転生したら竜だった件 作:暁悠
ヴェルアーブ様に抱きかかえられて、ヴェルアーブ様の部屋まで運ばれた。
「ヴェルアーブ様……ありがとう、ございます……」
やっぱり……少し、ドキドキする。ヴェルアーブ様の部屋に入るなんて、考えもしてなかったから。
「いいっていいって。本当に良く頑張ってくれたし、その分、良く休んでくれよ?」
それを言い残して、ヴェルアーブ様は部屋から出ようとした。
私は、ヴェルアーブ様の御手を煩わせてしまった事に罪悪感を抱きつつ、眠ろうとした。
「待って、ください」
気づけば、ヴェルアーブ様の腕を握っていた。
って、あれ? 私って、何をして──
「うん? どうした、ナーガ?」
やっぱり少し怪訝な顔してませんか、ヴェルアーブ様。
どうしよう、なんで引き止めてしまったんだろう……。
でも、多分、私は──
「……一緒に、いて欲しい」
自然と敬語を忘れて、そう言ってしまっていた。
本当に、私は何を言ってるの?
「わかったから。手は離してくれよ」
「……すみません」
反射的に謝ると、ヴェルアーブ様は「別に謝らなくてもいいのに」と言った。
「……ごめんなさい、ヴェルアーブ様……。私、ヴェルアーブ様の眷属なのに、あんな失態を……」
ヴェルアーブ様の眷属でありながら、あの毒液を避け損なうなんて……。本当に、致命的な失態です……。
「あれは……まあ、仕方ないさ。俺だって、一歩間違えてたらああなってたわけだし」
ヴェルアーブ様はそう言ってくれるけれど、やっぱりちょっとヘコんじゃうな。
「そう、でしょうか……」
「そうだよ。ナーガは十分頑張ってくれたしな」
ヴェルアーブ様は、私の〝
「ありがとうございます……。ねえ、ヴェルアーブ様?」
「ん?」
「私、私……」
どういう感情なんだろう。どう、言えばいいんだろう。どう、言葉にすればいいんだろう。わからない。わからないけれど……口が動いてしまう。
「どうした?」
「あの、私……ヴェルアーブ様の
「? どうしたんだよ、急に」
「いえ……伝えたかったんです……どうしても」
それしか言えなかった、が実際には正しい。けれど、多分ヴェルアーブ様は気づかない。
「あの、ヴェルアーブ様」
「何だ?」
ヴェルアーブ様が優しく、私に問い返してくれる。
──言わない方がいい。ヴェルアーブ様は主で、私は眷属。そこには絶対的な主従関係があるのに……。
でも、ここで言わなきゃ、もう言えないと思った。だから、言ってしまった。
「私……ヴェルアーブ様が好きです」
思った通り、私の呟きにヴェルアーブ様は目を丸くしている。
「それって……」
「私! え、っと……冗談とか、じゃなくって……本当に、ですね……」
せっかく出した勇気も、すぐに小さくなっていった。自分はなんて事を口走ってしまったんだと、もの凄く恥ずかしくなる。
「あの──」
何か言いかけた。言いかけたけれど……忘れてしまった。だって、ヴェルアーブ様が微笑みながら、私の頬を撫でるから。
「ありがとうな、ナーガ。えっと……その、俺も……だな……」
ヴェルアーブ様も──?
「俺も、ナーガの事は……好きだよ。そりゃ、レイヴン達だって好きだけど……。あー、もう! 迷うのはやめだ、やめ」
ヴェルアーブ様は迷いを振り払うように、そう、小さく叫んだ。ちゃんと『防音結界』でこの部屋を覆っている辺り、用意周到だなと思う。
「俺も、ナーガの事、好きだよ。……あ、愛してる。一番な」
そう、ぶっきらぼうな感じに言われた。
「あ、あい……」
「そう、愛してる。……やっぱ、恥ずいな」
その、恥ずかしがってるヴェルアーブ様の
「……ふふ。ヴェルアーブ様って、案外
「うるせーよ! し、仕方ないだろ。こういうの、初めてなんだし……」
ちょっとからかったらすぐに顔が赤くなったから、やっぱり愛しく思う。実のところ……ヴェルアーブ様に「愛してる」と言ってもらえた事が、爆発しそうな程嬉しい。
私は、上半身をゆっくり起こした。
「……ヴェルアーブ様。少し……来てください」
私に言われて、少しだけ身を寄せたヴェルアーブ様を抱き寄せる。すると、ヴェルアーブ様はお手本のように動揺してしまう。
「うわっ、ナーガ!? ちょ、おま──」
「少しの我が侭をお許しください。ヴェルアーブ様の近くに、もっと居たいので」
実は、私自身も口元が綻ぶのを見られたくなかった。恥ずかしいから。
私も凄くドキドキしているけれど……ヴェルアーブ様も同じ様子だった。精神生命体という、生命としての上位存在だっていうのに、キチンと心臓があって、脈打っているのが少し可笑しく感じる。体と体が触れ合っていると、こうも、相手の心臓の鼓動を感じられるものなのか、と。
「凄く……ドキドキします、ヴェルアーブ様。これを……ときめき、って言うんでしょうか」
「あ、ああ……うん……多分、そう、じゃないか?」
少し見てみると……ヴェルアーブ様は、赤面して目を白黒させていた。
「可愛いですね、ヴェルアーブ様」
「えっ……えっと……お前、もな。ナーガ」
こんな状況でなんてコト言うんですか!! って言おうと思ったけれど……始めたのは私だし……八つ当たりになっちゃうのかな。
そんな事を考えている内に我に返ってしまって、私自身も心臓が激しく脈打つようになった。私、どうしてこんな事しちゃったんだろう……? まあ、もうしちゃった事だから、言ったところで状況は変わらないんだけど……。
「なぁ、ナーガ」
「? どうしましたか?」
「手、繋いでもいいか?」
「ええ、いいですよ」
ヴェルアーブ様の方から言ってもらえて、かなり嬉しい。それはもう、本当に。
ヴェルアーブ様が手を握ってくれたけれど……それは、互いの指を絡め合わせるようにしたもの──一般的には〝恋人繋ぎ〟と言うらしいですね──で、なんと言うか……こう、ドキドキするものだった。
「あの、ヴェルアーブ様? これ、は……」
「いいだろ? 恥ずかしいって言うなら、今更だし」
それもそうか──って納得してる場合じゃなくて!!
構図としては、ヴェルアーブ様が私の前にいて、私の手を恋人繋ぎで握っていて、これじゃまるで……く、口付けする時、みたいな事に──
そこまで考えて、別にいいか、と思うようになった。
(ヴェルアーブ様と口付けする事の何が駄目なんだろう? 私達は……ほら、愛し合っているわけだし……何も、問題はない、し?)
そんな、いわば悟りとも言える思考を巡らせていた、その時だった。
「──!?!?!?!?!?」
私の想像通り……って、言えばいいのか。念願叶ったと、言っても良いものか……。ヴェルアーブ様が、私に、その……口付けを……。
「ゔぇ、べ、ゔぇ、ゔぇる──ヴェルアーブ様っ!? な、なっ、急に、何をっ!?」
「うぇ!? イヤ、だったか……?」
嫌じゃありませんけど! 寧ろ嬉しいですけど!! それでもでしょ!!
(私がそういう想像をしていたとはいえ……急過ぎるよ……)
「え、想像してたのか?」
「えっ??」
ま、まさかっ!? 思考、漏れちゃってたの!?
「…………」
もの凄く、体が火照る。頬が熱い。頭が真っ白で、何も考えられなくなる。頭の中にあるのは、恥ずかしいっていう感情だけ……。
ヴェルアーブ様の手を握る手に、自然と力が入っていく。
「なあ、ナーガ。また……しても、いいか?」
あれ──と、少し不思議に思った。
──いや、思ってしまった。
(ヴェルアーブ様……少し、浮かない
ヴェルアーブ様の表情は、何か……不安や恐怖に似た感情を噛み潰して、無理に微笑もうとしているような……そんな表情に見えた。
「……ええ。……して、ください」
恥ずかしかったし、毛布の中に潜り込んでしまいたかった。けれど、それをしてしまったら、こんなチャンスは二度と来ないかもしれなかった。それに──
(やっぱり。ヴェルアーブ様、何かが怖いんだ)
そう思えて、ならなかった。
私は一抹の不安を抱えながら……その夜はヴェルアーブ様に身を任せて、少しだけ甘い一夜を過ごした。
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オマケ
「気になったのだが、ヴェルアーブ様とナーガ殿は何を? 部屋に運ぶだけなのに、帰りが遅過ぎではないか?」
『ティターン、と言ったかのう? それは、野暮というものじゃ。触れないのがお約束じゃぞ』
「そうですわよ。その話題に触れる事は、以降ご法度だと思いなさいな」
「……そういうものなのか?」
「『そう
「……オレには理解出来ん」
やっと本格的なイチャイチャが書けました(煩悩)。
書いている最中、頭の中に「今すぐにでも二人のイチャイチャを書くんだ!!」という、煩悩……ではなく、啓示が降り掛かったんですよね。なので、それに身を任せて書きました。オマケは……オマケです。こんな光景があったらいいな、と。
って、おや? ナーガは何かを察している様子……なんて茶番は置いておいて。こういう、イチャイチャとかにサラッと不穏を織り交ぜるの、大好きなんですよねぇ(百合やイチャイチャよりも、何よりも曇らせ展開が好きな作者でした)。