はないが……倫理的にダメだ! どうにかできないか?
《解。魔素を物質に変換することで衣服の生成が可能です。実行しますか?》
YES! YES!!
YES/NOを問う前に俺は叫んだ。すると、俺の体を衣服が覆う。着心地はバツグンで、漆黒の衣服は見た目もクールだ。落ち着いたので、どうにかして自分の姿を見てみたい。かがみなんてないだろうから……『案内者』さん、俺の『万能感知』を三人称視点にすることはできる?
《可能です。実行しますか? YES/NO》
勿論YESだ。
すると、ゲームのように視点が切り替わった。
自分の姿を見て、おお、と声を上げる。
信じられないほどの美人が見えた。竜形態の鱗のような漆黒の長い髪に、美しい
俺がそう望んだからか? いや、望んだ覚えはないが──まさかっ!?
《是。ユニークスキル『
嘘だろッ!? 俺に女装趣味はないってのに……まさか深層意識で願ってたとは。驚きだ。
……とまあ、なんやかんやあって人と同じ大きさにもなれたし、のびのびとした洞窟探検を開始するのだった。
キリがいいのでここで終了です。
次回は洞窟探検編……何があるのか、楽しみですね。