転生したら竜だった件 作:暁悠
……何があったんだっけ?
現在時刻は、午前六時半といったところか。
それで……そうだ、昨夜の事だ。あの後、確かナーガと──
そこまで考えて、急に俺の頬が熱く感じるようになった。
(というか、待ってくれ。ちょっと待ってくれよ)
そう、重大な事があるのだ。
(ファ、ファーストキス……)
思い出すだけでも発狂しそうになる。嬉しさからではなく、恥ずかしさから。
「…………」
隣では、ナーガがすやすやと眠っている。あ、やましい事は何もしていないから安心して欲しい。した事といえば、ハグとキスくらいだ。
……。
背に腹は変えられない、な。
起こすのも忍びないので、そのままそーっと──
「むぅ……黙って出ていこうとしましたね?」
「あ。……ゴメン、ゴメンよ」
「別に謝らなくていいですけど……。うふふ、思い出しただけでも胸のときめきが止まりません」
可愛い。よりも先に恥ずかしい。
「……そういや、ディゴルネに何の報告もしてないな……」
一応の措置として、軽い『防音結界』と〝
気にしなくても、別にいいか。
「ねえ、ヴェルアーブ様」
「ん、何だ? キスはなしだ──」
チュッ♪
「……ぞ、って言おうとしたんだけどな」
「えへへへへ……すみません」
「アイツらを待たせてるだろうし、早く行くぞ」
そうして、二人で部屋を出た。幸い、部屋を出てすぐに隣の部屋のレイヴンと鉢合わせる……なんて事はなかった。
庭に行くと──
『おや、おはよう。昨夜は……触れまい』
「ディゴルネ……」
お出迎えだ。ニヤニヤしながら、俺達を眺めている。
『お主ら……揃いも揃ってお似合いじゃな』
「「余計なお世話
まったく……。
『じゃが、もうその程度の事には慣れたんじゃな』
「え?」
『え、じゃないわ。だって……ほら今も、手を繋いでおるではないか』
言われて見てみると……無意識にも、俺達は指を絡め合わせるように手を繋いでいた。俗に言う、恋人繋ぎである。
「「っ!?」」
二人とも驚愕し、目を見合わせた。
『なんじゃ、なんじゃ。無意識か? おうおう、正しくお似合いじゃな』
「「うるさい!」」
駄目だ。これ以上コイツに付き合うのは、駄目だ。俺の本能がそう告げている。
──が、これ以上どこかに行く予定もない。俺は庭にある
「まあ、ヴェルアーブ様。ナーガさんも」
「お、ファードヴェルか。キマイラとニーズヘッグは?」
「ニーズヘッグは……キマイラに、お説教されているところですわ」
「説教? 何で?」
「……何でも、〝魔化〟程度の状態から抜け出せないとはどういう事か! ……と、言っていますけれど」
あ。理不尽なやつだ。普通は、〝魔化〟状態から抜け出すなんて不可能に近いんだけどね。持ち前の精神力だけでそれをやってのけたキマイラが異常なんであって……。
「あ、そうだ。二人を呼んでくれ。どうせ、名付けする事になってる」
「あら。無理はしなくても宜しいのですよ?」
「善意だよ、善意。ともかく呼んでくれ。今も説教されてるんだろ? ニーズヘッグが、ちょっと可哀想だしな」
これは本心だ。自力で〝魔化〟状態から逃れろなんて、理不尽な無理ゲーも良い所である。キマイラが規格外なんであって、ニーズヘッグに非はない。
数分足らずで、二匹が来た。
龍の頭に獅子の体、うねる毒蛇の尾を持つ巨獣──
一対二枚の大翼を持つ紫色の大蛇──
さて、この二匹の名前だが……。
「
安直な名前である。キイラの方は〝キマイラ〟を捩ったもので、ネズは〝ス
さて、解析終了。
それぞれのステータスを開示してもらった。ついでに、解析出来ていなかったファードヴェルも一緒に。
名前:ファードヴェル
種族:
加護:水鏡の加護
称号:
魔法:〈独自魔法〉〈炎霊魔法〉
能力:固有能力『
耐性:物理攻撃無効、精神攻撃無効、
状態異常無効、自然影響無効、
聖魔攻撃耐性
名前:キイラ
種族:
加護:水鏡の加護
称号:
魔法:〈独自魔法〉
能力:固有能力『
耐性:物理攻撃無効、精神攻撃無効、
状態異常無効、自然影響無効、
聖魔攻撃耐性
名前:ネズ
種族:
加護:水鏡の加護
称号:
魔法:〈独自魔法〉〈水毒魔法〉
能力:固有能力『
耐性:物理攻撃無効、精神攻撃無効、
状態異常無効、自然影響無効、
聖魔攻撃耐性
……。
もう慣れてきたな。それぞれが〝神性〟を有し、その〝最上位聖魔霊〟という括りの中では最低位にしても、それよりも下位の〝上位聖魔霊〟とは比べ物にならない程の
それぞれの固有能力を見ていこう。
まずは、何と言ってもファードヴェルの『
これによって生み出され、操作される獄炎は、文字通り地獄の業火とも呼べる代物。万物を融解させ無に帰す、地獄の炎だ。対処法は、俺の持つ天頂の力で相殺するか、回避の二択。これも、後述の二匹のものと同様。
お次は、キイラの『
最後は、ネズの『
正に、理不尽の権化。これと戦ったんだから、俺とナーガはもう少し称賛されるべきである。
いやはや、三人とも厄介だな。名有りの幻獣って、あと、何が残ってるんだっけ?
《解。名有りだけで言えば、
ふーん。
それじゃあ……かなり気合い入れないとな。
「ヴェルアーブ様……これから、戦いも苛烈さを増していきますか」
「そうだろうな。ただ、止まるわけにはいかないかな」
そう、そうなのだ。俺にはあの夢の事もあるのだし、止まるわけにはいかない。寧ろ、スピードアップしていかなければならない。
俺は──静かに、覚悟をもう一度決めるのだった。
─────────
あれから、どれだけの月日が流れただろう──って、まだ一ヶ月しか経っていない。
俺は、かなりいいペースで幻獣達を〝浄化〟して行っていた。
名有りだった、
四位一体の牡鹿である、ダーイン、ドヴァリン、ドゥネイル、ドゥラスロール。
牡鹿達はともかく、四匹には名を与えた。
他にも、新たに名が付いたものもいる。
名付けを行ったのはこれだけだが、他にも様々な幻獣がいた。名はないが……その種類は多種多様で、犬、猿、雉の桃太郎シリーズやゴリラまで……。
かなり小型の幻獣もいたが、進化したワードルトの探知・探索、感知、監視能力によって簡単に見つけられたのだ。すばしっこいので、仕留めるのには苦労したのだが……。
そんな紆余曲折あって、魔化した幻獣もいなくなった。害を為す奴らばかりではないのだが、元は
まぁ、理由はいいのだ。とにかく……迫る厄災に向けて、出来るだけ戦力を集中させていたいのだよ。
──それが、敵を利する行為だとも知らずに。
─────────
場面は移り、星の衛星軌道上の中で、
月面に、緑と黒で構成された大型犬がいた。
『……寒い。相も変わらず、本当に寒いな、ここは』
尊大な口調の『思念』を響き渡らせる──ディゴルネだ。
『さて、と。探し物がある。怪訝に思われる前に見つけ出さねばな!』
張り切って
そして、月面の中の、ある場所。
『…………馬鹿な……なんじゃと……?』
禍々しいオーラを放ちながら、そこには巨大な蛇のような物が佇んでいた。意識はない。
『……まさか、まさかじゃ。まさかお主──ずっと、こうしておったのか?』
その蛇からは強大なエネルギーが絶え間なく流出──いや、放射されており、それが向かう先は──
『……そうか、そうなんじゃな? 太陽に、あの大厄災が……』
そう、太陽だ。太陽に向けて、青白いエネルギーが放射されているのだ。
『…………ずっと、ずっと、頑張ってくれておったのだな。ヴェルアーブが気付かぬ間も、それで
ディゴルネは内心で、本当に申し訳なく思う。自分が人間のように、涙を流せたら。自分が、人間のようにその辛さすらも糧に出来たら。
『じゃが……そうか。お主と再び一体となる事は、アレの封印を解くのと同義になってしまうのか……』
そう。太陽に封じられている〝ナニカ〟だが、その封印はディゴルネの目の前に佇む、もう一人──いや、
『そうか……そうじゃな、伝えねばな』
ディゴルネの脳内に浮かぶのは、少しおちゃらけたヴェルアーブの姿だ。何故か、
それは悪い変化なのか、それとも。
『何かが変わっているのは間違いない。それが悪く転ぶか、良く転ぶかは……運次第、と言ったところかのう。ままならぬものよな、それも運任せとは』
深く考えても、何も変わらないのだ。それくらいなら、考えない方がいい。
ディゴルネは実に
短い!! けど濃すぎ!!
これだけですかね、言うことは。
さてさて、ヴェルアーブ君。君達の物語、ずっと急展開だね? ちょっとは休もうよ。いや……年月空いてるし、休んではいるのか。もう……大人しくして欲しい。