転生したら竜だった件 作:暁悠
その後、ダグリュールは〝
ティターンを追ってナーガとレイヴンも戻ってきていたようだ。というか、本来の目的を忘れている。
「そういえば、ニーズヘッグ探しの最中だったよな……」
「色々あり過ぎて、忘れてましたね……。でも、アーブ様が寄り道しなければ、こんな事にはならなかった気がしますけど」
うっ……。
「ま、まあ、いいじゃん! 戦力増強にもなったんだし!」
「もういいですよ……」
ナーガに呆れられると、結構クるものがあるよなぁ……。そう、前世で──彩花さんに無視された時と同じ感じ。あれは辛いよ、本当に。
「あ、はは……。それで──」
《警告! 直ちに伏せてください──ッ!!》
っ!?
『案内者』に指示されるのと、寸分狂わず、ほぼ同じタイミングで俺は伏せ、同時に三人を『次元天蓋』で覆った。直後、俺の頭上を紫色の液体が通る。それは地面に落ちると……死せる砂の大地をみるみる溶かしていく。
「毒液!? これは──そうか、
ナーガが呟く。その視線の先には──一対二枚の大翼を広げる、紫色の大蛇の姿が。その瞳は、敵意と害意に染まっており……一目で〝魔化〟しているとわかった。
「混合拳気『
緋色の
「ナーガ、二人に〝輝石〟を」
「はい」
俺は、石碑の欠片を〝輝石〟と呼んでいるのだ。渡した理由は……言わずともわかるだろう。二人を逃がすためだ。
ティターンは、まだ戦える状態じゃないだろう。自我はハッキリしたとはいえ、まだ自分の力は探り探りだろうと思われた。
レイヴンは、まず相性が悪いだろう。あの毒液、かなりの速度だった。ナーガと俺なら問題なく回避可能だろうが、レイヴンには無理だと思われる。〝
二人ともそれをわかっているのか、素直に
俺とナーガが構える。同時に、その大蛇──
「シャアアア──ッ!!」
咆哮と共に毒液の球を俺達に飛ばす。その軌道こそ、物理法則に従っているため読みやすいが、速い。回避には相当の速度を必要とするし、何より当たったら一発でお陀仏だった。
《是。対象の毒液の毒性は、十分に〝死毒〟に価するモノです。当たれば精神諸共、魂が蝕まれる事でしょう。結界での防御……不可能。毒性の無効化……不可能。回避……可能。回避に専念してください》
だそうだ。なんとも、絶望感を醸し出す解析結果である。
「ナーガ、アイツの毒液は全て避けろ。当たったら魂まで蝕まれて死ぬ」
「了解しました。やはりですか……ずっと悪寒がするんですよね」
ナーガは十分に精神を研ぎ澄ませて、全ての毒液を回避している。俺は速度が足りず、認識してからの回避行動では遅かったので、着弾地点を予測、そこを全て避けるように『転移』を幾重にも重ねるという荒業に頼らざるを得ない。コチラには『案内者』さんがいるとはいえ、その演算能力にも限りがあるだろう。ジリ貧か……。
「──〝
基本の自然四属性を混合させた魔法の
ちなみに、戦闘では『案内者』さんは使えない。着弾予測と転移点の推測、実行に『並列演算』の並行演算領域を割いているので、戦闘に回せないのだ。
つまり、俺の地頭の戦闘センスで行くしかないってわけ。無理ゲーにも思えるが……まあ、何とかなるだろう。
「やりづらいですね。
確かに。通常攻撃なら、〝
俺は属性剣気を、ニーズヘッグに飛ばす。が、回避された。
「チッ、どうしてこうも、幻獣ってのは厄介なのが多いんだ」
そういえば、フレースヴェルグ──ファードヴェルにも回避されたっけ。
ん、ファードヴェル? あっ、そうだ!! すっかり忘れてたが、その手があったか!!
『ファードヴェル!!』
『出撃ですわね』
呼びかけてから一秒もせずに、俺の目の前に美しき双頭の鷲が顕現した。澄んだ緋色の両翼を広げ、孔雀の尾が風に
間違いなく、
俺がやろうとしている事は、もうわかっただろうか? 俺はファードヴェルに手を
「お、おお!」
そして、天頂の鎧も変容する。右胸から右腕、右手の甲にかけての鎧が、
「ヴェルアーブ様、それは!?」
「こんな感じになるんだ。よぉし……」
なぜか勝てる気がしてきたぞ。
俺は、飛んできた毒液に向けて──
「──
「えっ、ヴェルアーブ様!? 凄い……」
「やっぱり幻獣の攻撃は特効入るわけか! よしよし、これはイケる──」
そう思った矢先に。
「ちょっとヴェルアーブ様!?」
「おおっと! こ、これは計算外……」
これは……ちと──じゃなくて、結構……かなりマズイかも……。
「なっ、ナーガ!!」
毒液がナーガに迫っていた。もう、考える必要はない。ナーガに当たるより早くナーガの隣に『転移』し、ナーガを抱きかかえる形で転がる。その先は着弾地点ではなかったので、転がった先で当たる事はなかったにしろ──
「くっ……ナーガ、早く回避を──」
今度は、俺に迫っていた。どうしたものか……詰みかな? 状況を察して、ディゴルネ辺りでも来てくれれば良かったが……そんな援軍は見込めないか。
そんな、絶望しかけた、その時。
「グガァァァァァァァァァァウ──ッ!!」
龍と獅子の咆哮が混ざったような、耳をつんざく大咆哮が響き渡る。
「なっ!?」
「一体、何が……」
俺達に迫っていた毒液の球が弾け、俺達に当たらないギリギリで地面に落ちたのだ。
『一体何が起きたんじゃ!!』
『危なかったですね、我が主。ですが、この
『何ッ!? ま、まさか──!?』
俺達の目の前には、巨大な獣が佇んでいた。
龍の頭に、獅子の体、生きているようにうねる細い毒蛇の尾を持つ──大体七メートルくらいの、巨大な獣が。
俺の頭に激痛が走る。本日二度目だ。ズキズキと痛む中で──やはり、あの夢を思い出していた。あの光景の中でも、あの場の王者のように佇んでいた獣だ。威厳に満ち溢れ、他を圧倒する覇気を有する獣だった。
それが、今、俺達の目の前にいるのである。
そうか、コイツが──
『
ディゴルネの絶叫とも言える驚愕の声が、その場に『思念』として響き渡る。
そうだ、そうだった。幻獣は全て、〝魔化〟して自我を失っていると聞いていたのに──キマイラは、自力で脱したのか?
『待たせて済まない、
「え、え?」
『驚かせたか。オレは──』
『話してる場合ですか。来ますよ』
鎧と一体化しているファードヴェルからの警告がキマイラにも届いたのか、すぐさま戦闘態勢に移行している。
何というか、職人気質というか、格好いいな。
「キシャアアアア───ッ!?」
『
いや。状況的に、脱する事が出来たキマイラさんがオカシイんじゃ──?
そう疑問に思ったが、その場では聞かない事にした。そんな事してる場合じゃないしね。
「
「グガァァァァァァァァ──ッ!!」
俺は先程通り。
『キマイラには、振動を操作する力がありますからね。その能力は強力無比で、わたくし共は何度も負けていたのですわ』
『おいおい、負けたのかよ? って、キマイラが強過ぎるのか……。納得だな』
『お恥ずかしい事に』
そう言って
「チッ、厄介だな!」
『オレも、ニーズヘッグ相手には苦戦しました』
キマイラとも、もう阿吽の呼吸である。
そして。
「キシャアアアアア────ッ」
大咆哮と共に、ニーズヘッグの口から何かが放たれた。毒液の塊だったが……ここまで来ると、もうビームみたいだ。
俺はこれを、〝
なんて恐ろしい──が、弱点もあるみたいだな。撃った後は、暫く毒液が出せないらしい。溜め込んだ毒液を、全て纏めてぶっ放すのが、この技の全容のようだ。
ならば対処のしようはある──
「行くぞ!」
『心得ました』
それは一瞬の出来事だ。キマイラが飛び上がり、咆哮による音波振動でニーズヘッグの動きを止める。同時に、俺は
「──拳気『
『
「──
蒼い拳気で、全ての毒液の球を包み込んだ上でその拳気を操作する事によって、全ての毒液を散らす。かなりの負担があるようで、第二波には対応出来ない様子だった。
しかし、問題はない。
「
失敗──つまり、
◇◇◇
全てを終えた俺達は、無事に
「お疲れ様、ナーガ」
そう言って、俺はいつも通りにナーガの頭を撫でた。本当に、よく頑張ってくれたと思う。散らした
「ヴェルアーブ様……」
だいぶ疲れているみたいだな……。
「ちょっと寝台まで運んでくるよ」
『うむ、かなり疲れているようじゃからの。良く労ってやるのじゃぞ。キマイラ達の事は、
「ああ」
二言返事で了解した俺は、ナーガを俺の個室にある寝台まで運ぶのだった。
少し短めかな……? ま、いいでしょう。最低ラインの二千五百文字は超えてるんですしお寿司……。